喬木が指摘するように、小粉紅は政府のスローガンをそのまま受け入れ、愛国主義に踊らされた、歴史への多面的な理解を欠いた集団との 印象を受ける。 友人の風刺漫画家、変態辣椒もVOAの取材に「90後はこれまでと違う時代、すなわち中国が経済的に台頭する一方、ネットの高い壁を築いた時代に育った。その結果若者は盲目的、傲慢で自己満足するようになった」と指摘した。筆者が「小粉紅は現代版“義和団”か」と聞くと辣椒は「その通りだ」と答えた。
ただ、実際に彼ら(彼女ら)は何を考えているのだろうか。この問題について、香港のネットメディア「端伝媒」は「我翻墙,因为我爱国」で次のように伝えている。
中国の「知乎」(ウィキペディアのようなサイト)では、「小粉紅」は常識に欠け、行動が非常に粗暴な、愛国的でスターを追いかけ、ACG(アニメ、漫画、ゲーム)好きの少女だとしている。彼らの典型的な表現は、スターの追っかけと同様に国家指導者を賞賛し、中国の悪口をいう人には誰にでも集団で攻撃し、当局がGFWを設置し、言論の自由を制限していることを弁護する。そして現在自分たちが持っているもの(政治体制など)は最良であり、西側の民主は中国には合わないと主張する。
2004年にスタートした帝吧は、かつては高学歴でオリジナリティあるネットユーザーが社会現象や制度を風刺、娯楽精神のある内容を生み出し、「内涵貼(含蓄のある書き込み)」と呼ばれていた。帝吧のユーザーは10数年の間に2000万人に達したが、管理者の交替などから書き込みのレベルは下降をたどった。かつては「内涵貼」で知られた帝吧も今では愛国主義の旗を掲げ、対岸(台湾)で「洗版」をするよう呼び掛けたことに、かつての帝吧のユーザーはつらい思いをしている。
この記事で興味深いのは端伝媒が実際に3人の小粉紅にインタビューしたことだ。このうち「郝敏」という32歳の女性は武漢出身、北京で暮らすソフトウェアプログラマー。彼女は次のように語っている。
「自分も三立新聞のフェイスブックに書き込みをした。『三立が中国本土で売り出しているアイドルドラマをボイコットし、彼らの売り上げに影響を与えるべきだ』とか、『八栄八恥』(胡錦濤政権が提唱した、文明的な国家建設のための道徳スローガン、『国を愛することは名誉であり、国を害することは恥辱である』など)を貼り付けた」
「この活動に参加したきっかけは周子瑜事件。台湾メディアは集団でデマをばらまいた。どのメディアも台湾の人々に真相を語ろうとせず、台湾の友人が大陸人を誤解した時、本当に辛かった。私たちは16歳の女の子をいじめてはいない」
「帝吧の『洗版』のやり方が間違いとは言えない。これは若者の表現方式だ。私たち庶民は無力で、1本の書き込みであれだけの影響を生むことはできない。今回は私たちが台湾メディアに対し反論があると言いたかっただけ、台湾独立に反対する態度を表現したかっただけだ」
「100年近くの間、台湾と中国が一緒だった時間は非常に短い。台湾人の中国への誤解や不信任は理解でき、自分も寛容な態度でみている。長い時間をかけて統一に向けて努力すればよく、私は統一を急いではいない」
「自分自身もどうして愛国なのか分からない。ただ中国は古代世界第1の大国で、世界で最も豊かで科学技術が最も発達した国家だった、そのことに中国人として誇りに思っている。そして民族融合、民族統一への感情もあり、古代は分裂していたのが、やっとのことで人々は安定し平穏な暮らしを手に入れたのだから、安易に戦争は起きないだろう。私はただ完全な(統一された)国家を望んでいるのだ」
「歴史を学んだ時、もし私達の国に実力がなければ、外国は道理に合わないことをする。この世界には絶対的に公平な道理はなく、実力がなければ発言権はないのだ。もし弱小で遅れていたら発言権はなく、簡単に殴られてしまう」
「昨年11月、蔡英文のフェイスブックに『皆さんは台湾独立を支持しているのでしょうか。理性的な答えを待っています』と書き込んだところ、たった1人だが『大陸が1人1票の選挙権を持つ民主制度を実施したら、統一してもいい』と答えた。だが私は台湾の今の民主が真の民主だとは思わない。大陸の民主も模索しながら徐々に改善している。西側が提唱する民主は非常に理想化しており、地球上には真に実現していない」
「台湾人は選挙権を持っているかどうか、総統を批判できるか、デモができるかどうか、こうした権利に関心がある。だが今年GDPが増加したのか、指導者が一体真に価値のある利益をもたらしたのかなどあまり気にしていない」
「今回参加した人の一部は確かに素質が悪く、土地さえ手に入れれば人はいらない(前述)などと強硬なことを言い、相手の状況を理解せず、人々から嫌われるだろう」
「自分が翻墙を始めたのは2、3年前で、ニュージーランドに交換留学した時に知り合った友人と連絡するためだった。自分は国がどうしてネットを封鎖するのか分からなかったが、反感はなかった、なぜなら国内のウェブサイトは豊富で、翻墙する必要を感じなかったから。その後翻墙するようになって、かえって壁を設けるのか分かった。国外のメディアはあまりに自由で、一部はデタラメだからだ」
一方、広東に住む「丁丁」という22歳の女性は次のように答えている。
「参加した理由は交流したかったから。壁の外の人々に私たちはあなたたちが思うほど愚昧でも洗脳されているのでもないと知ってほしかった。今回参加した4000人以上のうち半分は初めて翻墙しただろう。彼らは壁の外のこれまで知らなかった事情を見て、もっと翻墙したいという願いを持つようになり、GFWが徐々に名ばかりになることを望んでいる」
「自分も高校生の時翻墙を始めた。当時壁の外には真実の世界があると思っていた。だがそこにも完全な真実はないと分かった」
「たとえ壁がなくても、多くの人の考え方は変わらないだろう。誰もが情報を得る時、自分が見たいと思うものを見る。台湾は壁がなくても、大陸の本当の生活を理解しようとしないだろう」
「私は台湾統一が当然のことだとは思わない、ただ統一を支持する立場に立っているだけだ」
「ずっと前に天安門事件についてのドキュメンタリーを見たことがあり、大いに心を打った。自分の態度は政府が彼らにしたことに謝罪し、抗争した人の名誉を回復することを望んでいる」
「民主は獲得しなければならない。少なくとも試してみるのもいいのではないか。ネット仲間の間で、中国に民主は必要なく、人々は習大大(習近平)を愛すると言うのを見て、気まずい気持ちになる。多くの人は自分で自分を欺いている。もし選挙権が与えられるなら、絶対にほしい。自分たちが現在持っていないので、自分たちには民主や選挙はいらないと言っている」
「だが私は中国の民主化問題が、台湾が統一を望まない原因とは思わない。我々が民主化しても、彼らは(統一は)一人あたりGDPが台湾を超えてからだと言うだろう。現状を変えることへの抵抗、統一後台湾の地位が下がり、自分たちの運命が他人に握られると思うのだろう」
「この国が良くないから愛さないというのは幼稚だ。自分はこの国の文化や観念を認めており、自分は中国人でありこの国に帰属感、アイデンティティを持っており、自然に愛国なのだろう」
「それに愛国でなければこの国では非常に疲れる。自分は楽な方を選んだ。この国は至る所に愛国愛党の宣伝があり、認めなければ居心地が悪い。さらに政治問題を語る時の基礎は愛国であり、愛国でなければ、対立する側へと追いやられてしまう」
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