中国・本の情報館~東方書店~
サイト内検索
カートを見る
ログイン ヘルプ お問い合わせ
トップページ 輸入書 国内書 輸入雑誌  
本を探す 検索 ≫詳細検索
東方書店楽天市場店「東方書店plus」
楽天市場店 東方書店plus
 
各種SNS
X東方書店東方書店
X東京店東京店
X楽天市場店楽天市場店
Instagram東方書店東方書店
Facebook東京店東京店
 
Knowledge Worker
個人向け電子書籍販売
 
BOOK TOWN じんぼう
神保町の書店在庫を横断検索
 
日本ビジネス中国語学会
 
北京便り
上海便り
ネット用語から読み解く中国
 
bei_title  
 

2006年01月  健さん人気、ふたたび

     
     

bj200601_01「『千里』観た?」
それが、北京の友人と交わす最近の挨拶となっている。今年の正月映画として話題を呼んでいる張芸謀監督の『千里走単騎』(邦題『単騎、千里を走る。』)のことである(1月28日から日本公開)。
主役はごぞんじ、高倉健さん。中国語は一言もしゃべらなくとも、その圧倒的な存在感と"いぶし銀"のような味わいのある演技に、中国の人々もすっかり魅了されたようだ。興行収入においても、今年の正月映画では「文芸ものでは珍しい」第3位の好成績を上げているし、映画評や人物評が次々とマスコミに取り上げられている。中国では初めてという評伝の『高倉健 影伝』(映画伝、聯慧・著)もこのほど、中信出版社から刊行された。
高倉健主演の日本映画『君よ 憤怒の河を渉れ』(中国題『追捕』)が、「文革」後まもない中国で初公開され、一大旋風を巻き起こしてから28年。往年のファンも新しいファンも巻き込みながら、"健さんブーム"は再来しそうな勢いだ。
中国の正月映画にからむ映画本については「上海便り」の須藤みかさんも取り上げられていたが、ここでは特に2006年の"健さん人気"に注目してみたい。

 
     

1月のある日曜日。北京の繁華街・王府井のシネマコンプレックス(シネコン)は、大勢の映画ファンでにぎわっていた。入り口のテレビ画面に映し出されていた『単騎、千里を走る。』のメイキングビデオを見ていると、ある若いカップルがやってきて足を止めた。
「これ、見たよ。面白かった!」「そう、どんな?」「日本で超有名な俳優の高倉健が父親役で、息子とは疎遠になっているんだ。その息子はガンに侵されていて余命いくばくもない。父親は、演劇研究家の息子の夢をかなえようと単身中国に渡って、『三国志』の関羽にまつわる仮面劇『千里走単騎』をビデオに収めようとするんだ……」
驚いた。若い男性はなんと、映画のストーリーをラストまで話し尽くしてしまったのだ。(それじゃあ、彼女が見たくなくなるよ)と心の中で茶々を入れながらも、興奮気味に語る男性になんとなく好感を持った。この作品をよっぽど気に入って、DVDなどで何度も観たのかもしれないな、と。

確かに『単騎、千里を走る。』は、かけがえのない父子のつながり、国境とことばの壁を超える心の交流を描いた感動的な物語である。
市内にある別のシネコンで、この映画を見たときには、場内のあちこちからすすり泣く声が漏れていた。中国の友人たちの間では「前評判と興収で勝るのは、大作の『無極 PROMISE』(陳凱歌監督)だけれど、感動するのは『千里』だね」というのがもっぱらの話題となっている。
1月19日付の共産党機関紙『人民日報』などによれば、『単騎、千里を走る。』の興収は、昨年12月22日に全国公開されてから20日で約3000万元(1元は約15円)を記録。これは『無極』『情癲大聖』につづく第3位の成績となるが、「文芸もの」では快挙だといい、張芸謀監督はこの結果に「満足している」と語っているという。

高倉健さんの"いぶし銀"の演技にも、高い評価が寄せられている。『新京報』と中国の大手ポータルサイト「新浪ネット」がこのほど、約2000人の観客を対象に行った調査によれば、次のような興味深い結果となった。ちなみに観客の7割が、30代前後の若者であった(『新京報』2005年12月24日付)。

Q)『単騎、千里を走る。』に感動しましたか?
  A) 得票数
1 すごく感動した 2033 80.51
2 ふつう 320 12.67
3 それほどでもない 172 6.81
   
Q)作品中、最も好きな俳優は?
  A) 得票数
1 高倉健(高田) 1789 70.85
2 楊楊(子ども) 311 12.32
3 邱林(男性ガイド) 240 9.50
4 蒋雯(女性ガイド) 136 5.39
5 寺島忍(嫁) 49 1.94
   
Q)今年の正月映画で、最も良かった作品は?
  A) 得票数
1 『千里走単騎』 1939 76.79
2 『無極』 219 8.67
3 『如果・愛』 212 8.40
4 『情癲大聖』 155 6.14
   

これによれば、『単騎、千里を走る。』は"健さん人気"がダントツであることがわかるし、観客が"健さんの映画"に感動したという図式がおのずと見えてくる。『無極』がトップをひた走る興収成績とはウラハラに、約8割の観客が「『千里~』が一番良かった」と答えたのも、ハリウッド風の超大作より「文芸もの」を評価する"回帰現象"なのかもしれない。
映画をご覧になった方ならおわかりかと思うが、スクリーンには張芸謀監督の"あこがれのスター"高倉健への愛があふれている。若いころに見た『君よ 憤怒の河を渉れ』が、張監督の"映画道"に大きな影響を与えたエピソードはよく知られているが、その強いあこがれと感動が、『千里~』を通じて観客にも伝わったのではないか……。王府井のシネコンで出会った若者も、その一人だったに違いないと思うのだ。

映画評や高倉健論も、中国のマスコミに次々と取り上げられている。
「高倉健:三日に一度は(感動で)泣いていた」(『北京青年報』05年12月18日付)
「高倉健は、張芸謀の"千里"の夢」(『新京報』12月23日付)
「高倉健:晩年の青春の記憶」(『新京報』1月13日)……。

張芸謀監督は、健さんの演技や人となりについて「感情を内に秘めながらも、奥深い味わいのある演技。背中で表現できる人だ」(『北京青年報』)、「自己への厳しさ、精神と肉体への厳しさは想像を絶するが、学ぶ価値のあるものだ」(『新京報』)と最高級の賛辞を贈る。
また、北京電影学院の張会軍学長は「高倉健さんは、東方の"男子漢"(ナイスガイ)のシンボルだ。表面的には無骨だが、内面的には非常に細やかな人である」(『新京報』)と、その好印象を述べている。

作品自体は「現実味に欠けているのでは?」と思わせるディテールもないではないが、最後まで健さんの演技に魅せられてしまう。そして中国のマスコミの大多数も、この映画と健さんを好意的に捉えている。
女性ガイド役を演じた蒋雯さんは、インタビューにこう答えている。
「高倉健さんは、みんなから尊敬されていました。(北京電影学院の文学部大学院生で)演技を学んだわけではない私に、なんども指導してくれた。鏡の前で、演技がより美しく見えるテクニックを教えてくれたのです。とても感動しました。後から聞くと、日本では女優さんに指導したことなどないし、授業料がいくらあっても足りないと、通訳にからかわれました」(『新京報』)
2カ月におよぶ雲南省ロケでは、スタッフや俳優たちが尊敬と親しみの意味を込めて、高倉健さんを"老高"(ラオガオ、高さん)と呼んでいたそうである。

中国初という評伝『高倉健 影伝』もこのほど、出版された。その生い立ちから出会いと別れ、50年におよぶ映画人生、『千里~』を含めて204本の出演映画などが、健さん自身のコメント引用や写真によって紹介されている。
なかでも『君よ 憤怒の河を渉れ』(佐藤純弥監督)が、78年に中国で公開されたときの人々の熱狂ぶりがスゴイ。筆者によれば「高倉健の中国への影響は、この映画を抜きには語れない」。
「(高倉演じる)検察官・杜丘のりりしい顔立ち、鋭いまなざし、スタンドカラーのジャンパーのかっこよさが、数億人の観客の目をくぎ付けにした。(中略)当時、あるアパレル工場が、10万着の杜丘風ジャンパーを作ったところ、半月で売り切れた。『高倉健を探せ』が流行語になり、彼のような硬骨漢が若い女性の理想の男性像になった……」
「文革」後まもない中国のことだ。娯楽に飢えていた人たちが、日本のアクション大作に驚嘆したのも、必然のなりゆきだったのだろう。

そして今――。往年のファンはもちろん、その子どもや孫の世代が、健さんに熱いまなざしを注いでいる。『追捕』は知らなくとも、『千里~』で健さんに惹かれる若い世代が生まれている。『単騎、千里を走る。』ではないが、ほぼ単身で渡航して、初の中国ロケを駆け抜けていった健さん。"東方のナイスガイ"は、スクリーンの上だけでなく、現代の観客の心にもしっかりと刻み込まれたようである。

 

 
   
     
     
bestsellere  

★王府井書店(新華書店)(北京市東城区王府井大街218号)
2006年1月第3週の週刊ベストセラー

     








 

1.『狼道―人生中的狼性法則』(狼道―人生におけるオオカミ性の法則)
王宇編著 中国物資出版社 2005年10月第2刷


ベストセラーとなった前作『狼道―生活中的狼性法則』(狼道―生活におけるオオカミ性の法則)の編者による"狼道"の第2弾。それによれば、オオカミ性の4大特徴とは、①飽くことなく追求する「貪」、②困難を1つひとつ克服し、消滅させる「残」、③勇敢に戦い命知らずの「野」、④逆境の中でも乱暴なまでに難関を突破する「暴」であるという。その「弱きをもって強きに勝る」オオカミの本質を、現代人のビジネスや生活に生かしたいと編者は語る。
中国では近年、『狼図騰』(オオカミのトーテム)など本のタイトルに"狼"をつけたものが多く、しかも人気を集めている。中国の家電大手・ハイアール集団の張瑞敏CEO、中国最大のPCメーカー・聯想(レノボ)の楊元慶総裁らがいずれも「オオカミ」を崇拝しているそうだが、おそらくはそうした成功者の秘密が、読者を"狼道"に導いているのだろう。


2.『Outsider 局外人』(アウトサイダー)
可愛淘著(韓) 中国城市出版社 2005年11月初版


3.『感悟人生全集』(人生を悟る全集)
白全珍編著 黒龍江美術出版社 2005年9月初版


「運命は自分で変更し、決定することができる」「失敗を踏みつけて、成功に向かう」「楽しく、もっと幸せに」「欲望と金銭の奴隷にならない」など、全15章300以上におよぶ古典的な物語から、人生を楽しく、幸せにおくるための知恵を紹介。「人生には悟りが必要であり、悟りがあればこそ、叡智と快楽、幸福に恵まれた悔いのない人生を送ることができる」と編者は語る。


4.『小故事大道理全集』(小さな物語、大きな道理の全集)
雅瑟編著 海潮出版社 2005年4月第2刷


5.『北京交通旅遊詳図』(北京交通・観光詳細マップ)
中国地図出版社 2005年7月北京第3刷


縦83センチ、横114センチ、縮尺4万9000分の1の北京市中心部の最新マップだ。東は地下鉄が延びた「通州区」から、西は森林公園のある「門頭溝区」まで、南は経済技術開発区のある「大興区」から、北は新興住宅地の広がる「昌平区」までと、6環路(第6環状道路)以内の地理を網羅している。
オリンピックを目前に、急速に変わる北京を知るための必須アイテム。裏面には、郊外区の地図と主要観光スポットを掲載している。


6.『一座城池』(THE IDEAL CITY)
韓寒著 二十一世紀出版社 2006年1月初版


処女作の『三重門』が大ベストセラーとなり、一世を風靡した高校生作家の韓寒くんも23歳。こんどの新作は、ネット連載とほぼ時を同じくして刊行された。「プロットが弱いので、自分でもどんな小説なのか概括できない。ただ、文章のスタイルとか文字の力は、これまでで最高の出来だと思うんだ」(『北京青年報』)と韓寒くんは語る。
中途退学した「僕」は、ケンカ事件を起こして、1つ年上の同級生「健叔」とある町に逃亡する。長江旅館に泊まり、ぶらぶらして過ごすうちに「王超」という新しい友人ができて……。何ものにも束縛されない若者たちの"光り輝く"青春時代が記録される。
初版発行が50万部、版権料が200万元(約3000万円)という破格の数値も早くから話題となっている。


7.『聴南懐瑾大師講経:感悟篇』(南懐瑾大師の説法を聞く:悟り編)
胡衛紅編著 新華出版社 2005年11月初版


儒教、道教、仏教に精通した南懐瑾大師の教えを、やさしく解説。
「『孔子の三字経は、誠、敬、信』――人として成すべき3大ポイント」、「『天下は利口者に乱される』――賢さは少し、知恵を多く」「『仏を拝むのは、自分を拝むこと』――他人を敬うことは、自分を敬うこと」という、思わず襟を正すような金言に本書は満ちている。


8.『哈利・波特与"混血王子"』(ハリー・ポッターと混血のプリンス)
J.K.ローリング著(英)/馬愛農・馬愛新訳 人民文学出版社 2005年10月初版


9.『思念依然無尽――回憶父親胡耀邦』(思慕は尽きず――父・胡耀邦の追憶)
満妹著 北京出版社 2005年11月初版


学生の民主化運動への対応を批判され、1987年に解任された故胡耀邦・元総書記の生誕90周年、死去16周年を記念して、編み出された伝記。筆者は、胡氏の長女であり、現在、中華医学会理事などの要職を務める満妹さん。


10.『狼図騰』(オオカミのトーテム)
姜戎著 長江文芸出版社

 
   
     


中国最大の年中行事・春節(旧正月)を1月29日に控えて、北京でもっぱらの話題となっているのが、13年ぶりの爆竹・花火の解禁です。
火災や事故につながるからと禁止されてきましたが、「伝統文化を守ろう」という市民の熱い要望にこたえて、市当局がようやく爆竹の"禁改限"(禁止から制限に改める)を決定したのです。
春節の1週間前にあたる22日、市内585カ所で爆竹・花火の販売がスタートしたのを機に、早速とある販売所をのぞいてみました。酒・タバコの専売店に設けられた一角には、おめでたい赤色を多用した爆竹や花火がズラリ。1個1.2元(1元は約15円)のねずみ花火から、3800個160元の連発式爆竹まで種類も豊富で、見ているだけでも楽しくなります。さすがは、古代4大発明の「火薬」を生み出した国のことだけはあります。
ただし、正規の販売所で売られているのは、大きさや火薬量の制限された「威力の弱い」合格品のみ。市内中心部では、爆竹を鳴らす時間も場所も制限されているので、多少の堅苦しさは残りますが「なに、鳴らせないよりはマシさ。この景気のいい音を聞かないと、春節を迎えた気がしなくてね」と爆竹を抱えた客の一人は、ほくほく顔で帰っていきました。

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
  b_u_yajirusi  
 
   
中国・本の情報館~東方書店 東方書店トップページへ
会社案内 - ご注文の方法 - ユーザ規約 - 個人情報について - 著作権について