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香港本屋めぐり 

 

 第9回 大業藝術書店(ダイイップ アイソッ シューディム)
     
店主・シャロンさん
大業藝術書店の店主・Tinnyさん(右)と馬召其さん
 

●1975年創業の老舗芸術書店

香港島のビジネスや金融の中心・中環(セントラル)。日本人のファンも多い老舗飲茶レストラン「陸羽茶室」近くのビルの一室に、ひっそりと佇むように「大業藝術書店」が店を構えている。

大業は、尖沙咀(チムサーチョイ)にある香港芸術館内の書店として1975年に創業。東洋美術を中心に芸術関連書を専門に扱っている。最盛期には4店舗あったが、インターネットの普及や人々の嗜好の変化により店の規模は徐々に縮小。現在は中環の1店舗のみだが、昔も今も香港のアート界では有名な存在だ。創業者の張應流さんは芸術への造詣が深く、香港、台湾、中国本土の芸術家との交流もあり交友関係も広い。

しかし、張さんは70代に入り店を畳むことを決意。周囲から惜しむ声が相次いでいたところ、店を引き継いでくれる人物が現れた。それが現店主のTinny(鄭天儀)さんだ。


 

     
     

書店のあるビル。中央。
陸羽茶室の右2軒隣の黒いビルに大業藝術書店が入居する。
ビルの入り口には小さな看板が出ている。

 

●読者から店主へ転身

Tinnyさんは香港の新聞に芸術関連記事を執筆するフリーランスの文筆家。2017年には「文化者The Culturist」というカルチャーウェブメディアを立ち上げ、同メディアの雑誌では総編集長を務める。そんなTinnyさんが、どうして大業を引き継ぐことになったのだろうか。
「中学の頃からよく大業に通っていました。お金がない学生時代はもっぱら立ち読み専門の“読者”。ビニール包装してある本をどうしても中身を見たいからと言って、張應流さんに包装を取って見せてもらったことも何度もあります。困った客だったでしょうね(笑)。書画などの視覚芸術が好きだった私にとって、大業は楽園のような空間でした。その後、芸術関連の記事を書くようになってから、張さんと話す機会も多くなりました」

2018年の末、張さん行きつけの陸羽茶室でお昼を一緒にしている時、大業の今後について話が出たという。
「張さんが高齢で店を続けていくのは難しくなったから、あとを継がないかという話になりました。もし後継者が見つからない場合は、店の本は(需要のある)中国本土に転売することになるだろうと。そうなると、二度と香港では大業にあった本が読めなくなってしまう。残念な気持ちがこみ上げてきて、どうしたらいいか悩みました」

しかし、決意したTinnyさんの行動は早かった。わずか2ヶ月ですべてを引き継ぎ、3月には新たな店主としてスタートを切った。
「張さんは書店経営は簡単と言っていましたが、それは経験があってこそ。私はこれまで一読者、一顧客に過ぎませんでした。しかし、ずっと芸術を身近に感じてきたので、どんな本に価値があるのかという理解は多少なりともあったと思います。経営の知識も経験もないまま2019年3月1日に書店経営者としてスタート。ですが、3月下旬には香港の社会運動が始まり、2020年からは新型コロナ。店を継いでからまだ“普通”の日々を過ごしたことがありません。今は手探りながら一歩一歩頑張っています」

並々ならぬ愛情と熱意を持って2代目店主となったTinnyさん。香港の著名文化人蔡瀾氏も、「大業鄭」という文章を発表し、大業に“白馬の王子様”が現れたと賛辞を送っている。蔡瀾氏は美食家として有名だが、芸術にも造詣が深く、先代・張さんの時から大業の常連である。 

     
     
書店の「玄関」   書店部分
入り口近くのおすすめ本コーナー   先代の店主・張さん時代、大業では出版もしていた。上海博物館など中国の有名博物館や台湾の芸術家と共同で作成したヴィジュアル本。

  

     

 

 

 

     

 オープンスペース(書架が並ぶ側から)
店内の様子。香港、台湾、中国本土、日本の芸術書が幅広く揃う。
馬さんの篆刻作品展示コーナーもある。

 

●東洋美術から現代アートまで揃う芸術書の宝庫

現在、大業はTinnyさんと夫で篆刻家の馬召其さんの2人で切り盛り。馬さんが店内の管理や接客などを担当。Tinnyさんは文筆業のかたわら、SNSを使って新しく入荷した本やオススメ本を紹介し、大業の活動を発信している。

先代・張さんが「世界中どこを探しても、大業ほど東洋美術の本を置いている店はない」と自負していたほど、芸術書の品揃えは素晴らしい。
「中国芸術の分野だけでも、玉、陶器、書画、篆刻、青銅器、家具、貨幣、建築、オークション関連など幅広く、4,800種類以上あります。店には数万冊はあるでしょうね。他にも倉庫があり、うずたかく積まれた本の山がいくつもあります。歩くスペースがないくらい(笑)」と馬さん。

Tinnyさんが店を継いでからは、東洋美術に加え、現代アートや地元香港のアーティストの本など、これまで置いてなかった新しい分野も取り扱いを始めた。また、店で扱う本は、内容はもちろんのこと、貴重本や印刷の良いものと限定している。著者にサインを入れてもらうのもその一環。サインなどの付加価値を付けることで、手元にずっと持っていたいと思ってもらえるような本にしている。
「うちは小さな書店なので本を大量に仕入れて安く売ることはできません。なので、少量でもいいので価値のあるものを置きたいと思っています。ある日、お客さんが1冊の本を見つけてすごく喜んでいたんです。どこを探しても見つからなかったのに大業にあったと言って本を抱きしめて帰っていきました。本屋冥利に尽きる瞬間でしたね」

客層も徐々に変化が出ている。以前は先代からの常連や骨董品のコレクターがよく本を見に来ていたが、最近では香港の歴史本や芸術本を求めて若い人たちがやってくるようになった。また篆刻家である馬さんのファンの来店も多く、馬さんとの芸術談義を楽しみに立ち寄る客もいるそうだ。

 

●知識をシェアする場を提供

Tinnyさんは、今後注力したいことの1つに、講座などのトークイベントの開催をあげる。
「今は新型コロナの影響で出来ませんが、状況が落ち着いたら、本の内容に関する講座を開きたいですね。知識のシェアになりますし理解促進にもつながると思います。以前、中国現代絵画の大家・呉冠中に関するトークイベントを開催したことがあり、サザビーズの専門家と呉冠中を長年にわたってよく知る人物、そして私の3人が登壇しました。また呉冠中のお弟子さんが折良く香港に来たので協力してもらい、ドキュメンタリー的なビデオも撮りました。このビデオは香港芸術館でも上映してくれ、おかげで人々の呉冠中への関心が高まり、本の売り上げにも繋がりました」

“白馬の王子様”として大業に現れたTinnyさん。大業にとって閉店を免れハッピーな展開をもたらしただけではなく、我々にとっても芸術の知識をシェアする場を提供してくれている。新型コロナが1日も早く収束し、大業のイベントに参加できる日が待ち遠しい。

(取材日:2021年4月23日)

 

     
     
     

「書券卵」(ガチャポン)

 

▼今回訪ねた書店

大業藝術書店 Tai Yip Art Bookshop
Room 02, 3/F Conwell House 34-38 Stanley Street, Central
中環士丹利街34-38號金禾大廈3樓2室
https://www.facebook.com/taiyipbook
http://www.taiyipart.com.hk/index_c.shtml

▼大業藝術書店のオススメ

馬素梅『屋脊上的戲台――香港的石灣瓦脊』2016年、個人出版(右)
香港にある多くの廟には、陶芸の里・中国石湾で製作された屋根装飾が施されており、古代英雄や神仙がモチーフとなっている。本書では屋根装飾が製作された歴史的背景とそのモチーフの意義を考察する。全ページカラー。

馬素梅『屋脊上的戲台――海外的石灣瓦脊』2020年、個人出版(左)
『屋脊上的戲台――香港的石灣瓦脊』の続編で海外編。マレーシア、ミャンマー、オーストラリア、ベトナムの51カ所の古建築を訪ね、使用されている石湾産屋根装飾の製作年代、輸送方法、モチーフに採用された中国古典の真の意義を探る。

 

     
     
 

 

写真:大久保健、和泉日実子

▼筆者プロフィール
和泉日実子(いずみ・ひみこ)
1974年生まれ。筑波大学大学院芸術研究科修了。東京、北京で出版社勤務後、2018年より香港在住。趣味の街歩きを通して、香港の独立書店やロケ地めぐりをしている。ブログ「香港書店めぐり。時々…」

     
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