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2011年10月

 朱鎔基前首相の発言録が評判に
 現政権批判と憶測呼ぶ

   
   

さまざまな話題と憶測を呼んでいる『朱鎔基講話実録』「中国のゴルバチョフ」「鉄腕宰相」などと称され、21世紀初頭の中国経済改革にらつ腕を振るった朱鎔基前首相の発言録『朱鎔基講話実録』(全4巻、人民出版社)が9月8日に全国発売され、評判となっている。
副首相、首相在任中の演説や文献、手紙などの資料が348件、合わせて約123万字が収められており、その大半が初めて公開されたものだ。

2009年出版の前発言録『朱鎔基答記者問』(人民出版社)は、発売直後に売り切れが続出し、増刷が繰り返されて、これまでに100万部を数える大ベストセラーになったが、それと「同じ勢いで売れている」という(旬刊誌『環球人物』9月16日号)。
政権政党の中国共産党は世界最大の8000万党員をほこるが、党員の「学習」義務だけではこれだけの売り上げは難しい。政界から完全引退した朱鎔基氏だが、今もなお根強い人気のあることがうかがえる。

一方、掲載された内容には「もし今の政府が単なるお人よしならば、われわれは人民に対してすまなく思う」など、時代は前後するものの現政権批判とも読み取れる大胆な発言があり、憶測を呼んでいる。
調査報道で知られる中国紙『南方週末』が8日付で本書の一部内容を掲載したところ、メディア規制の強化による差し止めか?「北京の売店では掲載ページが抜き取られて販売された」という錯綜した情報も出回った。
政権交代が予想される党大会を来年にひかえ、この時期に登場した朱氏の発言録は、政争に絡んでいると見る向きもある。

   
 

■120万字の大半が初公開

書店の一角で平積みされている『朱鎔基講話実録』朱鎔基氏は1928年10月、湖南省長沙市生まれ。中華人民共和国が建国した49年10月、清華大学在学中に中国共産党に入党。毛沢東時代には大躍進政策を批判して失脚するなど、数々の辛酸も嘗めた。
91年に鄧小平氏の大抜擢で上海市長兼党委書記から副首相になり、98年3月から2003年3月までの5年間、首相を務めた。

在任中には、経済開放推進派として税・財政改革をはじめ金融、流通、住宅、国有企業、政府機構など多くの制度改革を行った。役人の汚職・腐敗を徹底追及する姿勢には称賛の声も上がったが、国有企業改革に大ナタを振るい、多くの失業者を出したことには批判も噴出したという。
退任後は政界から完全引退しているが、ここ数年2度にわたり出版された発言録の評判からは、その影響力が依然として大きいことがうかがえる。

新刊の『朱鎔基講話実録』には、朱氏の副首相、首相在任中の演説や文献などを多数収録。その多くが初公開となるものだ。「官製報告」である実情を差し引いても、中国の政治史を知る貴重な記録として興味深い。
 

■「お人よし政府なら人民にすまない」

ここで、中国メディアにも注目された本書の一部を、時系列で見てみたい(拙訳)。

● 【5条の要求】(中央政府構成メンバーに対し)
第2、謹んで職責をはたし、恐れずに本当の話をすること。もし今の政府が単なる「お人よし」ならば、われわれは人民に対してすまなく思う。(略)

第3、厳格な態度で治政にのぞみ、人に恨まれても構わないこと。治政は厳格に行い、気軽に見すごしてはならない。(中略)でないと、わが国の運命も「見放されて」しまうだろう。現在、多くの同志は、本当の話をすることが人の恨みを買うと恐れている。だが、私をごまかすのも簡単ではない。われわれは恐れずに、本当の話をする習慣を身につけねばならない。

第4、清廉公正さを求め、腐敗を処罰すること。われわれは自ら清廉公正さを求める。そうしてこそ腐敗を処罰することができるが、さもなくばやり遂げられない。
(『朱鎔基講話実録』第3巻1~15ページ、1998年3月24日「国務院第1回全体会議での演説」)

● (事に当たる時はしっかりと、人のために成すなど)清華大学のこのような精神が私を鼓舞している。私は「右派」と誤認され、20年間党籍がなかったが、共産主義の信念をなくしたことは一度たりともなかった。一度たりとも自分の仕事や学習に対して気を抜いたことはなかった。
私はいつも自分に求めている。清華大学の恩師や大学、党組織が私にしてくれた教育に背かずに、心に恥じないことをやり遂げると。これが私の最大の願望なのだ。
(第4巻159~169ページ、2001年6月5日、清華大学での演説)

● 私は、女性大統領のマッカリース(アイルランド第8代大統領、在任1997年11月~現在)と会談し、1時間のうち50分を「チベット問題」の議論に費やした。この女性大統領は北アイルランド生まれで、ダライ・ラマと接触したことがある。そのためチベットの「独立」について特に関心を持っていた。
議論の中で私は、チベットはかつて農奴社会で(人々が)どんな生活をしていたか? かの地は現在、飛躍的に近代的文明社会に入った。生活レベルと1人当たりの財政収入レベルは、全国平均を大きく上回っているが、それはいずれも中央財政の補助によるのだ、と話した。

彼女は、人は物質的生活だけでなく、精神的生活が必要だ、といった。
私は精神的生活について、中国の宗教信仰の自由は『憲法』が規定しており、われわれはそれを犯していない、個別の事例はいいにくい、と話した。しかし彼女は信じなかった。
彼女はダライ・ラマと接触したことがあるといい、ダライ・ラマはアイルランドを訪問した。アイルランドでは多くの仏教の弟子たちが彼の手にキスをして、「愛」を示した。朱総理閣下がこのような愛を示せば、チベットの人々もあなたたちを愛せる、と彼女はいった。

私は、大統領閣下、いかなる人にも彼を愛するようにし、みなが彼を好きであることはあり得ないといった。
国内の一部の人は私をとても好きでいるが、一部の人は恨み骨髄に徹することを知っている。どうして全ての人に彼を愛させることができますか? 
われわれ代表団の中にも、私の訪問につきそう全大臣がここに在席している。その多くが私に好意を持っていると信じているが、一部の人は私の批評に不満があることもわかっている。私が退任した後で「報復」するかもしれないのですよ、と話した。
すると大統領は「あら、あなたはとてもユーモアに富んでいる」「知るところでは、中国人にはユーモアがないそうだけど、あなたのユーモアはとても好ましい」と彼女はいった。(以下略)
(第4巻245~257ページ、2001年9月「第6回世界華商大会での重要演説」)

● 私が非常に心配しているのは「都市化」をやることだ。現在「都市化」は住宅建設とつながっている。かなり安い価格で農民の土地を剥奪し、外国人あるいは不動産業者を受け入れて、さらに良くない土地に農民をすえつける。
こうしたやり方はとても危険だ。中央の政策精神とまったく一致しておらず、われわれは何回も討論をした。そのことを恐れている。
(第4巻480~489ページ、2003年1月27日、「国務院第9回全体会議での演説」)

● 正直なところ、私はみなが乗用車を買うことには賛成しない。それは中国の国情にはそぐわない。(中略)一家に一台、マイカーを持てば、どんな都市でも耐えられない。どこにそんなに多くのガソリンがある? ほとんどは輸入に頼っているのだ。
さらに自動車は排ガスを出し、汚染はさらにひどくなって、人の健康に影響する。今の乗用車生産は過熱ぎみだ。乗用車の発展を主張しないのではなく、適切な発展が可能なはずだ。
生活レベルの高い人は車を買えばいいだろう。しかし政府があれほど多くの補助金を出して推進するのは、中国の発展の方向性にそぐわない。現在は、公共自動車(バス)、都市軽軌(LRT)交通、リニア高速鉄道を大いに発展させることが重要だ。
要するにわれわれは、より多くのエネルギーと注意力を公共交通の発展に向け、乗用車の発展に向けてはならない。(中略)

あれは私の(在任中公開された)最後の演説だった。みなさんに公金で乗用車を買わず、乗用車の補助をせず、公共交通をより発展させようとお願いした。もしそうしていたら、どうして今日がある? 私のいった通りにすれば、今の北京はこんなに渋滞しなかったのだ。
(第4巻490~493ページ、2003年2月1日発表の「公共交通を大いに発展させる」を、2011年4月22日の清華大学座談会で解説)

以上、発言の一部ではあるが、「清廉、鉄腕の宰相」といわれた朱鎔基氏の厳しい政治姿勢がうかがえる。
 

■メディア宣伝の影に不穏な動きも

一部地域で販売停止が噂された『南方週末』の記事『朱鎔基講話実録』は前作と同じ、党政府系メディアの人民出版社が出版。当局のお墨付きを得ているはずだったが、出版直後には不穏な動きも見られた。
中国の人気週刊紙『南方週末』が8日付で一部内容を掲載したが、「北京では掲載ページが抜き取られて販売された」というのである。
『南方週末』は同日、中国版ツイッター「微博」を通じて「北京での印刷が遅れ、一部売店ではB版(時局面)が欠落した。確認後、8日午後には各店に届けられるので、購入した読者は欠落分を受け取るように……」として「誤解と不便」をかけたことを謝った。

これを受けて、微博上でもさまざまな憶測が飛び交った。
 「印刷の問題なのか、他の原因か? 真相を求む」
 「B版欠落のロジックは強烈だ」
 「敏感な時期だ。『南方週末』の幹部は言論で罪を受けたのか? 彼らを支持しよう!」
 「広州でもB版がないぞ、どうしたんだ?」

B版の欠落はどうやら北京だけではなかったらしい。
こうした動きに対しては、北京市共産党委員会宣伝部が8日朝に時局面の発行を禁止したが、南方週末側が粘り強く交渉した結果、解除された、との情報もある(中国人権民主化運動情報センター、「時事通信」8日付電子版)。
その数日後、私が同紙を購入した時点では、紙面は全てそろっていた。

真相は不明だが、『朱鎔基講話実録』の出版後、中国メディアはこぞって本書を大々的に“宣伝”している。
中国の政権交代が予想される党大会は来年秋。この時期の“鉄腕宰相”の復活は「政争が絡んでいるに違いない」と声をひそめる中国の知識人たちもいる。

『朱鎔基講話実録』は、中国の現代政治史だけでなく、リアルな内部闘争を観測する上でも意義深いといえそうだ。
   

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2011年9月8日~9月14日

     
第2位:『虫図騰』

第4位:『老公,投降吧』

第7位:『鬼吹灯之聖泉尋踪』
                                         第8位:『謀殺似水年華』

第9位:『大風歌:王立群講高祖劉邦(下)』

第10位:『人間正道』
 

1.『朱鎔基講話実録』(全4巻)
『朱鎔基講話実録』編集チーム編 人民出版社 2011年9月初版


2.『虫図騰』(虫のトーテム)
闫志洋・著 新星出版社 2011年8月初版


中国初の“虫駆除師”をテーマにしたミステリー。中国の娯楽系ポータルサイトでの発表1カ月で1000万の大量アクセスを数えた人気小説を書籍化した。
あるところに、古くから伝わる神秘的な虫駆除技術をもった「駆虫師」たちがいた。彼らは「金木水火土」の5族に分かれ、それぞれが独特な虫駆除技術を伝承していたが、それは人を瞬時に救うこともできれば、死に至らしめることもできる秘術だった……。
「ぞっとするほど気味悪いが、先の読めないサスペンスに引き込まれる」という読者の評がネット上に書き込まれている。 


3.『百年孤独』(百年の孤独)
G.ガルシア=マルケス著(コロンビア) 范曄・訳 南海出版公司 2011年6月初版


4.『老公,投降吧』(あなた、降参して)
柔柔的遥遥・著 江蘇文芸出版社 2010年5月初版


コメディータッチの都会派ラブストーリー。「萌えと愛の爆笑追夫(夫追っかけ)記」とある。
気ままで傲慢な成金女性・夏小花は、上流社会の貴公子・葉璽に好意を寄せていたが、彼には華麗麗という金持ちの新婦がいた。ところがズボラな性格の華麗麗は上品な葉璽にはそぐわないところがあり、さらに葉璽には他に想う人がいるらしかった。夏小花は2人の離婚を画策し、葉璽に「降参してほしい」と迫るのだが……。
成金ヒロインと現代版“王子様”が繰り広げる、コミカルなトレンディー小説だ。 


5.『春宴』
安妮宝貝・著 湖南文芸出版社 2011年8月初版


6.『好媽媽勝過好老師』(よい母はよい教師に勝る)
尹建莉・著 作家出版社


7.『鬼吹灯之聖泉尋踪』(鬼吹灯――聖泉の跡を捜す)
天下覇唱・原著 御定六壬・改編 金城出版社 2011年8月初


天下覇唱の冒険ミステリー小説『鬼吹灯』のシリーズ最新作。主人公の胡八一らが秘宝を探して活躍する。
前作に続く舞台は、南米のジャングルへと飛ぶ。そこで胡八一たちは神秘の秘術「十六字陰陽風水秘術」を使って、多くの墳墓を発見する。さらに伝説のインカ人の聖地で、不老効果があるという「青春泉」を発見するのだが、陰陽術の使い手で黒幕の老人が現れて……。
「鬼吹灯ワールド再び。ハリウッド映画ばりの痛快アドベンチャー」という壮大なスケールの物語。 


8.『謀殺似水年華』(謀殺の歳月は水の如し)
蔡駿・著 南海出版社 2011年8月初版


中国の推理小説の第一人者、蔡駿(ツァイ・ジュン)の最新作。作家にはこれまでに『病毒』『猫眼』『天機』などのベストセラーがあり、作品の販売総数は約700万冊。7年連続で中国推理小説の販売総数ナンバーワンを保持している。
ある夏の大雨の夜、南明高校向かいの雑貨店で起きた殺人事件。唯一の目撃者は死者の13歳の息子だった。
15年後、事件未解決のまま担当刑事が殉職した。葬儀の準備で娘の田小麦が見つけたのは、父が遺した「工作手帳」。そこには、15年前の事件の凶器が、紫のシルクスカーフだと記されていた。しだいに事件の経緯に巻き込まれていく田小麦。そこからは「ストレートだが、絶望的な愛」という時代の悲劇が浮上してくるのだった……。 


9.『大風歌:王立群講高祖劉邦(下)』(大風の歌:王立群が高祖劉邦を解説する)
王立群・著 陝西師範大学出版総社有限公司 2011年8月初版


中国の有名な歴史学者・王立群氏による中国中央テレビ(CCTV)の人気レクチャー番組「百家講壇」の講座をまとめたもの。
中国史上唯一、平民から皇帝へと上りつめた劉邦。それは中国史上で最短時間の7年間、天下を統一した皇帝だった。秦の郡県制に封建制度と中央集権を取り入れた「群国制」という統治体制をとったほか、「千古人主第一詞」(千古の君主、第一の詞)といわれる詩歌「大風歌」を後世に残した。
史書の『史記』『漢書』などの研究から、決断力と実行力に富み、適材適所の任用などで人望を集めた劉邦の功績や人となりを解説する。 


10.『一句頂一万句』(一語が一万語にあたる)
劉震雲・著 長江文芸出版社 2009年3月初版


中国の『百年の孤独』といわれる長編小説。2011年「第8回茅盾文学賞」受賞作の1つ。
簡潔なプロット、洗練された言葉遣い、要所要所のシニカルなユーモアなどが特徴。
小説の前半は「過去」の物語。孤独で身寄りのない呉摩西がある時、唯一話のできる養女を見失い、養女を捜して河南省北部の延津県から出立する。後半は「現在」の物語で、養女の息子・牛建国が同じように孤独から逃れようと友人を探して延津県へと向かう……。
異なる時代に生きた“血縁関係”のある主人公たちの旅立ちと回帰の物語。
さらに登場する人物や家族、社会組織はいずれも話がかみ合わないという矛盾を抱える。会話というものが人間の唯一の交流手段になった時から、人は孤独と連れ添っていると作者は説く。
「古来、中国人はこうして奔走してきた。その視点は中国小説の“国風”だ」「『水滸伝』を思い出す」「現代中国の“大歴史”だ」などと評論家たちの評価も高い。 


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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