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ネット用語から読み解く中国
 
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ネット用語から読み解く中国   (16) 「闢謡」(デマ封じ)
   
     
CCTV微博の倫理底線
CCTV微博の倫理底線
 

 香港でこの7月に「草根起義―従虚擬至真実(草の根の蜂起―バーチャルから現実へ)」という本が出版された。英語版は「Social Media Uprising in the Chinese-speaking World(中国語圏におけるソーシャルメディアの台頭)」の書名でキンドル(アマゾンの電子ブックリーダー)版が出版されている(表紙には芸術家、艾未未氏が描かれている)。キンドルを持っていない筆者は中国語の書籍版を読んでいるが、英文の題名通り、アジアの中国語圏でソーシャルメディアの役割が大きく高まっているという内容で、中国、香港、台湾、マカオ、シンガポール、マレーシアの事例がそれぞれ報告されている。

 

 

 
 
   
     

 その中で中国の状況について説明した、北京大学のネット研究者胡泳氏(本欄、2010年9月「推特」、2011年2月「囲観」、3月「五毛党」でも紹介している)は、中国のネット社会でここ数年起きた動きについて、以下のように説明している。
  「09年から10年にかけて、中国ネットの発言空間に微博(短文投稿サイト)の噴出的発展に伴い、全く新しい発言権の局面が現れた。新浪網のCEO(最高経営責任者)、曹国偉氏は『微博の出現は、ユーザーがいつでもどこでも(情報を)発信し、共有できる能力を持っただけでなく、自分のメディアのプラットフォームを通じてその内容を発信できるようになった』と述べている」
  「微博は徐々に中国社会に影響を与える無視することができない力となってきた。突発ニュースの優れた発信媒体であり、言論を表現する開放的なプラットフォームであり、政治参加の良好なツールであり、民衆が集団行動を組織するための欠くことのできないチャンネルだ」
  ただ、胡氏がこの文章を書いた時点では、7月23日の高速鉄道事故は起きていなかった。2011年に中国社会に最も影響を与えた事件はこの「7・23」事件であることは間違いないが、事件が微博の中国社会における役割を一段と高めたことも特筆すべきだ。
  事故から3日後の25日、「列車事故を追いかけるのに微博を見なければどうなる」というブログが掲載された。筆者で情報技術(IT)評論家の肩書を持つ陳永東氏は、今回の事故で、人々がなぜ情報源として微博に注目するようになったか、その理由を次のように挙げている。

  • 書き込みの数が爆発的に増加した:発生時刻の7月23日夜8時半ごろから、12時間で新浪微博への書き込みは110万件、24時間後には400万件に達した。その他の微博にも大量の書き込みがあった。
  • 微博の速報性が発揮された:7月23日8時27分、「暴風雨の後で、高速鉄道はどうしたのだろう。カタツムリのように遅い、何かあったのでは」という書き込みが現場からの情報発信第1号となった。このように突発事故で微博の速報性が明らかになった。
  • 微博は乗客の救助を呼び掛けた:8時47分、「助けてくれ!D301列車(注:D3115に追突した後続列車)が温州南駅近くで脱線した。車内は泣き声でいっぱいだ。作業員は誰も来ない。我々を助けてくれ!」この書き込みは11万回以上も転載され、のちにこの網友は感謝のメッセージを発信したという。

「微博は列車事故でその力を余すところなく発揮しただけでなく、多くの事件でこれまでのメディアが果たせなかった役割を果たしている。微博が中国で大きく育つことを願う。我々中国人は微博を必要としているのだ」とこの文章は結んでいる。
本コラムでもしばしば指摘したが、微博は「ツイッターもどき」、つまり中国での利用が事実上認められていないツイッターに変わるツールとして、中国政府公認の下で広まった。
微博では政治的に敏感な語句の書き込みや、検索した場合「関連法規により使用できません」と利用できないほか、民主活動家や当局に批判的なジャーナリストのアカウントはしばしば一方的に閉鎖される。
一方で中国の人気スターや日本の芸能人が数百万単位でフォロワーを集めるなど、単にゴシップや身の回りのつぶやきのみの、政治や社会問題とは無縁のネット空間だと私は考えていた。
  だが高速鉄道ではっきりしたことは、「微博のツイッター化」だ。つまり、ある社会問題について、もともとは全く無縁の人々がネット空間に情報を提供し、知識や感情を共有し、その結果強大な世論を作り出すと同時に、さまざまな困難に置かれている人々を助けようと呼び掛けるなど、いわばバーチャルな共同体を作る機能だ。
  筆者の友人の作家で日本研究者、劉檸氏も次のように語ってくれた。

 「商業メディアと比べ、微博が果たした役割はより目立っている。迅速だけでなく、質の高い情報が、真相の伝達に決定的な役割を果たした。事故発生後真っ先に真相が伝えられたことで、被害者や遺族に対して肯定的な世論が生まれ、邪悪な企て(注:真相隠しや拙速な幕引きなど)を牽制することができた」
 「今回の事件で、商業メディアによる“正義の共同体”というのが形成されたのなら、微博はそれを生む“酵母”となった」

 だが、好事魔多し、と言うべきか、微博の爆発的発展を脅威と感じた中国当局は、次々と規制を始めた。その中で盛んに喧伝されたのが「微博はデマの巣窟」であり、そのために「闢謡」(デマ封じ)が必要だという主張だ。
 先鞭を付けたのは中央テレビ(CCTV)だった。8月4日のニュース番組で「微博の倫理の底線はどこにあるのか?」というテーマを放送。「高速鉄道事故で生後100日の赤ちゃんが亡くなった」という書き込みに、多くのユーザーが同情しお金を送ったが、実は嘘だったという事例を紹介した。
  南方週末8月の報道によると新浪微博は2010年11月に「闢謡小組」を設置、当初7人だったこのグループは、東日本大震災や高速鉄道事故を受けて陣容を30人ほどに拡大、毎日大量の書き込みをチェックし、ユーザーからの投書に対応しているという。デマを流したとウェブサイト側が認めたユーザーはアカウントを削除され、さらには利用を止められる。
  10月1日法制ネットによると、国家インターネット情報弁公室の宣伝責任者は9月30日に談話を発表、ネット上で話題となった「若小安」事件をヤリ玉に挙げ、ネット管理部門とサイト管理者に対して、デマや虚偽の情報発信を厳格に取り締まるよう求めた。
  「若小安」事件とは、自称21歳の風俗嬢「若小安」がミニブログで、大学教授や有名人を含む3000人以上にサービスした売春の内幕を赤裸々に紹介して、16万人を超えるフォロワーを集めた事件だ。実は若小安という風俗嬢は実在せず、書き込んでいたのは31歳の妻子ある男性と判明。公安当局は社会秩序を乱したとしてこの男性に行政処分を課したという。
  デマ批判の次は「実名制導入」だ。北京日報は10月18日「信頼を失った微博は立脚できず」との評論を発表。
  評論は最近微博で多くのデマがはびこっているとし、「人身攻撃、社会を惑わすデマ、詐欺などがネット環境を汚染し、社会の秩序を乱している」とした。ただ、これらのデマは、微博取締りの口実のため故意に流されたという声もある。
  評論は微博が「デマや非主流の思想文化の集散地であり拡声器になっている」とし、「より有効なやり方で微博を管理するための根本的な措置は実名制の全面的な実施」であり、「これによりデマを退治し、法律や公共の利益に違反し、他人の利益を侵害する行為を直ちに処罰できる」と論じた。

 

今月のことば
闢謡(辟谣):デマ封じ

 

 

  10月中旬に開かれた共産党第17期中央委員会第6回総会(6中総会)では、「文化体制改革」が議題となり、25日に主要メディアが発表した総会の決定によると「加強対社交網絡和即時通信工具等的引導和管理、規範網上信息伝播秩序、培育文明理性的網絡環境」(ソーシャルネットワーク、インスタントメッセージなどのツールの指導と管理を強化し、ネット上の情報伝達の秩序を規範化し、文明、理性的なネット環境を養う)という文言が盛り込まれた。社交網絡と即時通信を融合したものが微博であり、微博管理が党の重要政策となったということを意味する。
  決定を受け、新浪、百度、騰訊など中国の主要ネット企業39社の会長、CEOら経営トップが11月3日から5日まで開催された、国家インターネット情報弁公室主催の研究会に参加。同弁公室の主任を兼務する国務院新聞弁公室の王晨主任が6中総会の決定に基づき、各ネット媒体の「管理強化」を要求した。各社首脳は「厳格に自らを律する」と誓約した。
  王晨主任は席上、各社に対し、「正確な動向を把握し、社会主義の先進的文化を全力で広げる」よう求めたほか、「法を守り、ネット技術の秩序ある発展」が必要だと指示した。各社とも要請に応じて、デマやポルノ、詐偽などの有害情報の拡大防止に努力する姿勢を示した。「社会主義の先進的文化」など空虚なスローガンに過ぎず、ネットで公開された写真を見ると、出席者は嫌々話を聴いているという印象を受ける。
  当局はこうして、デマを口実に実名化をちらつかせるなど、規制強化を進めてはいるが、微博そのものを止めろとはさすがに言っていない。大手2社(新浪網、騰訊網)がそれぞれ2億人以上のユーザーを抱えており、もはや不可能だろう。
  いずれにせよ、このような空虚なスローガンを振りかざしても、ネット市民の心をつかむことはできないだろう。前回「高鉄体」で紹介したような「信じようが信じまいが私は信じる」「これは奇跡だ」などと当局が説得力のない、事実を隠蔽するデマを流しているのだから。
  39ネット企業
39ネット企業

  著名なメディア研究者、中国人民大学の喩国明教授も「中国青年報」の取材に「微博闢謡」という問題のたて方そのものが誤りだと指摘する。
  「もしある事件に関する情報をたった一人が流したのなら、その人の身元や事件の真実性を疑わなければならない。だがある事件を多くの人が目撃し、同時に助けあって微博で情報を発信したら、異なる見方がお互いに補い合うことになる。だから私は『微博では人々はみな記者であり、真相解明のため発言権を持つ』と言っているのだ」

  >>>喻国明:“微博谣言”是个伪命题

 喩国明氏は一方で「買粉」と呼ばれるフォロワーの売買行為などは厳しく取り締まるべきだと述べているが、そのような問題については別の機会に紹介したい。
「看微博覚得社会矛盾激化到已無可救薬…、去菜場兜一圏発現生活還得継続、改革還得再進行一百年」(微博を見ると、社会矛盾がもはや手がつけられない状況だと感じる、食品売り場に行けば、生活を続けなければならないと分かる。改革はあと100年続けなければならない)9月13日の人民網「人民網評」に掲載された一文だという。
紹介した祝華新氏(人民網輿論観測室秘書長)はまれに見る誠実さと勇気を持って、今日の中国社会の激動ぶりを提起した、としている。

  >>>网络舆论倒逼中国改革

 祝氏は「ネットは中国政府の公共管理にとって未だない試練であると同時に、未だないチャンスでもある」と語る。必要なのは、デマ封じよりは、ネット社会との誠実な対話であることを呼びかける、喩氏や祝氏、さらに前述の胡氏らの発言を読むと、政府に近い人々の中にも、規制やスローガン一辺倒ではない理性的な声があると分かる。こうした人々が民間世論との仲立ちとなることで、ネット社会がより豊かに発展することを期待したい。

 

 

 

 

   
 
古畑康雄・ジャーナリスト
   
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