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香港本屋めぐり 

 

第4回 貳叄書房(イーサム シューフォン)
     


今回話を伺ったSherryさん(左)と阿翹さん。
2人はもともと大学時代のルームメイト。店名の「貳叄書房」(貳叄=23)は彼女たちの学生寮の部屋番号「1223号室」が由来。書店経営以外にも、Sherryさんは大学生、阿翹さんはギターの先生という顔も持つ。

 

●業界最年少オーナーの誕生

香港の人たちにとって“独立書店”はどんな存在なのだろうか。いくつか例を挙げて考えてみると、総じて独立書店に良い印象を抱いているように思える。

ニュースサイト「立場新聞」では、週替わりでいくつかの独立書店がオススメの本を紹介する人気のコーナーがあり、2015年から現在まで6年間続いている。昨年秋にヒットしたテレビドラマ『金宵大廈』(TVB製作)や、日本でもミステリー小説『13・67』で知られる陳浩基氏の近作「二樓書店」(『偵探冰室』所収)では、独立書店が物語の舞台として登場しており、注目される存在であることがわかる。

また、独立書店を「やりたい仕事」として捉える人たちも出てきている。本好きが高じて異業種からの転身で自ら書店経営を始めるケースがあることは本連載第1回で紹介した通りなのだが、最近なんと20代の若者が最初の仕事として独立書店を選び、友人たちと共同でゼロから書店を立ち上げたのだ。書店業界で最年少オーナーの誕生である。

今回は、そんな20代の若者3人が共同経営をする「貳叄書房」を訪問した。

     
     
     

 

●現役女子大生が立ち上げた書店

貳叄書房は、九龍エリアのメインストリート・ネイザンロード(彌敦道)沿いの高層ビルに入居している。昨年2019年10月オープンの開業1年にも満たない新しい書店である。オーナーは、阿翹(アーキウ)さん、Sherryさん、Joyceさんの3人。SherryさんとJoyceさんは、現在、香港浸會大学文学部の4年生(2020年4月取材時)、阿翹さんは2年前に同大学のビジュアルアート学部を卒業したばかりだ。

貳叄書房は、Sherryさんが子供の頃に夢見た自分専用の図書室がベースになっている。自分の好きな本がある空間が欲しいと、同級生のJoyceさん、当時ルームメイトだった阿翹さんと話すうちに、「香港にはどういうタイプの書店が足りないのか」「香港のブックフェアは大盛況だが、香港に“読書”という雰囲気があまり濃厚でないのはどうしてか」「古本販売だけでは家賃が捻出できないだろうから別の企画もセットでやった方がいいのでは」など、具体的な話に進展し、序言書室(旺角)、見上書店(上環)、打書釘(銅鑼湾)などの“先輩”独立書店を参考のためによく見に行ったそうだ。

 

 

書店内部。大きな窓からはネイザンロードや油麻地のアパート群が一望できる。現在、バリスタの資格を持つスタッフもいて、美味しいコーヒーも注文可能。コーヒーを飲みながらゆっくりと本を読む。貳叄書房はそんな至福の時間を過ごせるところだ。

     


 

 


 


左の黒い高層ビルの12階に貳叄書房は入居している。
ビルの玄関には、他の独立書店同様、目印となる看板はなく、あるのは玄関に掲げられた入居者の表示板のみ。右下が貳叄書房の入り口。

 
     

 
書棚の上や飾り棚に置かれたアーティストの作品は買うこともできる。


貳叄書房のSNSにアップされる写真は彼らの個性がよく出ている。
若い感性を生かしたユニークな写真が多く、見ているだけでも面白い。
気になった方はぜひチェックを!

 

●本を売ることよりも本を読む空間を

貳叄書房は“書店”というよりも、本好きな友人の部屋という表現がぴったりかもしれない。背の高い書棚は壁側のみ、それ以外はローボードの書棚が置かれ、逆にソファーやテーブルが部屋のメインに見えるほど。書棚の上や飾り棚には、阿翹さんの知り合いのアーティストの作品が並ぶ。

「書店ではありますが、一息つける空間として、またここに来れば本を読まざるを得なくなるという、そんな空間も作りたかった」と室内デザインを担当したSherryさん。貳叄書房は玄関で靴を脱いで入るのだが、これにも実はちょっとしたわけがあるそうだ。「靴を脱ぐというアクションを入れることで、気持ちの切り替えを狙っています。また外から客間に上がるのもイメージしています。私自身寝転んで本を読むのが好きなので、お客さんにもソファや床に座って自由なスタイルで本を読んでもらえたらと思って」

開店当初心配したのは、香港人自体に読書の習慣があまりないことだった。しかし、書店に来る客を通して、香港には本を読む人も多いことがわかってきたと言う。「オープンして半年が過ぎ、徐々に“読書空間の提供”という理想に近づいてきたように思います。香港人は本を読む習慣がないというよりも、本を持ち歩く習慣がないのかもしれませんね。主にSNSを使って書店の宣伝をしていますが、SNSを見て来た若い子たち――主に中高生、大学生が友達と一緒にここで自由に本を読んでいってくれます。時々こんな本はどうかと勧めることもあります。おかげで中高生との交流も多くなりました」

 

●今後はイベントの開催や出版の計画も

現在、取り扱っているのは、文学・史学・哲学に加え美術関連の古本が多いが、独立系の出版社が出した新書も置いている。また書店を始めることを知った大学の先生や友人たちが蔵書の一部を寄付してくれたものもあり、古典文学や思想、歴史のシリーズ本から、東野圭吾などの現代作家の翻訳本、アートデザイン系の本など、充実のラインナップだ。日本語を勉強中のSherryさんが選んだという日本語の文庫本も書棚の一角に並ぶ。

本を販売する以外に、今後力を入れていきたいことを聞いてみた。
「ミニコンサートや読書会などのイベントも、毎月開催していきたいですね。デモや新型コロナウィルスの影響で延期になったりもしましたが、これまで、女性カメラマンや死化粧師のトークイベントを開催しました。ゲストと観客との対話や読んだ本の感想のシェアも重視しているので、ゲストには自分に影響を与えた本について語ってもらうことにしています」

さらに今夏には自分たちで雑誌を出版する計画もあるそうだ。
「現在準備の真っ最中で、友達にも手伝ってもらっています。地元香港のアーティストの文章やイラスト、評論などを掲載予定です。読者対象は中高生から大学生あたりまで。昔香港には『YES!』というティーン向けの人気の雑誌(2014年廃刊)があったのですが、そんな雑誌をイメージしています」

最後に書店経営について儲けはあるのかと、ちょっと意地悪な質問をしてみた。
「3人の給料が出るところまでは来ています。最初書店経営を心配していた親たちも、半年以上無事に経営ができていることやメディアに貳叄書房が取り上げられているのを見て、この書店に心を寄せてくれるようになりました。仕事が忙しい時は、食事を差し入れてくれたり片付けを手伝いに来てくれます。また大学の先生や友人たちも応援してくれるので、とても心強いです」

まだ生まれて間もない貳叄書房。多くの人たちから暖かく見守られつつ、着実に個性的な書店として成長をしているようだ。今夏、SherryさんとJoyceさんは大学卒業を迎え、初めて手がける雑誌も出版となるなど、書店としての活動も新たなフェーズに入る。彼女たちの今後の展開がとても楽しみだ。

(取材日:2020年4月14日)

     
     
     

 

▼今回訪ねた書店

貳叄書房 jisaam.books
油麻地彌敦道558-560號譽發廣場1202室
RM 1202, Grand Place, Nathan Road 558-560, Yau Ma Tei
FaceBook:https://www.facebook.com/jisaam.books/
Instagram:https://www.instagram.com/jisaam.books/

▼貳叄書房のオススメ

『SAMPLE 樣本』
編者:香港中文大学香港文学研究中心
香港で2016年創刊の文芸評論誌。隔月刊。Sherryさんたちの先輩も関わっているそう。有志による自費出版だが雑誌としてのクオリティも高い。「活着多好」「餐桌前我們都是人類學家」「怪物的正確收容方式」など毎号の特集テーマも独特で面白く、文学以外にもカルチャーに関心のある層から支持を得ている。 
Facebook https://www.facebook.com/samplemag.hk/

『字花』
水煮魚文化製作有限公司出版
「立足本地,放眼世界」をテーマに香港で2006年に創刊された文芸雑誌。隔月刊。文学に加え、社会や文化についての評論も掲載。若い世代にも愛読者が多い。こちらもSherryさんたちの先輩や先生が関わっているそう。写真は「字花」第81期(2019年9・10月、特集:島)。
>>>サイト

▼香港の独立書店が舞台となった小説

『偵探冰室――香港推理小説合集』
陳浩基、譚劍、文善、黑貓C、冒業、望日
星夜出版有限公司(香港)
2019年7月初版
陳浩基氏ほか香港の若手作家ら6名によるミステリー小説のアンソロジー。二樓書店(独立書店)、重慶大廈(尖沙咀の雑居ビル)、李氏力場(香港の富豪・李嘉誠の結界。香港で証券取引のある日に台風は来ないという都市伝説のようなもの)、動漫節(アニメフェスティバル)、窄小劏房(極狭アパート)、香港地鐵(地下鉄)といったいかにも香港らしい場所・事柄が小説の舞台になっているのにも注目。ちなみに「二樓書店」は陳氏の作。旺角西洋菜街にある老舗の独立書店が舞台となっている。

     
     
 

 

写真:大久保健・和泉日実子

▼筆者プロフィール
和泉日実子(いずみ・ひみこ)
1974年熊本生まれ。筑波大学大学院芸術研究科修了。編集者兼ライター。東京、北京で出版社勤務後、2018年より香港在住。趣味の街歩きを通して、香港の独立書店やロケ地めぐりをしている。ブログ「香港書店めぐり。時々…」。

     

 

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