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微観中国  (18) 風刺漫画家、中国当局から「売国奴」のレッテル
   
     
 

 前回の本コラムで紹介した中国のネット風刺漫画家、変態辣椒(本名:王立銘)さんが、中国当局からネット活動を全面的に封殺された。
 変態辣椒さん夫婦は今年5月から、3カ月の予定で日本を訪問、大阪を拠点にネットでの漫画発表と、サイドビジネスとしての代理販売ビジネスをやっていた。ところが8月初め、新浪微博のアカウントと代理販売をやっていたオンラインショッピングサイト、淘宝網のアカウントが閉鎖された。
 以前紹介した著名ブロガーの五岳散人氏も、淘宝網で店を出しているが、微博で集めたフォロワーに、商品を紹介し代理販売するやり方をするブロガーが増えている。
 彼自身はネットで「時事漫画を書き続けていくために、代理販売ビジネスをやっていた」と説明していたが、8月初め、両方のアカウントがいずれも閉鎖されたのだ。
 事態を知ったのは、変態辣椒さんから来た次のメールがきっかけだった(原文は中国語)。

 
   
     

 「きょう午後、新浪に登録した『辣椒三舅』というアカウントが突然再び削除された。
 全く不思議で、このアカウントは別に敏感な内容を出していない。プーチンを風刺する漫画を出したほかは、日本での見聞を紹介しただけだ。
 おそらく自分のアカウントは厳しいレベルのブラックリストに入ったのだろう。新浪、騰訊の両方のアカウントが削除された。
 さらに、淘宝網で開いている店のパートナーから電話があり、私の店も閉鎖されたという。共産党は私に一切の生活の道を与えないというメッセージだろうか。
 21日に上海に帰ることを予定していたが、帰国すれば空港で身柄を拘束されるかもしれないと心配している。
 本当に困っている。自分の言論空間は徹底的になくなり、生活の手段も与えられない。無事に国に帰れるかどうかも分からない。
 もし今回は問題なかったとしても、次回中国を出ることができるだろうか。
 このような状況でどのようにしたらよいか。妻も非常に心配している。」

 

 当局は変態辣椒さんの生活手段を見抜いた上で、兵糧攻めに出たのだ。
 彼は日本にとどまらざるを得なくなり、また中国当局への抗議の意味も含め、香港の「占領中環」(セントラルを占領する)に反対する親中派デモを批判する漫画を発表した。中国各地から集められた「代表団」が毛沢東像を掲げ、高級ブランドのおみやげを手にしながら、「香港人に愛跪主義(跪くことを愛する)とはどういうことかお手本を示そう」とデモ行進している。これは実際に中国各地から食事やお車代付きで動員されたデモ参加者が毛沢東の画像を掲げて行進したことなどを椰揄している。
 すると当局は変態辣椒さんが微信で発表していた公共アカウントを閉鎖するだけでなく、人民網は18日「親日媚日の売国奴の真相を暴く」と批判する文章を発表、各サイトも掲載した。
 文章は、来日中の変態辣椒さんが「日本で出会った人はみな優しく礼儀正しく、喜んで人助けをする、1カ月以上の間、私は街角で喧嘩している人を見たことがなく、駅では会合を終えた人々がお辞儀し別れのあいさつをしているのを目にする。彼らは雷鋒(模範的な兵士)を知らないだろうが、人々の間はこのように互助友愛の関係があり、自分を善人と標榜する必要もなく、善人はどこにもいる」と書き込んだとし、日本の右翼勢力は度々揉め事を引き起こし、過去に隣国に危害を加えられた国民の感情を考えず、反省も謝罪もしない政権にどんな「善人や善行」があるのかと批判した。
 また7月7日は中国では盧溝橋事件の起きた記念日だが、太陽暦を採用する日本では七夕を祝っているので、(反日)愛国青年は手も足も出ないと書き込んだとして、「国恥記念日を七夕で祝うという侮辱的行為を変態辣椒は反感を持つどころかほめたたえ、愛国青年の国恥を忘れるなという愛国の感情を嘲笑するのは、自国の歴史を忘れた『変態』心理であり、どこに民族の自尊心と愛国心があるのか」と論じた。
 人民網はさらに「ネットも法外の地ではなく、いかなるネット市民も道徳や法律、国家利益など『7つのボトムライン』を守らなければならない」と主張、変態辣椒は微博で大量の親日媚日の言論を振りまき、道徳に違反し、ボトムラインを挑発する行為であり、関連部門は法に従って処罰すべきであるとしている。
 変態辣椒さんはラジオ・フリー・アジアの取材に次のように答えている。
 「今回の事件は非常にバカバカしく荒唐無稽だ。中国政府がこれだけ大きな国家の世論ツールを使って(自分という)1人の漫画家を標的にした。自分は日本に来たとはいえ、ちょっとした漫画や微博を発表したにすぎない。これはいずれも穏やかな内容で、日本政府の提灯持ちをしたこともない。なぜ自分が売国奴呼ばわりされるのか、自分は売国奴からは大きく離れている。当局はもし自分の漫画を批判したいのなら、自分の作品を持ちだして晒さねばならず、そうすれば彼らはまた嘲笑されるだろう。だから彼らはいわゆる愛国主義を持ち出し、売国奴と自分を罵ったのだろう。これは非常に見苦しいことで、文化大革命時代の文章の風格だ。」
 同様に中国当局からネット上の発言を封殺された超級屠夫氏はRFAの取材にこうコメントした。
 「インターネット登場後、当局の管理が追いつけない人々が突然現れた。当局は彼らを脅威に感じるようになり、気に入らない人間を各領域から何人か探し出した。例えば(人権派の)弁護士としてとても活躍していた浦志強弁護士だ。そこで彼らを始末し、見せしめとしたのだ。今重点はネットで影響力のある人物を封殺し、ネットでの影響力を押さえ込み、発言できなくし、人々が見ることができなくなれば、その目的は達したのだ」
 今後について変態辣椒さんは、しばらくビザを延長しつつ、日本などで活動する道を探していくことになる。
 当局の迫害を避け、海外に居を移すジャーナリストや活動家は多い。以前拙著で紹介した著名ジャーナリスト、長平氏もその鋭い言説ゆえ、当局から疎まれ、所属していた南方報業グループから排除され、やむなくドイツに移住した。
 だが海外で言論活動を続けていくのも様々な困難が伴う。RFA報道によれば、中国の著名な人権活動家で2010年ドイチェ・ヴェレ(DW、ドイツの声)中国語部に加わった蘇雨桐さん(女性)も19日、同放送局長により「反体制派の声」をやることはできないとして解雇された。
 蘇さんは北京で環境保護団体の責任者をつとめた人権活動家で、天安門事件への抗議活動に関わったため、自宅がしばしば捜索されるなど威嚇を受け、2010年ドイツへ移住し、DWの記者となり、中国の政治、人権問題を取り上げてきた。
 解雇のきっかけはDWがこのほど天安門事件について評論員Frank Sieren(沢林)が発表した文章だ。「1989年は新中国の歴史にとって一時的な停滞だった」とし、「西側が一方的に事件を誇張して描くことは何の助けにもならず、事件について沈黙する中国政府同様恥ずべきことだ」と主張した。
 蘇さん本人は、これは「(共産党の立場を代弁する)環球時報の風格だ」「共産党を謳歌している」と批判する文章を発表、「沢林は放送局幹部の支持を得て、事実に反する文章を発表した。中国を理解し中国の人権活動を支持する記者として、沢林の文章を受け入れることはできない」と主張した。蘇さんは沢林がまた、DWと協力し、中国で会社を設立、ビジネスを行おうとしていることなどを暴露した。
 6月にDW幹部は中国語部門スタッフに「反体制の声」をすることはできないと述べ、秘密を守るよう求めたが、蘇さんはこれを拒否し、これを暴露した。
 政治的理由で祖国を追われ、海外で生活していくのは困難な選択だが、帰国すればただちに逮捕され、他の「大V」同様、CCTV(中央テレビ)のニュース番組で罪を認めさせられ、数年の懲役刑を科せられるだろう。変態辣椒さん夫婦は当面日本での生活を望んでおり、支援の輪が広がることを友人としても望んでいる。

 
   

 

 

 

 


「網民」の反乱 ネットは中国を変えるか?
古畑康雄

 

   
 
古畑康雄・ジャーナリスト
   
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