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2007年8月  中国〈ハリポタ〉夏の陣

     
     
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世界的なベストセラー『ハリー・ポッター』の完結編が、世界で同時発売されて約1カ月――。 北京では、原書の売れゆきが初日に約6200部と好調な出足をみせたほか、中国語版の予約販売が、早くも児童書ベストセラーの1位を獲得。〈ハリポタ〉の根強い人気を示している。
いっぽう"コピー大国"とも揶揄される中国では、すでにニセモノの中国語版が登場したり、ウェブサイトでファンが無断翻訳を公開したりといった問題も明るみに。
中国で〈ハリポタ〉を超える、現代的なファンタジーが生まれない理由について、上海大学社会学部の顧駿教授は「中国人は想像力に欠けているのではない。想像力をもっと直視し、重視しなければならない」と地元紙のインタビューに答えている。
〈ハリポタ〉完結編をとりまく、中国の"夏の陣"を追ってみた。

 
     
   
■予約販売ランキング1位

シリーズ完結編となる『ハリー・ポッターと死の秘宝(仮題)』第7巻は、英国時間の7月21日午前0時1分(北京時間・同日午前7時1分)、世界で同時発売された。
北京の地元各紙によると、原書の売れゆきは初日に約6200部と好調な出足をみせた。市内中心部にある大型書店の北京図書大廈(西城区)、中図外文書店(朝陽区)では、限定の割引販売やイベントが行われたこともあり、前夜から列に並んだ熱心なファンの高校生や大学生、孫へのプレゼントにしたいというお年寄りの姿が見られた。

発売後1カ月となる8月下旬には、中国語版の予約販売が、早くも児童書ベストセラーの1位を獲得(『新京報』調べ)。翻訳本を出版する人民文学出版社によると、中国語版の初版100万部は、10月28日に売り出される予定だという。
〈ハリポタ〉シリーズは、中国でも大人気だ。第1巻の『ハリー・ポッターと賢者の石』から第6巻『ハリー・ポッターと謎のプリンス』まで、中国語版は1巻あたり150万部が印刷された。それからすると、第7巻が初版で100万部とは、なんとも強気の商法である。しかも1冊60元(1元は約15円)と、シリーズ初期の2~3倍もの高値である。ページの増加に伴うものだが、こうした"強気"の販売も人気のほどを裏づけるものだろう。

ちなみに、第7巻は中国語では『哈利・波特与死亡聖徒』(仮題)。略して『哈7』(ハー・チー)と愛称される。
北京の書店では、英国版の原書が208元、米国版が218元で売られている。この2つのタイプは、装丁と大きさの違い、スラング用語の若干の違いのみで、内容は同じ。世界の販売部数をみると、米・英・独3カ国だけで初日に1100万部を売り上げ、シリーズの最高記録を打ち出したという。
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■ファンサイトで無断翻訳

完結編だけあって、注目されたラストは中国でも賛否両論を巻きおこした。発売日の数日前に、結末がインターネット上に流失、しかもそれが「正しかった」とされているが、中国のファンは「結末に満足した」人もいれば、「商業主義に失望した」人もいるなど、さまざまな感想を抱いたようだ。
7巻の出版を待ちこがれていた息子のために、ニセモノの中国語版を自分で書きあげた父親まで現れた。上海の工場に勤める中年男性、李さんだ。「ハリー・ポッターと最後の対決」というタイトルの完結編で、ネット上で公開したところ「本物に匹敵するほどおもしろい」と話題となり、出版社からのオファーも相次いだという。

フランスでは、完結編をみずから翻訳し、正式な翻訳版の発売前にネット上で公開した16歳の少年が逮捕された。3章分のみだったようだが、中国でもハリポタ・ファン「哈迷」(ハーミー)たちによる翻訳の偽造問題が起きた。
ファンサイトによると、翻訳を呼びかけたのはネットフォーラム「国際巫師(祈祷師)連盟」の"ウィザード・ハリー"(魔法使いハリー)と名乗る男。
「6、700ページからの原書は中国のファンを悩まし、正式な翻訳版が出るのもまだ先だ。国内の多くのファンのために、みんなで力を合わせよう」として、翻訳のボランティアを募ったのである。計画では、複数からなるボランティアが翻訳を分担、7月末までの約10日間で作業を終え、ネットフォーラムに無料で公開するとした。
ウィザード・ハリーは「自発的なこの作業は、国内ファンの歓迎を受けるばかりか、インターネットの自由・開放精神を体現するものとなる」と明らかにして、翻訳への意欲をみなぎらせていた。
しかし、中国語版のライセンスをもつ人民文学出版社は「(正式発売の)10月28日以前にあらわれたものは、いずれも盗版(海賊版)。営利目的でなくとも、法的措置を考える」と示唆。その後、ネット上には「翻訳者募集」の痕跡が残るものの、ウィザード・ハリーの労作はなく、「自発的」にしたのかどうか? 削除されたようである。
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■中国的な想像力を豊かに

つめこみ教育を重視してきた中国ではいま、想像(創造)力を豊かにして、国際競争に立ち向かおうとする機運が高まっている。歴史を尊重するあまり、先進的なモノづくりに弱いという弊害が生じているからだ。
中国で〈ハリポタ〉を超える、現代的なファンタジーが生まれない理由について、上海大学社会学部の顧駿教授はこう語る(『解放日報』)。

「中国には『西遊記』『水滸伝』『聊斎志異』『封神演義』といったおびただしい数の幻想小説があり、草の根(民間)の想像力がないわけではない。近年も『悟空伝』『鬼吹灯』などのネット小説が人気を呼んでいる。しかし、中国には"子不語怪力乱神"(孔子は神通力を語らない)という伝統思想があり、幻想小説が文学の主流にはなりえなかった。統治者が権力と管理を強めるために、粗野な迷信であるとして、民間の想像力を抑えつけていたからだ」

ハリウッドの娯楽大作、欧州の魔法もの、日本のアニメや漫画……。大衆文化のグローバル時代にあって、中国ものは世界レベルのステージに登れないでいるという。
「日本のアニメや漫画については、荒唐無稽なところもあるが、想像力に富んでいる。"俳句"のように刹那的な感動を追いもとめ、民族資源をしっかりととらえている。われわれも中国ならではの特色をつかまなければならない」(要旨)

中国には、世界に影響をあたえた第5世代監督の映画がある。悠久の歴史がほこる文化の資源もじつに豊かだ。
「文化というのは、民間の"森"から育つもの。(森のように)長い時間をかけて、じっくりと養うべきである」「中国人は、想像力をもっと直視し、重視しなければならない。現代人の想像力を借りて、高みをめざしてさらに飛翔しなければならない」

顧駿教授は、中国ならではの伝統資源を現代に生かそう、そして中国的な想像力を豊かにしようと呼びかけている。
〈ハリポタ〉は完結編を迎えたが、それを超えるファンタジーが生まれるのかどうか――。世界市場を見すえた中国の模索はつづいている。

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bestsellere  

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計) 2007年8月17日~8月23日

     
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1.『絶対小孩』(ぜったい子ども)
朱徳庸作 上海錦綉文章出版社 2007年5月初版


2.『求医不如求己』
中里巴人著 中国中医薬出版社 2007年7月第9刷
「医者に治療を頼むは、己(おのれ)を頼るに及ばない」というストレートなタイトルの健康指南書。サブタイトルに「中国人の健康生態を変える、第一プラン」とある。中医学を修めた著者は、ベストセラー『人体使用手冊』の作者・呉清忠氏の師でもあるという。
自分でできるツボのマッサージなどを通して、自然治癒力を高め、クスリいらずで、健康的に生きる方法をわかりやすく説いている。高齢化がすすみ、医療費の高騰がつづく中国では、健康や医療関係の本に注目が集まっているようだ。


3.『20幾歳,決定女人的一生』(20代が女性の一生を決める)
南仁淑著(韓) 南海出版公司 2007年6月初版
20代でステキな男性と巡りあわなければ、30代でのステキな結婚は難しい。20代から財産を積み立てなければ、30代ではわずかなお金も残らない。
20代をいったん過ぎれば、若さ、財産、友だち、美貌といったあらゆるものが遠ざかりかねない。若いころから現実的な価値観と成熟した考えをもてば、女性の人生は幸せになる……。韓国の女性シナリオライターが、若い女性におくる幸せになるためのメッセージ。中国の女性は「勝気ながらも、依存心が強い」といわれるが、それでも若い世代には"自立"の意識革命が起きているのかもしれない。


4.『墨跡(曽子墨自述)』
曽子墨著 長江文芸出版社 2007年2月初版


5.『鬼吹灯Ⅱ之一:黄皮子墳』
天下覇唱著 安徽文芸出版社 2007年7月初版

『鬼吹灯』シリーズは、中国生まれの話題のファンタジー・アドベンチャー。ネット小説として公開されて、人気を呼んだ。
「黄皮子墳」(イタチ祠)編は、大興安嶺の生産隊にいた知識青年・胡八一らの冒険物語。大興安嶺の山岳地帯で、誤ってイタチ祠にすべり落ちた胡八一たち。そこはかつて「泥の会」と名乗る匪賊が、宝の箱を掘りだした祠だった。言い伝えによると「泥の会」は、宝の箱とともにモンゴルの草原に消えたという。折しも、昔の戦友から草原への紹介を受けた胡八一たち。彼らを待ち受けていたものは……。
史実とファンタジーがおりなす不思議な世界へといざなってくれる。シリーズはほかにも「崑崙神宮」「精絶古城」「竜嶺迷窟」などがあり、「中国の"ハリポタ"」ともいわれている。


6.『品三国』(下)
易中天著 上海文芸出版社 2007年3月初版


7.『巴別塔之犬』(バベルの犬)
キャロリン・パークハースト著(米)・何致和訳 南海出版公司 2007年7月第2刷
愛する妻が、庭の木から落ちて死んだ。謎の死を目撃していたのが、愛犬のローレライ。残された夫は、犬に言葉を教えて真相をつきとめようと考える。亡き妻との思い出が、生き生きとよみがえる……。
アメリカで大ベストセラーとなり、22カ国の読者を感動させたという物語。日本では、『バベルの犬』(角川書店)として2004年秋に出版されている。


8.『人体使用手冊』(人体使用手帳)
呉清忠著 花城出版社


9.『悲傷逆流成河 Cry me a sad river』
郭敬明著 長江文芸出版社 2007年5月初版


9.『悲傷逆流成河 Cry me a sad river』
郭敬明著 長江文芸出版社 2007年5月初版
中国人の著者は、米ファニーメイ(連邦住宅抵当公庫=住宅安定供給を目的に設立された特殊銀行)と、米フレディマック(連邦住宅金融抵当金庫)のハイレベル・コンサルタント。
WTO加盟によって中国の金融市場が開放されたいま、海外から中国への資本流入が活発化しつつある。外国の銀行や証券などが、中国市場で自由な金融サービスを行えるようになったのだ。著者は、国際金融市場にくみこまれた中国が「血の流れない」戦争にいかに備えるか、と警鐘を鳴らす。世界の金融史をひもときながら、危機に巻き込まれないためのリスクヘッジをレクチャーしている。
 
   
     
   

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キャプション「写真は山奇さん(左)と加藤さん。」

 

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中国の有名なディレクターでミュージシャンの山奇(シャン・チー)さんと、北京大学国際関係学院の公費留学生、加藤嘉一(かとう・よしかず)さんの対談を収めた『七日談:来自民間的中日対話録』(七日談:民間からの中日対話録)の出版記念会がこのほど、北京の中山公園内で行われました。
『七日談』の出版は、昨年まで北京大学の大学院生として美学を学んでいた山奇さんと留学生の加藤さんが、友人を通して知り合ったことがきっかけ。本書では、1週間(7日間)の対談というスタイルをとり、両国の歴史や文化、音楽、映画、愛情、人生、芸術、哲学など、さまざまなテーマについて語り合った内容をまとめています。

第2章にあたる「Day2」では、両国の歴史認識から日本の首相の靖国神社参拝、2005年4月に中国で起こった「反日デモ」まで、敏感な問題についても臆することなく、縦横に語り合っています。
出版記念会で、山奇さんは「これは学術的でもなければ、政府の立場でもない。民間の視点からの自然な対話だ。だからこそ、若い人たちの相互理解の一助になれば……」。
加藤さんは「相手を理解するには、まず交流すること。 日中国交正常化35周年のことし、相互理解の促進のために、本書が何らかのプラットホームを提供することができたら」 と、流暢な中国語で話していました。

※ 『七日談:来自民間的中日対話録』(新華出版社、07年8月初版)

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
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