1.『贏』(Winning)
ジャック・ウェルチ/スージー・ウェルチ著(米) 余江など訳 中信出版社 2005年5月初版
2002年まで21年間にわたり、アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)の会長兼CEO(最高経営責任者)であったジャック・ウェルチ。GEを世界最強の企業へと変えた彼が、仕事や生活においてどうしたら"勝者"になれるか、豊かな経験と管理実践例をあげながら解きほぐす。
英語版の原本(初版)は今年4月に出ており、中国語の翻訳版もほとんど同時発売となった(日本語版は未刊)。3年ほど前に中国でもベストセラーになった『傑克・韋爾奇自傳』(ジャック・ウェルチ自伝)は、日本では『ジャック・ウェルチ わが経営(上・下巻)』として日本経済新聞社から出版されている。
2.『天黒以後』
村上春樹著(日)/林少華訳 上海訳文出版社 2005年5月第2刷
昨年9月、講談社から刊行された村上春樹『アフターダーク』の中国語版。今年4月に翻訳出版されて以来、早くも2刷(印刷6万冊)となっている。
映画のようなビジュアル性を重視して、現在進行形で語られる新感覚の小説だ。キーパーソンとなる若い中国人女性の登場も、中国の"ハルキスト"たちの関心を集めている。
訳者の林少華氏は、これまでに29冊の村上作品を訳出しているベテラン。今後も『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』など、村上春樹のエッセイ、旅行記8冊を翻訳出版する予定だという。
3.『栄格自伝』(ユング自伝)
C.G.ユング著(スイス)/劉国彬など訳 国際文化出版公司 2005年6月初版
スイスの精神医学者で、分析心理学(ユング心理学)の創始者ユング(1875~1961)。フロイトとの出会いと仲違い、そしてそこから独自の分析心理学を打ち出していくユングの足跡が語られる。「無意識」には、自我の抑圧や忘却による「個人的無意識」だけでなく、神話や昔話などに基づく人類共通の「普遍的無意識」があるとしたユング。
西洋だけでなく世界の宗教に関心を示していた彼は、中国の『易経』、日本の禅などの紹介にも努めたという。本書においても「分析心理学は、はからずもある部分において(道教の)煉丹術と一致する」と語っている。
日本では、1972年にみすず書房から『ユング自伝―思い出・夢・思想』(河合隼雄・訳)が出版されている。
4.『喧囂的九十年代』(The Roaring Nineties)
ジョセフE.スティグリッツ著(米)/張明など訳 中国金融出版社 2005年1月初版
2001年ノーベル経済学賞受賞の経済学者であり、クリントン政権の経済諮問委員会委員長であったスティグリッツの『吼え続けた90年代:世界で最も繁栄した10年をいま見直す』(日本語版は未刊)。
「自由市場の繁栄が、同時に経済衰退への種をまいた」「自由市場のイデオロギーが、開発途上国の多くを苦しめている」など、1990年代に世界の指導者たちをガイドしてきたビジネス理論の矛盾と問題点をするどく追究している。
5.『関于上班這件事』(出勤することについて)
朱徳庸著(台湾) 中信出版社 2005年4月初版
6.『非常道:1840~1999的中国話語』
余世存編 社会科学文献出版社 2005年5月初版
7.『退歩集』
陳丹青著 広西師範大出版社 2005年1月初版
8.『薔薇島嶼』
安妮宝貝著(文・写真) 天津人民出版社 2005年5月初版
20代の女流作家・安妮宝貝は、インターネット上に作品を発表する「網絡文学」(ネット文学)というジャンルを確立した一人。1998年から発表をはじめ、短編小説『告別薇安』『八月未央』、長編小説『彼岸花』などの話題作を次々と出版している。
写真とエッセイでつづる『薔薇島嶼』は、2002年に刊行された同名タイトルの作品に、推敲を重ねた2005年版。「愛。それは水辺に立って、キラキラと光りかがやく水面を見ているようなもの。手を伸ばせば、いっさいが幻影だったことに気づく……」。チベットのラサや香港、ベトナムで撮影された写真の数々も、彼女のエッセイと同じように繊細で美しい。
9.『紅底金字―六七十年代的北京孩子』(赤地に金文字―6、70年代の北京の子ども)
劉仰東著 中国青年出版社 2005年2月初版
「紅底金字」とは"文化大革命(文革)"のころに、少年先鋒隊や紅衛兵がつけていた腕章をはじめ、校旗、学生証、卒業証書がいずれも「赤地に金文字」だったことを指している。筆者によれば、それは「昔の暮らしを追憶する色彩」であるという。
文革当時、小中学生だった北京の子どもたちが記憶する学校の改名、復学後の革命、闘争(吊るし上げ)などの物々しいできごとから、バスの中、キャンディの包み紙、缶蹴り、卓球、住環境、点心(軽食)などの懐かしい日常生活までをつぶさに紹介。一種異様な激しい時代だったがゆえに、この年代の人たちは"文革"というと、なにか特別なノスタルジーや連帯感がわきおこってくるようだ。
10.『秦腔』
賈平凹著 作家出版社 2005年4月初版
長編小説『廃都』などで知られる当代の人気作家・賈平凹の待望の新作だ。「秦腔」とは、陝西省で生まれた語りものの戯曲のこと。作家の生まれ故郷である陝西省の片田舎をモデルにした「清風街」を舞台に、改革・開放後の二十余年、清風街におとずれた激しい変化と、人々の生と死、歴史の転換期が農村にもたらした震動を、生き生きと描く。
清風街には「白家」と「夏家」という2軒の地主があったが、白家は早くに衰退してしまう。夏家の変遷は、そのまま清風街や陝西省、ないしは中国の農村の象徴となってゆく……。
作家によれば「秦腔」というタイトルは「陝西省の声」ほどのシンボリックな意味あいだという。
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