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2004年3月  “眼球経済”が席巻するか?

     気になるビジュアル本を読む  
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ここ数年、中国でよく目にすることばに「読図文化」「読図時代」というのがある。「“写真や絵を読む”文化や時代」をさしている造語なのだが、最近はそれがさらに進化したのか?「眼球経済」や「快餐文化」ということばも表れている。
「眼球ビジネス」やら「ファストフード文化」やら、いったい何のことかと思いきや、それは「視覚に訴えるビジネス」であり、ファストフードのように手軽で回転のはやい「消費文化」であるという。ビジュアル時代やスピード社会の特徴を、ピタリといい当てたことばなのだった(さすがは漢字の国、なかなかうまいことをいうものである…)。

そこで今回は、気になるこの「眼球経済」「快餐文化」の実態をさぐりながら、最近目にとめた美しいビジュアル系の本を、ご紹介したいと思う。

 
     

改革・開放政策がスタートして以来、とくに1990年代からはめざましい経済発展をとげている中国だが、それにともない人々の暮らしにも大きな変化がおとずれた。とりわけ都会の若者たちは、先進国なみか、またはそれ以上のスピード社会と競争によるプレッシャーにさらされている。
そんな中で、忙しい現代っ子たちの癒しのバイブルとして登場したのが、美しい「ビジュアル本」だ。漢字がびっしりと詰まっていたそれまでの本とは異なり、文字数をできるだけおさえ、写真やイラストを駆使した美しいレイアウトで、読者の視覚に訴えようとしたものだ。「仕事に疲れて、長編を読むのはシンドイ」「きれいな写真やかわいいイラストを見ていると、気持ちが安らぐ」「洗練されたオシャレな本で、自分のセンスを磨くことができる」と、若者たちの評判も上々。ビジュアル時代やスピード社会においては、時間をかけなくとも満足感が得られるこうした本がうってつけなのだろう。

また、テレビや映画(DVD やVCD)、インターネットの普及によって、人々の視覚にはこれまでにないような刺激が与えられている。そうした刺激をビジネスに変えて成功した例として『ハリー・ポッター』をあげるのは、『中華読書報』の蒋泥さんだ。
「それは世界的な神話を生みだした。……文字から沸きおこる想像力、映画のシーンや音響技術のすばらしさ……それが多くの人々、とくに子どもたちの好奇心を呼びさまし、書籍やCD、アニメ、おもちゃ、工芸品などさまざまな関連商品を生みだして、さらなるビジネスチャンスを広げている」(2003年11月12日付、新浪網より)。“ハリポタ”は、まさに「眼球経済」を代表する文学であり、ビジュアル時代の申し子なのであるという。

bj200403_03こうした“眼球化”や“快餐化”への流れは、中国でもますます加速すると考えられている。それはある意味で、きわめて回転のはやい消費文化であり、「熱しやすく、冷めやすいという世の中の短絡的なムードをうながした」とマイナス視する向きもある。しかし、長所も短所もあわせ持ちながら、それはたしかに中国の流行文化の一端を担っているのだ。

近年、話題を呼んだビジュアル本では、トレンディ映画にもなった台湾の絵本作家・幾米(ジミー)の作品や、アフリカの大自然が魅力の『我的野生動物朋友』(邦題『TIPPI アフリカに育まれた少女』)、日本で静かな反響を呼んだ『再見了,可魯 一只狗的一生』(邦題『盲導犬クイールの一生』)などの輸入翻訳版があげられるだろう。そのほか、美しい写真で魅せる観光ガイドや料理本、スタイル・ブックなどは枚挙にいとまがないが、ここでは最近の「イチオシ!」といえる美しいビジュアル本を、ご紹介してみたい。

bj200403_10まずは『回家真好』(家に帰るっていいな、欧陽応霽・著、三聯書店、2004年2月北京第3刷)。香港の若手建築研究家である欧陽応霽(オウヤン・インジー)が、地元香港をはじめ台北、北京、上海にある友人宅をめぐり、スタイリッシュな写真と文、見取り図などで個性あふれるそれぞれの家を紹介している。
リビングにソファーを置かず、その代わりに背もたれのない長イスを中央に置き、「イスにも机にも」利用して、忙しく各地を飛びまわるという香港の広告制作業の黄炳培、北京の北郊外、燕山のふもとのアーティスト村に、広々とした平屋のアトリエ兼住居をかまえる画家の韓旭成など、気鋭の芸術家たち18人の自慢の家がここに凝縮されている。
「自分の生活空間を築くことは、つまり自分をデザインすること」と筆者。散文的な文章にも味わいがあるが、パラパラとめくるだけでも、シノワズリーなセンスの光る空間が目に飛びこんでくるだろう。一般的なインテリア本とは一線を画した研究書であり、芸術書である。

bj200403_02お次は『人民画報 5年一瞬間』(人民画報社)だ。昨年、中国の定期刊行物では最高の栄誉賞「国家期刊賞」を受賞した月刊グラビア誌『人民画報』。本書では、その『人民画報』(中文版)が1999年から2003年までに発表した選りすぐりの報道写真を紹介している。
2008年北京オリンピックの招致成功、9・11アメリカ同時多発テロの発生、胡錦涛主席―温家宝首相の新体制発足、SARSの流行、中国初の有人宇宙飛行の成功など、ここに集められた写真はいずれも時代を象徴し、検証するもの。いわば「写真で見る現代史」である。天安門広場で、建国50周年を祝う人々の喜びと自信に満ちた表情など、1枚の写真が伝える力にあらためて気づかされる。
ちなみにこの5年が選ばれたのは、99年より同誌がオールカラー版として全面的にリニューアルされたからだという。同誌ではこれからの5年、10年、50年も、新しい時代の流れと感動を伝えていきたいと語っている。

bj200403_09そして最後は、世界中のファンに愛されたテレサ・テンの生涯を、アルバムとともにひも解いていく『鄧麗君画伝』である(師永剛/昭君 著、作家出版社、2004年2月第3刷)。アルバムと文とで構成されるシリーズ「世紀華人画伝叢書」の1冊で、昨年12月の小欄でもご紹介した『宋美齢画伝』の姉妹本。北京と台北(簡体字と繁体字)で、同時に発行されたという。
1953年台湾に生まれ、14歳のときに歌手デビュー。その後、東南アジアや香港、日本、アメリカ、カナダと活動の場を広げ、世界の華僑たちから絶大な支持を受けたテレサ……。日本では「空港」「つぐない」「愛人」「時の流れに身をまかせ」などのスーパー・ヒットを飛ばしたが、89年の「天安門事件」以降はパリに移住、95年に休養先のチェンマイで突然死した。42歳の若さだった。
本書は、そんな彼女の伝説的な人生を、鄧家秘蔵の100枚にのぼる写真とともにふりかえる。「天安門事件」や、なぜパリに移住したかについて、多くは語られていないものの、テレサの実弟である鄧長禧氏は「ついにスキャンダルではない、鄧麗君のすべてが客観的に報道された。その代表作といえるだろう」と賞賛している。

その美しさに思わず見とれる秘蔵写真の数々は、必見もの! さらに、本書にはもれなく、テレサの遺作となった初公開の曲『問世間情是何物』(愛ってなに?と世の中に問う)と、95年の葬儀のもようが映されたVCDがついてくる。
これも人々の「眼球」に訴えかける、新しい文化のカタチであるかもしれない……。

 
   
   
     
     
bestsellere  

★三聯韜奮図書中心(三聯書店)調べ(北京市東城区美術館東街22号)
2004年3月15日~3月21日(三聯書店の出版物以外)

     
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1.『中国農民調査』
陳桂棣/春桃著 人民文学出版社 2004年1月1日初版


まず、最初にお断りしなければならないのは、北京の三聯書店でこのベストテンを調査した3月28日に、本書はすでに「なくなって」いたことだ。その後も大手3店舗で調べたが、ない…。発禁処分を受けたのか? はたまた増刷が追いつかないだけなのか? 店員に聞いても「事情はよくわからない」という答えが返ってくるばかりである。いずれにしても3月末現在、オンラインショップを含めて、北京で本書が手に入らないのは事実。読者の皆様にはどうかご了承くださいますよう……。
今年の全国人民代表大会(全人大、国会にあたる)で可決された政府活動報告は「“三農(農業、農村、農民)問題”の解決」を高らかにうたいあげたが、本書はまさしくその「三農問題」の実態に、鋭いメスを入れた渾身のレポートである。安徽省合肥市作家協会主席の陳桂棣とその夫人である春桃が、3年の歳月をかけて同省の各地を調査。「ほんとうの“三農問題”とは、農民が苦しく、農村が貧しく、農業が危険であることだ。9億農民のための問題解決なくして、真の現代化はありえない」と陳桂棣は手厳しい。
さらに本書が辛らつなのは、「農民を苦しめる“悪代官”たち」を実名で報道したこと。昨年末、隔月誌『当代』に発表されるや否やみるみるうちに反響を呼び、書籍化されると初版3万部が早くも完売、3カ月足らずの間に総計10万部はセールスしたといわれている。
本書のゆくえは知れないが、じつはインターネットを使って中国の検索サイトで調べると36万件ほどの関連アドレスがずらりと出てくる。全文を掲載しているホームページもあるので、ご興味のある方はそちらを参照いただきたい。


2.『往事并不如烟』(往事は決して煙の如く消えず)
章詒和著 人民文学出版社 2004年1月初版


3.『中華人民共和国憲法』
中国民主法制出版社


今年の全人大は3月14日、憲法改正案を可決して閉会した。その焦点のひとつが、憲法第2章第33条に新しく「国家は人権を尊重し保障する」という1項が加えられたこと。
憲法に明文化されたことで、これからは「『人権の尊重と保障』の徹底的な実行が保障され、中国の社会主義的な人権活動の推進や、国際的な人権活動における交流・協力に役立つ」(人民ネット)といわれている。
改正憲法をまとめた冊子は、全人代の閉会後、中国民主法制出版社、中国法制出版社、法律出版社などからいっせいに出版されている。


4.『老照片(第三十三輯)』(古い写真 第33集)
馮克力責任編集 山東画報出版社


5.『禅是一枝花』(禅は一枝の花)
胡蘭成著 上海社会科学院出版社


6.『中華伝統文化経典文庫』
民俗文化編写組編訳 中国致公出版社


7.『同学少年都不賤』(学友みな貴し)
張愛玲著 天津人民出版社 2004年3月初版


張愛玲(1920~95年)は、現代中国がほこる女流作家。代表作に中編小説『傾城之恋』などがある。1944年当時、汪兆銘政権下で宣伝部政務次長だった胡蘭成(作家・思想家)と出会い、2人の思想と文学、愛に大きな影響を与えあった。記録によれば44~47年の一時期に、胡蘭成と結婚していた。
本書は、70年代に彼女が書き残していた未発表の作品を、初めて1冊の本にまとめたもの。1930~40年代、上海のあるカトリックの女学校で、たまたま同じルームメイトとなった2人の女子生徒の異なる境遇や精神的な成長をえがく。
「自伝的小説」といわれているが、その一方で、アメリカの左翼女性記者や中国初の原発実験などのプロットを挟み、小説の時代感に厚みをもたせた――とされている。人生の移り変わりと無常をえがき、新機軸をうちだした張愛玲の注目作だ。


8.『毛沢東伝』
フィリップ・ショート著(英)/楊小蘭など訳 中国青年出版社 2004年3月北京第3刷


原作の『MAO A LIFE』は1999年、イギリスBBCの元北京特派員で歴史学者のフィリップ・ショートが、7年ものフィールドワークと研究を経てイギリスで上梓。この翻訳版は、昨年の毛沢東生誕110周年に合わせて中国で出版された。中国語で600ページ余りにおよぶ大著である。
毛沢東と中国共産党を世界に伝えた外国人では、米国のジャーナリスト、エドガー・スノーや、アグネス・スメドレーがすぐに思い浮かぶだろう。その後もたくさんの外国人ジャーナリストが毛沢東の伝記に挑んだものの、「生涯にわたる伝記とはいえなかったり、二次資料が多く不正確だったり」して、中国側としては満足のいくものではなかったという(中文版序言)。
その中にあって本書は、「客観的かつ公平、全面的に」毛沢東の生涯を描いている。「学術的な伝記でありながら、生き生きとした文体と、馥郁とした文化の香りが堪能できる」というのである。その視点や分析は中国人とは異なるが、むしろ「同じであることを求めるのでなく、中国の読者にも西洋人との視点の違いを比べてほしい」(同)と語っている。
原作本を受けついだらしく、目をひく真っ赤な装丁だ。フィリップ・ショートが第二、第三のスノーになるかは別として、本書の人気は高まっている。


9.『今生今世』
胡蘭成著 中国社会科学出版社 2003年12月第2刷


汪兆銘政権下で『中華日報』総編集長を務め、戦後日本に政治亡命した思想家、胡蘭成。一時期は作家の張愛玲と結婚していた。81年東京で死去。
最近は中国内地でも胡蘭成の再評価が高まっており、今回もベストテン入りした禅の思想書『禅是一枝花』など、復刻版が続々と刊行されている。随筆集である本書も、そんな復刻版の一つ。ふるさと胡村の思い出「清明」「暑夜」「過年(年越し)」をはじめ、愛する張愛玲との交友を描いた「民国女子」「天涯道路」など、日常のあふれる思いが豊かな筆致でつづられる。文豪の心の琴線に触れられるような一冊である。


10.『達・芬奇密碼』(原題『THE DA VINCI CODE』、ダ・ヴィンチの暗号)
ダン・ブラウン著(米) 朱振武/呉晟/周元暁訳 上海人民出版社 2004年3月第4刷


パリのルーブル美術館で起きた殺人事件に、アメリカの大学教授が巻き込まれていく。ダ・ヴィンチの名画「最後の晩餐」などに隠されたキリストの秘密とは……。ダ・ヴィンチ、ニュートン、聖杯伝説というキーワードが複雑にからみあいながら、謎解きが進められる。豊富な史実と創作とが混ざりあう新感覚の推理小説。翻訳本ながら、中国にもいよいよエンターテインメント文学が浸透してきたことをうかがわせる売れ行きである。

 

 

 
   
     

bj200403_113月最後の日曜、暖かな日差しにさそわれて、北京っ子たちが思い思いのひとときを過ごしていました。什刹海(シーチャーハイ)の手漕ぎボートは、100元のデポジットを払えば1時間30元で楽しめます。玉淵潭公園の桜も咲きはじめ、この日は2万人の花見客でにぎわったということです。

 

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

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