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 1.『碧奴』蘇童著 重慶出版社 2006年9月初版
 
 サブタイトルに、「長城に泣く孟姜女の伝説」とある。張芸謀監督の映画「紅夢」の原作者としても知られる中国現代作家の第一人者・蘇童が、2000年にわたり民間に広く知られる「孟姜女伝説」を小説化した。「孟姜女は伝奇であるが、それは底辺の女性の伝奇ではなく、階級の伝奇に属するのかもしれない」(自序より)
 女主人公・碧奴(ビーヌウ)が、万里の長城建設に徴用されて工事中に亡くなった夫・岂梁(チーリャン)をおもい、長城の前で泣きつづける描写の細やかさは、読むものの胸を打つ。2000年の時をこえて、中国の人々に愛されてきた伝説を、小説版ではよりリアルに味わうことができるだろう。
 
 2.『品三国』(上)易中天著 上海文芸出版社 2006年7月初版
 
 アモイ大学教授で、CCTVテレビ講座の講師としてもおなじみの著者が、中国の古典名著『三国演義』(三国志)を歴史に照らし、事実に即して説きあかす。「曹操の真偽」「奸雄のナゾ」「三顧の茅屋」「必争の地」「赤壁疑雲」など、『三国志』の名シーンや人物たちを、最新の考証によって掘りおこしている。中国を代表する名作であるだけに、注目度もバツグンのようだ。易中天氏は、近著の『品人録』『漢代風雲人物』などがいずれもベストセラーとなる時の人。本書には、講演録画のVCD「私の歴史観」の付録もある。
 
 3.『泡沫之夏Ⅱ』(バブルの夏)明暁溪著 新世界出版社 2006年8月初版
 
 ネット小説で支持をあつめる若手女性作家・明暁溪の『泡沫之夏』第2弾。孤児の尹夏沫と洛熙は、養父母の家で知りあった幼なじみ。やがてイギリス留学から戻った洛熙は、人気歌手として成功をおさめ、音楽会社で働く尹夏沫とばったり再会する。そこに、富豪の御曹司で、記憶をなくした欧辰が現れる。ヒロイン・尹夏沫をとりまく、三角関係の恋のゆくえは??シリーズは第3部が完結編となり、さらに「複雑でおもしろいものになる」と作者は自信をのぞかせている。
 
 4.『易中天品読漢代風雲人物』(易中天が読む漢代の風雲児)易中天著 東方出版社 2006年3月第2刷
 
 5.『懺悔無門』王春元著 長江文芸出版社 2006年6月第2刷
 
 米国籍の元華僑で、慈善家・李春平氏の半生を小説化。李氏は、北京市慈善協会名誉会長、中国紅十字(赤十字)総会名誉理事。 
 6.『人体使用手冊』(人体使用手帳)呉清忠著 花城出版社 2006年5月第7刷
 
 大陸で働いていた台湾生まれの著者が、積年の体調不良を中国医学で改善。その豊富な知識と体験にもとづいて、中国医学をわかりやすく解説している。 
 7.『追風筝的人』(カイト・ランナー)カーレド・ホッセイニ著(米)/李継宏訳 世紀出版集団/上海人民出版社 2006年5月初版
 
 8.『哆来咪発唆』(ドレミファソ)可愛淘著(韓)/黄黌訳 中国城市出版社 2006年7月初版
 
 『局外人』(アウトサイダー)などのベストセラーで知られる、韓国の女流作家・可愛淘(中国語訳)の最新作だ。天使の歌声をもつ男性ボーカル・成隠葵と、天才柔道少女・雲浄媛の不釣り合いでユーモラスなラブストーリー。 
 9.『如何掌控自己的時間和生活』 (いかに自分の時間と生活をコントロールするか)アラン・ラーキン著(米)/劉祥亜訳 金城出版社 2006年1月初版第3刷
 
 米国の「時間管理の父」アラン・ラーキンのロングセラー。ビル・クリントン前大統領が、その回顧録『マイライフ クリントンの回想』のなかで推薦したことでも知られている。「成功のポイントは時間管理にある」として、計画こそが実現への道であると説く。プランニングの方法は、たとえば短・中・長期の人生目標を書きだして、重要度によってそれをABCの3グループに分け、さらに実現への具体的な行動をそれぞれに書きこむ、というもの。
 「中国人は、財務の自由度を知ったばかりだが、時間の自由度を忘れてしまった。(中略)時間管理をしない勤労は、よろしくないことだ」と清華大学の楊斌博士は、時間管理の意義を語る(中文版・序文)。
 日本では『ラーキンの時間管理の法則』として、1978年に実務教育出版から初版本が出されている。
 
 10.『可不可以不要上班』(出勤しなくていい?)弯弯著(台湾) 北方文芸出版社 2006年5月初版
 
 ドジでおちゃめなOL・弯弯(ワンワン)の笑いと涙の日常を、絵日記ふうに描いている。パソコンにかじりついている弯弯。「ん? マウス(ポインター)が動かない。なんで?」。右手で動かしていたのは、携帯電話だった……。〈マウスを使う〉
 歯医者「痛かったら言ってくださいね」「痛い!」
 歯医者「治療中は声を出さないでください」「……」〈おかしな歯医者〉
 
 日本のマンガを彷彿させるような、かわいらしいキャラクターの喜怒哀楽に悲喜こもごも……。あわただしい時代にあって、癒し系の「読図」(絵を読む)文化が、大陸にもじわじわと浸透していることがうかがえる。
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