■「成人漫画」は是か非か?
男性の"性"の実態を真正面からユーモラスにとらえたエッセイ漫画が、ネットユーザーなどの間で評判になっている。
それが、中国の青年漫画家・涂老鴉氏(ペンネーム)の新著『小老爺們兒那点事兒』(男たちのあの事、国際文化出版公司)だ。北京の大衆紙『新京報』などで連載した作品を、1冊の本にまとめたもの。「成人漫画」と銘打って、少年時代から33歳の現在にいたるまでの自らの成長過程を、赤裸々に描いている。
・パンツの中を拡大鏡でのぞく男……「こんなに大きかったら、どれほどいいか……。男はアレの大きさに、こんなに関心を持っている」。
・不適切な時にアレが立ってしまったら、ポケットに手を入れて直す。時には真ん中に落ち着かずに左に寄ったり、右に寄ったり。そして僕は「左傾機会主義」「右傾機会主義」と名付けた。
・妻に責められる不能の男。「泰山だって倒れるよ。ベッドでは、やさしくして……」
――などなど"性"に対する男の素直なつぶやきを、素朴なタッチで面白おかしく描いているのだ。
"性"の商業化には、公的にはオカタイ中国で「初の成人向け漫画だ」「成人漫画の空白を埋めた」とメディアの注目を集めている。また、流行に敏感なネットユーザーの間でも「いくらか自嘲気味だが、率直だし、勇敢だ」「甘酸っぱい思春期のころを思い出した。表現もタッチもかわいらしいし、下品じゃない」と評判に。涂老鴉氏のファングループが、その名をとって「鴉片」(アヘン)という捻りのきいたファンネームをつけるほどに、話題になっているのである(『新京報』)。
しかし、あまりにもストレートで刺激的な"性"の告白に対しては、連載当初から異論があったことも事実。保護者からは「子どもの健全な成長によろしくない」「"性"のテーマは、子どもの読み物にふさわしくない」という抗議の電話がかかったという。公的にはハレンチな"性"の話題を封印してきた中国では、いきなりの開放ムードが人々の反発を招くのは予想された出来事だろう。
これに対して、作者の涂老鴉氏はこう反論する。
「出版にあたっては、自分なりに敏感なカットを削除した。もしもこの本が出版にふさわしくないというなら、今後は誰も描かなくなってしまう」
中国の"成人漫画"は緒についたばかり。本書もできれば「R-15」(15歳未満の鑑賞禁止)の指定をしたいと、その影響力を懸念した上で、涂氏はいう。
「子どもの読書に障害(規制)があるのはわかるが、大人にとっては避けては通れないテーマ。本書が人生経験者の心得を描くことで、悩み多き若者のための健全な教育読本となれば……」
長年、児童漫画を手がけてきたという涂老鴉氏。プロフィールでは、人との煩雑な交際を好まず、自宅のパソコンで絵を描くという「SOHO型の"宅男"」(オタク)だと明かしている。中国の「宅男」くんの勇気が、中国の"性"の開放を牽引するかどうか。本書の読者反応とともに見守りたいところである。
|