▼書店をひらくことになった経緯は?
―― 大学卒業後、ある金融系企業の広報担当として働いていました。宣伝活動やイベントの企画、翻訳などが主な仕事でした。
そのうちに、会社勤めもいいけれど、社会のために何かをしたいと考えるようになり、でも具体的なアイデアもないまま去年の春に会社を辞めたのです。こうした考えを持つようになったのは、香港の社会運動とも関係があるかもしれません。
学生時代は主に小売業でアルバイトをしていたので、接客は苦手ではありません。その中で、本好きな自分にできるのは、編集や本の流通よりも書店ではないかと思い至ったのです。それが退職した後――去年の5月。そして6月1日にこの書店をオープンすることができました。多くの物件を見て回りましたが、最初に案内されたのがここです。窓からの眺めが気に入りました。
▼このエリアに決めたわけは?
―― この地域―觀塘には独立書店はなく、通勤や買い物でやってくる人も多いので、ビジネスは成り立つだろうと考えたのです。実は私はこの街で育ちました。どこに何があるのかよく知っているので、客に書籍以外の情報を提供することもできます。
▼書店の名前や立ち上げ当時のことを教えてください
――当初は主に古本を扱う予定でした。店名の「夕拾x閒社」の「夕拾」は魯迅の作品『朝花夕拾』から取りました。古いものにも価値があるはずだという思いを込めて。店の半分は古本も含め、本屋としての空間です。「閒社」は窓側のオープンスペースでゆったりしてもらいたいという意味です。「Mellow Out」も、ここでリラックスしてほしいなと考えて付けました。
店の内装は、水や電気などは業者に任せましたが、床や壁の塗装は自分と仲間でやりました。壁のグレーは黒と白のペンキを自分で混ぜたのです。最初からグレーとして売られているペンキはとても高いので(笑)。入り口で靴を脱いでもらうのは、店名のようにここでリラックスしてほしいという気持ちもありますが、実は掃除をしやすくするためです(笑)。
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