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2006年09月  北京に激震か?

     壮絶な価格競争  
     

第三極 7折 V.S. 中関村図書 7.5折

北京のシリコンバレーと呼ばれ、北京大学などの名門校があつまるアカデミックなエリア――市内北西部の中関村。そこでいま、激しい本の価格競争がくりひろげられている。
大型ブックストア「第三極書局」のオープン当日に、そこから目と鼻のさきにある新華書店傘下の「中関村図書大廈」が「全品7.5掛」のバーゲンセールをスタート。開店したばかりの第三極書局は、すかさず「全品7掛」のセールでこれに対抗した。すると、中関村図書大廈はセール期間を延長し、両者の抜きさしならない対決に発展したのである。
エスカレートする闘いに、動揺をかくしきれないのが周辺の中小書店だ。9月6日には、中小書店の代表が「価格競争につよく抗議する」という声明を発表。「大手には耐えられても、中小の商売は上がったりだ。1日もはやく競争をやめ、市場を正常な軌道にのせることを願う」などと訴えている。
価格競争が、北京の一部から全体へ、またインターネットを通じて、ドミノ倒しのように全国にひろまることを懸念する声も出ている。北京のブックマーケットを震撼させる、壮絶な価格競争――。その現状と課題に迫った。

 
     

bj200609_02■2大書店の泥仕合

第三極書局(以下、第三極)は、7月15日に中関村の北京大学そばにオープンした民営のブックストア。巨大オフィスビルの5~8階を占め、総面積はこれまでに市内最大とされた西単の「北京図書大廈」の1.6万平方メートルをゆうに上まわる約2万平方メートル。"30万種の図書"をそろえ、"北京最大の規模"をほこるというのが売りである。
対する中関村図書大廈(以下、中関村図書)は、3年前の2003年11月6日にオープン。政府系の新華書店の傘下にあり、こちらもビルの1~5階にわたる大型書店だ。第三極からは、西へわずか100メートルほどの近距離にある。
大学や各種学校があつまるこの中関村エリアは、もとより100軒をこえるブックストアの激戦区。中関村図書や、第三極のような大型ストアの出現は、はやくから中小書店の存在をおびやかすものとして、関係者らの注目をあつめていた。それが、価格競争という"巨大地震"をじっさいに引き起こしたのだから、大ごとになった。

地元紙によると、発端は、第三極がオープン記念ではほぼ恒例となる優待券サービス(実質8.3掛)で人気を呼んでいたころ、中関村図書が第三極のオープン当日から8月15日まで、1カ月間の「全品7.5掛」(教材・輸入原書をのぞく)のバーゲンセールを始めたことにさかのぼる。
これが癇にさわったのか、第三極はすかさず9月1日から10月20日まで、約1カ月半の「全品7掛」セールをスタート。すると、中関村図書はバーゲン期間をさらに10月15日まで延長した。中関村図書からの"直球勝負"を、第三極が受けてたち、両者の抜きさしならない対決に発展したのである。

当事者である第三極の欧陽旭・董事長(取締役会長)は、こう語る。
「これは一種の"持久戦"だ。中関村図書のバーゲンは、もはや私たちの脅威となっている」(『新京報』)
もういっぽうの当事者、中関村図書の孟凡洪・総経理(社長)は、今回の価格競争が想定外であったことを強調する。
「バーゲンは、第三極に対するものでも、価格競争をあてこんだものでもない。競争はできれば回避したいほど。読者サービスのためだけに、バーゲンを続けているのだ」(同)
事態は、すでに泥仕合となりつつある。

 

bj200609_11■中小の売り上げ50%減

思わぬ衝撃にふるえあがっているのが、周辺の中小書店だ。中関村には100軒あまり、海淀区までエリアを広げると300軒以上もの大小のブックストアがひしめいている。
中国書刊発行業協会・民営(非国有)書業工作委員会がこのほど、周囲の中小書店を対象におこなった調査によると、価格競争がはじまって以来の売り上げは、前年同期比で7~50%減少したことがわかったという(『京華時報』)。
「バーゲンが1カ月なら、まだ我慢できる。3カ月から半年もつづいたら、中小はゼンメツだ」(万聖書園の劉蘇里・総経理)

こうした窮状をなんとか救おうと、同工作委員会の呼びかけで6日、急きょ開催されたのが「海淀中小書店 反悪性価格戦 緊急協調会」。万聖書園、光合作用書房、北京風入松書店、席殊書屋などからの出席があり、代表者が抗議声明を発表した。
「われわれは、全国の同業者や取り次ぎ(問屋)、メディア、読者らに呼びかけて、ともに不当な価格競争に対して、つよく非難する」。そのうえで、抗議声明は「自己の(生存)権利を守りぬく」としめくくった。
風入松書店の代表は、ため息まじりにこう語る。「零細書店は、価格競争には加われないよ。1日もはやく、混乱が収束することを願っている」(『新京報』)

bj200609_10■再版制度のない中国

ところで、なぜこうした事態が発生したのか?
日本のある出版関係者は、こう語る。
「再販制度(再販売価格維持制度)が設けられている日本では、書籍や雑誌を値引きして売ることはできない。だが、中国にはそうした制度がないからではないか」

再販制度とは、文化の普及と発展のために「新聞、書籍、雑誌、レコード盤、音楽用テープ、音楽用CDの6品目は、メーカーが小売価格(定価)を決めて、販売業者で定価販売することができる制度」のこと。
つまり、文化をひとしく普及させ、著作権を保護するために、全国一律で価格を維持する――というのがその趣旨だ(古書や時限販売のCD、ブックフェアでの割引等をのぞく)。
独占禁止法では、自由な価格競争をさまたげるものとして再販維持を禁じているが、著作物である書籍やレコードなどは「法定再販物」であるとして、とくべつに維持行為をみとめている。
この制度のメリットは、業者が安定した供給をおこなえることだが、デメリットは、自由競争がなく、値引きがなく、販売サービスが向上しないことである。

 

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「フランスでは、再販制度をはずしたところ、倒産する版元や書店が増えて大混乱。また書籍のみ再販にもどしたと聞いている。日本でもこの制度をなくして自由競争に、という動きがあったが、自由になれば零細の版元や小さな書店がつぶれてしまうために業界の猛反対にあい、いまは立ち消えとなっている」(同関係者)
たとえば、再販制度のないアメリカは国土がひろく、配送にべらぼうな費用がかかる。そのかわりに、巨大チェーン店と特徴のある専門店に二分され、寡占化がすすんで、零細の書店は少ないという。
「中国もアメリカのように、巨大チェーン店の競争の時代に入っているのではないか?」

中国では改革・開放後、とくに1990年代から、国営(国有、官営)企業の民営化にともなって、それまでの国営出版社や書店を民営型の企業(グループ)へと転換。中央政府の組織改編により、2004年には人民出版社以外の出版社をいずれも企業化したとされている(新華書店総店は、中央宣伝部が主管する企業グループ・中国出版集団公司に加盟している。また、王府井書店は「北京市新華書店王府井連鎖店有限責任公司」として企業化、チェーン展開をはかっている)。
そのため書店においても、大手企業と中小の小売店の二分化がすすんでいることは確かである。本の価格競争は、こうした市場化のながれによる必然の結果だったのだろうと、同関係者は分析している。

■本当に儲けはあるか?

「全品7.5掛」「全品7掛」で、本当に儲けはあるのか――。
関係者らの疑念の声があがるなか、中関村の2大書店はやんわりとそれを否定する。
「当店は、集約型の"新華物流仕入れセンター"を通して運営している。そのためコストがおさえられ、大きくはないが利益もある」(孟凡洪・中関村図書大廈総経理)
「短期の損失をふみ台にして、安定経営へとつなぎたい」(李松・第三極書局総経理)
報道によれば、中国の書籍は一般的に、書店への卸しが定価の60~70%。それを「7~7.5掛」で売るのだから、利益は微々たるものであるが、それでもこの間の売り上げは、中関村図書が前年同期比36%増(7月15~31日)、第三極が開店当初に比べて5割増(9月初め)と、それぞれかなり奮闘している。
(注:日本の書籍は一般的に、取り次ぎのマージンが8%前後、書店が22%前後。つまり、本は定価の約8割で書店に卸されるという)

「バーゲンはあくまでも企業行為。書店はそれぞれが、独自の経営スタンスを打ち出すべきだ。それによって、固定読者をもつことができる」
中関村図書の関係者は、そんな自信も漏らしている。

いっぽう、大手書店の独占をふせごうと、法の整備を求める声も上がっている。98年には、海淀区のいくつかの中小書店によって「図書小売商公約」がむすばれ、「開店・記念バーゲンでは、8~8.5掛の割引をこえてはならない」と定められたが、法的拘束力のないものだった。
再販制度のない中国で、価格競争が北京全体へ、またインターネットを通じて、全国にひろまることを懸念する声も出ている。
前述の民営書業工作委員会は、価格競争がエスカレートすれば、提訴もありうるとしながらも「業界全体への影響の大きさからして(2大書店には)理性的な職業道徳、市場の健全な発展を考えるよう、呼びかけていく」と語る。

読者にとってはありがたいバーゲンセールなのだが、その激震は、多様な書店のバランスをゆるがしかねない。市場は大手の独占となり、中小は淘汰されるのか? はたまた法整備がすすみ、割引に一定の基準がもうけられるのか? 中関村の"価格バトル"からは、しばらく目が離せない。

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bestsellere  

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など)
2006年9月8日~9月14日

     




 

1.『品三国』(上)
易中天著 上海文芸出版社 2006年7月初版


アモイ大学教授で、中国中央テレビ(CCTV)教育チャンネルの歴史講座「百家講壇」の講師の1人としても知られる著者が、中国の古典名著『三国演義』(三国志)を歴史に照らし、事実に即して説きあかす。


2.『品三国前傳之漢代風雲人物』
易中天著 東方出版社 2006年8月第2刷


今回のベストテントップに輝いた『品三国』の著者による、最新刊のひとつ。昨年、CCTVの「百家講壇」で放送されて、好評を博したシリーズ講座「漢代風雲人物」をまとめたものだ。
漢の高祖劉邦の功臣・韓信の「境遇の謎」「成敗の謎」をはじめ、前後あわせて400年もの漢帝国のいしずえを築いた劉邦の「勝利の謎」「好敵手の謎」など、風雲児たちに秘められたナゾが、テレビのままのやさしい言葉で解きほぐされる。


3.『人体使用手冊』(人体使用手帳)
呉清忠著 花城出版社 2006年5月第7刷


大陸で働いていた台湾生まれの著者が、積年の体調不良を中国医学で改善。その豊富な知識と体験にもとづいて、中国医学をわかりやすく解説している。


bj200609_084.『別了,我的書!』(さようなら、私の本よ!)
大江健三郎著 許金竜訳 百花文芸出版社 2006年9月初版


ノーベル文学賞受賞作家の大江健三郎さんがこのほど、中国社会科学院の招きで北京、南京を訪問された。北京ではサイン会やシンポジウム、講演会などが行われ、地元の人々にあらためて深い感銘を与えた(小欄の「おわりに」もご参照ください)。
そのサイン会で、対象となった著作が、中国語訳の新刊『別了,我的書!』をはじめ、既刊の翻訳本『愁容童子』(憂い顔の童子)、『我在曖昧的日本』(あいまいな日本の私)など。連日のように、大江さんの活動がメディアで取り上げられたこともあり、中国語版はみるみる売り上げを伸ばして、今回のベストテンではそのうちの2冊がランクインを果たした。
本書は、『取り替え子(チェンジリング)』『憂い顔の童子』とつづく3部作の完結編。東京のテロ計画に巻き込まれた、大江氏自身がモデルと思われる著名な老作家と、テロの構想を練る友人との「絶望からはじまる希望」「生と死」を描いた長編小説である。


5.『季羨林談人生』(季羨林が語る人生)
季羨林著 当代中国出版社 2006年4月第3刷


6.『懺悔無門』
王春元著 長江文芸出版社 2006年6月第2刷


米国籍の元華僑で、慈善家・李春平氏の半生を小説化。李氏は、北京市慈善協会名誉会長、中国紅十字(赤十字)総会名誉理事。


7.『人生若只如初見』(人生かくも初見の如し)
安意如著 天津教育出版社 2006年8月初版


サブタイトルに「古典詩詞の美しさと哀愁」とある。「詩経」「長恨歌」「白頭吟」「子夜歌」などの中国の古典名詩を、現代風によみといたエッセイ。女性筆者が、詩やことばの背後に秘められた美と歴史ロマンを、感性あふれる筆致で描き出したと本書にある。


8.『泡沫之夏Ⅱ』(バブルの夏)
明暁溪著 新世界出版社 2006年8月初版


9.『愁容童子』(憂い顔の童子)
大江健三郎著 許金竜訳 南海出版公司 2005年8月初版


国際的な作家・長江古義人が主人公の3部作の第2弾。故郷の森へ移り住んだ老作家が、自らの作品テーマやアイデンティティーを再検証しようとする。
故郷には、森の奥にいる「童子」が土地を守ってくれるという古くからの伝承があるが、古義人には「童子」にまつわる悲しい記憶があった――。
義兄・伊丹十三氏の自殺を扱った『取り替え子』の続編で、私小説風フィクションを軸としながらも、日本の近現代史を問い直す、重厚なおもむきの1冊だ。


10.『紀連海新解 乾隆朝三大名臣』(乾隆年間の3大名臣)
紀連海著 光明日報出版社 2006年9月初版


CCTV「百家講壇」の講師の1人で、北京師範大学第二付属中学の教師である著者が、テレビ講座の内容をまとめたもの。清代乾隆年間の"3大名臣"といわれる劉墉、紀暁嵐、和珅の歴史的真相にせまる。
著者には、ほかに『歴史上的多爾袞』(歴史上のドルゴン)などのベストセラーもある。

 
   
     

今回のベストテンでもご紹介したが、ノーベル賞受賞作家の大江健三郎さんが中国社会科学院の招きで、9月8日から15日まで、中国の北京と南京を訪れた。
北京では、中国共産党中央政治局の李長春常務委員が会見。日中両国が互いを尊重してつきあうことの重要性を説いた李常務委員に対して、大江さんは「若い世代の友好交流を促進しなければならない」と強調した(CCTVが会見当日の午後7時からのニュースで報道)。
また、同院主催の「大江健三郎文学作品学術シンポジウム」や講演会、北京図書大廈でのサイン会などに出席した。
大江さんは、日本がアジアで孤立しつつあることについて言及し、「(前回の訪中から)この6年来、私の憂慮はぬぐいきれない。それはいま、私が憂慮することがまさに起こっているからだ」と表明。そのうえで「晩年は、日本人の自覚を喚起していきたい」と今後のとりくみを明らかにした。
幼いころから魯迅の作品に親しんでいたといい、中国文学にも造詣の深い大江さん。北京でのサイン会や講演会は"大江フィーバー"ともいえるファンの熱気に包まれていたが、日本の現代文学について問われたときには「これまで他人に嫉妬したことはないが、村上春樹さんの作品が、中国で人気を集めていることには嫉妬をおぼえますね」などと、ユーモアを交えて語っていた。

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
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