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微観中国  (22)網民の“逆襲”? 「カラー革命」「周帯魚」に
   
     


『顔色革命』
「朝廷では文官も武官もグリーンカードを隠している
役人の半分は紅顔(情婦)を囲っている」

 

霞山会が発行する中国研究誌『東亜』1月号に「習近平政権のネット世論政策」のテーマで小論を発表した。「習近平政権の全体像――改革の検証と今後の可能性」という壮大な(?)テーマには似つかわしくないものだが、2013年8月19日、習近平が全国思想宣伝工作会議で発表したいわゆる「8・19講話」が、政府に批判的な民間のネット世論への敵対心をあらわにし、その後本連載でも紹介したような厳しいネット世論弾圧へと広がっていった経緯を取り上げた。詳しくは『東亜』をご覧いただきたい。
さて、新しい年を迎えたが、中国当局はネット世論管理を緩めようとしないどころか、上からの思想宣伝をますます推し進めている。
 BBC(1月6日)によると、『人民日報』傘下の『環球時報』は6日、良き網民(ネット市民)は「五毛党」や「点賛党」にならねばならないとの文章を発表、網民の間で論議を呼んだ。
「『良き網民』はいかなる基準があるべきか」という題名のこの文章は、安徽省宣伝部の安軒平が執筆。「良き網民」は「民族的な感情を持ち、国を心から愛する」「責任を持ち、主流の価値観を積極的に伝える」「社会の良知を持ち、低級趣味に断固として反対する」「法を守る観念を持ち、ネット秩序を自ら守る」者だとした。
文章はまた、一部の党、政府幹部、理論・文化工作者はネットで実名を名乗ろうとせず、発言しない観客であることが多く、その結果「発言する者は非理性的、理性のあるものは発言しない」という極端な現象が起きているとした。
そして「中国の良き網民は、『五毛党』であるだけでなく、『点賛党』、さらに『自干五』でなければならない」とネット流行語を使って主張した。
この文章に対し、ネットでは議論が相次ぎ「良き網民とは、ゴマすりや阿諛追従、ひたすら共産党を讃えるのではなく、問題を指摘し、党の誤りを批判し、国や人民に提言することだ」「敢えて本当のことを言うのが真の網民だ」「自らの見方を持ち、言論の自由を理解する人だ」といった声が出た一方、「ネット上の言論は有効な管理を受けておらず、言論の自由ではなく鬱憤晴らしにすぎない」と『環球時報』を支持する声もあった。

 
   
     

ここで登場した「五毛党」は本コラムでも何度も取り上げているが、「点賛党」や「自干五」は聞きなれない言葉だ。「点賛」とはフェイスブックなどで「いいね!」を付けることであり、中国では微博などで政府や党に対し「いいね!」と肯定するネットユーザーのことだ。「自干五」とは最近ネットでしばしば登場する言葉で、正式には「自帯干粮的五毛(自ら食糧を持参して参戦する五毛党)」の略であり、政府寄りの言論をネットで発表したり、政府に批判的な人を罵倒したりする点では五毛党と共通するが、五毛党のようにお金目当てのネットユーザーではなく、報酬を求めず自らネットの論戦に参加する人たちをいう。
「自干五」に対して、反政府系の論陣を張るのが、「公知」と呼ばれるグループであり、かつて本コラムでも「公共知識人」として取り上げたことがあるが、現在では政府支持派からはマイナスの意味で使われることが多い(この問題については、いずれ詳しく取り上げたい)。
この「公知」と「自干五」の対立を象徴したのが、昨年秋に発生した香港の民主化運動、いわゆる「雨傘革命」だ。この運動をめぐり、中国国内では運動を支援する「公知」に対して、政府系メディアが「運動は完敗だった、カラー革命は香港や中国本土では起こりえない」と論陣を張った。カラー革命(中国では「顔色革命」)は90年代東欧などの旧共産圏で相次いだ民主化運動のことだが、中国新聞社は「国平」のペンネームで、「海外の一部では『雨傘革命』を『カラー革命』を並べて論じ、香港にカラー革命を起こして香港で騒乱を起こし、『一国両制度』を動揺させ、中国に難題を突きつけようとした。だがこのような目論見は幻想にすぎず、カラー革命が起きた国は経済が長期停滞し、人々の生活が困難で、社会矛盾が先鋭化しており、香港や中国本土はそのような土壌や環境にない」とした。(VOA報道による。)
「雨傘革命」を受け、『環球時報』は昨年12月「カラー革命は我々とどれだけ離れているか」という座談会を実施、学者と軍人の間で激論となった。
参加者のうち、鄧小平理論の研究者、中央社会主義学院の王占陽教授は体制内の穏和な自由派の学者だ。その他は中国の政府メディアやネット論壇で活躍する軍内のタカ派と反米、反普遍的価値を主張する毛沢東左派だった。
解放軍少将、中国国家安全論壇副秘書長の彭光謙は、「西側の敵対勢力は中国国内に(『公知』などの)代弁者を生み出し、一定の組織や社会的基盤を作り出した、カラー革命は中国では引火点と時機を欠いているにすぎない(いつ起きてもおかしくない)」と主張した。
これに対し王教授は、「中国は超大型国家で、外界の影響は少なく、所謂カラー革命を心配する必要はない。むしろ(汚職問題で失脚した)周永康、徐才厚などの腐敗分子が共産党を腐敗させる『黒色革命』が心配だ。もし中国の社会が清らかで、政治が民主的、人々が豊かなら、カラー革命を恐れる必要はあるだろうか。知識人を心配する必要はなく、『銃を持った腐敗分子』が最も恐ろしい」と指摘した。
王の発言は軍人らの反発を呼び、「王は軍隊を誹謗している」「党校の教授が共産党を信じていない」などと批判。王はこれに対し「反腐敗こそが社会主義であり、反腐敗をしなければあらゆる社会主義は偽物だ」と述べたが、さらにもう一人のタカ派少将は「われわれの核心的価値を侮辱する人間が党校や社会主義学院で教鞭をとっているのは、決して容認できない」と批判した。
この激論をきっかけに、中国である対聯(対句)が登場、網民から絶賛された。「満朝文武蔵緑卡 半壁江山養紅顔」、横批(結句)は「顔色革命」というもので、その意味は「朝廷では文官も武官もグリーンカードを隠している 役人の半分は紅顔(情婦)を囲っている」、その結果「カラー革命が起きるだろう」というもので、家族や資産を海外に移し、愛人を持っている「緑」「紅」に象徴される腐敗により、カラー革命が起きるだろうという痛烈な批判だ。
中国の自由派学者、喬木は香港メディア「東網」に寄稿したコラムで「満朝文武蔵緑卡」とは、中国の高官は普段は愛党や愛国、反米反西側化を口にするが、妻、子どもと財産を海外に移し、自らは「裸官」(本コラム参照)となって、グリーンカードを隠し持ち、いつでも逃げ出せる準備をしている。例えば失脚した薄煕来(元重慶市書記)は子供や妻を海外に住まわせ、フランスには別荘を持ちながら、国内では「唱紅打黒」(革命歌を合唱しマフィア勢力をたたく)のキャンペーンをやっていた、と手厳しく指摘した。
「半壁江山養紅顔」についても、喬木は薄熙来が「多くの女性たちと長期間関係を持った」、周永康(政治局元常務委員)が「長期間多くと姦通した」と指弾されるなど、「養紅顔」は多くの高官にとって当たり前のようになっていると批判した。


周帯魚同志を歓迎する
 

さらに、前回取り上げた周小平(「自干五」の代表)に対しても、痛烈なパフォーマンスがあった。ウェブサイト「中国数字時代」が紹介した顛末は次の通りだ。
1月9日、共産党主義青年団雲南省委員会の招待で周小平が昆明市を訪れ、ネット評論員(つまりは五毛党)養成講座で講演した時、2人の市民が会場で「周帯魚」(周のネットでのあだ名、前回コラム参照)の画像を掲げた。彼らはすぐに追い出されたが、数人の市民が外で「周小平同志が帯魚(タチウオ)の養殖技術伝授のため昆明を来訪したのを歓迎する」との横断幕を掲げた。
周の演説が終わり、質問時間になった時、ある中年の市民が立ち上がり「あなたは著名な愛国者だ。だが張春橋、姚文元(文化大革命の四人組のメンバー)のような愛国者は歴史の恥辱の柱に釘付けとなった。芮成鋼(元CCTVキャスター、本コラム参照)も高らかに愛国を語っていたが(汚職の疑いで)法の裁きを受けることになった。ならばあなたは自分を真の愛国者だとどのように位置づけるのか?」と問いただした。まったく予想しなかった質問に慌てた周は顔面蒼白となり黙ってしまったという。
帯魚を贈る主催者が質問を制限しようとしたが、今度は別の青年が立ち上がり質問を求めた。断られたため「質問させないなら、二匹のタチウオを献上する」と臭気を放つタチウオを持ち、周に無理やり渡そうとして、会場から追い出されたという。
さらにある中年男性が周に向かい、
「あなたは今ネットのイデオロギー管理をしなければ、その結果は予想できないほどひどいものになると語った。だが共産党や政府はテレビや新聞などあらゆるメディアを管理しているが、民間にわずかでも言論の自由を与えることはできないとでも言うのか?」と詰問、周と次のようなやりとりとなったという。

周 「それは管理であって統制ではない」

男性 「ネットのことではない、公民の合法的な報道や世論の自由だ」

周 「交通管理は交通管理局がする。歩行者自らすべきだと言うのか?」

男性 「議論をすり替えている。交通は当然関連部門が管理する。だが報道や世論の自由は公民の合法的権利であり、公民に任せるべきだ」

周 「現在世論の自由がないとでも言うのか?」

男性 「あるか?現在中国は民営の新聞、雑誌が一社でもあるか?」

周は最後に「訳が分からない」と怒り、現場を去ったという。

 
この写真が微博で公開されると、網民からは賞賛の声が起こり、「ユーモアや悪搞(パロディ)は虚言の仮面を取り除く」「民間の血気の多さは衰えていない」「皇帝はこんな詐欺師を持ちあげるなんて、頭がどうかしたのではないか」といった反響が相次ぎ、微博で「周帯魚」は検索禁止語句となった。
こうした動きは全体的な思想言論統制強化の中ではわずかな反抗にすぎないだろうが、網民の反骨精神が衰えていないことを知ることができる。楽観はできないものの、人々が言論の自由を守るため、ネットを駆使し「逆襲」にどう出るのか、引き続きウォッチしていきたい。
 
   

 

 

 


「網民」の反乱 ネットは中国を変えるか?
古畑康雄

 

   
 
古畑康雄・ジャーナリスト
   
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