中国・本の情報館~東方書店~
サイト内検索
カートを見る
ログイン ヘルプ お問い合わせ
トップページ 輸入書 国内書 輸入雑誌  
本を探す 検索 ≫詳細検索
東方書店楽天市場店「東方書店plus」
楽天市場店 東方書店plus
 
各種SNS
X東方書店東方書店
X東京店東京店
X楽天市場店楽天市場店
Instagram東方書店東方書店
Facebook東京店東京店
 
Knowledge Worker
個人向け電子書籍販売
 
BOOK TOWN じんぼう
神保町の書店在庫を横断検索
 
日本ビジネス中国語学会
 
北京便り
上海便り
ネット用語から読み解く中国
 
bei_title  
 

2006年02月  話題騒然の

     『プロミス』VS『饅頭殺人事件』  
     

アクション・ファンタジー大作『PROMISE 無極(プロミス)』の陳凱歌(チェン・カイコー)監督が、ネット上に公開されたパロディー短編『一個饅頭引発的血案』(マントーが引き起こした殺人事件)の作者を相手に「著作権の侵害」だとして告訴しようとしている問題が、騒然となっている。
陳監督が「恥知らず!」と激怒して、この問題で告訴する考えを表明したのに対し、ネット上では「"草の根"の"権威"への挑戦」「陳凱歌は、遊び心に欠けている」などというパロディー短編を支持する意見が続出。マスコミ各社もこの問題を大きく取り上げ、2月15日には国家版権局の幹部が記者会見で、「『饅頭』が著作権を侵害しているかどうかは、民事裁判によって確定すべきだ」という見解を述べている。
国際化とネットの普及がすすむ中国で、ある意味では起こるべくして起こった「著作権保護」と「表現の自由」の戦い。そのセンセーショナルな話題を追った。

 
     
 

06年の正月映画として注目された『プロミス』は、日本の真田広之、韓国「四天王」のチャン・ドンゴン、香港のセシリア・チャンとニコラス・ツェー、中国本土のリウ・イエといった、東アジアのトップスターを結集したアクション・ラブファンタジー(2月11日から日本公開中)。
総製作費は3億元超(1元は約15円)、国内の興行収入は約1億5000万元で、05年製作の中国映画のなかでは、ダントツの好成績をあげたという(1月29日付・天津テレビ報道)。2月のベルリン国際映画祭でも、外国語映画賞にノミネートされて話題をよんだ。

いっぽうの『一個饅頭引発的血案』は、『プロミス』の映像をベースに使い、1つの饅頭が引き金となった殺人事件をテレビの報道番組タッチで描く20分のお笑いムービー。
作者は、胡戈さん(31歳)。上海に住む、フリーの録音エンジニアの青年だ。「『プロミス』を観たら強烈な衝動を覚えて、数日間でつくりあげました」という(『北京晨報』)。
大まかなあらすじは――カラオケやダンスなどが楽しめる複合娯楽施設「娯楽城」の経営者が何者かによって殺害され、顔見知りだった町の商業施設管理チームのリーダー(真田広之)が、容疑者として逮捕される。そこに、いつも衣服を着たり脱いだりしている娯楽城のファッションモデル(セシリア・チャン)や、リーダーの部下であった俊足の男(チャン・ドンゴン)、事件の黒幕(ニコラス・ツェー)など映画の登場人物たちが、爆笑もののギャグを連発しながら複雑に絡み合っていく――というもの。昨年12月31日に「友人への新春プレゼント」としてネット上で公開されてから「超おもしろい!」「涙が出るほど笑いました」などという噂がウワサを呼んで、数日間で中国全土に広まっていった。

これに対し、黙っていなかったのが陳監督をはじめとする製作サイドだ。監督は2月11日、映画祭のために訪れていたベルリンで、胡戈さんを名指しして「恥知らずだ! 告訴することも辞さない」と気炎をあげた。驚いた胡戈さんは「自分が楽しむために作ったんです。こんなに広まるとも、みんなが喜ぶとも思わなかった……」とすぐさま謝罪の意を表したが、製作サイドは「告訴の権利を保留にしているところ」だという(16日付『京華時報』など)。

 
 

中国を代表する映画監督がものものしい態度に出たことが、さらなる関心を呼びおこし、ネット上では「『無極』VS『饅頭』」「天才の萌芽を摘みとる危機」「陳凱歌は、娯楽精神(遊び心)に欠けている」などの議論が百出。
マスコミ各社も、これを大きく取り上げだした。
中国共産党傘下の法律部門の有力紙『法制日報』(16日付)は「パロディー短編が著作権侵害にあたるかどうか、激しい論議に」との見出しで、「使用権などを侵害した」とする(告訴)肯定派と、「侮辱、誹謗などの表現はしていない。名誉毀損の罪にはあたらない」とする否定派の両者の意見を掲載。若者に人気の『北京青年報』は、「"饅頭"に"殺人事件"を引き起こすだけの価値があるか」との見出しで、1面トップと特集記事で大々的に報道した(19日)。21日付の中国共産党の機関紙『人民日報』も「ネット作品による著作権侵害、法律はどこからメスを入れるべきか」という硬派な論評を取り上げた。

 
 

加熱する両者のデットヒートに対して、国家版権局版権司の王自強・司長は15日の記者会見で、「状況説明などのために、適切かつ合理的な範ちゅうで他人の作品を引用するのは、法律上許されること。『饅頭』がその範ちゅうを超えているかどうかは、民事裁判で確定すべきだ」という見解を述べた。
その後、胡戈さんのブログ( http://blog.sina.com.cn/m/huge )によれば「『プロミス』側と連絡をとっているが、未だに結論は出ていない」(17日付)という。
胡戈さんにしてみれば、ネットによる広がりは予想外の展開だった。また、陳監督にしてみれば、心血を注いだ作品が勝手に改編されたのが許せなかったに違いない。もつれた糸は絡みあい、容易にほぐれそうにない状態だ。

ところでこの『饅頭殺人事件』だが、訴訟沙汰との関係か、ダウンロードがブロックされたポータルサイトもあるようだ。著作権問題を考慮してここではその公開を差し控えさせていただくが、じっさいに見てみると、さすがは話題になるだけのおもしろさ。皮肉とユーモアたっぷりの作品で、不謹慎ながらも声をあげて笑ってしまった(陳監督、ごめんなさい)。
だからこそだろう。『饅頭』人気はなかなか根強いようである。人気ポータルサイト「網易」( http://www.163.com/ )が先ごろ、約1万5000人のネットユーザーを対象に行った調査では、この問題で陳監督を支持する人は843票で全体の4%、胡戈さんを支持する人は1万4760票で全体の84%、なんとユーザーの約8割が『饅頭』を支持したのである。
胡戈さん支持の理由としては、
  ①『プロミス』より『饅頭』のほうが、断然おもしろかったから、
  ②『饅頭』は『プロミス』をタダで宣伝してあげたから(『饅頭』を見てから本編を見に行った人が多かった)
  ③監督の訴訟により、天才の萌芽を摘みとり、自由な創作機会をうばう可能性があるから
などがあげられたという(16日付『新京報』)。

じっさいに『プロミス』と『饅頭』を見比べたという中国の青年(29歳)に、印象を聞いてみた。
「『プロミス』は、高いチケット代(50~60元)を払って観たのに、ちっとも面白くなかった。観客はみんな不満を持っているのに、マスコミから正直な評価は出てきません。それに比べると『饅頭』は、奇想天外の面白さ。映画で描かれた伝説上の舞台が、ここでは"娯楽城"になっていて、想像力と創造性に富んでいた。しかも相当な技術レベルで、それでたちまち惹きつけられた」

――なぜ、中国の人たちに、これほどまでに受けたのか?
「1つには、中国に登場した初めてのパロディー映画だったから。原作映画を借りながら、しかも社会の現実を面白おかしく風刺している。そこには、新鮮な驚きとおかしさがありました。
2つには、陳監督はまるで"裸の王様"で権威をふりかざしているが、その王様のマントを見事にはいだのが、僕らと同世代の若者だったからです」

――こうした作品が現れた背景は、どこに?
「インターネットの発展と普及が上げられるのではないか。現実問題として、中国ではネットを使えば、流行の音楽も映像も自由に手に入れることができる。素材がすぐに入手でき、改編することも可能です。そうした作品が、ネットの普及でまたたく間に広まっていった。
もう1つは、個人の技術レベルの向上で、胡さんは電影学院の卒業生ではないが、すぐれた技術を持っている。こうして様々な要因が重なって、一大ブームになったのでしょう」

――今回の事件そのものに対しては、どう考えるか?
「胡さんを応援したいですね。胡さんには勇気とアイデア、技術力がある。別の映画を引用した2作目のパロディー『春運帝国』も見ましたが、これもすばらしい出来でした。彼のような人に、面白い映画を作ってもらいたいものですね」

ネット世代を敵にまわしたかに見える陳監督サイドだが、激しさを増す両者のバトルに対して、冷静になるよう呼びかける向きもある。
「"饅頭事件"は理性的にとりあつかうべき。法律に照らして見直すべきだ。そうしてこそ監督側が横柄なのか、または胡戈さんに寛容でなくてもよいのか、バランスのとれた議論ができる」(16日付『新京報』、弁護士の投稿)

パロディー作品にくわしい、日本のある映画ジャーナリストはこう語る。
「その作品(『饅頭』)は観ていませんが、中国にもパロディーが登場したことで"ようやくハリウッドに追いついた"といえるのではないか。ハリウッドでは『裸の銃(ガン)を持つ男』『ホット☆ショット』など、パロディー映画の製作も盛ん。パロディーに取り上げられた作品は一流の"勲章"をもらったも同然なので、陳凱歌監督ももう少し大らかに構えてもいいのかもしれませんね。ただし、パロディー作品はあくまでもリメイクの話。もとの映像を許可なくそのまま使ったのでは、れっきとした著作権法違反になるでしょう」

中国では、ネット利用者が昨年末で1億1100万人に達したといわれ、情報化と国際化が急速にすすんでいる。
そうしたなかで起こった今回の"饅頭事件"。裁判沙汰になるかどうか事態はなお予断を許さないが、それはもしかすると、中国の「著作権保護」と「表現の自由」のゆくえをうらなう"試金石"になる? 現代中国史に刻まれる、シンボリックな出来事になるかもしれないのである。

 
   
     
     
bestsellere文芸類  

★北京図書大廈(西単)(北京市西城区西長安街17号)http://www.bjbb.com
2006年1月1日~1月31日

     





 

1.『達・芬奇密碼』(原題『THE DA VINCI CODE』)
ダン・ブラウン著(米)/朱振武・呉晟・周元暁訳 上海人民出版社 1482冊


なんとこの本、中国では2004年初めに翻訳本がベストテン入りを果たしたのだが、2年の歳月を経て、またしても1位に返り咲いた?
それもそのはずで、今年は「中国・イタリア年」。北京では今、市内にあるミュージアムの中華世紀壇世界芸術館で「イタリア・ルネサンス芸術展」が開かれており、そこにダ・ヴィンチの素描「女性の頭部」などが展示されて人気を呼んでいるからだ(4月23日まで)。『ダ・ヴィンチ・コード』にも出てくる素描「ウィトルウィウス的人体図」の実物大の複製もある。それで、本書がふたたび注目を集めているのだろう。
ちなみにルネサンス芸術展には、ラファエロ、ボッティチェッリ、ドナテルロなど、ルネサンスの巨匠たちの作品が約80点展示されている。大勢の人で賑わっているが、「北京でルネサンス」なんていうのも、なかなか乙なものですよ。


2.『一座城池』(THE IDEAL CITY)
韓寒著 二十一世紀出版社 2006年1月初版 1428冊


3.『藏獒』(ザンアオ)
楊志軍著 人民文学出版社 2005年9月初版 1426冊


4.『Outsider 局外人2』(アウトサイダー)
可愛淘著(韓) 中国城市出版社 2006年1月初版 1423冊


『局外人』の中国語版がお目見えしてから約2カ月。早くもそのパート2が、ベストテンの上位入りを果たすという人気ぶりだ。作者はネット世代の若者を中心として、中国でも絶大な支持をほこる韓国の女流作家・可愛淘(中国語訳)。小説はなおもパート3へと続く予定だ。
家人が亡くなり、孤児となった18歳の韓雪理は、ひきとられた家の兄弟、江天空、江尹湛と互いに意識するようになるが……。毎朝5時に鳴る奇怪な電話は? 天空、尹湛の写真にうつる見知らぬ人は? 謎だらけの家は、韓雪理を"部外者"として除外するかのようだった……。
可愛淘の「最高傑作」の呼び声も高い、ミステリータッチの青春小説。ウェブサイトを通じた作品公開やPRが功を奏してか、可愛淘ファン「淘迷」(タオミイ)の心をしっかり掴んだようである。


5.『我想跟你走』(あなたと共に行きたい)
劉若英著(文・写真) 中信出版社 2006年1月初版 1313冊


台湾の人気シンガーであり、女優の劉若英(レネ・リュウ)。劉徳華(アンディ・ラウ)と共演した映画『天下無賊』では、香港金紫荊賞の最優秀主演女優賞を受賞した、今をときめくアジアンスターだ。
そんな彼女のフォト・エッセイ。「人生ってシンプルなもの。しかもそれは完璧なもの」(本書より)――。幼いころの鮮やかな記憶、両親の離婚、初ライブや初サイン会の思い出など、ページをめくると、素顔の彼女が語りかけてくれるようだ。


6.『狼図騰』(オオカミのトーテム)
姜戎著 長江文芸出版社 1199冊


7.『劉心武 掲秘《紅楼夢》(第2部)』(劉心武があばく『紅楼夢』)
劉心武著 東方出版社 2005年12月初版 904冊


8.『Outsider 局外人』(アウトサイダー)
可愛淘著(韓) 中国城市出版社 2005年11月初版 899冊


9.『那些生命中温暖而美好的事情』(人生の温かくすばらしいこと)
落落著 黒龍江美術出版社 2005年11月初版 826冊


1980年代生まれの女流作家・落落の最新短編小説集。ネットで連載されていた代表作の「如果声音不記得」(もしも声を覚えていなければ)は、日本の漫画にインスピレーションを得て描かれたという。
高校生の吉沢玉緒は、理科の全国選抜コンテストに出場するため、30日間の強化合宿に参加していた。模擬テストで1番になったのが、以前から気になっていた男子生徒の新堂聖。バッタリ出くわした時に、玉緒の名前を呼んでくれた。その声は、澄んでいて美しかった……。
誰しもが持つだろう青春の甘酸っぱい思い出を、呼びさましてくれるラブストーリー。中国の漫画家・SHELが描く少女漫画ふうのイラストも見どころ。短編の「你遇見誰」(誰に出会う)は、漫画化されて別冊付録にもなっている。


10.『亮剣』
都梁著 解放軍文芸出版社 2005年3月第3版 717冊

 
   
     

 

13年ぶりに花火や爆竹の音でにぎわった春節(旧正月)休暇も終わり、ふだん通りの活気が街に戻りました。400万人ともいわれる出稼ぎ労働者たちが持ち場に戻り、地下鉄やバスのなかでは、なまりの強い方言が飛びかうようになりました。
ところで、この写真は最近の北京の表情……。2年後にひかえたオリンピックを迎えるために、至るところで"化粧直し"が進んでいます。表通りは高層ビルの建設ラッシュ。
そして、そこから一歩なかへと足をふみ入れると、昔ながらの北京の横町「胡同」(フートン)がガラガラと取り壊される光景も……。
あまりもの変化の速さに、息を呑んで見つめるばかりの毎日です。

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
  b_u_yajirusi  
 
   
中国・本の情報館~東方書店 東方書店トップページへ
会社案内 - ご注文の方法 - ユーザ規約 - 個人情報について - 著作権について