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日本ビジネス中国語学会
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アジアを茶旅して 

 

第1回 華語は共通語ではないの?
     


ペナンのお茶フェス 華人とインド系が茶談義

 

『茶』をキーワードに旅をする『茶旅』を始めてから来年で20年になる。これまでアジア専門に20数か国、数百の街を訪ね歩き、茶園、茶農家、茶市場、茶荘など様々な茶に関するものを見てきた。人々から『そんなにお茶が好きなんですか』とよく聞かれ、最初の内はあいまいに頷いていたが、最近でははっきりと『お茶はそれほど好きではない』と公言し始めている。

では一体何が好きで、会社まで辞めて旅をしているのかと言えば、それはずばり『旅』と『歴史』が好きだからだ。そして茶を通して、その国、その地域の、政治、経済、文化は勿論、人々の生活習慣からその歴史、更にはその国の農業政策まで見えてくる、とても便利なアイテムだと知っているからである。

ここ数年は台湾茶の歴史(中国茶も絡めた)を中心に、旅を続けているのだが、その中で台湾から東南アジアへ輸出された茶、および福建系を中心とした茶商の歴史に大いに興味を持ち、昨年はタイやミャンマーに出かけて茶商の末裔などを捜し歩いている。これにより、中国史、東南アジア各国史、そして華僑史を学び、その面白さに惹き付けられている。

 

     
     
     


イポー名物 煮麺

 

先日はタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアを2か月かけて回り、様々な新たな発見をしてきた。その中で、各国華人との接触から、面白い事象に出くわしたので、紹介してみたい。

     

マレーシアにイポーという街がある。ここに到着すると、殆ど初めての街なのに、なぜかホッとしてしまった。それはマレー系人口が多いこの国にあって、イポーは100年以上前、錫鉱山の労働者として中国系移民が沢山流入してできた街であり、70%が華人という特殊性をもち、街全体が中国的なのである。

実はそこはグルメの街でもあり、名物の煮麺を食べようと老夫婦が経営する食堂に入ると、夫人が広東語で話しかけてくる。華語で返事をすると、その返事は華語ではなく、流ちょうな英語だった。更に麺を食べるために持ってきた箸をわざわざ引っ込めて『あなたはこっちね』と言ってフォークを渡されたので本当にびっくりした。まさかタイ華人にでも間違えられたのだろうか。

イポーで他の華人に聞いたところ、『いつからとか、その理由は分からないけど、イポーでの華人の共通語は広東語だよ』とあっさり言われてしまう。更には『食堂や喫茶の店をやっているのは海南系が多いね』ともいう。そういう本人が海南系で、カレー麺という独特の麺を作っている食堂の3代目だった。また白珈琲もイポー発祥で海南系がやっているケースが多い。

これはイポーだけの話かと思ったら、クアラルンプール(以下、KL)の友人(福建系華人)の会社に行ってランチを食べた時にも、華人10人でテーブルを囲んだが、ボスが福建系であるにもかかわらず、共通語は広東語だった(隣同士では、福建、広東、海南などが飛びかっていたが)。しかも潮州料理の店なのに、そして全員華人なのに、食事はマレー式、フォークとスプーンで食べていた。これは一体どういうことだろうか。

当人たちに聞いても、『昔からそうだったから違和感はない』と言い、全員がマレー語、英語を含めて、5つ以上の言語を解していた。因みにマレーシアではKLとイポーでは広東語、ペナンなど北部では福建語が共通語として使われているようだ。ジョホールバルなど南部は、シンガポールの影響で華語が使われることが多い。インドネシアのスマトラ島、メダンでも共通語は福建語だと言っていた。このあたりの摩訶不思議な華人の使用言語と生活習慣について、もし先行研究があれば、是非参考として、今後更に調べていきたいところだ。


クランの老舗 肉骨茶
     


マレーシアの国民飲料 テ・タレ

 

さて、マレーシアの茶だが、その表記は『Teh』である。これは福建語からきていることは明白で、例えば最近日本でも知られるようになった『肉骨茶(バクテー)』の茶は『Cha』ではなく、『Teh』なのだ。これを見る限り、茶が当初は福建から渡来した、商った人間が福建系だったことは容易に想像がつく。

マレーシア肉骨茶発祥の地ともいわれるKL郊外のクランは貿易港であり、ここに茶が陸揚げされたはずだ。100年前は福建語が優勢だったかもしれないマレーシア中心部が、いつから広東語優勢となったのか、それは茶の歴史と共に、これから是非解き明かしていきたい課題だ。

因みにマレーシアの老舗茶商は、福建の烏龍茶や広西の六堡茶などを扱うだけでなく、紅茶粉の商売で収益を上げている。中国茶を飲むのは原則華人だけであり、人口比率の低下とその現地化から言って、その市場は決して大きくなかった。だが地元で『テ・タレ(The Tarik、拉茶)』と呼ばれるミルクティは、マレー系、インド系も飲むマレーシアの茶であり、この原料を扱わなければ生き残れなかった、という歴史がある。箸がフォークに変ったように、中国茶は既にテ・タレに取って代わられており、茶の世界の共通語も遥か昔に中国茶からテ・タレになっている。

     
     
    今回のおすすめ本
   

中國紀行 CKRM Vol.13

vol.13~15に須賀努さんが「タイの茶の歴史を求めて タイを旅する」を連載しています。

道教と東南アジア華人社会

第2部は東南アジア各地の道教施設(道観宮廟)や宗族に関係する施設(会館・宗堂)の見聞記で、道観・廟のガイドブックにもなっています。

     
     
 

 

須賀 努(すが つとむ)

1961年東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。コラムニスト/アジアンウオッチャー。金融機関で上海留学1年、台湾出向2年、香港9年、北京5年の駐在経験あり。現在はアジア各地をほっつき歩き、コラム執筆中。お茶をキーワードにした「茶旅」も敢行。
blog[アジア茶縁の旅]

     

 

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