1)『漫画版 歓楽正前方(全3冊)』(真正面の楽しみ)
王為/小穎編著 徐福騫など漫画 北京出版社 2003年1月初版 共1651冊
北京人民ラジオ局の人気番組『歓楽正前方』。8年もの長寿番組を支えるDJ王為(ワン・ウェイ)と聞風(ウェン・フォン)が、これまでに紹介してきた面白おかしい話をまとめた。
「ホントついてないっスよー。嫁さんがね、ぼくの全財産を持って逃げちゃったんですよー」「ぼくなんか、もっとついてないよ。嫁さんがね、ぼくの全財産を持って……、まだどこにも逃げてないんだよ」
すっかり尻に敷かれた亭主の姿が目に見えるようだ。ラジオ番組の音の世界を、文字とマンガで再現した異色の文芸書である。
2)『我是韓国人』(ぼくは韓国人)
申世庸(韓)李芳訳 華芸出版社 2003年1月初版 673冊
アメリカで学ぶ兄を頼って13歳で渡米、空軍士官学校に留学し、言葉の壁や人種差別、生活格差を乗り越えて、ついにイギリスの名門・オックスフォード大学に入学したある韓国人の真実の記録。韓国では100万冊以上を売り上げたという人気書だ。「この本を、海外生活にあこがれるすべての若者に捧げる」と筆者は語る。
3)『哈利・波特与阿茲卡班的囚徒』
(ハリー・ポッターとアズカバンの囚人)J.K.ローリング著(英)鄭須弥訳 人民文学出版社 2002年2月第12刷 655冊
魔法つかい見習いの少年・ハリーは3年生になった。ところが今度は、恐ろしいアズカバン牢獄の脱獄犯に命を狙われて……。またまた夢と大冒険がくりひろげられる。
ヨーロッパの童話を現代風にアレンジした“ハリポタ”は中国でも大人気。シリーズ第3作の本書は、中国語版がすでに90万部あまり出版されている。
4)『中華伝統美徳格言』
編纂委員会編纂 人民教育出版社 2003年1月初版 611冊
中国伝統の「格言」をコンパクトな冊子にまとめた啓蒙書。「百聞不如一見」(『漢書』)、「它山之石,可以攻玉」(『詩経』)、「己所不欲,勿施于人」(『論語』)など、日本人にもおなじみのフレーズがあって面白い。
国家指導部の提唱のもと、教育部(文部科学省にあたる)の組織で編纂されたが、なるほど巻頭ページをめくると「中華の美徳を伝承し、民族の精神を育成する」という江沢民氏の揮毫が目に入る。
「現代化を推し進め、世界に向かう中国が、未来をになう若者たちに、中華民族の偉大な復興をたくしたい」と本書は編まれた。マンガ入りの子ども向けも同時発売されている。
5)『布瓜的世界』(なぜの世界)
幾米著 遼寧教育出版社 596冊
「布瓜」はフランス語の“Pourquoi”(なぜ)の音訳。子どものように素直な「なぜ?」を散りばめて、あらゆる答え(可能性)を探ろうとする自由な発想がおもしろい。
6)『行者無疆』(行く者に限りなし)
余秋雨著 華芸出版社 585冊
現代中国の人気作家・余秋雨のヨーロッパ紀行。イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、ドイツ、デンマークなど欧州各国を周遊し、歴史や文化、人々の暮らしや中国との関わりを真摯に見つめる。
7)『假如給我三天光明』(もしも私に3日の光をくれたら)
ヘレン・ケラー著(米)/李漢昭訳 華文出版社 2003年1月第20刷 573冊
「奇跡の人」ヘレン・ケラー(1880~1968)の自伝やエッセイをまとめた。幼いころに、原因不明の高熱で光と音を失ったヘレンは、サリバン先生の献身的な教育と持ち前のがんばりで、「三重苦」を乗り越えていく。視聴覚障害者では初めてハーバード大学附属女子大に入学し、学位を取得。その後は身体障害者の福祉事業に力を注ぎ、世界各地で熱心な講演活動をくりひろげたのである。
中国語版の本書には「奇跡は不屈の精神から生まれた」「人類永遠のほこり」、また帯には「苦境におかれた家族や親戚、友人に贈る最高のプレゼント」と記されている。人間の力とは、生きる意味とは、喜びとは何かを深く考えさせる一冊だ。
8)『菊花香』(菊花の香り)
金河仁著(韓)荀寿瀟訳 南海出版公司 2002年10月第2刷 489冊
実話をもとに描かれた感動の純愛小説。韓国で200万冊の大ベストセラーとなり、中国や台湾などでも翻訳出版されている。
大学時代に承宇(スンウ)が地下鉄で出会ったのは、菊花の香りをほのかに漂わせていた女性。3つ年上で、さっぱりとした性格の美姝(ミジュ)だった。卒業後、運命的に再会したミジュに、スンウは想いをうちあける。そして2人は結ばれるのだが……。
「こんなに切なく、美しい愛はもう二度とない」「村上春樹を読まなければ、『小資』(プチブル)がわからず、金河仁を読まなければ、『ロマン』がわからないだろう」と中国版のキャッチコピーにある。乙女心(!?)がくすぐられるが、それ以上にオシャレな細工は、本書(正規版)を開くと菊花の香りが漂うこと。偽造を見分けるためだという。
9)『永不永不説再見』(いつまでもサヨナラを言わない)
張小嫻著 南海出版公司 2003年1月第2刷 475冊
香港の人気女流作家・張小嫻(チョン・シウハン)による最新エッセイ集。「愛されるのは、人を愛するより幸せ?」「失望、希望、絶望」「幸福の境界」など、ときにやさしく、ときに厳しい張小嫻のまなざしに触れることができる。
10)『再見了,可魯 一只狗的一生』(邦題『盲導犬クイールの一生』)
石黒謙吾著/秋元良平撮影/猿渡静子訳 南海出版公司 2003年2月第2刷 458冊
2001年春に文藝春秋から出版され、ベストセラーになった『盲導犬クイールの一生』の中国語版。盲導犬の生涯が、モノクロの写真とやさしい文章で語られる。中国でもその静かな感動が広がりつつあるようだ。訳者の猿渡静子さんは、北京大学文学博士号を取得し、翻訳や中国語の執筆で活躍中。
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