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2004年5月  文学のホットな話題を伝える

     “中国文学白書”が出版  
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中国でも経済や社会学、国際問題などの分野で、「白書」(政府発表の実情レポート)の出版が相次いでいますが、そんな「白書」が文学においてもついに出ました! 中国社会科学院文学研究所と中国作家協会の学者や評論家、文芸書編集者らの共著による『2003年 中国文情報告』(中国文学レポート 白烨 主編 社会科学文献出版社 2004年5月初版 CD付き)です。政府系の公式見解ともいえる文学白書の登場です!
2003年における中国の小説、ルポルタージュ、詩歌、戯曲、インターネット文学などの概論はもちろんのこと、「小説と映画の相関関係(市場背景下の長編小説)」「低層からのレポート」「“木子美(ムーズメイ = ペンネーム)現象”とネット文章の氾濫」など、ホットな話題が満載。巻末には、文芸書の年間売り上げベスト30や、専門家が選ぶ小説ベストテンがあげられていて、昨年の中国文学事情がこの1冊にまるごと凝縮されているのです。
ご興味のある方は、本書をじっさい手にとってご覧になることをオススメしますが、ここではとくに気になる話題のポイントについて、ご紹介したいと思います。

 
     

2003年の文学概論─「生きる」がテーマ

昨年上半期におきた“非典”(新型肺炎SARS)の災禍は、中国の文学にも大きな影響を及ぼしました。「この未曽有の事件は、私たちの生命と暮らしにとって得がたい体験であった。それは、作家たちのその後の創作活動にも、大きな影響を与えた」(前言)というのは、本書編集主幹の白烨氏(社会科学院文学研究所)です。

より深く、より写実的に人間の内面に迫った作品群の現れですが、長編小説では、少数民族のチベット族とナシ族の住むある奥ぶかい峡谷を舞台に、その文化的摩擦と融合、人間の不屈の精神を生き生きと描いた『水乳大地』(范穏・著)、身体障害者の住む「受活荘」というある虚構の村で、障害者たちが「絶術団」(絶技を披露する芸術団)を組織して、たくましく生きぬいていく『受活』(閻連科・著)などの力作が、また中編小説では、社会の底辺に生きる人々を通して、現実生活の苦悩と理想の追求を描いた『尋找妻子古菜花』(北北・著)や『我們的骨』(陳希我・著)などの佳作が、その顕著な特徴としてあげられました。
生死の境を見つめるキッカケともなった“非典”の体験が、「いのち」や「人間いかに生きるべきか」という重いテーマへの回帰をうながした、とも考えられます。専門家たちが選ぶベストテンには、話題のベストセラーとは一線を画した、そうした“硬派”の作品が並んでいます。(文末に紹介)

小説と映画のリンク

bj200405_05文学の“市場化”が進められたのも、2003年の特徴でした。「文学がより大衆化、消費化、メディア化されて、“炒作”(チャオズオ = マスコミを通じた宣伝)がさかんに行われた」と、前述の白烨氏は「前言」で述べています。

そして、そうした文学の筆頭としてあげられたのが、話題となった2004年正月映画の同名小説『手機』(ショウジー = 携帯電話)です。中国でも身近なツールとなったケータイが巻き起こす現代男女の愛憎劇で、コメディ映画の第一人者、馮小剛(フォン・シャオガン)監督がメガホンをとり、監督とともにシナリオを手がけた作家の劉震雲がこれを小説化したものです。
映画と小説がリアルタイムでリンクして評判を呼び、それは「封切り後わずか1カ月で、映画のチケット4500万元(約6億円)、単行本10万冊以上を売り上げた」大ヒット作となりました(本書「市場背景下の長編小説」より、文芸評論家・閻晶明氏)。複数の愛人関係に悩むプレイボーイの主人公が、実在する人気キャスターを連想させるという演出も、大衆の好奇心をそそりました。「タマゴが先か、ニワトリが先か」ではありませんが、映画から見てもよし、小説から入ってもよし、はたまた両者とも楽しんでもよし、という“大衆メディア化”された新しい相乗効果が生み出されたのです。

閻晶明氏のレポートによれば、映画封切りの舞台あいさつで、作家の劉震雲は次のように述べたといいます。
「みなさんは、小説の映画化というと『良家の子女が、水商売の女に変わった』かのように思うかもしれないが、それは何も悪いことではないし、作家自身の堕落でもない。とても現実的なことなのだが、映画化で収入が増えるし、小説もより広まっていく。テレビや映画、インターネットによる情報の広がりとスピードは、紙媒体のそれを上まわるものだ。作家の知名度と、その作品がテレビドラマ化、映画化される――ということは、きわめて大きな関係がある」

文学の“市場化”“商業化”は、マイナス面ばかりではない。それによって作家の立場も、作品の質も向上することがある、という考え方です。そして、このレポートをまとめた閻晶明氏は、張芸謀(チャン・イーモウ)監督の「文学が映画を載せて行く」(相互に発展する)という言葉を引いて、「(私たちの)生活は変わった。つまりそれは、文学観も、小説観も、ともに変えるべきだということを意味している」と語っています。
映画やテレビとリンクした“商業文学”に異論を唱える向きもありますが、閻晶明氏らのように、こうして文学にも時代に応じた変化を認めようとする見解が出てきたことは、たいへん興味深い流れだといえるでしょう。

ネット文学の争点“木子美現象”

bj200405_04“木子美(ムーズメイ)現象”は昨年、インターネット文学界が騒然となった事件でした。『中国文情報告』の陳福民氏(社会科学院文学研究所・副研究員)のレポート「“木子美現象”とネット文章の氾濫」、また、白烨氏のレポート「“木子美現象”が争議を引き起こす」などによると、それは“木子美”というペンネームの女性(広州のある媒体の編集者、当時25歳)が、ウェブサイトを通じて、衝撃的な性愛日記を告白した事件とそれによる社会的反響のことを指しています。
『遺情書』というタイトルのそれは、“木子美”の多彩な男性遍歴や、相手の性愛テクニック、彼女の真情などが赤裸々につづられており、「昨年6月にスタートしてから、11月には閲覧者が1日にのべ16万人に上った」(陳福民氏)といわれます。有名なロックバンドのメンバーをはじめ“お相手たち”を実名報道するなどしてセンセーションを巻き起こし、「知識と個性、度胸のある女性」「自意識にめざめた偉大な女性」という賞賛の声があがる一方で、「『遺情書』は紛れもないポルノ日記。木子美は、カラダを使って書く偽作家だ」等の酷評も現れました。こうした反響の大きさに目をつけて出版化も図られましたが、11月の出版後、たちどころに「わいせつ物伝播の罪」で発禁となったそうです(どうりで書店では見かけませんでした……)。

「おしゃべりして、お酒を飲んで、そして一夜の時を過ごす……。恐くないから、簡単に男の人を愛することができるの。簡単にセックスして、別れることができる。私って軽いから、相手だってすぐに私のことを忘れちゃうのよ」(『遺情書』より)

白烨氏はレポートで、香港在住の著名な武侠小説家・金庸氏の言葉を引用しています。文学における性愛描写について「性愛は生活の一部ですが、生活と小説は違うと思う。私自身は小説で(それを)描きませんね。もちろん古典の『金瓶梅』のように、性愛描写の多い小説もあります。しかし、作品において個人の生活をいちいち詳しく述べるのは、あまり賛成できません」。文学は単なる事実の羅列ではなく、そこには豊かな創造性が必要なのだと、金庸氏は主張しているのです。

もちろん、李尋歓、安妮宝貝、蔡智恒など、ネット小説から有名になった若手作家たちも大勢います。しかし現在、ネットに氾濫するさまざまな文章に対しては「ネット文学と、ネット文章(作文)を区別すべきだ」という意見もあることは確か。
「ネット文学は、こうした混乱や喧騒を経て、完全に成熟したものになっていくだろう」(陳福民氏)、「メディアの時代にあって、ウェブサイトもマスコミも読者の関心ばかりを追求し、道徳尺度が低下していく(中略)。“木子美現象”は、道徳に対する個人の反逆だったが、じっさいは、職業倫理に対する中国メディア界の試練と挑戦なのである」(白烨氏)。研究者たちは本書『中国文情報告』で、現代の文学とその媒体が直面する課題について、そう指摘しています。

インターネットの普及に伴い、中国でも90年代後半から発達してきたネット文学。“木子美現象”は、そんな時代の過渡期において、新しい文学のあり方を問う “リトマス試験紙”だったのかもしれません……。

『中国文情報告』

【2003年 文芸書年間売り上げベスト10】(北京開巻図書市場研究所による)

1 『幻城』(まぼろしの城) 郭敬明著 春風文芸出版社
2 『我們仨』(私たち三人) 楊絳著 生活・読書・新知三聯書店
3 『親歴歴史 希拉里回憶録』(ヒラリー回想録) ヒラリー・R・クリントン著(米) 訳林出版社、
4 『王蒙自述:我的人生哲学』(私の人生哲学) 王蒙著 人民文学出版社
5 『挪威的森林』(ノルウェイの森) 村上春樹著(日) 上海訳文出版社
6 『心相約』(心の約束) 陳魯豫著 長江文芸出版社
7 『我把青春献給你』(青春をあなたに捧げる) 馮小剛著 長江文芸出版社
8 『小説E時代―夜玫瑰』(夜のバラ) 蔡智恒著 現代出版社
9 『不能承受的生命之軽』(存在の耐えられない軽さ) ミラン・クンデラ著(仏) 上海訳文出版社、
10 『文化苦旅』(文化の苦行) 余秋雨 東方出版中心

【2003年 専門家が選ぶ小説ベスト10(長編)】

1 『水乳大地』 范穏著 『中国作家』7月号
2 『受活』 閻連科著 『収穫』6月号
3 『白豆』 董立勃著 人民文学出版社
4 『我們的心多麼頑固』 葉兆言著 春風文芸出版社
5 『扎根』 韓東著 人民文学出版社
6 『城的灯』 李佩甫著 長江文学出版社
7 『丑行与浪漫』 張煒著 雲南人民出版社
8 『四十一炮』 莫言著 春風文芸出版社
9 『从両个蛋開始』 楊争光著 人民文学出版社
10 『万物花開』 林白著 人民文学出版社

 
 
   
   
     
     
bestsellere  

文芸類
★北京図書大廈(西単)(北京市西城区西長安街17号)
2004年4月1日~4月30日

     
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1)『狼図騰』(オオカミのトーテム)
姜戎著 長江文芸出版社 2004年4月初版 2080冊


内モンゴル自治区の遊牧民とオオカミの関係を長年研究してきた作者が、その人類学的見地に立って書き表した新感覚の小説だ。遊牧民の生活における、オオカミとの“一蓮托生”ともいえるつながりが、この物語に色濃く反映されている。


2)『夢里花落知多少』(NEVER-FLOWERS IN NEVER-DREAM)
郭敬明著 春風文芸出版社 1877冊


上海大学影視芸術技術学院に在籍する学生作家、郭敬明の新作小説。出版以来、約半年におよぶロングセラーとなっている。大学卒業を間近にひかえた主人公の愛と友情、快楽と切なさを描き、若い世代の共感を呼んでいる。郭敬明のデビュー作となった冒険小説『幻城』も、ベストセラー第9位に返り咲いている。


3)『青年文摘・人物版 生命淡如水』(命は淡い水の如し)
李炳青責任編集 中国社会科学出版社 2004年3月第2刷 1118冊


青少年向けの月刊誌『青年文摘・人物版』(青年ダイジェスト・人物編)は1999年、中国青年出版社から創刊された。内外著名人の伝記や感動的な実話を紹介、青少年の人生の指標にしてもらおうとするもので、これまでに3000編におよぶ作品が紹介された。雑誌の創刊5周年を迎えるにあたり、まとめられたのがこのシリーズ(全3巻)。緑色の装丁があざやかな本書には、乙武洋匡氏の「自分を障害者とは思わない」、コン・リーの「家、心の港」など、生命や人生について考えさせられる秀作が収められている。


4)『達・芬奇密碼』(原題『THE DA VINCI CODE』、ダ・ヴィンチの暗号)
ダン・ブラウン著(米)、朱振武/呉晟/周元暁訳 上海人民出版社 2004年3月第4刷 1056冊


5)『青年文摘・人物版 愛从不卑微』(愛は卑しからず)
李炳青責任編集 中国社会科学出版社 2004年3月第2刷 1014冊


ベストセラー第3位、第6位と同シリーズ。美しい青色の装丁で、王菲(フェイ・ウォン)の「一度、自分に」、松下幸之助の「あなたのために適したメガネを」など、愛と愛情に関する佳作を収録。


6)『青年文摘・人物版 听听那冷雨』(あの冷たい雨を聞く)
李炳青責任編集 中国社会科学出版社 2004年3月第2刷 964冊


ベストセラー第3位、第5位と同シリーズ。落ち着いた紫色の装丁で、アインシュタインの「私の世界観」、陳剛の「無私は永遠の美徳」などの名作が収められている。


7)『愛原来可以如此豁達』(愛はこうして寛容になれる)
劉墉著 接力出版社/全国優秀出版社 2004年5月初版 883冊


アメリカの大学や美術館に専任アーティストとして駐在した、台湾生まれの画家兼作家の劉墉氏。英・中文による著作は70種以上、開かれた個展は世界各地で30回以上に上るという。本書はそんな国際人の筆者が、愛と心について解き明かすエッセイ風の人生訓。「人生は1本の道のようなもの。それは、だんだん広がる“心の路”。そんな道のように、愛は本来、心を広くすることができるもの……」。愛と結婚、家族、人生などにおける「寛容の心」の大切さを、やさしく語りかけている。つづく第8位も劉墉氏の著作と、人気が集まっている。


8)『靠自己去成功』(自分を信じて成功をつかむ)
劉墉著 長江文芸出版社 2004年3月第4刷 874冊


アメリカに長年暮らし、ハーバード大で博士号をとった長男、交響楽団の第一バイオリニストになった長女という、優秀な子どもたちを育てた筆者が、アメリカ特有の“自由教育”について、エッセイ風に語りかける。「みずから成功をつかむこと、みずから苦労を受けること、そういう長所を、最大限に発揮させること」。それが“自由教育”の秘訣だと説く。


9)『幻城』(まぼろしの城)
郭敬明著 春風文芸出版社 857冊


若い世代に人気の作家・郭敬明のデビュー作となった長編小説。映画化された小説『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』を彷彿させる壮大なスケールで、「幻城」を舞台に繰り広げられる主人公の愛と宿命、勇気を描く。第2位にも新作がランキングされている。


10)『什麼事都在発生』(なんだって起こる)
朱徳庸著(台湾) 中信出版社 2004年4月初版 854冊


仕事、恋愛、結婚、人生……。台湾の著名なマンガ家・朱徳庸(44歳)が、現代人のありのままの日常を、コミカルかつシニカルなマンガで描く。一話ずつ数コマのマンガで構成されているが、コマ割りの線のないのが特徴。それがときには自由自在の画面を作り出している。思わずニヤリとしたり、うーんとうなったり……。そして読後にほのぼのとさせられる、上質のマンガ集だ。

 

 
   
     

 

 

5月のメーデー(1日)の連休に、観光名所で知られる青島へ行ってきました。青い海と青い空、ドイツ風・赤レンガの街並みが美しく、近年では、国家級の開発区に、日本や韓国などの企業が多数進出しています。
ところが、連休ともなると、どこへいっても人、人、人……。展望台からのながめが絶景という「青島タワー」の見学は、待ち時間が1時間半。道教のふるさととして知られる「崂山」には、渋滞緩和のための交通規制でタクシーが入山禁止となり、ふもとまで行きながら、結局登れませんでした。
その後、幻となった崂山を偲びつつ、同行の友人とともに青島ビールをあおったのはいうまでもありません……。

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写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
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