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2010年10月 流行を追えばパクリになる!?
 中国の出版物
   
   

『中国不高興』(中国は不機嫌だ)、『中国憑什麼不高興』(中国はなんで不機嫌か)、『中国為何不高興』(中国はなぜ不機嫌か)、『中国為什麼不高興』(中国はどうして不機嫌か)、『中国誰在不高興』(中国の誰が不機嫌か)、『中国很高興』(中国は上機嫌だ)……。

言葉遊びをしているわけでも、なぞなぞを出しているわけでもない。何のことかとお思いだろう。じつはこれ、昨年春に中国で『中国不高興』がベストセラーになってから、これまでに出版された類似書のタイトルだ。
一見、シリーズ本かと見まごうほどよく似ているが、出版社も違えば作者も違う。ベストセラーとはまったく関係のない、まさに二匹目のドジョウを狙った"パクリ本"なのであった。
  近年、中国ではびこる巧妙な類似書の実態とは……!?

    

 

   
 

■ベストセラーの威を借りて

上述した『中国不高興』(宋暁軍ほか著、江蘇人民出版社、2009年3月初版)は、中国国内では発売3カ月で100万部を超えたという大ベストセラー。
14年ほど前のベストセラー『中国可以説不』(ノーといえる中国)の続編といわれ、経済発展で自信をつける中国の「超大国化」を宣揚するナショナリズムに満ちた内容となっている。中国の対米協調にも不満を表し、中国スタンダードの正当性を説いて、内外で大論争を巻き起こした。
日本でも昨年9月に翻訳本(『不機嫌な中国』、徳間書店)が出版されて注目された。

この勢いに乗じようと現れたのが、次の類似書である(順不同、初版)。
・『中国憑什麼不高興』 成墨ほか著 ハルビン出版社、2009年10月1日
・『中国為何不高興』  郭鋭著 五洲伝播出版社、2009年9月1日
・『中国為什麼不高興』 賀雄飛編 中国大百科全書出版社、2009年5月1日
・『中国誰在不高興』  廖保平ほか著 花城出版社、2009年6月1日
・『中国很高興』    鞏勝利ほか著 東方出版社、2009年5月1日

「立国の根本は、国民生活への関心である」と説いた『中国憑什麼不高興』、中国の盛衰の原因を悠久の歴史と文化に探り、『中国不高興』にNO!をつきつけた『中国為什麼不高興』など内容にそれぞれ差異はあるものの、タイトルはどれも似通っている。
しかも初版が出たのはいずれも『中国不高興』の出版より後。もとは違うタイトルが予定されたのかもしれないが、ベストセラーの威を借りて、真似ているのは明らかだろう。

■ビジネス書から小説に至るまで

  そればかりではない。ちょっと調べただけでも"パクリ本"は続々出てきた。
日本でも翻訳本が出版されたビジネス書のベストセラー『水煮三国』は、2003年に中国で出版後まもなく『焼烤三国』『水淘三国』という類似書が出た。
企業管理の指南本『細節決定成敗』(ディテールが成敗を決める)が2004年に発売されると、続いて『細節左右成敗』(ディテールが成敗を左右する)、『関係決定成敗』(関係が成敗を決める)などのソックリ本が出版された。

さらに、中国版の冒険ミステリー小説『鬼吹灯』のシリーズが2006年から発売されて人気書になると、『盗墓筆記』『盗墓之王』『盗墓者』『西双版納銅甲屍』(シーサンパンナの銅よろいの屍)などの"盗掘"小説が次々と現れた。
中でも『盗墓筆記』(墓盗掘ノート)は『鬼吹灯』にコンセプトが似ていたものの、流行の追い風に乗り、今年9月に第7巻が出版されたシリーズ本となっている。
人気書に追随するこうした動きは、ビジネスから小説、料理、健康、教育関係に至るまで、あらゆる分野の出版物に広がっているようだ。

  

 

■著作権法改正で対処か

もっともタイトルやコンセプトが"どことなく"似ているだけでは「パクリ」とは言い難いという考えもあろう。中国でソックリ本を作る関係者たちは「流行は流行、盗作することとは違う」と巧妙な言い逃れをしているという。

 しかし、それは事実上の著作権の侵害であり、(作者への)名誉毀損にあたるものだ、と訴える中国のメディアもある(『羊城晩報』9月20日付)。
それによれば、中国の現行の『著作権法』では、著作物の保護対象として「表紙、裏表紙、内容の体裁デザイン」を含まない。「そのため合法的権益の保護を訴えるのが難しい」という。
例えば、教育書のベストセラー『好媽媽勝過好老師』(よい母はよい教師に勝る、尹建莉・著、2009年1月初版)を出した作家出版社が、類似書『好爸爸勝過好老師』(よい父はよい教師に勝る、東子 著、2009年9月初版)を出した漓江出版社に「盗作」の事実を確認したところ、あにはやらんや、かえって「盗作」を疑われたとか。

(日本の著作権法でも、タイトル「題号」は通常、著作物には該当せず、「著作権」による保護は与えられないとされている。その代わり「不正競争防止法」や「商標法」などによって、類似商品等の表示から本来の表示〈題号等〉を保護することもできるという)

中国の著作権法(WTO加盟により改正、2001年10月27日施行)を見てみると、実際には「本や定期刊行物の体裁デザインは、10年間保護される」として保護条項が記されている。しかし、これとてどこまでを「体裁デザイン」とするか、「タイトルは含まれるのか」があいまいで、ケースによって問われそうだ。
前述した『羊城晩報』は「流行に追随すれば、苦心せずにアイデアを盗むことができ、大枚をはたいてキャンペーン(販促)をする必要もない」と中国の出版モラルの欠如を指摘。
その上で、「近年のパクリの横行で『著作権法』の抜け穴が暴露されたも同じ。次の法改正では、この穴を埋めること(条項追加)が必要だろう」と訴えている。

コピー天国、パクリ大国と皮肉られることの多い中国。
そっくりにコピーされた海賊版とは異なるが、正式な出版社からも堂々と"パクリ本"が発行される問題は、解決されるか? 法の整備はもちろんのこと、出版界のモラルと理性の向上も求められているようだ。

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2010年9月9日~9月15日

     

 

1.『巻巻就能痩!』(巻くだけダイエット)
山本千尋著(日) 上海錦綉文章出版社、2010年8月初版


『バンド1本でやせる! 巻くだけダイエット』として日本で昨年、幻冬舎から出版され、ブームを巻き起こしたダイエット本の中国語版。
ゆがみを治しながら、脂肪を燃やす「骨格矯正バンド」を使えば、従来のエクササイズより10倍の効果があるという。
「バンドを巻くだけで、楽にやせられる」という超簡単ダイエット法。中国でも8月の発売後まもなくベスト1に輝いて、女性たちの熱視線を浴びている。


2.『山楂樹之恋』(サンザシの樹の恋)
艾米著 江蘇人民出版社 2009年12月初版(精装新版) 


3.『藏地密碼9』(チベット・コード9)
何馬著 重慶出版社 2010年9月初版


チベット仏教1000年の秘史を尋ねる「百科全書タイプ」の長編小説。歴史、地理、科学といったさまざまな角度から、チベットの神秘のベールを剥がしていく。シリーズ全体では、売り上げ合計が300万冊を超えたという大ベストセラー。


4.『幸福了嗎?』(幸せですか?)
白岩松著 長江文芸出版社 2010年9月初版


中国中央テレビ(CCTV)の人気キャスター、白岩松の10年ぶり2冊目となるエッセイ集。
この間のキャスターとしての仕事を振り返り、社会の大事を見つめ、各国取材の焦点や舞台裏を描き出す。
音楽や映画、本などの趣味についても触れており、「三十而立」(30にして立つ)から「四十不惑」(40にして惑わず)までの彼の心の成長記録となっている。


5.『風語』(風聞)
麦家著 金城出版社 2010年7月初版


茅盾文学賞受賞作家で、「当代"謀戦"小説の父」といわれる麦家の最新小説だ。
抗日戦争期に、実在したとされる軍統(国民党特務組織の1つ)で重慶にあった「黒宇」が舞台。天才的数学者であり暗号解読者、戦闘的英雄である組織のメンバーを主人公に、神秘の"謀戦"テクノロジーを今に明かす。


6.『臨界・爵跡Ⅰ』
郭敬明著 長江文芸出版社 2010年8月初版


「80後」(1980年代生まれ)の人気作家、郭敬明の長編ファンタジー・アドベンチャー。郭敬明の幻想小説は、ベストセラー『幻城』から10年ぶりとなり、大きな話題となっている。
伝説の「奥汀(オーティン)大陸」を分ける東西南北4国では、神秘的な「魂術」を使った攻防が繰り広げられていた。最強レベルの魂術師は「王爵」と呼ばれ、各国に7人ずついた。
『臨界・爵跡Ⅰ』では、西の国、亜斯藍(アスラン)帝国から物語がはじまる。純朴な"平民少年"麒零(チーリン)はある日突然、国家間の闘争に巻き込まれてしまい、魂術の訓練を受けて第7王爵の「使徒」となる。そして他国の王爵との激しい戦いに加わっていくのだが……。
「活字のムービー」と称される、ファン待望のファンタジー巨編の登場だ。


7.『化粧之王』(メーキャップの王)
ケヴィン・オークイン著(米) 北京科学技術出版社 2010年9月初版


世界的に有名なメーキャップアーティスト、ケヴィン・オークイン(1962-2002)。本書は、メーキャップというアートの蓄積とテクニックのすべてを網羅した実用書。アメリカでメーキャップ本のナンバーワンとされており、中国語版には、「頂級大師的化粧教程」(トップ巨匠のメーキャップ教程)というサブタイトルがついている。


8.『心術』(もくろみ)
六六著 上海人民出版社 2010年8月初版


六六は、住宅ローンに苦しむ若い世代の姿を描いたベストセラー『蝸居』の作者。同書はテレビドラマの原作にもなり、話題を呼んだ。
新作『心術』では、ワイロの介在や癒着など、医者と患者の"中国式関係"を描き、大きな議論を巻き起こしている。


9.『公司的力量』
『公司的力量』番組チーム編 山西教育出版社 2010年8月初版


経済学者はかつて、17世紀から1970年代までの人類の生活改善は80%以上が企業からもたらされたと分析した。現代では、全世界の70%の特許と3分の2の研究開発費がグローバル企業によるものだという。
本書は、CCTVの同名タイトルの大型ドキュメンタリーを書籍化したもの。
番組では、2年がかりで欧米・アジアの8カ国にわたる50社以上の世界的企業、170余人の学者やビジネスパーソンを取材。巨大企業のパワー(力量)の変化こそが、大国の勃興と衰退の「風向計」であると語る。
この番組書籍は、2006年末に放送されて話題を呼んだCCTVの歴史ドキュメンタリー「大国崛起」(大国の勃興)の姉妹編となっている。


10.『酥油』(バター)
江覚遅著 甘粛人民美術出版社 2010年8月初版


2005年から約5年にわたり、単身でチベット族の山地に暮らした安徽省生まれの女性、江覚遅。その彼女がバター燃料のランプのもと、書き続けた日記からあみ出した自伝的小説だ。
チベット族の敬虔な信仰心、今に残る一夫多妻・一妻多夫制、草原の大自然、災害孤児らへの教育支援……。知られざる秘境に暮らし、人や自然にとけこんだ1人の女性の生命(いのち)の賛歌だ。


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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