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ネット用語から読み解く中国
 
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2013年06月

 負け組「屌絲」のネット小説が話題に
  17K小説網

   
   

「17K小説網」に登場した「屌絲」コーナー中国で近年はやりのインターネットスラング「屌絲」(ディアオスー)が文化になった!?
屌絲とは、あえて訳せば自嘲気味にいう「負け組」や「ダメ人間」ほどの意味になるが、この負け組にフォーカスを当てた若者向けのネット小説が静かな話題を呼んでいる。
中国の有名なネット文学サイト「17K小説網」(http://www.17k.com/)がこのほど新設した、その名も「屌絲」コーナーだ(http://diaosi.17k.com/)。

広くネットユーザーらから公募した屌絲をテーマとする小説を多数掲載。評判の小説になると、連載スタートからわずか2週間ほどで約100万人のアクセスがあり、定番の小説ジャンルのファンタジーやSF、武侠、学園ものにも引けを取らない人気ぶりだ。
屌絲コーナーを引っさげた17K小説網は、ユーザーたちから「初の屌絲小説サイト」「屌絲小説の代弁者」などと称賛されており、新しいサブカルチャーの発信源として期待が寄せられている。

   
 

■意外と普通な?屌絲たち

ネット用語の屌絲()は、ほかに「吊絲」「吊死」「叼絲」などとも表記される。もともとは男性性器の陰毛のことを指しており、中国南部の広東省辺りでは人をののしったり、嘲笑したり、またはジョークをいったりする時に使われる俗語だった(百度百科)。
それが転じて近年では、ネットユーザーらが自嘲やユーモア、皮肉の意味を込めて使う流行語となっている。
対象となるタイプとしては、中国語でいう「高富帥」(背が高く、裕福で、イケメン)とは正反対となる「矮窮丑」(背が低く、貧しく、ブサメン=不細工)な人。とくに農村部から大都市に出てきたものの、経済格差の問題などからマイホームもマイカーも買えないような貧しい若者のことを示している。

とはいっても屌絲という言葉本来の意味や音の響きからか? それは深刻なののしり言葉というよりも自嘲や自虐のギャグの一種として使われることが多いようだ。対象とする範囲も男性のみならず広がっており、とくに男女を区別する場合は「男屌絲」「女屌絲」などといわれる。

ちなみに中国版ツイッターの「微博」で先ごろ話題になった「2013年男女屌絲」の新規準は、男性が、①手持ちの現金が1000元(1元は約16円)を超えない ②婚前ガールフレンドが3人を超えない ③(1箱)20元以下のタバコを吸う ④10万元以下の車に乗る ⑤ビールと白酒(中国の蒸留酒)しか飲まない……。
女性が、①ビキニを買ったことがない ②(ヒールが)5センチ以上の靴を履いたことがない ③ヘアスタイルを半年以上変えない ④5カ月以上ダイエットをしている ⑤男性の後ろを歩くのが好き……など。
こうして見ると、意外と普通でどこにでもいそうなタイプばかりだ(筆者もかなり当てはまるかも……汗)。
普遍的な特性だからこそ、身近な屌絲に共鳴したり、親近感を寄せたりする若者が増えているのかもしれない。

「屌絲(吊絲)」については、【ネット用語から読み解く中国(21) 「吊絲」】に詳細な解説があります。
 

■白タク運転手から蒼老師まで

中国の最新トレンドを左右する「80後、90後」(1980~90年代生まれ)の若者に多く、一説には13億人口の約4割を占める潜在力があるといわれる屌絲たち(中国網)。
この若者文化に注目し、中国で初めて小説ジャンルの1つに屌絲コーナーを新設したのが、オリジナルの国産小説を収める大手ネット文学サイトの「17K(一起看)小説網」(一緒に読む小説サイト)だ。

2013年3月に屌絲をテーマにした小説を一般公募したところ、短時間のうちに1000本を超える作品が寄せられた。その後、5月末時点では400本余りの作品が連載を続けている。
同コーナーはさらに、テーマ別に「屌絲生涯」「屌絲情縁(恋愛、愛情)」「屌絲逆襲」「屌絲幻想(ファンタジー)」という4つのカテゴリーに分類されている。

人気作品「匹夫的逆襲」のページネット小説作家、驍騎校さんの「匹夫的逆襲」(凡人の逆襲)は人気作品の1つ。屌絲タイプの白タク運転手・劉漢東が、自ら努力を重ねることで人生を好転させようとする硬派なヒューマン・ストーリーだ。
 http://www.17k.com/book/492248.html 

連載スタートからわずか2週間ほどで約100万人がアクセスしており、評判も上々。驍騎校さんはファンたちに「屌絲の父」と尊称されている。

目を引くものでは、大大湿胸(「大師兄」の意味)さんの作品「与蒼老師同居的日子」(蒼先生と同居する日々/コンテンツは一部有料)がある。
 http://www.17k.com/book/488019.html 

「蒼老師」といえば思い浮かぶのは、日本人セクシータレントの蒼井そらさん。中国の微博で1400万人余り(5月末時点)の巨大フォロワーを誇り、中国の若者たちに「蒼井老師」「蒼老師」などと呼ばれて慕われている。
今や中国で最も知られる日本人タレントの1人であり、この小説も蒼井さんの名声にあやかったものであることは間違いない。ヒロインのイメージも、明るくセクシーな蒼井さんによく似ている。
  

■ネットサブカルチャーとして発展へ

小説は、有名な貴族大学、H大学の英語学科に転入した“男屌絲”学生、博七(「勃起」と発音が似ている)が、ひょんなことから同じ学科の美人補習指導員、蒼玉先生とルームシェアすることになる。博七の夢のようにエキサイティングで特別な毎日が、面白おかしく描かれる。

蒼井そらさんを想起させる作品「与蒼老師同居的日子」中国の法令の1つ「出版管理条例」では、ポルノや暴力などを宣伝する内容は、出版物(電子出版物を含む)への掲載を禁じられている。
そのため正規の文学サイトでは、エロチックな表現の掲載もルール内なのだろうが、それでもセクシーな登場人物の言動は読者の夢想をかきたてるのだろう。小説は連載80日余りで約100万人がアクセスし、なかなかの健闘ぶり。
掲示板にも「湿アニキ、頑張れ。支持するよ。とっても面白い」「蒼老師!蒼老師!一緒に叫ぼう! 実はもう18年も追っかけているんだ」といった様々な声援が書き込まれ、盛り上がっている。

こうした屌絲文化の大々的なアピールには「品がない」「好ましくない」といった批判も一部あったといわれるが、「網絡亜文化」(ネットサブカルチャー)として受け入れようとする意見もある。
中国政府系のニュースサイト、中国網(チャイナネット)は、中国の文学サイトのうち「17K小説網」が率先して“屌絲文化”への支持を表明、それにより巨大な屌絲集団の評価を得たと分析する。
「ネット文学自体が、そもそも(ライトノベルなどで)主流文学から外れたものだ。小人物が努力して成功を収めるストーリーが多く、このような負け組の境遇は、数多くの80後、90後に共通する集団アイデンティティーとなっている」
「ネット文学と屌絲文化は、仲のよい兄弟のようなものだ。17K小説網がこれを結合させたのは、遅まきながらの必然の出合い。両者が引き起こす“屌絲経済”は、ネット小説産業発展の新紀元となるだろう」(2013年5月20日付)

屌絲文化が今後、どのように発展するか? 中国の“負け組”たちの動向からは、ますます目が離せない。
 
 

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2013年5月17日~5月23日

     
第2位:『査理九世20:黒霧侏羅紀』

第4位:『易中天中華史:祖先』

第6位:『閑来筆潭』

第10位:『宝貝』



                                                                
 

1.『看見』(見る)
柴静・著 広西師範大学出版社 2012年12月初


2.『査理九世20:黒霧侏羅紀』(チャーリー9世20:黒い霧のジュラ紀)
雷欧幻像・著 浙江少年児童出版社 2013年6月初


中国で人気の子ども向け冒険推理小説のシリーズ第20巻。
将来は名探偵になることを夢見る小学生・墨多多(Dodomo)と、血統証付きのスーパー名犬チャーリー9世が、数々の不思議な事件やアドベンチャーに挑む。
大西洋のある海中トンネルの先に、なぜかジュラシック・パークを発見した墨多多と仲間たち。巨大な蚊や古代蜘蛛、飢えた恐竜にぐるりと周りを取り囲まれてしまい……。
彼らは一体、助かるのか? またそこは太古のジュラ紀なのか、あるいは人類滅亡後の未来の世界なのか? スリルとサスペンスに満ちた墨多多たちの冒険が続く。 


3.『正能量』(原題『Rip It Up: The Radically New Approach to Changing Your Life』)
リチャード・ワイズマン著(英)/李磊・訳 湖南文芸出版社 2012年7月初


4.『易中天中華史:祖先』
易中天・著 浙江文芸出版社 2013年5月初


中国中央テレビ(CCTV)の歴史講座番組で一躍有名になり、『易中天品三国』などのベストセラーを持つ歴史学者の易中天氏。
本書では“中華文明”のはるかなる源流をたどり、その祖先を探ろうとする。古代伝説上の女帝・女媧(じょか)や皇帝の伏羲(ふつき)、帝王の炎帝、黄帝、尭(ぎょう)、舜(しゅん)らの真相に迫る。 


5.『致我們終将逝去的青春』(僕らの去りゆく青春に捧ぐ)
辛夷塢・著 百花洲文芸出版社 2013年5月初


6.『閑来筆潭』
呉官正・著 人民出版社 2013年4月初


中国共産党の元幹部(元中央政治局常務委員、元中央規律検査委員会書記)の呉官正氏(74歳)が、その政治家としての道と人生哲理の知恵、退職後の生活をありのままに綴る。
毎朝5、6時に起床し、マルクス、エンゲルスの古典的原著や歴史学、心理学、美学、自然科学などの著作に目を通すという呉官正氏。
これらの読書の心得を記したノートは40冊を超えるという。本書に収録された随筆や散文、追憶、小説などは、そのノートの中から選りすぐられたもの。生き生きとした筆致で、著者の素朴な感想や、個性的な思索などが記される。45枚に上る優れた自作絵画も掲載。 


7.『誰的青春不迷茫』(迷わない青春はない)
劉同・著 中信出版社 2012年12月初


8.『我所理解的生活』(私が理解する生活)
韓寒・著 浙江文芸出版社 2013年1月初


9.『謝謝你離開我』(別れてくれてありがとう)
張小嫻・著 湖南文芸出版社 2013年4月初


10.『宝貝』(ベイビー)
六六・著 長江文芸出版社 2013年5月初版


現代中国の住宅難問題を描いた『蝸居』(日本語題『上海、かたつむりの家』)、医療問題にメスを入れた『心術』など、フィクション社会派作品を世に問い続ける女性作家、六六。
最新作の『宝貝』は、70後、80後、90後(70~90年代生まれ)の3世代の家庭が主人公。計画出産、ディンクス、(一人っ子政策をとる中国での)2人目の出産、一夜の情事、中年の危機、高齢者介護といった各家庭をめぐる問題に光を当て、現代人の苦悩と現実をユーモラスに描く。
六六が脚本を担当した同名タイトルのテレビドラマが5月14日から国内各局で放送され、メディアミックス型の相乗効果を上げている。 


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/

※ 東方書店ウェブサイトで連載の「北京便り」は、今号をもって最終回となります。丸12年にわたりご愛読いただき、まことにありがとうございました。
 次回からは短期で、日中の出版事情の違い(仮テーマ)などに注目したいと考えています。
 引き続き、よろしくお願いいたします。

小林さゆり    

   
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