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2006年11月  上海にも“自費出版”ブーム
   
   

sh200611_09日本の自費出版ブームが続いている。自費出版を請け負う碧天舎が今年3月に倒産したことが水を差したとはいえ、その動きがすっかり衰退したわけではない。インターネット時代に入り、これまで情報の受け手だった人々が新しいツールを手にして、表現・発表の意欲は高まるばかりだ。
自分の原稿を本にしたい――。そんな欲求は、ブログに人気が集まる中国とて同じ。最近上海でも、静かな"自費出版"ブームが起きている。

   
 

■1冊から請け負います

上海で“自費出版”を請け負うのは出版社や出版企画会社ではなく、超印速という印刷会社。印刷された本は書店の店頭に並ぶことはなく、あくまで印刷物の域を出ないから、厳密に言えば自費出版とは言えない。しかし、たとえ店頭に並ばなくても、自分の原稿を本という形として残したいという欲求は強い。超印速がこのサービスを初めてまだ3カ月余りだが、ネット上で申し込み、入稿、デザイン決定などが簡単にできる手軽さもあって人気を呼んでいる。『新聞晨報』によれば、申し込みをしてきた人は5,000人を超え、すでに印刷された本は400冊近いという。

さらに、1冊からでもOKという少量印刷や価格の手頃さも、人気を後押しする。書店に流通する本を出版するとなると、ほぼ四六判の大きさで約300ページのボリュームならば、書籍登録番号代金と編集・審査費で10,000~15,000元、デザイン諸費3,000元、紙・印刷・製本費13,000~15,000元、その他5,000元で、合計約40,000元はかかるという。上海市民の平均月収が3,000元と言われるなかで、一般市民がとても手を出せる金額ではない。10年ほど前に日本の研究者が上海で論文を書籍化するには2万元かかると言っていたが、物価の高騰でいまや4万元にまで跳ね上がっている。
また印刷サービスであれば、発行部数というハードルがない。出版物なら1冊でも5,000冊でも同じ価格になってしまうが、このサービスを利用すれば欲しいだけを1冊からオーダーできる。モノクロなら1ページ0.13元にソフトカバーの製本代18.2元、300ページのものならば計57.2元となる。10冊を注文しても70分の1の価格ですむ。

日本で出版されているジャンルは自分史や俳句・詩歌集などが主流で、世代は50、60代が多いと聞くが、上海ではブログをまとめたいという20、30代が最も多い。そのほかの世代を見ると、40、50代では企業管理の理念であるとか市場分析など経営者としての実績を残しておきたいというのが少なくないようだ。いかにも起業家精神旺盛な上海ならではということか。会社規模もさほど大きいわけではないだけに、押し出しも必要なわけで営業ツールや従業員教育として使われているのではないだろうか。60、70代の年配者になると自分史や家系に関するものなど。

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■自費出版のカモにされかねない日本人著者

日本では、ずさんな編集や高額で不透明な料金、表向きは共同出版という形をとっているように見せて実態は自費出版だった、など、さまざまな問題が指摘されている。上海の"自費出版"は明朗会計な印刷サービスなので、いまのところトラブルは起きていないようだ。日本で指摘されている問題に該当するものがあるとすれば、一部の日本語書籍の中国語版だろう。

中国語版書籍は、中国の出版社から日本の書籍の版権を取得したいと申し出るものばかりではない。日本側からの働きかけで翻訳が実現することもあるが、それなりの実績がある本でぜひとも我が社で中国語版を出したいと思わせるような本でなければ、商業出版の体裁は整えながらも内実は自費出版というケースもある。

中国人にとっての4万元は大金でも、日本の自費出版と比べれば安いもの。世界が注目する中国で中国語版も出したというのは、日本人として箔がつくという判断になるのだろうか。4万元にさらに、翻訳者への翻訳料金や日本出版社側への版権料まで払って中国語版を出版させようとする日本人の著者は存在する。しかし、今でこそ少しずつ変わってきてはいるものの、中国の出版業界には出版物を宣伝するという商習慣が定着はしていない。出版物の発売告知広告はないに等しく、新聞や雑誌のわずかな書評欄か、話題性でもって新聞社会面に取り上げられるなどしか手段がないことはご存知のとおり。よほどの(宣伝をかける価値のある)作品でない限り、出版されたら店頭に並べられて終わりという憂き目にあうことになるのである。契約前には笑顔で話し合っていた、出版後の記念講演会などについても「金を出すならセッティングしてやってもいいが」と言われる始末。
そんなはずじゃなかった――。中国人にしてやられた――。中国ビジネスの現場で耳にする落胆のため息がここでも聞こえてくる。しかし、翻訳に値する本であるなら、出版社を吟味して選択さえすればたとえどこであっても持ち出しばかりの自費出版にはならないはずである。

 須藤みか/上海在住フリーランスライター
日刊ゲンダイでの連載をまとめた
『上海発!新・中国的流儀70』
(講談社+α文庫)発売中!
ウェブでは、以下に連載中。
http://blog.5012.jp/nikkeiwoman/essay3/
http://blog.excite.co.jp/g-shanghai/
   
   
  『上海電視』11月26日号(上海書城、季風書園、思考楽書局など調べ)
     
   
1位 『美麗教主之変臉天書』
伊能静著 接力出版社
台湾の人気アイドル、伊能静による美容指南本。台湾で出版されたのは今年の9月。翌月には大陸でも簡体字版が出版された。


2位 『我的名字叫紅』
[トルコ]オルハン・パムク著 瀋志興訳 上海人民出版社

トルコ人作家として初めてノーベル文学賞を今年受賞したオルハン・パムクの代表作。舞台は16世紀末のイスタンブール、細密画師を主人公に文明間の衝突を描いた。9.11アメリカ同時多発テロの背景を示唆したことでも話題に。日本では、藤原書店から『わたしの名は紅(あか)』として出版されている。


3位 『伶人往事――写給不看劇的人看』
章詒和著 湖南文藝出版社

尚小雲、言慧珠、楊宝忠ら8人の名優たちの喜びや哀しみなど往時を綴った作品。ベストセラー『往時并不如烟』に続くもの。


4位 『生命的不可思議 胡因夢自伝』
胡因夢著 東方出版中心

35歳までの15年間、台湾の女優として活躍し、その後は一切の芸能活動をやめて文筆・翻訳活動に入った胡因夢の自伝。


5位 『東京奇譚集』
[日]村上春樹著 上海訳文出版社
昨年秋に出版された村上春樹の最新刊の中国語版。


6位 『大S美容随筆』
徐熙媛著 当代世界出版社
昨年ベストセラーになった『美容大王』に続く、大Sこと徐熙媛の美容指南本。


7位 『小S之懐孕日記』
徐熙娣著 安徽人民出版社

台湾の人気バラエティ番組「康熙来了」の司会者、小Sこと徐熙娣による妊娠日記。夫との出会い・結婚から、彼女が妊娠中に体験したさまざまな出来事や体が変化していく様子、さらに産後のダイエットにいたるまでを明るくユーモアまじりに綴っている。


8位 『在路上』
[米]ジャック・ケルアック著   王永年訳 上海訳文出版社
放浪体験をもとに書き上げたこの作品によって、ビート・ジェネレーションの代表作家として世界に知れ渡るようになった。アメリカ文学の原点とも言われる作品。日本では、河出書房新社から 『路上』として出版されている。


9位 『掃起落葉好過冬』
林達著 北京三聯出版社

『歴史深処的憂慮』『從邊縁看世界』など「近距離から見た米国」シリーズで一躍有名になった米国在住作家、林達の最新作。米国事情が主ではあるが、第5章には読書や見聞に関しての随筆も収録されており、これまでのシリーズとは趣を変えた作品集。


10位 『人生若只如初見』
安意如著 天津教育出版社

22歳の若い女性ならではの視点で解釈した、古代の詩詞の鑑賞本。鑑賞本にありがちな硬さがなく、若い女性らしい平易で美しい言葉での語りが、難解だと古代詩詞を敬遠していた若者たちにウケた。10万冊を売り上げる勢いで、同類本としては異例のヒットとなりそう。

 
     
 
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