中国・本の情報館~東方書店~
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2005年11月  図書館になった?中国の書店

     
     

中国の書店に、

訪れたことのある人ならおわかりだろう。本を買う目的の客に交じって、"タダ読み"をする人が異様なまでに多いことを……。
しかも、立ち読みなどという生易しいものではない。北京だけをとってみても、階段をイス代わりにして座りこみ、読書にふける人たちが鈴なりになるA書店。暗黙の共有スペースとばかりにフロアーの一角を陣取って、座り読みする"同志"の集まるB書店。なんともはや、堂に入ったタダ読みぶりなのである。
中には、新刊本からびっしりとメモをとる勉強熱心な読者もいるが、店員さんももはや抵抗できないと諦めたのか、はたまた中国ならではの"社会主義"の当然の権利と認めているのか、一向に注意する気配もない。立ち読みしようものなら、ハタキで追い払われることの多い日本の書店とは大違いだが、じつはこうした実態には中国側も頭を痛めているらしい。最近では地元のマスコミも「書店が公共の図書館になったのか?」(『中華読書報』)として、商業書店と公共図書館の役目が入れ替わっていることに疑問の声をあげている。
そんな声にそっと耳を傾けてみると――。

 
     

全国紙の大手グループ「光明日報報業集団」傘下の週刊紙『中華読書報』(9月26日付)によれば「毎朝8時の開店とともに書店へとなだれこみ、日がな一日読書にふけり、夜の閉店時間になってようやくしぶしぶ店をでる"読者"たち」が、最近とみに増えている。そんな読者の特徴といえば「本をタダ読みするか、本を買ってもその冊数が少ないこと」で、財布のヒモが固い彼らの襲来により、書店はもはや「無料図書館と化している」という。
当然のことながら、そうした影響で損耗する本も増えており、浙江省の新華書店集団有限公司の最新統計によれば、損耗コストは年平均で4000万元(1元は約14円)。本の定価はピンからキリまであるものの、単純計算をしても同省内の新華書店グループだけで、年間数百万冊が使いものにならなくなっていることになる。にわかには信じがたいが、たいへんな損失であることだけは間違いがないだろう。

では、そうした読者が本を買う目的もないのに書店に集まり、公共図書館へ行かないのはなぜか???

 

 理由の① 夏休み、冬休み、ゴールデンウィークなどの長期休暇になると、学校図書館がほとんど休館になり、公共図書館にかえって人があふれて座席が確保できないから。
  理由の② 公共図書館といえども無料の時代が過ぎ去り、いろいろとお金がかかるようになったから(例:閲覧証の取得、喫茶店での休憩、ところによっては閲覧室の座席料など)。
  理由の③ 新刊本の更新が遅いから――など。

とくに、③については「中国の県市クラスの図書館700館以上で新書を買う費用がなく、図書館は"貧血"にあえいでいる」(『光明日報』9月2日付)という関連報道もある。同報道によれば、その多くが中西部地域にある図書館で、たとえば青海省化隆回族自治県の図書館ではこの15年来1冊も新書が買えず、書架に並ぶのは1960~70年代の古い本。そうしたことから、いっそうの利用者離れと建物の老朽化が進んでいる。
また山西省では、2004年に1冊も新書を購入していない県クラスの図書館が64館あり、うち五台県図書館はこの10年来、大寧県図書館は20年来、新書が収められていない状態(『人民日報』11月23日付)。甘粛省では、省内にある県市クラスの図書館の3分の1以上がこの10年来、新書を購入していないという(同『光明日報』)。
同『光明日報』では「図書は文化の船であり、公共図書館と基礎教育は社会発展の2大基盤だ。情報化社会にある図書館に、文明の成果が生かされていないのはどうしたわけか。地元政府が文化事業を重視しないのがネックになっており、地元政府と幹部の責任追及はまぬがれないだろう」と厳しく糾弾している。

いずれにしても、ソフト面とハード面における老朽化、または商業化により、公共図書館から離れた人たちが一般書店へなだれこむのは必須。北京の某書店でよくタダ読みするという、ある北京っ子の友人は「書店はエアコンもきいているし、新書も豊富。なによりも無料で利用できるからね」と小鼻をうごめかしていた。公共図書館に満足がいかないために、一般書店でのタダ読み行為も許される範囲だ…ということなのだろう。


前述の『中華読書報』は「本来、もっとも市場化を徹底しなければならない書店が公共図書館のようになり、多くの社会的責任を負わされている。その一方で、社会的機能を果たさなければならない現在の公共図書館には失望させられることも多く、時には営利目的のブックストアーにいるような錯覚にとらわれる」と嘆く。
書店にとって損耗率の高まりは頭の痛いところだが、これもお客様サービスの一環として「公共図書館」に代わる役目をはたす覚悟でいるのか、それとも徹底した経営理念を追及し、タダ読み客を排除するか。はたまた"貧血"にあえぐ地方図書館の前途はどうなる?――。
「図書は文化の船であり、図書館は図書の船である」(『光明日報』)というけれど、その"文化の船"と"図書の船"が一体どこへ向かうのか。じつに気になるところではある。

 

 
   
     
     
  ★北京国林風図書センター
(北京市海淀区海淀西大街36号 海淀図書城昊海楼B1)
2005年11月14日~11月20日
     














 

1.『做最好的自己』(Be Your Personal Best)
李開復著 人民出版社 2005年9月初版


台湾出身の有名な工学博士で、米マイクロソフトから米グーグルに移籍して物議をかもしているカイ・フ・リー(李開復)氏が、若者向けに書き下ろした人生とビジネスを成功させるための指南書。李氏はマイクロソフト中国研究院(現・同アジア研究院)担当の元副社長で、現在はグーグル社の副社長。この驚愕の移籍問題は米国で裁判沙汰になっており、本書の「後記」でもその件について触れている。
いわく「なぜ移籍したか?という問いについて、私の心の声が答えた。(中略)マイクロソフトは学ぶ価値のある会社だが、グーグルは私を揺り動かす会社だと」。このほか「反省が成功につながる」「人との交際―現代人の必修科目」など、いま中国でもっともホットな人物による、独特の人生観が語られる。


2.『為什麼制度重要』(なぜ制度が重要か)
盛洪主編 鄭州大学出版社 2004年12月第2刷


中国の有名な経済学者、盛洪・博士による各地の大学やシンポジウムでの講演をまとめたもの。「制度の起源」から表題作の「なぜ制度が重要か」、「水権制度と治水哲学」「中国の企業制度を探る」など、中国の社会経済学を縦横に論じた14の講演内容が収められている。


3.『兄弟』(上)
余華著 上海文芸出版社 2005年8月初版


『活着』(生きる)などのベストセラーで知られる人気作家の10年ぶりの待望の新作だ。江南地方の小さな町に生まれた李光頭と、異父兄弟の宋鋼の数奇な運命の物語。"文革"のころ、寡婦であった母親の2番目の夫・宋凡平は地主の出身だとされて、紅衛兵に撲殺される。ともに父親を亡くした李光頭と宋鋼は、このときから互いに助けあい、支えあう生活を始めるのだが……。
2人の異なる運命が"文革"と現代の相反する2つの時代を背景に、織りなされてゆく。愛と血縁、運命と歴史の真実にせまる大河小説。現代社会が舞台になるという下巻が、早くも余華ファンから待ち望まれている。


4.『亮剣』
都梁著 解放軍文芸出版社 2005年3月第3版


退役軍人・都梁の処女作。第4回中国人民解放軍図書賞を受賞し、同名のテレビドラマが中国中央テレビ(CCTV)で放送されたこともあって、すでに約40万部を売り上げるベストセラーとなっている(『解放軍報』11月25日付)。
主人公の職業軍人・李雲竜が、抗日戦争時代から1949年の新中国成立をへて55年に将軍となるまでの半生と、その愛と友情、勇気を描いた戦争文学。「強大な敵に直面してもひるむことなく、刀剣をもって毅然として立ちむかう」李雲竜が、現代中国に求められるヒーロー像として注目されているようだ。


5.『哈利・波特与"混血王子"』(ハリー・ポッターと混血のプリンス)
J.K.ローリング著(英)/馬愛農・馬愛新訳 人民文学出版社 2005年10月初版


6.『圏子圏套』(業界のわな)
王強著 清華大学出版社


「中国現代ビジネス道3部曲」の第1部。中国のある外資系企業を舞台として、激しくも凄まじいビジネス商戦の内幕を明かす。中国のエリート層たちの必読書と、本書のキャッチコピーにある。


7.『藏獒』(ザンアオ)
楊志軍著 人民文学出版社 2005年9月初版


ザンアオとは、中国の青藏(青海・チベット)高原を原産地とする大型のチベット犬のこと。希少種であり、犬の種類のなかでも生きた化石といわれている。
青海省生まれの作者は、自身がザンアオを飼ったことのある経験にもとづいて、この獰猛でありながらも忠誠心がつよく、周囲との秩序をたもつ精悍な犬と高原の人々との心温まる交流を描く。動物小説としてはベストセラーの『狼図騰』(狼のトーテム)とよく比較され、作者自身も「刺激を受けなかったわけではない」と語るが「"ザンアオ精神"と"狼文化"はまったく異なる。文学上の比較は、読者の判断にゆだねたい」(『北京青年報』11月13日付)と明らかにしている。


8.『学哲学 用哲学』(上下)(哲学を学び 哲学を使う)
李瑞環著 中国人民大学出版社 2005年11月第3刷


前全国政治協商会議主席で、天津市長を務めた李瑞環氏のマルクス主義原理にもとづく哲学理論書。
「哲学を学ぶ意義は大きい」「調査研究はいっさいの事業を成しとげる前提」「経験を用いて、事業を推進する」「具体的な問題は具体的に分析する」など、関連の文章や演説内容が上下2巻にまとめられた大著である。


9.『Outsider 局外人』(アウトサイダー)
(韓)可愛淘著 中国城市出版社 2005年11月初版


青春小説『那小子真帥』(イケてるあいつ)で大ブレイクした韓国の若手女流作家・可愛淘(中国語)の新作だ。本書によれば、中国、韓国、日本、タイなどの国が、同時に版権を取得したという。
家人が亡くなり、孤児となった18歳の韓雪理は、ひきとられた家の兄弟、江天空、江尹湛と互いに意識するようになるが……。息子たちに対して冷酷な父親、深夜に泣いている江尹湛。そして、江天空のアルバムにはられた女の子の顔写真は、黒く焼きこがされていた。謎だらけの家は、韓雪理を"部外者"として排除するかのようだった……。可愛淘の「最高傑作」の呼び声もたかい、甘く切ない青春小説。
彼女の中国版公式サイト(http://www.taocu.com/)では、作品の一部をはじめ「泣きながら読みました」などというファンの感想が公開されている。


10.『達・芬奇密碼』(原題『THE DA VINCI CODE』)
(米)ダン・ブラウン著/朱振武・呉晟・周元暁訳 上海人民出版社

 
   
     


北京で行われた第5回6カ国協議、韓国・釜山でのAPEC首脳会議、米ブッシュ大統領のアジア歴訪、露プーチン大統領の訪日など、11月はまさに世界の「外交の秋」でしたが……。中国側の報道にいささかの違和感を覚えたのは、私1人ではなかったと思います。
それはAPEC首脳会議のもようを伝えた報道でした。中国中央テレビ(CCTV)のニュース番組で、ドーナツ型のテーブルを囲んだ各国首脳のアップが1人ずつ映しだされるなかで、小泉首相の顔だけがなぜか?映されなかったのです。会場の全景は、小泉首相のバックから撮った映像を使っていました。
翌日の『人民日報』など主要新聞の1面に採用された写真は、中国の胡錦濤・主席を中央にして韓服「ドゥルマギ」を着こなした各国首脳がにこやかに歩いているショット。「小泉首相はどこに?」。ここにも首相の姿はどうしても見当たりませんでした。
中国側の意図をあれこれと詮索したところで詮無いことですが、中国にいる日本人の1人としては、いつの日か、日中両国の首脳が握手をしながらにこやかに微笑んでいるショットが見たいものです。

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

  http://china-media.jugem.jp/
 
     
   
 
   
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