読書時間:1日あたり図書20分、携帯62分と大差
「全国国民閲読調査」報告は、1999年にスタートして今年で13回目。
中国の活字メディアを専門とする国家級研究機関「中国新聞出版研究院」が実施しており、ユネスコの世界図書・著作権デー(世界読書デー:4月23日)に合わせて、毎年この時期に発表されているものだ。
2015年の第13次調査は、全国29の省・自治区・直轄市で行われ、有効回答数は4万5911件(うち成人3万4344件)。また都市部と農村部の比率はおよそ3対1だった。
ちなみに、ここでいう読書(閲覧)率とは「年に1冊(紙)以上、図書または新聞・雑誌を読む人の割合」で、「成人」は18歳以上の人が対象とされた。
主な調査結果は、以下の通り。
【2015年の成人読書】
◆読書する人の割合
○ 図書の読書率 |
58.4% (+0.4ポイント=前年比、以下同じ) |
○ 新聞の閲覧率 |
45.7% (-9.4ポイント) |
○ 雑誌の閲覧率 |
34.6% (-5.7ポイント) |
○ デジタル化閲覧接触率 |
64.0% (+5.9ポイント) |
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(年に1回以上、電子メディアで読書をする人の割合) |
紙メディアによる読書率は、図書が微増だったものの、新聞・雑誌がのきなみ減少。
一方の電子メディア(パソコン、携帯電話、電子書籍リーダー、DVD、タブレット)による閲覧接触率は約6ポイント増と、デジタルメディアの躍進がより鮮明に現れた形となった。
また、上記の各メディア(紙とデジタル)を総合した成人の読書(閲覧)率は、2015年に79.6%で、前年比1ポイントの上昇だった。
◆どれだけ読むか
○ 図書の読書量 |
1人あたり年4.58冊 (+0.02冊) |
○ 新聞の閲覧量 |
1人あたり年54.76部 (-10.27部) |
○ 雑誌の閲覧量 |
1人あたり年4.91部 (-1.16部) |
○ 電子書籍の閲覧量 |
1人あたり年3.26冊 (+0.04冊) |
中国人の図書の読書量は近年、1人あたり年4冊台を推移。これは韓国(11冊)、フランス(8.4冊)、日本(8.4~8.5冊)、アメリカ(7冊)=『国際出版青書』=と比べて依然低い水準であることがわかる。
また、紙の書籍と電子書籍を足した読書(閲覧)量は、成人1人あたり年7.84冊で、前年比0.06冊の増加だったという。
◆読書時間の合計(1人あたり1日)
○ 図書の読書時間 |
19.69分 (+0.93分) |
○ 新聞の閲覧時間 |
17.01分 (-1.79分) |
○ 雑誌の閲覧時間 |
8.83分 (-4.59分) |
○ ネットへの接触 |
54.84分(-0.03分) ※ ほぼ横ばい |
○ 携帯・スマホ閲覧 |
62.21分(+28.39分) |
○ 「微信」閲覧 |
22.63分(+8.52分) |
○ タブレット接触 |
12.71分(+2.02分) |
○ 電子書籍リーダー |
6.82分(+3.03分) |
成人が1日のうちに読書する時間の合計を見ると、紙メディアがそれぞれ微増か減少しているのに対し、電子メディアはそれぞれほぼ横ばいか増加。
とくに紙の書籍(図書)が約20分であるのに対し、携帯・スマホでの閲覧は約62分と、図書の3倍にも上っている。しかも携帯・スマホでの閲覧は、前年比約30分の増加。1人あたり1日30分も増えているのは、携帯・スマホの普及はもちろん、中国人のデジタル機器への依存度が高まっていることがうかがえる。
◆デジタル派? 紙派?
年代別デジタル読書(閲覧)の割合
○ 18~29歳 |
38.6% |
○ 30~39歳 |
28.1% |
○ 40~49歳 |
21.1% |
○ 50~59歳 |
9.1% |
読書(閲覧)方法の傾向
(何で読書する傾向にあるか)
○ 紙の書籍 |
57.5% |
○ オンライン |
10.2% |
○ 携帯・スマホ |
27.0% |
○ 電子書籍リーダー |
4.1% |
○ ダウンロード+印刷 |
1.2% |
中国のデジタル閲覧接触者のうち、およそ9割が49歳以下の青年・中年世代だった。
一方で、読書傾向を聞いたものでは、紙の書籍に親しむ人が57.5%と「6割弱に上る」という結果も出ており、紙書籍と電子書籍が競合している状況もうかがえる。
また、同じ内容の紙版とデジタル版の図書であれば、デジタル派のうち37.2%の人が「電子版を購入する」傾向にあることも明らかになった。
いずれにしてもデジタルネイティブの増加が「紙も電子も」、または「紙から電子」へ、中国人の読書スタイルを変えつつあるのは間違いがなさそうだ。
◆自己評価:読書量は多い? 少ない?
○ 非常に多い |
1.2% |
○ わりと多い |
8.0% |
○ ふつう |
37.4% |
○ 少ない |
44.9% |
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※「非常に少ない」「わりと少ない」の合計 |
◆自己評価:読書状況への満足度
○ 満足している |
20.8% (前年比-5ポイント) ※「非常に満足」「わりと満足」の合計 |
○ 不満である |
17.4% (同 +1.1ポイント) ※「非常に不満」「わりと不満」の合計 |
○ ふつう |
48.5% |
読書に対する自己評価では、成人の約45%が「読書量が少ない」と感じており、同7割近く(67.3%)の人が「関係当局は、『読書祭り』など読書を推進するための活動をすべきだ」と望んでいることがわかった。
次の第14回調査では、どのような結果となるか? 紙とデジタルの競合のゆくえは?
今どきの中国人の読書傾向を、今後も見守っていきたいところだ。
※ 参照
○ 「北京便り」2013年5月号 「中国人の読書率54.9%、読書量4.39冊と微増 全国調査で」
○ 「東京便り」第18回(2015年6月号) 「第12次全国国民閲読調査、電子メディアが勢力伸ばす」
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