さて、今回紹介する「Hold住」は、中国メディアなどでは昨年(2011年)最大の流行語と言われている。この英語と漢字の奇妙な組み合わせは、中国語の伝統から言えば明らかに異端だ。カタカナで外来語を表記できる日本語と違い、中国語は19世紀からネット時代の今日まで、漢字によりその意味を解釈し外来語を表記してきた。19世紀には電話を「徳律風」(テレフォン)と表記した(その後日本で作られた「電話」に置き換えられた)例もあるが、例えば原題でも「互聯網」「硬盤」「内部存儲器(内存)」など日本語なら「インターネット」「ハードディスク」「メモリ」などとするところをその意味を踏まえた漢字に置き換えている。
とはいえ、例えばIT関係では「BP機」(ポケベル)「U盤」(USBメモリ)の様に、英中混合の言葉も登場しているし、「派対」(パーティ)「秀」(ショー)のような音訳や、「cosplay」(コスプレ)の様に直接英語で表記する言葉も最近では登場。中国国内でも外資企業のホワイトカラーの間で「在Office加班」「穿得够Fashion」などの言葉が使われているという。国際化に加え、教育水準の向上に伴い英語が日常語彙にも広がっているのだろう。
さて、この「Hold住」が流行したのは、昨年夏に台湾で放送された娯楽番組「大学生了没」がきっかけだ。「Miss Lin」というフランスでファッションを学んだと自称する女性がバスでの通勤やパーティに参加する様子などをコミカルに演じ、動画サイトで中国でも人気に火がついた。Miss Linは「Not fashion!」(流行じゃない、格好悪い)などと奇妙な英語を交えながら、海辺のパーティに参加しようとビキニを持ってきたら、清朝パーティ(?)だと分かり、慌てずに胸につけていたビキニのブラジャーを頭にかぶって清朝の「格格」(王女)に変身(!)という抱腹絶倒のギャグを披露した。この時に彼女が「大丈夫、この状況を私はコントロールできるわ」の意味で「整個場面我Hold住」という言葉を使った。このコントの動画は以下で見られる。
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今回のことば
Hold住:台湾のお笑い番組をきっかけに広がった言葉で、「様々な状況に冷静さを失わず、自信を持ち、一切に対応できる」という意味。
「唱紅打黒」:「革命歌を歌い、マフィアを取り締まる」重慶市の薄煕来・前書記が在任中に提唱したキャンペーン。薄氏の知名度を高めた半面、多くの冤罪を生んだとされ、結果的に薄氏は政治生命を失うことになった。
神馬都是浮雲:本文参照
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