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2003年2月  

     

中国の人々にとって、いちばんの年中行事といえば春節(旧正月)でしょう。北京でも、この春節休暇(2月1~7日)に各地で盛大な「廟会」(縁日)が行われ、春節ムードを盛り上げていました。
  写真は、地壇公園で開かれた「廟会」のようすです。手作りの風車など縁起ものを売る店や、軽食の露店がズラリと並び、広場にしつらえられた舞台では、獅子舞い、漫才、手品や雑技、京劇の歌が次々と披露されていました。火事やけがを防ごうと、新年を祝う爆竹が禁止されて久しい北京の街ですが、この「廟会」だけは、昔ながらの賑わいが残されているようです。

 
     

★ちょっと気になる本

春節に「年画」を貼らない!?春節《特大》訪談

 

 「もうすぐ春節でしょう? 北京で『年画』を手に入れてくれないかなぁ~」
  春節を前にしたある日のこと、日本からそんな依頼が飛び込んだ。「年画」は中国伝統の民間絵画だ。ふつうは春節を迎えるころになると、家の門や室内に貼る。新年を祝い、福を招いて厄を除けるためである。勇ましい武将の姿の「門神」や、富をもたらす福の神の「財神」、かまどの神様「灶王爺」(ザオワンイエ)や、愛らしい子どもの姿など、縁起のいいお決まりのデザインがすぐに思い起こされた。
  「没問題(メイウェンティ)。まかせておいてください!」。相手は日本人なのに、私はとっさに気前のいい中国語で、そう答えていた。すぐに見つかるだろうと、高をくくっていたのである。ところがそれが大間違いのもとだった。

 年画が「ナイ」のだ。いや厳密にいうと、探したものは伝統的な木版彩色画であるが、デパートや卸売市場に並ぶのは、年画は年画でも金ピカのカラー印刷ポスターだった。赤や青や金色でキラキラしていて、じっと見ていると目がチカチカしそうになった。しかも、100元札(もちろんコピー)を手にしてニンマリと笑う財神を見た時には、言葉を失った。今ふうのユーモアなのかもしれないが、俗化した財神には、神様本来の威厳など消え失せていた。昔ながらの素朴な年画は、どこへいったのだー!

 しょげ返っていると、中国の友人たちがさらに追い討ちをかけた。「新しいマンションや、改装したきれいな部屋にはそぐわないでしょう」「それに古臭いしね。今の都会では、年画を買って貼る人なんか、ほとんどいないよ」
  ガーーーン! どうしたらいいのだろう。タンカを切ったのに、これでは面目丸つぶれじゃないか。そこで、同僚であるものしりの老北京人に聞くと「まあ、琉璃廠か潘家園の骨董市場へ行くんだね」とのこと。「年画は、もはや都会では"骨董品"になっていたのか」。そう気がついた私は、汚名返上とばかり、さっそく近場の琉璃廠へと出かけていった。

 琉璃廠は、いわずと知れた文房四宝の街である。清代からの書画骨董の老舗も多い。東西にのびる通りに連なる店を、西から順に訪ねていった。一軒目はなし、二軒目もなし。そうして何度、出はいりを繰り返したろうか。ほとほと疲れ果てたその時だった。「年画? ねえー、そっちに年画あったわよねー」。その店の女性店員さんが、大声で奥の間にいた人を呼んだ。私もすぐさま奥へと向かった。あった!伝統的な木版年画だ!探し求めていた、素朴な風合いの彩色年画だ!
  琉璃廠東街に入ってすぐの「古藝齋」(東街107号)。奥の間のテーブルには、えもいわれぬ美しい色合いの年画が、束になって置かれていた。有名な年画産地のひとつ、山東省潍坊市楊家埠のものだった。子どもが麒麟に乗ったもの(「麒麟送子」)、子どもが大魚を抱いたもの(「年年有余」)、財神が昔の貨幣・元宝を手にした「財神到」の年画もあった。いずれも古くから伝わる、縁起のいいデザインばかりだ。年画を一枚ずつめくると、刷りたての墨のにおいがプーンとあたりに漂った。


  ▲古藝齋

 奥にいた男性店員さんが教えてくれた。「これは明代の版木で印刷したものだよ。貴重な版木だから、そう何度も刷れない。だから今では同じ図案の版木を作り、新しく印刷しているものもある。これがそうだよ」。そういわれても、素人目には同じように逸品に見える。
  「この紙もすごいよ、ほら」。店員さんはそういうなり、売り物の年画をくしゃくしゃに丸めてしまった(!?)。しかし年画は、ちっとも破れないばかりか、伸ばすと元通りに。「いい宣紙を使っているんだよ、フフフ」。まるで手品のようである。
  年画は10数種類あったが、2枚1組の対(つい)にして貼るのが原則なので、どれを組み合わせたらいいものか、わからなかった。そこで、女性の店員さんに聞くと「そうねえ、みんな縁起物なんだけど。これとこれ、これとこれ」といいながら、ぴたりと対にしてくれた。ここで求めたのは「招財童子至」と「双喜即日到」、「有余」と「楽観」、「連生貴子」と「送子」、それに「財神到」の7枚だ(財神は対にしない)。


  ▲山東省楊家埠の木版彩色年画(奥)とピカピカの「門神」

 1枚10元(1元は約15円)と、既成の金ピカ年画に比べれば数倍高いが、なんといっても産地の手作り年画である。私はホクホク顔で「古藝齋」を後にした。ちなみにこの店の年画は、売り切れたら今年の分はおしまい。買っていくのは、地元の人より、外国人が多いそうだ。

 しかし、私の使命はこれで終わったわけではなかった。年画の定番「門神」を、どうしても入手したかったからである。今度は東街の店を一つずつ覗いていった。唐代に実在した2人の武将、秦琼と尉遅敬徳をイメージしたという猛々しい門神が欲しかった。
  「門神? そういえばあったわねぇ」といって探し出してくれたのは、「一得閣」という店だ(琉璃廠東街67号)。「もう誰も買わないからしまってあるのよ。木版画ではなく、剪紙(切り紙)だけどいい?」と女性店員さん。カギのかかったガラスケースから出てきたのは、ほこりをかぶり、色のあせた大型の剪紙だったが、独特の味わいがあった。それで少し負けてもらって1対38元でゲット。鉄棒を持つのが叔宝で、鉄のムチを持つのが敬徳だというが、その2人だろうか? あるいはさらに古くからある「崔竜」「楊衮」の神像だろうか? いずれにしても、好漢である。

▲一得閣

 「昔はね、この1対で100元以上もしたんだけど、今は誰も買わなくなったからね。どんどん安くなっちゃったのよ。もう春節を迎えるから、そうねえ、これも出しておきましょうかねえ」と「一得閣」の店員さんは、しみじみとつぶやいていた。

 

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こうして、なんとかお目当てを獲得したが、文具と工芸の街・琉璃廠にしても"年画のたぐい"を置いていたのが、ごく僅かの店だった。中国の伝統文化は、めざましい経済発展の波におされて、消えゆく運命にあるのだろうか? 無性に寂しさを覚えた私は、その足で、琉璃廠にある中国書店へと向かった。年画の本を買うためである。

 琉璃廠西街18号の中国書店「来薫閣」では、年画史の完全保存版ともいえる新刊の『中国年画史』(王樹村著、北京工芸美術出版社、2002年7月初版)、それと、戯曲年画の名作をコレクションした『老戯曲年画』(張道一主編、上海画報出版社)の2冊を求めた。

 


  ▲中国書店「来薫閣」

 『中国年画史』の著者、王樹村さんは年画研究の第一人者だ。数年前に来日された折、仲間とともに東京の湯島聖堂をご案内するという光栄にあずかったが、中国語となると無口になった私である。かの先生は覚えておられないだろう……。

▲中国年画史     ▼『老戯曲年画』

 

 それはともかく、本書は著者50年にわたる研究の集大成である。原始宗教に源を発する年画は、宋代には木版印刷の発展により、また明・清代には彩色技術の向上により、全国的に広まっていった。その後、「抗日戦争期に、旧日本軍が侵略を正当化する宣伝教育のために利用した」という「抗戦年画」、新中国成立までの革命戦争期に、解放区で作られたという「革命年画」なるものも登場。年画は時代の変化とともに、その表情を変えていった――。
  300枚のカラー図版を駆使した、約300ページもの大著である。太古の昔から新中国成立までの時代区分で詳述された年画研究は、読み応えがある。天津で生まれ育った著者はいう。「少年時代、日本軍の侵略で一家はちりぢりになりましたが、大好きだった年画だけは手放せなかった」(後記)。その後、青年時代には美学に没頭するが、手にした『中国美術史』も『満清全史』もみな外国で著作されたものであった。
  「当時は内憂外患をかかえ、軍閥が割拠するという中国の混乱期でした。美術史、とくに年画史を研究する者などなかった。それで自分が整理しようと思ったのです。『言うは易し』ではありましたが…」(後記要旨)と著者は述懐する。中国人としての誇りと信念がなければ成し得なかった偉業であり、著者あってこその年画史だ、といっても言い過ぎではないだろう。

 年画のデザインは、先に挙げた神像や、多子多福を願う子どもの像のほか、美しい官女や花鳥風月、神話伝説や道徳教育など、多種にわたった。中でもストーリー性に富んでいたのが、歴史故事や戯曲を絵にした年画である。有名な場面をいくつか抜き出して物語を構成しているので、年画はまるで"絵本"や"紙芝居"を見るかのような楽しさがある。
  『老戯曲年画』は、そんな戯曲年画の傑作が、居ながらにして観賞できる。『封神演義』に『三国志演義』、『西遊記』に『水滸伝』、『白蛇伝』に『孟姜女』……。おなじみの名場面が、鮮やかなカラーとともによみがえるのだ。
  『三国志演義』第46回の「草船借箭」(草船に矢を借りる)は、諸葛亮が智謀を用いて、濃霧の中で曹操軍から放たれた矢(10万本)を、何の苦もなく集める話だ。
  年画の場面では、決死で挑む曹操軍(右側)に対して、悠然と酒を酌み交わす諸葛亮(左端)と魯粛の姿が対照的に描かれる。生き生きとした表情、鮮やかな配色、すぐれたデフォルメと遠近法は、見るものを華麗な戯曲の世界へといざなってくれる。天津楊柳青で製作された、中華民国初年版の木版彩色年画である。その色あせない迫力の画面は、年画の魅力を改めて気づかせてくれる。

 このほか、琉璃廠東街115号の中国書店「邃雅齋」では、コンパクトで比較的廉価な年画の手引き『中国民間美術叢書 民間年画』(李錦l詹主編、湖北美術出版社、22元)と、『芸林撷珍叢書 年画』(呉士余・主編、上海人民美術出版社、28元)の2冊を購入。いずれもオールカラーで美しく、丁寧な解説つきなので、ビギナーにもおススメだ。年画を気軽に親しめるだろう。


中国書店「邃雅齋」

 

  
  ▲『中国民間美術叢書 民間年画』(左)
      と『芸林撷珍叢書 年画』

 「春節に年画を貼る習慣は、農村でも少なくなっていますよ。どこでも都市化が進んでいますからね」というのは、天津の農村出身の友人である。年画はいずれ、書籍でしか楽しめなくなるのか? 本当に骨董化してしまうのだろうか?
  そんな折のことだった。何気なく見ていた国営の中国中央テレビ(CCTV)が「消えゆく非運にさらされた民間文化を保護し、保存していく」という国の新しい政策を伝えていた。民間文化にはもちろん、工芸品の年画や剪紙が含まれる。これからは国のテコ入れで、民間文化を保存・継承するのだという。
  年画を求めてうろつき回り、ようやく探した今年の春節――。正直なところ、その朗報にはホッとさせられたのであった。

 

 
 
   
   
     
     
     
★北京図書大廈(西単)調べ(北京市西城区西長安街17号)
2002年の社会科学関係書ベスト10(2002年1月1日~12月31日)

昨年1年間のベストセラーが発表されました!!
     








 

1)『誰動了我的奶酪?』(チーズはどこへ消えた?)
スペンサー・ジョンソン著(アメリカ) 中信出版社 61,296冊


 

2)『登上健康快車』(健康急行に乗る)
洪昭光など著 北京出版社 2002年11月第10刷 40,872冊


3)『让健康伴随着您』(あなたについて健康に)
洪昭光 著 南海出版公司 2002年10月第2刷 21,976冊


 『登上健康快車』の人気で、一躍有名になった洪昭光教授(高血圧・心臓病・老人病の専門家)の"健康宝典"。「知識は健康」「心理のバランス」「健康は財産」「食事の中の一二三四五」「テーブルの上の紅黄緑白黒」など、ヘルシーライフを送るためのイロハが、やさしく解き明かされている。「洪教授・健康講座」のVCD2枚組つき。


4)『女人的資本』(女性の資本)
肖衛主編 九州出版社 2003年1月第3刷 19,578冊


 急速な経済発展にともない、女性が活躍できる場もますます増えている中国。本書では「男女の長所を分かちあう」など、女性がより幸せに生きるためのエッセンスを披露する。


5)『傑克・韋爾奇自傳』(ジャック・ウェルチ自伝)
ジャック・ウェルチ/ジョン・バーン著(アメリカ) 曹彦博/孫立明/丁浩訳 中信出版社 2002年7月第9刷 18,962冊


 アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)の会長兼CEO(最高経営責任者)として、GEを世界最強の企業へと変えたジャック・ウェルチ。その生い立ちからビジネスの奥義まで、余すところなく語った自伝的経営学の書だ。日本では、『ジャック・ウェルチ わが経営(上・下巻)』というタイトルで、日本経済新聞社から出版されている。


6)『時間簡史(挿図本)』(A Brief History of Time、邦題『ホーキング、宇宙を語る』)
スティーヴン・ホーキング著 許明賢/呉忠超訳 湖南科学技術出版社 12,404冊


 ビッグバンやブラックホールなど知られざる宇宙の不思議について、「車椅子の天才」ホーキング氏が解き明かす。1988年の英語版刊行以来、全世界で1000万部を記録。科学書としては空前のベストセラーとなった本書は、中国でも昨年8月に第3刷を数えている。


7)『孫子兵法与三十六計』(孫子の兵法と36計)
孫武原著 京華出版社 10,402冊


 あまりにも有名な春秋時代の兵法書。「作戦編」「謀攻編」など孫子の兵法と、「空城の計」など36の計を紹介する。今に生きる経営学のテキストとして多数の類書が出されているが、本書はCDロムの解説つきで人気を博したようである。


8)『読懂人生―珍蔵本』(人生を知る)
田偉著 中国三峡出版社 10,048冊


 人生の奥義をレクチャーする自己啓発本。第1章「人は考え方次第」、第2章「人の半分は"天使、半分は"悪魔"」、第3章「暗示で"天国"へも"地獄"へも」などから構成される。


9)『富爸爸、窮爸爸』(金持ち父さん 貧乏父さん)
ロバート・キヨサキ/シャロン・レクター著(アメリカ) 世界図書出版公司 9,516冊


10)『一生的忠告 一位外交家爸爸給儿子的信』(一生の忠告、ある外交家の父から息子への手紙)
チェスター・フィールド卿著 劉樹林/崔黎麗訳 海潮出版社 文庫版 9,384冊


 「代々語り継がれる、英国紳士たちのバイブル」であるという。ある外交官が記した息子への手紙には、人生を成功させるための知恵が詰め込まれている。目次だけ見ても「小さなことも大切にする人は、必ず大きく発展するだろう」「自尊心をなくしてはならない」「相手にも、君と同じ自尊心がある」「千里の道も一歩から」など、教えられることは多い。


 

   
 
   
     

 

地壇公園の「廟会」で、年画の産地である河北省武強と山東省潍坊の作品が売られていたので、うれしくなって写真を撮りました。年画作りの実演をしてくれた武強年画博物館の副館長・馬習欽さんは「地元でもね、年画を買う人が少なくなっているんですよ」と寂しそう。CCTVの取材班もインタビューをしていましたが、それだけ年画が貴重なものになっているのでしょう。

 

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
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