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2003年4月  

     
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4月最初の週末、玉淵潭公園で花見をする北京っ子たち

北京唯一の桜の名所として知られる玉淵潭公園は4月最初の週末、ごらんのように大勢の人でにぎわいました。この時期は「桜祭り」が開かれますが、観光客も年々うなぎ上りで、今年は数10万人を数えたとか、数えないとか。

今から30年前に、ときの田中角栄首相が国交回復を祝して贈った「大山桜」も植えられています。乾燥した気候がら自生の桜が少なく、花そのものにも馴染みの薄い北京の人たちでしたが、今ではこうして「桜を愛でる気持ち」が分かち合えるようになったようです。なんだか嬉しくなりました……。

 

 

 
     

★ちょっと気になる本 レスリー・チャンの死と“同性恋”

「人生の終点に『覇王別姫』を再演 国栄、国栄、なんじを奈何せん」(『北京青年報』)
「張国栄 雨夜の隕落(転落)」(『北京晨報』)
「エープリル・フールに芝居人生を果たした」(『北京晩報』)――。

 アジアを代表する香港スター、張国栄(レスリー・チャン、46歳)が香港の高級ホテルから転落し、死亡した事件から一夜明けた4月2日、北京各紙には衝撃的な見出しが躍った。そのあまりにも突然の死は、映画関係者やファンらに大きな波紋を投げかけている。

 インターネットに流された関連ニュースは、事件後わずか12時間のうちに5000件を超えたという(北方網)。また、新浪網(SINA)や捜狐(SOHU)など、中国で人気のポータルサイトでは特別枠が設けられ、いまでも分刻みで関連ニュースが流されている。
  香港では2日朝までに6人の男女が飛び降り自殺をはかり、うち5人が帰らぬ人となった。北京の音像(オーディオ・ビジュアル)ショップでは、レスリーのVCDやDVDが品切れ状態。ファンたちは「彼は高所恐怖症だったし、命をとても大切にする人。死んだなんて絶対に信じられません!」(新浪網)と、動揺を隠しきれない様子である。

 関係者らに与えた打撃も大きい。
  映画『覇王別姫』の監督、陳凱歌(チェン・カイコー)は、「張国栄は本当に程蝶衣(チョン・ティエイー)になった! 張国栄がいなければ、『覇王別姫』はなかった。あの映画は唯一、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞した中国映画だ」と各メディアに談話を発表した(程蝶衣は『覇王別姫』のなかで歴史のうねりと愛憎劇に翻弄される京劇の女形役。ラストで自決する)。
  また、人気歌手の那英(ナー・イン)は、「彼も彼の芝居を観るのも、好きだったわ。いまのアーティストたちのプレッシャーは、大変なものよ。やりきれないわ。もうこれ以上、何もいえない」。
  香港の実力派監督・王家衛(ウォン・カーウァイ)は、『欲望の翼』『ブエノスアイレス』などの独特の作品でレスリーを起用した。「彼はいつも“自分はひとつの伝奇だ”と笑っていたが、伝奇がこんな状況で完成するとは思いもよらなかった。永遠に彼をしのぶよ。安らかに眠ってほしい」と哀悼の意を表していた。
  イラク戦争や香港・広州を中心に広まっているナゾの肺炎SARSと並んで、レスリーの死がこの春、中華圏で一大センセーションを巻き起こしたことは疑う余地もないだろう。

 現場に残されていたとされる遺書の内容には、2つの説がある。「Depression(うつ病、神経衰弱)。この一年、とても苦しく、耐えられなかった。みんな本当にありがとう……」として関係者の名前をあげて謝意を示したものと、「20数歳の青年と知り合い、彼と“唐唐”(タンタン)のどちらを選ぶかとても悩んだ。死ぬしかなかった」という、いずれも短い文章である。

 どちらがホンモノなのか詳細は明らかにされていないが、いずれの文面にも記されていた「唐先生=唐唐」(唐鶴徳)という名の人物が、レスリーの18年来の伴侶、つまり同性愛のパートナーであったことは、周知の事実だ。レスリー自身が数年前に、ファンに対して告白していた。
  その一方で、最近はKenneth(ケネス)という上海生まれアメリカ育ちの男性アシスタント(23歳)と親密になり、唐氏との関係が危うくなっていたという。遺書の一説にもあげられていた通りである。はたしてそこには、三角関係のもつれがあったのだろうか? ネット上には早くも「遺産の3億香港ドル(約50億円)は誰の手に?」などの無粋な論争が展開されており、人々の事件への関心も高まるばかりである。

 レスリーは自殺したのか? だとしたら、なぜ命を絶ったのか? 遺書はホンモノなのか? 真相はいまも闇に包まれたままだが、彼がもう二度と戻らないことだけは確かである。いまはただ、私たちを華麗な夢の世界へといざなってくれたレスリーに心から感謝したい。そして、そのはかなくも輝かしい“芸術人生”を惜しみつつ、ご冥福をお祈りしたいと思う。

 ところで、そういう私は特段彼のファンというわけではなかったが、有名スターの死はやはり大きなショックであった。そしてじつに不思議なのだが、ニュースを耳にしたとき、私の手元には今回ご紹介しようと思っていた一冊の本があった。市内地下鉄のキヨスクでたまたま購入し、読み進めていた本である。それは偶然の一致にしては、あまりにも奇妙な暗示であった。

 『非常故事―中国同性恋情感実録』(陳礼勇・著、中国三峡出版社、2003年1月初版、25元)である。タイトルは、そのまま「スペシャル・ストーリー」と英訳されている。中国大陸における“同性恋者”(同性愛者)70人あまりのインタビューと手記をまとめたものだ。
  レスリーの死と本書はまったく関係ないのだが、「同性恋」というキーワードには因縁めいたものを覚えずにはいられなかった。中国で長らくタブー視されてきたという同性愛に悩み、それでも精一杯生きている人たちに、レスリーの姿がオーバーラップしてみえた。そして、ほんの少しでも彼らの喜びや悲しみ、悩みや現実が理解できたら――。じつに勝手な解釈なのだが、本書との出合いにはそんな期待を抱いたのである。

 中国の同性愛者は、3600万~4800万人に上るという調査結果がある(1998年出版、社会学者の李銀河・著『同性恋亜文化』より)。同性愛者の割合は世界的に人口の数%~10%と考えられているため、この数値はおそらく中国の人口12億人の3~4%という計算によるものだろう。とはいっても、東京都民や北京市民(1300万人あまり)の約3倍にあたる膨大な数である。

 本書にはそんな身近な存在である、同性愛者の赤裸々な告白が記されている。
  ――中国科学院の研究員・楊守峰(ヤン・ショウフォン、31歳男性)は、3年ほど前に友人から北京大卒の才媛・張(ジャン)を紹介された。超エリートの2人は「似合いのカップル」ともてはやされたが、楊はどうしても恋愛感情がもてなかった。異性には関心が向かなかったからである。
  やがて国家公務員である張に、職場では最後の「住宅分配」のチャンスが訪れる。その50万元(1元は約15円、約750万円)というごく平均的な住宅が分配される権利は、既婚者に限られた。若い2人には、夢のマイホームを手に入れるまたとない機会であった。会うたびにそれとなく結婚話を持ちかける張。楊はついに自分が同性愛者であることを明かすが、住宅というハードルの前には、それは大きな問題ではないように思えた。こうして、住宅を目的に結婚するのだが、本当の愛のなかった2人のミゾは深まるばかりであった。

 「彼女は夜になると僕を求めたが、僕にはなんの感覚もなかった。家で夜を過ごすのさえ怖くなった。でも、彼女だってかわいそうだ。マイホームは手にしたけれど、女性としての青春がこなごなに砕けてしまったのだから……」
  やがて、ネットで知りあった崔(ツイ)という男性と親しくなった楊は、外泊を繰り返すようになる。怒りが収まらない張は、2人の男性の両親にその“秘密”を打ち明けてしまう。楊と崔の仲は引き裂かれ、それとともに張との間にも決定的なヒビが入った。2人は離婚し、楊はドイツ留学の道を選ぶ。「悩みぬいたけど、同性愛者が自由を手にするには、まだ時間がかかるだろう。それでも僕はもう戻れないのです……」
  日本や中国など多くの国では、同性愛者どうしの結婚が法律上認められていない。ここ中国でも、彼らは肩身の狭い暮らしをしているのである。

 本書ではこのほか、北京のとある工場で働いていた若い男性が、20歳ほど年上の班長(男性)に恋してしまい、思いあまって告白を繰り返したために、医者に「精神病患者」のレッテルを貼られてしまう話――。
  女性どうし、男性どうしのカップルが「まっとうな結婚をして、親を安心させよう」と、パートナーをそれぞれ交換した偽装結婚をはかる。2組の“夫婦”は北京郊外に一軒ずつ家を買い、ひんぱんに“往来”するが、親をだましながら一生同じ舞台で演じていくことに不安を覚えてしまう話――。

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張国栄(レスリー・チャン)の訃報を伝える各紙
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 「君は、自分の家庭に責任がもてますか?」。同性愛者のウェブサイトで知り合った“伴侶”に、そう問いただしたある男性。自分の愛する妻を傷つけたくない彼は「双性恋」(バイセクシュアル、両性愛)の男性だった。天津から列車で2時間の北京は、彼らにとっては“デート”に都合のいい出張の場所となった――。

 同性愛者たちがネットで知りあい、特定のバーや公園で落ちあい、自分たちを「同志」(昔の中国でよく用いられた呼称、理想を同じくする人)と呼びあう日常が、ありのままに語られている。

 著者の陳礼勇(チェン・リィヨン)は新聞やウェブサイトの編集記者として、同性愛者の実態に関心を寄せてきた。紹介されたのはすべて、この2年にわたる最新インタビューと手記である。
  前述した中国社会科学院・社会学所の李銀河(リー・インホー)氏が巻頭言を寄せている。「現代中国の同性愛者たちが、自分のことばで、自分のことを語ったのは、きわめて意義深い。ある意味からいえば、一般の研究書よりも学術的価値があるだろう」
  「読者がこの本を通して、真に同性愛者を理解するよう希望する。自分とは異なる少数派を理解してこそ、その人たちと平等につきあえる。私たちの社会がより文明的に変わるのである」

 中国は2001年4月、同性愛を「病的疾患」と位置づけていた従来の基準を改め、「同性愛は異常ではない」とする見解を明らかにしている(中華精神病学界・編『中国精神障害の分類と診断基準』第3版)。それは「世界保健機関(WHO)の国際基準に合致するもので、(基準変更は)中国社会の進歩である」(新華社)と伝えられた。同性愛者たちが肉声で語った本書『非常故事』の出版が、こうした流れに沿うものであることは明白である。

 「余桃」(春秋時代)、「断袖」(漢代)、『紅楼夢』、『金瓶梅』など、多くの歴史故事や文学のなかで同性愛を表現しながら、それを長らく「亜文化」(亜流の文化)としてきた中国。同性愛がようやく寛容視されはじめてきた今、レスリーの死が、この歩みを止めるものではないことを願いたいのである……。

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北京国林風図書センター(北京市海淀区海淀西大街36号 海淀図書城昊海楼B1)
2003年3月31日~4月6日

     
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1)『高效能人士的七个習慣』(効果の高い人の7つの習慣)
スティーブン・R.コヴィー著(米) 中国青年出版社 2003年1月第2版


 世界で1億冊を売り上げたという超級ベストセラー。日本では『7つの習慣―成功には原則があった!』(キングベアー出版)というタイトルで翻訳出版されている。「積極的に」「相互依存」「ウィン・ウィンの発想」など、“真の成功”と“すばらしい人生”を手にするための7つの習慣を紹介する。


2)『王蒙自述:我的人生哲学』(私の人生哲学)
王蒙 著 人民文学出版社 2003年1月初版 


 現代作家の第一人者、王蒙の自叙伝的エッセイである。1934年北京に生まれ、14歳で入党(地下党員)した王蒙は、若くして長編小説を書き始めるが、右派のレッテルを貼られて63年から16年間、新疆ウイグル自治区イリの農村で働く。79年に名誉回復し、北京で作家活動を再開。86~89年には中国文化部部長(大臣)を務め、現在は中国作家協会副主席の任にある。
  「人生で最も重要なのは“何をしないか”を知ること」「最も良い人間関係は(関係を)忘れること」「逆境は人生の試練と挑戦である」など、その波乱の人生からつむぎ出された珠玉の人生哲学が、あますところなく語られている。


3)『国学常識』
曹伯韓 著 生活・読書・新知三聯書店 2002年12月初版


 本書によれば、「国学」とは清代末期に生まれたことばで、中国が西洋の学問を“輸入”する前のあらゆる中国の学問を指している。著名な言語学者の曹伯韓(1897~1959年)が、平易な文章で中国の文字言語、哲学、歴史、文学、科学、芸術などを評論。一般読者のための「国学入門書」だという。


4)『執行:如何完成任務的学問』(執行:いかに任務を完成するかの学問)
ラリー・ボシディ/ラム・チャラン著(米) 機械工業出版社 2003年2月第3刷


 世界的にも著名なCEOラリー・ボシディとコンサルタントのラム・チャランが、経営における「実行」の重要性を説き明かす。ビジネスの核となる「人材、戦略、業務」の3つの要素を結びつけ、機能させる「実行力」こそが、リーダーの役割だと説く。多くの経営者たちに読んでもらいたい(!)書である。
  日本語版は『経営は「実行」―明日から結果を出す鉄則』(日本経済新聞社)。


5)『登上健康快車』(健康急行に乗る)
洪昭光など著 北京出版社 2003年3月第16刷


 中国の健康ブームの“火付け役”ともいえる本書は、昨年8月の初版発売から半年ほどで16刷を数え、計105万冊が印刷された。


6)『笨賊一箩筐』(たくさんのマヌケな泥棒)
蕭言中 画(台湾) 中国青年出版社 2003年1月初版


 「手品師に“カネを出せ”といったらウサギが出てきた」「ニワトリの着ぐるみを着た仲間に“ねえ、俺たちこれから銀行強盗に行くんだよ!仮装パーティーじゃないんだよ、いい?”」
ドジでマヌケな泥棒たちのおかしな世界が、独特の一コママンガで繰り広げられる。軽めのタッチは、ちょっと一息入れたいときにピッタリ。ポケットに収まるミニサイズ本で、シリーズで刊行されている。


7)『我愛你,妈妈』(愛してるママ、原題『Dear Mom』)
ブラッドリー・トレバー・グリーヴ著(米) 曹愛菊 訳 中信出版社・遼寧教育出版社 2002年8月第2刷


 シドニー在住カメラマンの動物写真集。中国では『The Blue Day Book』に続く第2弾。ホッキョクグマやチンパンジー、ライオン、カバなど動物の親子と赤ちゃんたちの愛らしい写真に、ユーモアあふれる「お母さんへの感謝のことば」が添えられている。


8)『金字塔原理』(ピラミッド原理)
バーバラ・ミント著(米) 民主与建設出版社 2002年12月初版


 マッキンゼーをはじめ、世界の主要コンサルティング会社でライティングを教えているバーバラ・ミント。独自の「ピラミッド原理」を用いて、相手をすっかり納得させる高度な文書作成テクニックを伝授する。とりわけ欧米式のビジネス・レポートを作成する際の「必読の書」であるという。日本では、ダイヤモンド社から『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』が出ている。


9)『誰説大象不能跳舞?』(象が踊れないなんて誰がいった?)
ルイス・V・ガースナー著(米) 中信出版社 2003年3月第2刷


 1990年代初め、瀕死の状態にあった巨象IBMを救ったCEOガースナーの苦闘の記録。大胆な企業改革や戦略の転換により、奇跡の復活をはたした巨大企業の内幕を明かす。日本では『巨象も踊る』(日本経済新聞社)が翻訳出版されている。


10)『挪威的森林』(ノルウェイの森)
村上春樹 著(日)/林少華 訳 上海訳文出版社 2003年1月第14刷


 中国で、初版の発売から2年を経たいまでもロングセラーを更新中。すでに62万部印刷されている。その都会派小説のオシャレな世界が、中国の“小資”(プチブル・小金持ち)たちの憧れの的となっている。


 
   
     

 

 

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張国栄(レスリー・チャン)の死を取り上げた今回の「気になる本」ですが、それを書き上げたころには早くもレスリーの追悼本が並びはじめました。
  北京の書店や地下鉄のキヨスクで手に入れたのは、『永遠的哥哥国栄』(白帝・主編、現代出版社)、『哥哥de半生―張国栄記念特輯』(双城・編著、陝西師範大学出版社)、『紅:二零零三年四月一日 紀念・張国栄』(張瞳瞳・編著、中国華僑出版社)の3冊。いずれも彼の経歴や作品、プライベートなどについて、写真を交えて紹介しています。“レスリー・ショック”は、今しばらく続きそうです。

 

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
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