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日本ビジネス中国語学会
 
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微観中国  (34)フェイスブックに「遠征」 ネット若者世代「小粉紅」
   
     

 

 先日都内の私立大学に務めるA先生のご好意で中国のインディペンデント映画「青年★趙」(杜海濱監督・原題は、少年★小趙)を見る機会があった。山形国際ドキュメンタリー映画祭でも上映されたこの作品は、世界遺産で知られる山西省の平遙で生まれた「90後」(1990年代生まれ)の若者「小趙」が主人公。2010年の尖閣諸島(中国名は釣魚島)付近での漁船衝突事件で日本政府が船長を逮捕したことに抗議する小趙は人民服を着て町中で中国の国旗を振り回し「船長を返せ」と愛国スローガンを叫ぶ。だが大学受験に失敗し、アルバイトしたホテルで、日本人客の礼儀正しさに感心するなど、日本への思いに変化が生じる。
 やがて合格した四川省成都市の大学では学生会の広報を担当、四川省の少数民族が住む貧困地区で中国語を教える学生ボランティア活動にも参加。途中の街で購入した中国国旗を貧しい学校の庭に掲揚し、国家を子どもたちに教える。
 だが故郷では地元政府の強引な再開発計画により、祖父母の家が破壊されるなど、地元権力者の腐敗などの現実にも直面し、愛国一辺倒だった彼の思想にも変化が生じていく―といった内容だ。

     
     
     


帝吧


行き先を間違えた
 

 この映画について興味を持ったのには理由がある。最近この「90後」のネットなどでの活動が盛んになっているからだ。89年の天安門事件を知らずに育ち、改革開放により経済が発展、世界第2の経済大国となった事に誇りを持つ彼らは、共産党政権が90年代に始めたナショナリズムを鼓吹する「愛国主義教育」で育ち、現政権、特に外交面での強硬姿勢を支持する傾向が強い。映画でも小趙は天安門事件について、「北京で学生がデモを行った。その結果学生はいい就職先が割り振られなかった」と語るなど、事件について真実が教えられていないと分かる。大学での愛国主義教育の場面もあり、教員が学生らに「誰が中華民族の悲惨な歴史を終わらせたか」「だれが今日の中国の天下泰平を導いたのか」「誰が中華民族の再び台頭する未来へと導くのか」と尋ね「それは中国共産党だ」と教えこむシーンが出てくる。
 文革や天安門事件などの政治的な動乱を知らず、経済的にも上の世代のような貧しさを体験せずに育った世代にとって、「中国はすばらしい」「共産党はすばらしい」という“信仰”が生まれるのも無理はない。その結果、自分たちの認識に合わない状況に対し、より直接的、攻撃的な行動を取るようになった。
 1月に行われた台湾総統選の直前に、韓国のアイドルグループのメンバーで台湾出身の周子瑜さんが台湾の「青天白日満地紅旗」を韓国のテレビ番組で掲げたとして、黄安という台湾出身の芸人が「台独(台湾独立派)」だとして微博で告発した。中国で批判が広がり、慌てたマネジメント会社は周子瑜に謝罪させる動画を公開した。
 これに対して台湾では周子瑜への同情と、「いたいけな少女を寄ってたかっていじめた」と大陸(中国本土)への反感が広がり、結果的に独立志向の民進党の蔡英文候補への支持が拡大した。この事件については、日本のメディアも取り上げた。
 こうした台湾世論の動きに反発した大陸のネットユーザーの間では、独立派とみなした政治家やメディアのフェイスブックに大量の書き込みをすることで攻撃しようという「遠征」作戦が企画、実行された。BBC中国語の報道などによると、次のような経過だ。
 「ネット軍」による攻撃は20日午後7時から始まり、ネット生中継用のフェイスブックアカウントを登録、大陸の網民はこのアカウントで「出陣の決意を表明」、彼らが反中国的とみなす「三立新聞」「苹果(りんご)日報」や蔡英文のフェイスブックを対象に定めた。

   
 

 攻撃を組織したのは、百度の貼吧(ネット掲示板)「帝吧」だ。元々は「李毅吧」と言われた。李毅は中国では有名なサッカー選手で、なぜ「帝吧」と呼ばれるようになったのかは、本コラム「吊絲」で以前紹介したことがある。
 「ネット軍」はGFW(ネット規制)で禁じられた国外のサイトへアクセスする「翻牆」(本コラム参照)用のソフトを使い、フェイスブックでアカウントを登録後、上記の3つのページに対し、「洗版式」(「洗版」とは短時間に重複する、無意味な内容を大量に書き込むことで、サイトをダウンさせること)の攻撃を行った。
 中でも最も被害が深刻だったのが蔡英文のページで、3時間以内に2万本近い書き込みがあり、その多くは罵倒などで、三立新聞や苹果日報も同様の書き込みがあった。
 これに対し民進党は「民主的で自由な台湾への訪問を歓迎する」とコメント、台湾は「言論の自由を100%保障する国家」であり、いかなる書き込みも削除しないとした。
 だが、多くの中国ネットユーザーにとり、初めて「翻牆」ソフトを用いて「壁の外」のネット世界を見たことは多くの笑い話を生んだ。例えば「三立新聞」を攻撃しようとしたあるネット市民は誤って「三立娯楽」を訪問。「初めて翻牆したので間違ったところに来てしまった」という中国のネットユーザーに、三立娯楽の担当者は「だれにも初めてということがある」とユーモアや思いやりがあるコメントしたという。

     
 

この「遠征」の中心となったのが「小粉紅」といわれる若いネットユーザーだ。彼ら(彼女ら)はどのようなグループか?北京のメディア研究者、 喬木は香港メディア「東方日報」のコラム「小粉红让谁高兴」(小粉紅を喜ぶのは誰か?)で次のように指摘した。

 小粉紅は90後が多く、基本的には大学生、大学院生、あるいは社会に出て間もない青年だ。彼らは中国が最も良い時代に生まれ、50~60年代生まれのような飢餓や欠乏を体験していない。また70~80年代生まれのような改革開放後の思想の衝撃、(天安門事件が発生した)89年前後のような政治的洗礼も受けていない。彼らは国家が強盛になったのを見てきただけ(実際には政府が豊かになったのだが)で、国家の利益と民族の誇りという広大な物語に熱中し、(文化大革命などの=筆者注)歴史の曲折、個人の権利の重要性、家族を養う庶民の苦難を理解していない。
小粉紅は強い愛国心を持つが、多くの書き込みは台湾問題の歴史と現状を理解していない。中華民国の国旗は台独と考え、さらには「中華民国」の名称は「中華人民共和国」から取った(注:それゆえ独立する資格がない)などと考えている。彼らは台湾の民主の発展、政治的な違いが引き起こす統一と独立の争いについて、理解しないし理解しようともしない。「1つの中国」や「台湾は中国の一部」という政治的スローガンを単純に繰り返すだけで、台湾独立派に対し「台湾問題は武力で解決」、「(台湾の)土地さえ手に入れば人はいらない」、「台湾は大陸から恩恵を受けている」といった大言壮語をするのである。
翻牆は中国では違法だが、彼らの言動は民族主義の表れとして、政府の放任、利用、後押しがあったことを証明している。
例えば人民日報、環球時報、共青団中央などの公式微博は今回のネット出征について、「90後、君たちを信じている。中国は自信にあふれた世代を迎えた、彼らは自信満々と闊歩し、自由奔放に行動する。もし我々が自身を持ち、大きく前に踏み出せば、台湾独立派は歴史の足元に踏みつけられるだろう」などと書いた。
政府の後押しには明らかに別の狙いもある。共産主義のイデオロギーは若者の間にはもはや影響力がなく、一方(民主、自由などの)普遍的価値は西側の陰謀と批判を受けており、こうした中で民族主義は再び(思想的)空白を埋めている。ここ数年、反米デモ、反フランスのカルフールボイコット、反日の打ち壊し、さらに今回の「反台独遠征」まで、民族主義は最も効果のある政治的動員であり、人々の気持ちを集め、矛盾を転嫁する強心剤だ。

     
   

 喬木が指摘するように、小粉紅は政府のスローガンをそのまま受け入れ、愛国主義に踊らされた、歴史への多面的な理解を欠いた集団との 印象を受ける。 友人の風刺漫画家、変態辣椒もVOAの取材に「90後はこれまでと違う時代、すなわち中国が経済的に台頭する一方、ネットの高い壁を築いた時代に育った。その結果若者は盲目的、傲慢で自己満足するようになった」と指摘した。筆者が「小粉紅は現代版“義和団”か」と聞くと辣椒は「その通りだ」と答えた。

 ただ、実際に彼ら(彼女ら)は何を考えているのだろうか。この問題について、香港のネットメディア「端伝媒」は「我翻墙,因为我爱国」で次のように伝えている。

中国の「知乎」(ウィキペディアのようなサイト)では、「小粉紅」は常識に欠け、行動が非常に粗暴な、愛国的でスターを追いかけ、ACG(アニメ、漫画、ゲーム)好きの少女だとしている。彼らの典型的な表現は、スターの追っかけと同様に国家指導者を賞賛し、中国の悪口をいう人には誰にでも集団で攻撃し、当局がGFWを設置し、言論の自由を制限していることを弁護する。そして現在自分たちが持っているもの(政治体制など)は最良であり、西側の民主は中国には合わないと主張する。
2004年にスタートした帝吧は、かつては高学歴でオリジナリティあるネットユーザーが社会現象や制度を風刺、娯楽精神のある内容を生み出し、「内涵貼(含蓄のある書き込み)」と呼ばれていた。帝吧のユーザーは10数年の間に2000万人に達したが、管理者の交替などから書き込みのレベルは下降をたどった。かつては「内涵貼」で知られた帝吧も今では愛国主義の旗を掲げ、対岸(台湾)で「洗版」をするよう呼び掛けたことに、かつての帝吧のユーザーはつらい思いをしている。

 この記事で興味深いのは端伝媒が実際に3人の小粉紅にインタビューしたことだ。このうち「郝敏」という32歳の女性は武漢出身、北京で暮らすソフトウェアプログラマー。彼女は次のように語っている。

「自分も三立新聞のフェイスブックに書き込みをした。『三立が中国本土で売り出しているアイドルドラマをボイコットし、彼らの売り上げに影響を与えるべきだ』とか、『八栄八恥』(胡錦濤政権が提唱した、文明的な国家建設のための道徳スローガン、『国を愛することは名誉であり、国を害することは恥辱である』など)を貼り付けた」
「この活動に参加したきっかけは周子瑜事件。台湾メディアは集団でデマをばらまいた。どのメディアも台湾の人々に真相を語ろうとせず、台湾の友人が大陸人を誤解した時、本当に辛かった。私たちは16歳の女の子をいじめてはいない」
「帝吧の『洗版』のやり方が間違いとは言えない。これは若者の表現方式だ。私たち庶民は無力で、1本の書き込みであれだけの影響を生むことはできない。今回は私たちが台湾メディアに対し反論があると言いたかっただけ、台湾独立に反対する態度を表現したかっただけだ」
「100年近くの間、台湾と中国が一緒だった時間は非常に短い。台湾人の中国への誤解や不信任は理解でき、自分も寛容な態度でみている。長い時間をかけて統一に向けて努力すればよく、私は統一を急いではいない」
「自分自身もどうして愛国なのか分からない。ただ中国は古代世界第1の大国で、世界で最も豊かで科学技術が最も発達した国家だった、そのことに中国人として誇りに思っている。そして民族融合、民族統一への感情もあり、古代は分裂していたのが、やっとのことで人々は安定し平穏な暮らしを手に入れたのだから、安易に戦争は起きないだろう。私はただ完全な(統一された)国家を望んでいるのだ」
「歴史を学んだ時、もし私達の国に実力がなければ、外国は道理に合わないことをする。この世界には絶対的に公平な道理はなく、実力がなければ発言権はないのだ。もし弱小で遅れていたら発言権はなく、簡単に殴られてしまう」
「昨年11月、蔡英文のフェイスブックに『皆さんは台湾独立を支持しているのでしょうか。理性的な答えを待っています』と書き込んだところ、たった1人だが『大陸が1人1票の選挙権を持つ民主制度を実施したら、統一してもいい』と答えた。だが私は台湾の今の民主が真の民主だとは思わない。大陸の民主も模索しながら徐々に改善している。西側が提唱する民主は非常に理想化しており、地球上には真に実現していない」
「台湾人は選挙権を持っているかどうか、総統を批判できるか、デモができるかどうか、こうした権利に関心がある。だが今年GDPが増加したのか、指導者が一体真に価値のある利益をもたらしたのかなどあまり気にしていない」
「今回参加した人の一部は確かに素質が悪く、土地さえ手に入れれば人はいらない(前述)などと強硬なことを言い、相手の状況を理解せず、人々から嫌われるだろう」
「自分が翻墙を始めたのは2、3年前で、ニュージーランドに交換留学した時に知り合った友人と連絡するためだった。自分は国がどうしてネットを封鎖するのか分からなかったが、反感はなかった、なぜなら国内のウェブサイトは豊富で、翻墙する必要を感じなかったから。その後翻墙するようになって、かえって壁を設けるのか分かった。国外のメディアはあまりに自由で、一部はデタラメだからだ」

一方、広東に住む「丁丁」という22歳の女性は次のように答えている。

「参加した理由は交流したかったから。壁の外の人々に私たちはあなたたちが思うほど愚昧でも洗脳されているのでもないと知ってほしかった。今回参加した4000人以上のうち半分は初めて翻墙しただろう。彼らは壁の外のこれまで知らなかった事情を見て、もっと翻墙したいという願いを持つようになり、GFWが徐々に名ばかりになることを望んでいる」
「自分も高校生の時翻墙を始めた。当時壁の外には真実の世界があると思っていた。だがそこにも完全な真実はないと分かった」
「たとえ壁がなくても、多くの人の考え方は変わらないだろう。誰もが情報を得る時、自分が見たいと思うものを見る。台湾は壁がなくても、大陸の本当の生活を理解しようとしないだろう」
「私は台湾統一が当然のことだとは思わない、ただ統一を支持する立場に立っているだけだ」
「ずっと前に天安門事件についてのドキュメンタリーを見たことがあり、大いに心を打った。自分の態度は政府が彼らにしたことに謝罪し、抗争した人の名誉を回復することを望んでいる」
「民主は獲得しなければならない。少なくとも試してみるのもいいのではないか。ネット仲間の間で、中国に民主は必要なく、人々は習大大(習近平)を愛すると言うのを見て、気まずい気持ちになる。多くの人は自分で自分を欺いている。もし選挙権が与えられるなら、絶対にほしい。自分たちが現在持っていないので、自分たちには民主や選挙はいらないと言っている」
「だが私は中国の民主化問題が、台湾が統一を望まない原因とは思わない。我々が民主化しても、彼らは(統一は)一人あたりGDPが台湾を超えてからだと言うだろう。現状を変えることへの抵抗、統一後台湾の地位が下がり、自分たちの運命が他人に握られると思うのだろう」
「この国が良くないから愛さないというのは幼稚だ。自分はこの国の文化や観念を認めており、自分は中国人でありこの国に帰属感、アイデンティティを持っており、自然に愛国なのだろう」
「それに愛国でなければこの国では非常に疲れる。自分は楽な方を選んだ。この国は至る所に愛国愛党の宣伝があり、認めなければ居心地が悪い。さらに政治問題を語る時の基礎は愛国であり、愛国でなければ、対立する側へと追いやられてしまう」

 

     
   

2人の発言を比べて、郝敏の方がより中国政府の愛国主義教育の信奉者だとの印象を受ける。これに対し丁丁は「自分も自然な愛国者だ」と言いつつも、「民主を獲得しなければならない」と述べるなど、民主的価値観への賛同もみられ、香港や台湾で起きた民主化運動の影響も受けているのではないだろうか。
 さらに今回の遠征について、単なる愛国者の馬鹿騒ぎではなく、中台両岸の若者が共通する話題について意見を交わすなどの意義があったとの指摘もあった。騰訊(テンセント)のオンラインマガジン「大家」に掲載されたコラム「不打不相识的两岸年轻一代(喧嘩して初めて分かり合う両岸の若者世代)」という文章は、今回の事件がきっかけで、両岸の交流が深まったと次のように指摘している。

 今回の「大戦」では収集のつかない暴民の戦場は出現せず、「和理非非」(「和平、理性、非暴力、非粗口」平和、理性、非暴力、粗暴な言葉でない)で終わった。それゆえ次のような指摘、つまりお互い何もなかったのは真の対話が生まれなかったためで、お互いが好きなことを言って騒ぎ、相互理解は生まれなかったという声もあった。
だが本当にそうだろうか。このような結論を言う人はそもそも両岸の若者の対話方式を理解しておらず、さらに両岸の90後が何に関心があるのか分かっていない。次に政治的な価値を高く見積りすぎており、生活の力を軽んじている。
今回多くの「遠征者」はフェイスブックで「帝吧大軍根拠地」「帝吧中央集団軍」などグループを立ち上げたが、興味深いのは多くの台湾の住民もこのグループに参加したことだ。相互攻撃はたちまち相互質問へと代わり、「陸陸」と「湾湾」という愛称でお互いを呼び合い、統一と独立の問題は急速に熱が下がり、それに代わったのが天地を覆い尽くすような好奇心―その多くは台湾の住民により提起されたものだった。
「湾湾」は「陸陸」に多くの問題を投げかけた。中には「陸陸の公衆トイレには本当に扉がないのか」「陸陸は日本を恨んでいるのか」など紋切り型の古臭い印象のものもあった。だがより多かったのは大陸の文化や生活の細部への具体的な問題だった。「大陸では地下鉄に乗る前にカバンのX線検査が必要だというが本当か」「ドラマの康熙王朝はなぜ大陸でこれほど人気が出たのか」などで、1つ1つの質問には数十から数百の回答があり、さらに「大陸ではどこで遊ぶのが楽しい?」「大陸の人はネットで何をしているの」など飲食や遊びなど軽い話題に広がった。
これだけ多くの疑問が発せられたのは、真に相手を理解する機会が少ないからだ。(両岸の若者がネットを通じて知り合った)これこそ、「ネット大戦」がもたらした両岸の網民の真の交流だ。彼らの共通点は若く、台湾の若者は実際の生活の中で大陸の人と交流したことがなく、大陸への理解や見方も、国民党や民進党、さらに教育やネットで得たもので、対岸の同世代が自ら語ったものではなかった。
さらに重要なのは、台湾の若者にせよ、大陸の若者にせよ、若者がネットや生活の現実の中で最も関心を持つのは政治ではなく、生活そのもの、衣食住であり、美味しいものや楽しいもの、個人旅行の攻略法、人気のあるテレビドラマ、ネット流行語、各種の表情包(SNSのスタンプなど)であって、両岸が戦争をやるかどうかといったことでは全くないのだ。
実は我々は台湾独立を心配する必要はない。重要なのは我々が相手を十分に理解していないことだ。独立や統一について我々は語る資格はない。国民の交流をしっかりやり、相互理解することが、我々ができる唯一のことだ。

     
     この文章も指摘していたが、こうした交流はやはり同じ中国語文化圏に属する中台両岸だからこそできることだ。両岸の若者が今回の「ネット大戦」をきっかけに交流が深まることで、お互いの国や政府に対する紋切り型の見方も変化するのではないだろうか。今回の事件後、中国の友人からはフェイスブックの接続が難しくなったと連絡があった。両岸の若者が真の交流をすることで、愛国教育の“洗脳”とは異なる新たな見方が90後の間に生まれるのを当局は恐れているからだろうか。
 
   

 

 

 


「網民」の反乱 ネットは中国を変えるか?
古畑康雄

 

   
 
古畑康雄・ジャーナリスト
   
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