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2003年4月号外  

     

アジアを中心に広まっている新型肺炎(SARS)ですが、中国衛生局は4月20日、「北京市の感染者数は19日までに346人、うち死者数は18人だった」という大幅な修正結果を発表しました。感染者数はそれまで発表されていた「40人」から一気に9倍近くに、死者数は「4人」から4倍以上に、それぞれ増加したことになります。ほかに「感染が疑われる患者が402人いる」(同日、衛生局)とも報告されており、北京市民の不安が高まっています。(21日現在、衛生局の発表では、北京市の感染者数482人、うち死亡者25人)。

中国ではSARSのことを「非典型肺炎」(略して"非典"=フェイディエン)と呼んでいますが、こちらでは当初「非典はたいしたことはない。 すぐに終息するだろう」と高をくくっていた感がありました。また、何事にも「安定」を求める中国が、騒ぎを
なんとか抑えようと感染情報を出し渋っていたことも事実です。

しかし、国際労働機関(ILO)のペック・アロー技能開発局長(53)が6日未明、SARSのために北京の病院で亡くなり、中国内でSARSにより死亡した外国人の"第一号"となったこと、世界保健機関(WHO)の専門家チームが中国の過少報告を非難したことなどから、北京では4月中旬頃からようやく騒がれだしました。すでに、衛星部長と北京市長の更迭も決まったとされています。

新聞やテレビの「非典」ニュースも洪水のように流されています。手洗いやうがい、マスクの着用などが励行されて、地下鉄やバスにはマスク姿の乗客が目立つようになりました。
地下鉄や学校などの公共施設では、予防を促すポスターが貼られ、定期的に消毒が行われています。バスやタクシーなどでも1日2回の消毒が義務付けられています。おかげでどこへ行っても、ツンと鼻をつく消毒液や漢方のにおいが充満しています。

『非典型肺炎不可怕』(非典は怖くない、中国軽工業出版社、5元)などの予防策を示したブックレットも、次々と刊行されています。先日は中医薬大学・東直門医院の名医が「非典の予防と免疫力を高める」漢方薬材の配合を公表したところ、薬局にはその"秘薬"を買い求める人たちの長蛇の列ができました("秘薬"については下記参照)。

「北京のマスクが売り切れた」などと日本では報道されたようですが、地下鉄の階段の陰にはヤミマスクを売るやからまで出没。ガーゼを厚くしたような粗悪品でしたが、市民の不安につけこんだ悪徳業者が出てくるあたり、この国のたくましさを改めて思い知らされています(といいながら、けっこう興味津々で観察していますが……)。

市民が信奉するマスクといえば、薬局で販売されている「12層15元の高級マスク」。ふつうのマスクが1元前後(約15円)ですから、その15倍もの高級品です。目の細かなガーゼが12層になった高密閉式のマスクらしいのですが、ある中国人学生は「品切れ状態で買えませんよ。12層マスクを4時間ごとに交換すればいいと聞いているのですが……」とため息まじりに話していました。

これまでに北京大学、清華大学、中央民族大学などでも感染者が出たと伝えられており、1カ月程度の休校措置をとった大学や各種学校も少なくありません。学生たちは帰省するか、なるべく外出しないようにしています。市内の中心地にある老舗のレストランでは「まったく非典のおかげで、商売が上がったりだよ。みんな自宅でじっとしているんだろうね」と悔しそう。いずれにしても最近の北京では、SARSにまつわる話題にこと欠きません。

首都の北京はこれまでに、WHOの「SARS域内感染地域」に指定されたほか、日本の外務省からは「渡航の是非を検討して下さい」という渡航延期勧告が出されています(22日、危険度1から危険度2へ引き上げ)。
中国衛生局によると、中国全体では感染者が2001人、うち死亡者92人(21日現在)とさらに増加しつづけています。
オランダの研究グループが、動物実験によりSARSの原因が新種のコロナウイルスである可能性を証明した(SARSウイルスと命名)という朗報も得ましたが、有効なワクチンを開発するまでには数年単位が必要だとか……。先日、北京を訪れた日本のある旅行会社の友人は「イラク戦争が終結したかと思えばこの肺炎騒ぎで、大打撃を受けている。4月からゴールデンウィークにかけての中国旅行に次々とキャンセルが出てしまって……」と頭を抱え込んでいました。

情勢は予断を許さないといったところですが、北京市民も負けてはいません。「感染地域」とはいえ、逃げるわけにはいかないからです。ウイルスと対峙しながら、暮らさなければならないのです。
そこで、ここでは北京市民が日常的に行っている予防法をご紹介しましょう。国の方案に基づいて、市の中医管理局が制定した「中医薬(漢方薬)予防方案」などによるものです。

衣)・春は気候の変化が激しいので、薄着をしすぎないように。
食)・栄養バランスに注意する。とくにビタミン、ミネラルを十分にとる。
   ・飲食物はアッサリしたものに。くだもの・野菜を多くとる。
住)・室内をきれいにし、衛生を保つ。窓を開け、風通しをよくする。
行)・せっけんを使って流水で手を洗い、うがいをする。タオルを共用しない。
   ・十分な睡眠をとる。
   ・大勢の人が集中する場所や、人ごみを避ける。
   ・郊外や屋外などで新鮮な空気を吸い、体をきたえる、など。

あたり前の予防法ですが、規則ただしい生活をして、栄養をとり、抵抗力をつけることこそ"万能薬"なのかもしれません(ただし、この人口大国においては「人ごみを避ける」というのは至難の業かもしれませんが……)。
それから、重要なポイントをもう一つ。北京での発症原因の多くが、身近な人が感染していたか、または院内感染したかによるものだそうです。そのため「必要がなければ、病院へ行かない」というのが、人々の暗黙の了解になっています。

「予防と免疫力を高める」漢方薬材の配合
・銀花(スイカズラ)…………20グラム(解熱・解毒剤)
・白術(ハクジュツ)…………15グラム(滋養強壮)
・沙参(ツリガネニンジン)…15グラム(薬用する)
・藿香(カワミドリ)…………12グラム(芳香、利尿作用をうながす)
・蒼術(ソウジュツ)…………12グラム(芳香、利尿作用をうながす)
・防風(ボウフウ)……………10グラム(発汗、たんを抑える)
・黄芪(キバナオウギ)………15グラム(滋養強壮)
・貫衆(ヤブソテツ)…………12グラム(解熱・解毒剤)

市内の漢方薬局で、この配合による予防薬が求められます(一包10元前後、約150円)。北京では、8日に新聞などで公表されて以来、にわかに"ヒット商品"となりました。煎じ方は、
①一包を水に30分ほどひたしてから、水を捨てる。
②①を鍋に入れ、かぶるくらいの水を加えて、弱火で約30分煎じれば、できあがり。
  1回にとれる薬汁は、コップ1杯くらいです。これを、朝晩の2回にわけて飲みます。3~5日、続けて飲むといいそうです。
  私も試してみましたが、薬を煮出すとムンとした草木特有のにおいが辺りに漂います。できあがったのはコーヒー色の液体で、ほろ苦い味がしました。実際には「健康な人は服用の必要なし」(中医薬の専門家)といわれていますが、中国の同僚たちも、毎日せっせと煎じては飲んでいるようです。有効な治療薬が見つかっていない今、感染地域にいるものとしては、しばらくこの薬を飲みつづけるほかなさそうです。

※感染者数が日々刻々と変化していますが、これは「新規発生数とともに、過去の症例について再精査した結果、患者と判明した者が含まれる」(22日、在中国日本大使館)とのことです。つまり、それまでの「疑い例」「可能性例」の患者がSARS患者と診断されることがあるため、1日で数10人~数100人単位で増える可能性があります。

※最新情報は、WHO、厚生労働省、外務省、在中国日本大使館のホームページなどでご確認ください。

 

4月22日、文・写真=小林さゆり

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