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香港本屋めぐり 

 

 第8回 夕拾x閒社(ゼッサップ ハーンセー)
     
店主・シャロンさん
店主・シャロンさん
 

今回取材した夕拾x閒社(英語名Mellow Out)は2020年6月1日にオープンした新しい書店だ。店主のシャロンさん(27)が一人で切り盛りしている。九龍半島の観塘(グントン)エリアにある。ここはかつて工業地帯で、林立するビル内に大小様々な工場が入っていた。香港の工業が中国大陸に移転するに伴い、そうしたビルは、新しいオフィスビルに建て替えられたり、巨大なショッピングモールに生まれ変わったり、 或いはそのまま残り小規模な工場や倉庫として生きながらえたりしている。
夕拾x閒社はその中の、築40年になるビルの最上階にある。書店に行きつくためにはトラックなども出入りする入り口からビルに入り、貨物用と人用が並列するエレベーター・ホールに辿り着かなければならない。ビルの階下に書店の看板はなく、香港の独立書店の中でも最も見つけにくい1軒かもしれない。

ワンルーム構造の書店には靴を脱いで入る決まりになっている。入り口側に書架が並びレジがある。まさに本屋。他の香港の独立書店と同様、歴史書や哲学書が多い。その奥はオープンスペースでテーブルが並んでいる。窓からはビルの谷間の公園「InPark」の全貌を眺めることができる。その明るい空間でシャロンさんがインタビューに応じてくれた。  

     
     

書店のあるビル。中央。
書店のあるビル。中央。

 

▼書店をひらくことになった経緯は?

―― 大学卒業後、ある金融系企業の広報担当として働いていました。宣伝活動やイベントの企画、翻訳などが主な仕事でした。
そのうちに、会社勤めもいいけれど、社会のために何かをしたいと考えるようになり、でも具体的なアイデアもないまま去年の春に会社を辞めたのです。こうした考えを持つようになったのは、香港の社会運動とも関係があるかもしれません。

学生時代は主に小売業でアルバイトをしていたので、接客は苦手ではありません。その中で、本好きな自分にできるのは、編集や本の流通よりも書店ではないかと思い至ったのです。それが退職した後――去年の5月。そして6月1日にこの書店をオープンすることができました。多くの物件を見て回りましたが、最初に案内されたのがここです。窓からの眺めが気に入りました。

 

▼このエリアに決めたわけは?

―― この地域―觀塘には独立書店はなく、通勤や買い物でやってくる人も多いので、ビジネスは成り立つだろうと考えたのです。実は私はこの街で育ちました。どこに何があるのかよく知っているので、客に書籍以外の情報を提供することもできます。

▼書店の名前や立ち上げ当時のことを教えてください

――当初は主に古本を扱う予定でした。店名の「夕拾x閒社」の「夕拾」は魯迅の作品『朝花夕拾』から取りました。古いものにも価値があるはずだという思いを込めて。店の半分は古本も含め、本屋としての空間です。「閒社」は窓側のオープンスペースでゆったりしてもらいたいという意味です。「Mellow Out」も、ここでリラックスしてほしいなと考えて付けました。

店の内装は、水や電気などは業者に任せましたが、床や壁の塗装は自分と仲間でやりました。壁のグレーは黒と白のペンキを自分で混ぜたのです。最初からグレーとして売られているペンキはとても高いので(笑)。入り口で靴を脱いでもらうのは、店名のようにここでリラックスしてほしいという気持ちもありますが、実は掃除をしやすくするためです(笑)。

 

  

     
     

書店の「玄関」
書店の「玄関」

書店部分
書店部分

 

  

     

 

 

 

     

 オープンスペース(書架が並ぶ側から)
オープンスペース(書架が並ぶ側から)

「書券卵」(ガチャポン)
「書券卵」(ガチャポン)

 

▼店の半分はオープンスペースですね

―― このスペースは、本を買ってくれればテーブルなどを使っていただけます。本を買わなくても一定の料金で仕事でも読書でもしていただけますし、飲み物も提供します。
このスペースでは、コロナ禍で集合制限令が発令される前は、様々なイベントも行なっていました。未公開映画の先行上映会や手作りの講習会・哲学書の読書会など。制限が緩和されたらさらに活発に開催していきたいと思っています。

▼宣伝活動はどのように?
―― こうしたビルの上階にある店の宣伝活動としては、一般的にビラを配ったり、階下にロールアップバナーを出したりなどがありますが、それらは環境に優しくないですよね。この書店のPRは専らネットです。主にFacebookとインスタグラム。これを利用して本の注文も受けており、基本的に一人でやっているので、なかなか忙しいですよ。

▼この書店の1日を教えてください

―― 正午過ぎに店を開け、ネットで届いている注文をチェックします。出版社には17時以前に発注しなければならないので、まずこれを片付けます。新書が配送されれば整理して書架に並べます。また、そうした新書を読んで、その内容の概略をFBやインスタにあげます。また、香港のネットメディア『立場新聞』の「獨立書店 每周一書」のコーナーに、毎週書評を寄せています。閉店は21時頃。その日の売り上げを計算し、トイレ掃除もします。

▼客層はどうでしょう? 売れ筋は?

―― 20代〜30代が中心ですが、引退した大学教員や現役の教師も来てくれます。最近は中高生が多いのです。店の中央にあるガチャポンの「書券蛋」自販機に気付きましたか?
「書券蛋」(本のクーポン卵)とは、青少年の読書を後押ししたいと希望する大人がスポンサーになるシステムで、20から100香港ドル(約270~1380円)のクーポンに「出資」することができます。中高生は月に1回限り、5香港ドル(約70円)でガチャポンを買うことができ、中のクーポンの金額を書籍購入に充てられます。これが書店を訪れる中高生の増えている一つの要素かもしれませんね。
最も売れ行きのよいのは、香港で起こった事象を扱った本です。デパートのような大手書店とは異なり、私の書店ではテーマを絞っていきたいと思っています。

(取材日:2021年1月13日)

     
     
     

「書券卵」(ガチャポン)

 

▼今回訪ねた書店

夕拾x閒社(Mellow Out)
觀塘 駿業街60號 駿運工業大廈 14A
Facebook:https://www.facebook.com/mellowoutzzzz
Instagram:http://Instagram.com/mellowoutzzzz

▼シャロンさんのお薦め

『自由不是免費的』
著者:査建英・加藤嘉一
出版社:牛津大學出版社
ISBN:9789888718924


 

 

     
     
 

 

写真:大久保健、和泉日実子

▼筆者プロフィール
大久保健(おおくぼ・たけし)
1959年北海道生まれ。香港中文大学日本学及び日本語教育学修士課程修了、学位取得。
深圳・香港での企業内翻訳業務を経て、フリーランスの翻訳者。
日本語読者に紹介するべき良書はないかと香港の地元書籍に目配。

     
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