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2003年5月 ★北京SARSこぼれ話  

     
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SARSにめげず、元気に凧揚げをする人たち(展覧館前広場)

中国をはじめ、世界的な被害を広げている新型肺炎SARS――。事態はなお予断を許しませんが、広東や北京では、新しい感染者数がようやく抑えられてきたようです。中国の人たちはこの間、どんな暮らしをしてきたのでしょう?
そこで、今回は「北京のSARS対策は?」(4月22日付・北京便り号外)に引き続き、SARSにかかわる身近な話題を追ってみました。題して「北京SARSこぼれ話」です。

今年の黄金週間は5月1日から5日までと、例年より2日間も短縮されました。人の移動や集まりをおさえ、SARSの蔓延を防ぐための措置でした。

それに先立ち、中国衛生省による感染者数の大幅な修正もあきらかになり、連休前後は北京っ子たちのストレスもピークに達していたようです……。

 

 

 
     

 

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「暫停営業」(一時休業)の貼り紙/
「消毒済み」の貼り紙をしたレストラン

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街の各所で見られる『抗非典』の横断幕

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関連本もぞくぞく

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レストランにも

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キャプション:バス停にも…

 

地下鉄やバスはガラガラ、通りにはあまり人影がありませんでした。「北京封鎖」「北京がゴーストタウンに」という日本のマスコミ報道は、いささか"やりすぎ"の感もありましたが、一時的には人足がとだえ、静寂が街を包んでいたのも事実です。
一部のレストランや美容院などでは、「改装」や「五・一」(メーデーの連休)を理由に休業し、出稼ぎに来ていた店員たちを次々と帰省させました。衛生管理が不十分のため、客足が遠のき、商売がなりたたなくなったからです。5月下旬現在、消毒の徹底など万全の予防対策を講じて再開した店もあれば、シャッターを固く閉ざしたままのレストランも出てきています。


スーパーで食料を買い占める人たちも、一時的に出現しました。あるスーパーでは「あたしゃ~ね~、塩が大好きなんだよ~」と公然と言い訳をしながら、塩の袋(1キロ入り)を7つも買ったおばさんがいたそうです(そんなに買ってどうするの~~)。
「ビタミンが豊富で、SARSに効果的だ」と、イチゴやジャガイモが飛ぶように売れた時期もありました。ある中国の友人は「いえいえ、SARSに効くのはバナナです。気持ちが晴れるビタミンAが豊富なので、免疫力が高まるそうです」と、真偽のほどは定かではありませんが、そう真顔で話していました。北京には、にわか"栄養士"たちが増えました。


「万衆一心 衆志成城 科学防治 戦勝非典」(大衆が心を一つに、心を合わせて城をなし、科学で予防治療し、SARSに戦勝する)
SARSのことを、中国語では「非典型肺炎」略して「非典」(フェイディエン)といいますが、こうした横断幕や垂れ幕もあちこちに掲げられました。ある社区(コミュニティー)では、「不譲"非典"進社区、不譲"非典" 進我家」(非典を社区に入れさせない、非典を我が家に入れさせない)という横断幕も。赤い布地やビニールに印刷された"士気"を高めるスローガンです。
テレビをつければ「団結して、SARSに打ち勝とう」という勇ましいニュースや特集番組が続いています。中国中央テレビ(CCTV)では、呉夢奇(ウー・モンチー)や周罘罘(ジョウ・シャンシャン)などの人気歌手が、サビの部分で大合唱するバラード調の創作曲「永不放棄」(永遠にあきらめない)が、繰り返し流されています。♪永不放棄 愛的信念 永不放棄 生命的尊厳~~(おかげですっかり歌えるようになりました)。
市街区の北郊外、昌平県に急きょ造られた隔離施設「小湯山病院」につとめる看護婦さんと、遠く離れて暮らすその婚約者が、デジタル画面をつうじて予定通り結婚式を挙げたようすも、感動的に放送されていました。中国は、まさしく総力をあげて「非典」克服のキャンペーンを展開しています。 


もちろん、人々の不安や不満がないわけではありません。名門大学の北京語言文化大学などでは、夏休みを繰り上げた2カ月程度の休校となっているほか、構内宿舎に住む学生の多くが"軟禁状態"におかれていました。部外者の立ち入りを禁止し、SARSの拡散を防ぐための措置でしたが、ある日本人留学生は「大学から出られないし、食堂も限られている。精神的に耐えられません」と、ほうほうの体で帰国していきました(その後、市内の各大学宿舎の"軟禁"は5月下旬から徐々に解除されています)。


感染者数の大幅な修正が出されたころは、とくにイライラが募っていたようです。あるタクシーの運転手は、こちらが聞きもしないのに「まったく政府は人命を無視している! オレたち老百姓(ラオバイシン=庶民)なんか、何人死んでもいいと思っているんだ」と訴えかけてくる始末……。別の運転手は「みんなわかっているんだよ。政府が感染者10人といえば、実数は100人。100人といえば1000人いるってことぐらいはね」と、ため息まじりに話していました。
タクシーの営業が部分的に規制され、街を流しても客がいない、という状況のもとでは愚痴の一つもこぼしたくなるでしょう。その後、衛生部長と北京市長の更迭、小湯山病院の増設と重症患者の搬送など、迅速な対応がとられてからは、激しい愚痴は聞かれなくなったような気がします……。
一部、隔離病棟を村内に造ることに腹をたてた農民たちの暴動も伝えられましたが、今後の焦点は、①病院が不足する貧しい地方への蔓延防止、②農民たちへの衛生管理と意識の徹底――に、シフトしていくことでしょう。


もう一つ気になるのは、SARSが人命だけでなく、経済活動にも暗い影を落としていることです。先日も、国際労働機関(ILO)が「SARSの影響で世界の観光業界の517万人が失業する」という試算をうちだしましたが、中国でも、某旅行社の連休中の売り上げが例年の2割に満たず、大幅な給料カットを強いられました。中国東方航空(MU)では5月上旬、乗客率が例年の8割減となり、レストランもタクシーも観光名所も、そうとうな減収が見込まれています。こうした経済の停滞が、中国の経済成長率(今年は7%目標)に大きなダメージを与えるだろうと、一部では見られています。
これに対し、中国財政部では先ごろ「中国のサービス業など第3次産業に対し、減税などの優遇政策を与える」という特別措置を講じました。SARSによる経済打撃は免れないが、できるだけ大きな痛手を食い止めようとする、政府のテコ入れ、苦肉の策といえるでしょう。
いずれにしても、この事態が一日も早く終息し、平穏な日々が戻ることを(感染地にいる者としては、とくに!)願ってやみません。


そんな中ですが、いい傾向も現れてきています。それは、人々の衛生意識が向上したこと。道路や施設が定期的に掃除され、消毒液が入念にまかれています(まき過ぎで、頭がクラクラすることもありますが)。営業中のレストランでも、テーブルの上を丁寧に消毒液でふいていますし、あるタクシーの運転手は「1日6回愛車を清掃している」と自慢げに話していました。
北京では、「道路にゴミをポイ捨てしない」「どこでも勝手に痰をはかない」などの議論が新聞紙面をにぎわせています。
先日は、CCTVの特集番組で、人気司会者の白岩松さんが、こんなことを話していました。「去年、日本へ行ったとき、マスクをしている人がいて、不思議に思ってガイドに聞くと『風邪をひいているからでしょう』という。そのときは(見慣れないので)おかしな姿だと思ったが、今回のSARSの一件で考えを改めました。あれは他人に迷惑をかけない、とてもいい習慣だったのです」

「人間万事、塞翁が馬」と、中国のことわざにあります。「福必ずしも福ならず、禍必ずしも禍ならず」――。SARS禍で痛手を受けた中国ですが、それも少し見方をかえれば、この国が"衛生大国"に生まれ変わる、いいキッカケになるのかもしれません。

 
   
   
     
     
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★三聯韜奮図書中心(三聯書店) 調べ
(北京市東城区美術館東街22号)
2003年5月5日~5月11日
(三聯書店の出版物以外)

     
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1)『我把青春献給低』(青春をあなたに捧げる)
馮小剛 著 金麗紅など責任編集 長江文芸出版社 2003年3月初版


中国コメディ映画の第一人者、馮小剛(フォン・シャオガン)監督の回想録風エッセイである。『再見のあとで』(1992年、脚本)、『太陽の少年』(95年、出演)、『甲方乙方』(97年、監督)、『没完没了(ミレニアム・ラブ)』(99年、監督)など、数々のヒット作を世に送り出してきた馮監督。作品に込めた思いや舞台裏、私生活のようすが十二分に綴られる。
「機知とユーモア、悔しさと重々しさ、それが馮小剛である」とは、本書に記された監督評。監督自身は「ユーモアは、一種の労働態度だ」と述べている。


2)『老照片(第二十八辑)』(古い写真 第28集)
馮克力 責任編集 山東画報出版社 2003年4月初版


読者から寄せられた20年以上前の写真とそれを紹介する文章(散文、エッセイ、説明など)で、中国の近現代を見つめ直そうとする隔月誌。


3)『我的非正常生活』(私の異常な生活)
洪晃 著 海南出版社 2003年3月初版


著者の洪晃は、中国の文人・章士釗の外孫で、作家・章含之の娘であるという名門一家の生まれ。名監督・陳凱歌(チェン・カイコー)の前妻でもあった。

外交部(外務省)の派遣で、12歳のときに単身ニューヨークに留学、帰国後はコンサルタントや貿易、投資などの業務にかかわり、現在は『I LOOK 世界都市』『楽』『青春一族』などの雑誌を生み出して、一躍有名な出版人となった。

名門の出でありながら、「率直で個性的、きたない言葉を平気で話し、勇敢に誤りを認め、人材を適所に生かすのにたけている」という洪晃。そんな彼女の魅力あふれる半生が、本人と周りの人たちの本音で語られている。


4)『慢』(原題『La lenteur』)
ミラン・クンデラ著(仏) 馬振騁 訳 上海訳文出版社 2003年2月初版


ミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』は、チェコスロバキアの「プラハの春」と、その後のソ連軍侵攻を描いた哲学的恋愛小説で、中国の「6.4天安門事件」にも影響をあたえたといわれている。今回のベストテンには、そのクンデラの2作品が登場。いまも読者たちのあつい支持を受けていることがわかる。
  パリ郊外の城で一夜を明かすことになった、クンデラとおぼしき作家夫婦が見たものは……。現代と18世紀の幻想がいりまじる哲学的小説で、日本では『緩やかさ』(集英社、1995年)というタイトルで、邦訳出版されている。


5)『王蒙自述:我的人生哲学』(私の人生哲学)
王蒙 著 人民文学出版社 2003年1月初版


 中国の現代作家を代表する、王蒙の自叙伝的エッセイである。1934年北京に生まれ、14歳で入党(地下党員)した王蒙は、若くして長編小説を書き始めるが、右派のレッテルを貼られて63年から16年間、新疆ウイグル自治区イリの農村で働く。79年に名誉回復し、北京で作家活動を再開。86~89年には中国文化部部長(大臣)を務め、現在は中国作家協会副主席の任にある。
  「人生で最も重要なのは"何をしないか"を知ること」「最も良い人間関係は(関係を)忘れること」「逆境は人生の試練と挑戦である」など、その波乱の人生からつむぎ出された珠玉の人生哲学が、あますところなく語られている。


6)『在宋美齢身辺的日子』(宋美齢のそばにいた日々)
張紫葛 著 団結出版社 2003年3月第2刷


「宋家の三姉妹」の三女、宋美齢は、台湾に逃れた蒋介石の夫人である。著者は1939年、重慶で新聞『大広報』の仕事についていたとき、中国戦時児童保育会の名誉理事長であった宋美齢と出会う。そして、彼女が大陸を離れるまでの9年間にわたり、その機密秘書となったのである。
長女の宋靄齢(財閥の孔祥熙夫人)、二女の宋慶齢(孫文夫人、元・中国国家副主席)とともに、三姉妹はなにかと比較されてきた。「一人は金を愛し(靄齢)、一人は権力を愛し(美齢)、一人は人民を愛した(慶齢)」といわれているが、実際はどうだったのか? 著者は、「実事求是(事実にもとづき、真理を求める)をむねとして、時間の検証と読者の鑑別、歴史家の参酌を仰ぎたい」と語り、見たまま、接したままの宋美齢を描写している。


7)『海辺的触夫触』(海辺のカフカ)
村上春樹 著(日) 林少華 訳 上海訳文出版社 2003年4月初版


昨年秋、日本で話題をさらった村上春樹の長篇書下ろし新作『海辺のカフカ』(新潮社、上・下巻)が、はやくも中国で翻訳出版された。訳者は、村上春樹の作品ではおなじみの林少華。15歳の少年と多彩な登場人物たちがくりひろげる不思議な村上ワールドを、丁寧かつ深みのある中国語で再現している。


8)『身芸』(原題『L'identite』)
ミラン・クンデラ著(仏) 董強 訳 上海訳文出版社 2003年2月初版


熟年男女の危うい愛の物語。「男たちを移り歩く」女のもとにある日、一通の手紙が届く。山のホテルで知り合った同棲相手がいるのだが、女の心は好奇心で揺れ動き……。邦訳本に『ほんとうの私』(集英社、1997年)が出ている。


9)『中国文人的非正常死亡』(中国文人の異常な死)
李国文 著 人民文学出版社 2003年4月第2版


漢の武帝に「宮」(去勢)の刑を受けた歴史学者の司馬遷、泥酔して河に落ち、帰らぬ人となったと伝えられる詩仙・李白、海南島に流された後、赦しを受けて九死に一生を得るも、帰還する途中で病死した宋代の詩人・蘇東坡(蘇軾)……。古代中国の文人32人の死を見つめた本書は、文人たちが類まれな才能をもっていたがために、ときに権力に利用され、ときに見放され、ひとしく非業の死を遂げていたことを改めて教えてくれる。


10)『激情時尚―70年代中国人的芸術与生活』
(激情の潮流―70年代中国人の芸術と生活)
蕭悟了 著 山東画報出版社


70年代、つまり「文化大革命」時代の後半に、数多くつくり出された"プロパガンダ・アート"。それは、きわめて政治的でありながら、ポップでパワフルな独特の雰囲気をかもし出している。

国画(水墨画)や年画、版画、油絵、彫刻など、あらゆる手法が駆使された当時の名作を通して、激動期の中国をふりかえる。カラーページで再現された作品からは、時代の勢いまでもが伝わってくるようだ。


 
   
     

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SARSに効くという線香

 

「活性炭入りマスク」や「キティちゃん刺繍入りマスク」「薬用せっけん」「消毒液」など、SARSグッズにはことかかない北京の街ですが、最近のイチオシはこれ! 「空気を浄化し、病気を防ぎ、邪気をはらう」と、鳴り物入りで登場した「檀香」「衛生香」などと呼ばれる線香です(1箱=約5元)。
漢方薬と天然香料が含まれており、各種ウイルスの抑制や殺菌に効果があるとか。1部屋(15~20平方メートル)あたり、1~2時間に線香1本(約30センチ)が目安だそうです。
試してみると、殺菌作用はわかりませんが、アロマの効果はたしかにありそう。中国の友人も「SARSに効く訳ないだろうけど、気休めに使っています」と苦笑していました。

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各種マスクと薬用せっけん

 

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

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