中国・本の情報館~東方書店~
サイト内検索
カートを見る
ログイン ヘルプ お問い合わせ
トップページ 輸入書 国内書 輸入雑誌  
本を探す 検索 ≫詳細検索
東方書店楽天市場店「東方書店plus」
楽天市場店 東方書店plus
 
各種SNS
X東方書店東方書店
X東京店東京店
X楽天市場店楽天市場店
Instagram東方書店東方書店
Facebook東京店東京店
 
Knowledge Worker
個人向け電子書籍販売
 
BOOK TOWN じんぼう
神保町の書店在庫を横断検索
 
日本ビジネス中国語学会
 
北京便り
上海便り
ネット用語から読み解く中国
 
bei_title  
 

 

2003年3月  

     

 3月の北京は、なんといっても「両会」(リャンホイ)と呼ばれる全国人民代表大会(全人代=国会)と中国人民政治協商会議(政協)の季節です。胡錦涛・国家主席、温家宝・首相をはじめとする新しい国家指導部が選出される予定で、今年の経済成長率は、昨年と同じ7%という目標が掲げられました(3月5日)。

 写真は、西単文化広場にお目見えした「両会」を祝う大きな広告。その前に座って、幸せそうにくつろぐ若いカップルたちの姿が印象的でした。

bj200303_1

 
     

★ちょっと気になる本 ますます広がる絵本ワールド!

 
bj200303_2

bj200303_3

 春節(旧正月)の休みを終えて、しばらくぶりに本屋へ行った。本屋といっても北京では最大級の本のデパート、西単にある北京図書大廈である。
  市の中心部にあって、地上4階、地下1階の5階建て。社会科学から文学、歴史、学校教材、趣味・教養にCDやVCDなどを取りそろえた「音像世界」まで、あらゆる分野が、各階のコーナー別にわかりやすく配置されている。
  巨大デパートはとにかく人気だ。週末に行こうものなら、芋を洗うようなにぎわいである。書籍の多さと回転の早さ、来客数では北京一だと見ているが、それだからこそ「北京っ子たちの関心の向きがつかめるかも!」と、ちょくちょく通っているのであった。

そしてその日も――。何気なく訪れた2階の文学類コーナーで、「唷(ヨッ)!」と息をのんだ。別に中国語で驚かなくてもいいのだが、要するに何語でもよかった。奇声を発せずにはいられなかったのである。

 昨年秋に足しげく通った「大人向けの絵本コーナー」が、なんとまあ売り場を拡大して、ますます多様化しているではないか! 以前にもご紹介した台湾の絵本作家・幾米(ジミー)の作品ばかりではない。大陸のオリジナルにも、さまざ

まな形態のものが現れていた。新しい作品が続々と登場していた。そこには、日本人の私が抱いていた固定観念をガラリとくつがえすような、斬新でユニークなアイデアがあふれていたのである!!

その中のひとつが『520(我愛你)』(I love you,中国青年出版社、上下巻、2003年1月初版)だ。ページをめくると、かわいらしいイラストと短い愛の詩、それに奇妙な数字がついている。なんだこれ??? 不思議に思ってよく見ると、その数字はなんと、中国語に置き換えられるショートメッセージだったのだ!

「717 猜一猜」
(チーイーチー=ツァイイーツァイ、当ててみて)

「520 我愛你」
(ウーアールリン=ウォアイニイ、愛している)

「5340 我相信你」
(ウーサンスーリン=ウォシャンシンニイ、信じている)

「20184 愛你一輩子」
(アールリンイーバースー=アイニイイーベイズ、一生あなたを愛します)

「100087 一千个抱歉」
(イーチェンバーチー=イーチェンガバオチェン、千個のごめんね)

 添えられた詩も、ロマンチックだ。たとえば「5026 我恋愛了」(ウーリンアールリュウ=ウォリィェンアイラ、恋している)には、窓辺にもたれる女の子のイラストとともに、こんな詩が描かれている。

小鳥のさえずり なんてきれいなの
  窓辺の花は 去年よりも美しい
  今夜の月は 前よりずっと丸いよう
  あなたがいった昨日の言葉 ただそれだけで
  世界中に告白したい 私、恋している!!

 あまりにもストレートな表現が気恥ずかしいが、それは、だれしもが持つだろう甘酸っぱい思い出をよみがえらせてくれる。絵本コーナーでは、中国の中高生くらいの女の子たちが、この本を手にとって「うわー、カワイイ!」とはしゃいでいたが、そういえば私にもあんな時代があったっけ(懐、、、)。

bj200303_4
bj200303_5

中国の携帯電話ユーザーは先ごろ2億人を突破したという。携帯のショートメッセージは通話より安く(通話は1分間0.6~0.8元、メッセージは70字まで0.1~0.15元)、相手にも迷惑をかけないので、学生たちには通話以上に人気のようだ。かつて普及していたポケベルのメッセージ方式が、携帯に受け継がれるのも自然のなりゆきだったのだろう。
  著者の張詠茨(ジャン・ヨンツー)は、本書についてこう語る。「私たちの仕事場では、いつもメッセージの着信音が鳴り響いていたの。それが今はやりの愛情表現なのよ。この本を恋人へのプレゼントにしてほしいわね!」(序)。

 ショートメッセージを中国語ではなく、数字に置き換えて遊ぶ発想はおもしろい。まるでクイズか暗号のようだ。それをイラスト入りの詩集にしたのは、さらにユニーク。中国人の“遊び心”も、時代とともに進化しているのだろう。

 そして、もうひとつご紹介したいのがコレ。『奇跡』(湖南文芸出版社、2003年1月初版)という単行本だ。本を開いてみて驚いたのだが、前半部分がマンガで、後半のそれが小説になっている。どういうこっちゃ? あずき色の帯には「満江 音楽専輯同名創意漫画小説」と書いてある。フムフムそうか。満江(マン・ジャン)という歌手のアルバムと、同名タイトルの創作漫画小説なのだ。

 でも、それってナニ?そんな物が本当にあるのだろうか? 半信半疑だった私は2階の「文学類・絵本コーナー」で『奇跡』を買うと、その足で3階の「音像世界」へと向かった。そして服務員さんに尋ねると、すぐさま持ってきてくれた。あーっ、ホントにあった! 同じタイトルのアルバム『奇跡 miracle』のVCDとカセットだ!(中国文采声像出版公司・出版、北京京文唱片有限公司・発行。CDは売り切れていた)。カバーに写る満江は、甘いマスクでやさしく微笑みかけている。もう、買うしかないだろう。

 帰宅するとVCDをかけながら、本を開いた。インターネット等でも調べてみた。つまりこういうことだった。
  本書の作者・梁閲(リャン・ユエ)は、北京の若手音楽マネージャー。1998年に、とあるバーで歌っていた満江を発掘、同年には彼をプロデビューさせた。この『奇跡』は2002年発表のアルバムなのだが、「デビューして4年、初の『中国歌曲ヒットチャート』3週連続第1位を記録した」(本書)という流行歌となる。スローバラードの全10曲は、満江のソフトな声が心地いい。

bj200303_7 そして「漫画小説」の『奇跡』だが(何だかややこしいな…)、これはマネージャーの梁閲による「音楽と小説、マンガを一体化させた新概念の作品」であるという。生き生きとしたペン・タッチに力量を感じさせる、若手マンガ家の姚非拉(ヤオ・フェイラー)が作画した。「奇跡」「恋愛中の都市」「愛情の海」など、アルバムの楽曲それぞれに合わせてイメージを膨らませたという同名タイトルのマンガと小説が描かれている。読者やファンは、音楽を聴きながらマンガや小説も一度に楽しめるという、なんとも贅沢な作りなのである!
――大学4年の周克寧(ジョウ・クーニン)は、学部対抗バスケット試合を応援してくれたある女子学生に一目ぼれする。大きな目と微笑みが忘れられない。その後、ひょんなことから再会を果たすも、彼女は「奇跡」というバーで深夜までアルバイトを続けていた。その右手に光る銀のブレスレットを見るたびに、周克寧の心はざわついた。
  じつは、彼女にはひそかに思う彼がいた。ブレスレットも彼からのプレゼントだった。いつも同じ席に座り、テキーラと多めのレモンを注文する彼。しかし、2人の関係は恋人同士と呼べるようなものではなかった。「彼が私を本当に好きなら、今年のクリスマスまでに私をつかまえてほしい。そんな約束をしたのよ」。クリスマスの夜、周克寧は、そして彼女とその彼の運命は――。

 淡々としたストーリーだが、それがかえって現実的な日常を浮き彫りにする。悲劇的なラストではあるが、周克寧のひたむきな愛がさわやかな印象を与えてくれる。マンガと小説には、歌詞の一部も織り込まれている。
  「だれが巡りあわせてくれたのだろう、君とぼくを……出会ったり、離れたり、これも奇跡とようやく気づいた……」(「奇跡」作詞・李小竜、作曲・小柯)
  音楽あり、絵や文字あり。いずれもアナログではあるけれど、リアルな3D映画を見るかのような、そんな新しい楽しみ方をこの『奇跡』は教えてくれた。

 北京では依然として、幾米の絵本が売れ続けている。北京図書大廈では昨年、何度も文学類の月間ベストテンに上っていたし、この1月は『向左走・向右走』(左へ歩く・右へ歩く、邦題『君のいる場所』)、『照相本子』(写真メモ)など彼の3作品が、2月は『布瓜的世界』(なぜの世界)がそれぞれベストテン入りを果たしていた。

大学院で中国語学を専攻する中国の女友達は、「勉強で疲れていたけど、幾米の本を読んだらスッキリしました。子どものころに返ったような気持ちになって。きれいな配色も、とても好きですね」とその作品を評価する。幾米に追いつき追い越せといわんばかりに、新しい絵本も続出している。
  この驚くべき幾米人気と絵本ブームは、一体どうしたわけなのだろうか? 北京図書大廈2階の事務室にいた、文学類コーナーの責任者に聞いてみた。
  「今の中国は“進入読図時代”(絵を読む時代に入った)といわれています。仕事や勉強で忙しい現代人は、長編小説を読む時間が少なくなりました。疲れた心や体を、絵本で癒す――。そんな厳しい時代が中国にもやってきていることの現われでしょう」
  やっぱりそうか。中国の人たちも、つかの間のゆとりを絵本の世界に求めているのだ。中国の絵本文化の発展を期待する一人ではあるが、そこに横たわる現実にも目をそむけてはならないだろう。そう考える今日このごろの私であった。

 
   
   
     
     
     

★北京図書大廈(西単)調べ(北京市西城区西長安街17号)
2003年2月1日~2月28日

 

 

 

 

     
bj200303_10

bj200303_11

bj200303_12

bj200303_13

bj200303_14

bj200303_15

bj200303_16

bj200303_17
 

1)『漫画版 歓楽正前方(全3冊)』(真正面の楽しみ)
王為/小穎編著 徐福騫など漫画 北京出版社 2003年1月初版 共1651冊


 北京人民ラジオ局の人気番組『歓楽正前方』。8年もの長寿番組を支えるDJ王為(ワン・ウェイ)と聞風(ウェン・フォン)が、これまでに紹介してきた面白おかしい話をまとめた。
  「ホントついてないっスよー。嫁さんがね、ぼくの全財産を持って逃げちゃったんですよー」「ぼくなんか、もっとついてないよ。嫁さんがね、ぼくの全財産を持って……、まだどこにも逃げてないんだよ」
  すっかり尻に敷かれた亭主の姿が目に見えるようだ。ラジオ番組の音の世界を、文字とマンガで再現した異色の文芸書である。


2)『我是韓国人』(ぼくは韓国人)
申世庸(韓)李芳訳 華芸出版社 2003年1月初版 673冊


 アメリカで学ぶ兄を頼って13歳で渡米、空軍士官学校に留学し、言葉の壁や人種差別、生活格差を乗り越えて、ついにイギリスの名門・オックスフォード大学に入学したある韓国人の真実の記録。韓国では100万冊以上を売り上げたという人気書だ。「この本を、海外生活にあこがれるすべての若者に捧げる」と筆者は語る。


3)『哈利・波特与阿茲卡班的囚徒』
(ハリー・ポッターとアズカバンの囚人)J.K.ローリング著(英)鄭須弥訳 人民文学出版社 2002年2月第12刷 655冊


 魔法つかい見習いの少年・ハリーは3年生になった。ところが今度は、恐ろしいアズカバン牢獄の脱獄犯に命を狙われて……。またまた夢と大冒険がくりひろげられる。

ヨーロッパの童話を現代風にアレンジした“ハリポタ”は中国でも大人気。シリーズ第3作の本書は、中国語版がすでに90万部あまり出版されている。


4)『中華伝統美徳格言』
編纂委員会編纂 人民教育出版社 2003年1月初版 611冊


 中国伝統の「格言」をコンパクトな冊子にまとめた啓蒙書。「百聞不如一見」(『漢書』)、「它山之石,可以攻玉」(『詩経』)、「己所不欲,勿施于人」(『論語』)など、日本人にもおなじみのフレーズがあって面白い。
  国家指導部の提唱のもと、教育部(文部科学省にあたる)の組織で編纂されたが、なるほど巻頭ページをめくると「中華の美徳を伝承し、民族の精神を育成する」という江沢民氏の揮毫が目に入る。
  「現代化を推し進め、世界に向かう中国が、未来をになう若者たちに、中華民族の偉大な復興をたくしたい」と本書は編まれた。マンガ入りの子ども向けも同時発売されている。


5)『布瓜的世界』(なぜの世界)
幾米著 遼寧教育出版社 596冊


 「布瓜」はフランス語の“Pourquoi”(なぜ)の音訳。子どものように素直な「なぜ?」を散りばめて、あらゆる答え(可能性)を探ろうとする自由な発想がおもしろい。


6)『行者無疆』(行く者に限りなし)
余秋雨著 華芸出版社 585冊


 現代中国の人気作家・余秋雨のヨーロッパ紀行。イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、ドイツ、デンマークなど欧州各国を周遊し、歴史や文化、人々の暮らしや中国との関わりを真摯に見つめる。


7)『假如給我三天光明』(もしも私に3日の光をくれたら)
ヘレン・ケラー著(米)/李漢昭訳 華文出版社 2003年1月第20刷 573冊


 「奇跡の人」ヘレン・ケラー(1880~1968)の自伝やエッセイをまとめた。幼いころに、原因不明の高熱で光と音を失ったヘレンは、サリバン先生の献身的な教育と持ち前のがんばりで、「三重苦」を乗り越えていく。視聴覚障害者では初めてハーバード大学附属女子大に入学し、学位を取得。その後は身体障害者の福祉事業に力を注ぎ、世界各地で熱心な講演活動をくりひろげたのである。
  中国語版の本書には「奇跡は不屈の精神から生まれた」「人類永遠のほこり」、また帯には「苦境におかれた家族や親戚、友人に贈る最高のプレゼント」と記されている。人間の力とは、生きる意味とは、喜びとは何かを深く考えさせる一冊だ。


8)『菊花香』(菊花の香り)
金河仁著(韓)荀寿瀟訳 南海出版公司 2002年10月第2刷 489冊


 実話をもとに描かれた感動の純愛小説。韓国で200万冊の大ベストセラーとなり、中国や台湾などでも翻訳出版されている。
  大学時代に承宇(スンウ)が地下鉄で出会ったのは、菊花の香りをほのかに漂わせていた女性。3つ年上で、さっぱりとした性格の美姝(ミジュ)だった。卒業後、運命的に再会したミジュに、スンウは想いをうちあける。そして2人は結ばれるのだが……。
  「こんなに切なく、美しい愛はもう二度とない」「村上春樹を読まなければ、『小資』(プチブル)がわからず、金河仁を読まなければ、『ロマン』がわからないだろう」と中国版のキャッチコピーにある。乙女心(!?)がくすぐられるが、それ以上にオシャレな細工は、本書(正規版)を開くと菊花の香りが漂うこと。偽造を見分けるためだという。


9)『永不永不説再見』(いつまでもサヨナラを言わない)
張小嫻著 南海出版公司 2003年1月第2刷 475冊


 香港の人気女流作家・張小嫻(チョン・シウハン)による最新エッセイ集。「愛されるのは、人を愛するより幸せ?」「失望、希望、絶望」「幸福の境界」など、ときにやさしく、ときに厳しい張小嫻のまなざしに触れることができる。


10)『再見了,可魯 一只狗的一生』(邦題『盲導犬クイールの一生』)
石黒謙吾著/秋元良平撮影/猿渡静子訳 南海出版公司 2003年2月第2刷 458冊


 2001年春に文藝春秋から出版され、ベストセラーになった『盲導犬クイールの一生』の中国語版。盲導犬の生涯が、モノクロの写真とやさしい文章で語られる。中国でもその静かな感動が広がりつつあるようだ。訳者の猿渡静子さんは、北京大学文学博士号を取得し、翻訳や中国語の執筆で活躍中。


 

 
   
     

 

 

今年3月の北京は、大雪が降ったかと思えば、春のような暖かさになり、まさに「一冷一熱」(寒くなったり、暑くなったり)の不安定な天候です。この分だと、玉淵潭公園の桜の開花もまだ先になりそう……。桜を思って、落ち着かない日々が続きます。

 

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
  b_u_yajirusi  
 
   
中国・本の情報館~東方書店 東方書店トップページへ
会社案内 - ご注文の方法 - ユーザ規約 - 個人情報について - 著作権について