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2007年1月 |
年間ランキングを発表 |

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07年北京春季ブックフェアーで |
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年明け早々の1月11日から13日、北京市内の国際展覧センターで「2007年北京春季ブックフェア」が開催された。
注目されたイベントが、「図書年度風雲榜」(06年ベストセラーランキング)の発表だ。中国の大手ポータルサイト「新浪ネット」とブックフェアの組織委員会が共同で行ったもの。
フィクション部門の第1位に、若手女性作家の安妮宝貝の長編小説『蓮花』が、またノンフィクションの第1位には、テレビ講座で人気をよんだ易中天の『品三国』と、于丹の『于丹《論語》心得』がそれぞれ選ばれた。
人生を見つめなおす重厚なおもむきの小説と、メディアと組んだ“古典もの”の根強い人気が示される結果となった。(以下、敬称略)
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新浪ネットの報道によると、ランキングは北京図書大廈、上海書城、広東購書センターなど全国の大手書店8カ所の年間ランキングと、新浪ネット読書ページのアクセス数、ネット書評、メディアの注目度などを総合評価して決められた(上海の年間ベストセラーについては、須藤みかさんの「上海だより」先月号をご参照ください)。
その中で、フィクション部門の第1位に輝いたのが、安妮宝貝の『蓮花』だ。
重い病におかされた主人公が、チベットへの旅を通して人とふれあい、静かに自分を見つめなおす。現代人が模索する愛と信仰、命の本質に迫ろうとする大作で、安妮宝貝の最高傑作との呼び声も高い。都会派のネット小説で知られる作家が、「純文学」に境地を求めた記念すべき作品でもある。
ランキングの選者らは「生死を悟り(一人ひとりの)生活を問う。それは、完璧なまでの人生哲学だ」と本書を絶賛。出版マーケットと読者の絶大な支持を得たとして、堂々の年間ベストワンに輝いた。
第2位は、"文革"と現代という2つの時代を背景に、異父兄弟の数奇な運命を描いた余華の『兄弟(下)』、第3位は「食い違い結婚」をテーマに、婚姻の真のカタチを問う王海鴒の『新結婚時代』とつづく。
北京の月間ベストテンにも度々登場した本がならび、おおよそ想定内の結果となった。全体を見ると、人生とは、命とは、家族とは何かをテーマに、人間の「生」の本質に迫ろうとする重厚な作品が多い。めざましい変化をとげる中国で、アイデンティティーを問いかける小説が好まれるのはなぜか? いずれにしても、純文学離れがすすむ日本とは対照的な流れだろう。
海外ものでは、アフガニスタン出身作家のベストセラー『追風筝的人』(カイト・ランナー)、2006年度のノーベル文学賞を受賞した、トルコの代表的作家オルハン・パムクの『我的名字叫紅』(わたしの名は紅)がランク入りした。 |
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■「図書年度風雲榜」フィクション部門ランキング |
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作 品 |
著 者 |
出版社 |
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1 |
『蓮花』 |
安妮宝貝 |
作家出版社 |
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2 |
『兄弟(下)』 |
余華 |
上海文芸出版社 |
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3 |
『新結婚時代』 |
王海鴒 |
作家出版社 |
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4 |
『追風筝的人』 |
カーレド・ホッセイニ |
上海人民出版社 |
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5 |
『泡沫之夏Ⅱ』 |
明暁溪 |
新世界出版社 |
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6 |
『誅仙6』 |
蕭鼎 |
朝華出版社 |
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7 |
『我的名字叫紅』 |
オルハン・パムク |
上海人民出版社 |
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8 |
『圏子圏套2』 |
王強 |
長江文芸出版社 |
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9 |
『輸贏』 |
付遥 |
北京大学出版社 |
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10 |
『碧奴』 |
蘇童 |
重慶出版社 |
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11 |
『狼煙北平』 |
都梁 |
長江文芸出版社 |
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12 |
『五星飯店』 |
海岩 |
人民文学出版社 |
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13 |
『生死疲労』 |
莫言 |
作家出版社 |
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14 |
『第九個寡婦』 |
厳歌苓 |
作家出版社 |
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15 |
『喬家大院』 |
朱秀海 |
上海辞書出版社 |
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ノンフィクション部門で圧倒的な人気を誇ったのが、中国中央テレビ(CCTV)の番組「百家講壇」をまとめた古典シリーズ。同点1位でならんだ『品三国』と『于丹《論語》心得』、それに13位の『明亡清興六十年』も同番組から生まれている。難しい古典や歴史を、やさしい言葉でわかりやすく解説したのが人々に受け入れられた。
中でも注目されるのが、アモイ大学教授・易中天の『品三国』だ。昨年5月には中国初の版権オークションが行われ、500万元(約7500万円)もの高額アドバンスがついたことでも話題となった。ランク入りこそしていないが、易中天は昨年だけでも『易中天品読漢代風雲人物』『品三国前傳之漢代風雲人物』などの新著を次々と出版している。
この易中天を「PKに追いこめ」といった過激なキャッチコピーで関心を集めたのが、9位の『明朝那些事儿』(明朝それらのこと)。明の時代を小説風にひもといたもので、新浪ネットの人気ブログが書籍化された。CCTVシリーズではないものの、易中天の名前に乗じて知名度をあげた。
選者らが評価したのが、5位となった『人生若只如初見』(人生かくも初見の如し)だ。「詩経」「長恨歌」「子夜歌」などの古典名詩を、女性の筆者がエッセイ風によみといたもので、「古典の美と歴史ロマンを、感性あふれる筆致で描いた」と好評だった。
古典ものや歴史ものが人気だが、その影には"メディアミックス戦略"の成功がある。ランキングのうち、テレビやネットと組んだものは5冊にのぼる(順に、『品三国』『于丹《論語》心得』『快楽生活一点通』『明朝那些事儿』『明亡清興六十年』)。
CCTVの「百家講壇」は、「造星(スターをつくる)」番組ともいわれるが、07年はどんなスターが登場し、どんなベストセラーが生まれるか。テレビや出版、ネットなどのメディアの動きに、今年も注目していきたい。 |
■「図書年度風雲榜」ノンフィクション部門ランキング |
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作 品 |
著 者 |
出版社 |
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1 |
『品三国』 |
易中天 |
上海文芸出版社 |
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2 |
『于丹《論語》心得』 |
于丹 |
中華書局 |
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3 |
『季羨林談人生』 |
季羨林 |
当代中国出版社 |
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4 |
『美麗教主之変臉天書』 |
伊能静 |
接力出版社 |
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5 |
『人生若只如初見』 |
安意如 |
天津教育出版社 |
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6 |
『世界是平的』 |
トーマス・フリードマン |
湖南科学技術出版社 |
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7 |
『快楽生活一点通』 |
孫暁峰など主編 |
北京出版社 |
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8 |
『人体使用手冊』 |
呉清忠 |
花城出版社 |
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9 |
『明朝那些事儿』 |
当年明月 |
中国友誼出版公司 |
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10 |
『印記』 |
傅彪、張秋芳 |
長江文芸出版社 |
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11 |
『長尾理論』 |
クリス・アンダーソン |
中信出版社 |
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12 |
『八十年代訪談録』 |
査建英 |
三聯書店 |
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13 |
『明亡清興六十年』 |
閻崇年 |
中華書局 |
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14 |
『山南水北』 |
韓少功 |
作家出版社 |
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15 |
『吟賞風流』 |
范曽 |
華東師範大学出版社 |
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2007年がスタートし、北京五輪もいよいよあと1年半となりました。
北京市がこのほど明らかにした今年度の予算案によると、財政収入は約1263億元(1元は約15円)で前年比13%増、支出は約1,355億元で前年比9.8%増。
うちオリンピックの関連投資は10億元で、競技場や体育館などの建設をはじめ、交通・衛生・安全保障などの事前事業にあてられるそうです(『新京報』)。
市内では、民間のゼネコンによるホテルやマンション、オフィスビルの建設も盛ん。オリンピックを目前に、いたる所で槌音が高く響いています(写真は、市内にお目見えした干支のブタのオブジェ)。
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写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中
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http://china-media.jugem.jp/ |
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