一昨年知り合った中国人の出版関係者は何と自分で「日本茶の歴史」をまとめ、中国語での出版を試みようとしていた。だが彼は日本語が読めず、中国語で書かれた様々な情報の真偽を一々こちらに求めてくるので、正直途中で投げ出してしまった。そしてその中国語情報には唖然とさせられるものも少なくなかった。例えば「1991年発行の郵便切手に日本茶800年記念というものがあるので、日本茶の起源は1191年だな。国営だった郵便局発行だから確かだよな」などという、ぐうの音も出ない指摘もあった(一応日本茶の起源は遅くとも西暦800年頃となっている)。
なぜ彼がそんな無謀な出版を考えたかと言えば、実は「中国人は今、日本のことが知りたい。茶業関係者なら日本茶の歴史を知りたいはずだし、そこに歴史上既に消え去ってしまった中国を見つけ出せるかもしれないと思うから」との答えには成程と思うところがあった。
近年の世界的な抹茶ブームの中で、日本の茶業者が「あれは本来の抹茶ではなく緑茶を潰しただけのパウダーだ」というのを何度も聞いた。確かにそうかもしれないが、内輪だけで分かっていても、世界は勝手に動いてしまい、情報が間違っていても流れていく時代なのだ。日本人は日本のことを発信するのが何て苦手なのかと、つくづく残念に思ってしまう。
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