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2002年12月  

     

 北京の冬のブックフェア「冬季書市」が12月6日から16日まで、市街区北部の地壇公園で行われました。期間中は200以上の書店や出版社らが、800あまりの露店をオープン。書籍やCD、VCDが市価の2~7割安と破格の値段で買えるとあって、雪の降りしきるこの日も大勢の人でにぎわっていました。「寒さなぞ、どこ吹く風」の人々の旺盛な“知識欲”には、ただもう、たじろぐばかりです……。

 
     

★ちょっと気になる本

国産ストーリー・マンガに新潮流が!

 マンガといえば、風刺マンガや「連環画」(絵物語)の伝統をもつ中国で、ストーリー・マンガが気をはいている! 国産ストーリー・マンガの単行本も登場し、「中国マンガの新潮流か?」と大きな期待を集めているのだ。

 中国のマンガに古くからあるのは、一コマの風刺マンガや「連環画」、数コマのマンガ「連環漫画」だ。ドラマ性の高い「ストーリー・マンガ」とは一線を画しており、それは今でも独自の発展をとげている。(注1)
  1980年代になると、手塚治虫のアニメ『鉄腕アトム』が中国で初めてテレビ放送されて、大ヒットを飛ばした。続く80年代後半には『ドラえもん』『美少女戦士セーラームーン』『ドラゴンボール』という日本のコミックの翻訳版が上陸したが、こちらの多くは「盗版」(海賊版)もの。違法コピーの産物だった。

 90年代半ばになると「日本のマンガに続け」とばかりに、中国産コミック誌が初登場した。オリジナルのストーリー・マンガの誕生である。この流れは今もコミック誌の『北京卡通』(北京出版社出版集団)や『少年漫画』(中国美術出版総社)などに受け継がれ、目を見張るような技術の進歩を見せている。(注2)

 そして今では、コミックの翻訳版も正式ライセンスを取得したものが並んでいる。大手書店には、版権を取得した『哆啦A夢』(ドラえもん)や『蜡筆小新』(クレヨンしんちゃん)、『名偵探柯南』(名探偵コナン)が出回っているし、この夏刊行されたばかりの月刊コミック『吉美漫画』(吉林画報社)も、日本の『月刊コロコロコミック』(小学館)の正規の翻訳版だった。(注3)

 つい説明が長くなってしまったが、このような流れを受けて先ごろ、お目見えしたのが国産ストーリー・マンガの単行本だ! 大陸でこうした単行本が正規に出版されたのは、おそらく初めて。出版事情に詳しい中国の友人も「以前はなかったものですね。けっこうイケてる!」と目を輝かせていた。
さらに興味深いのは、純文学を原作にした“硬派”なマンガであることだ。気軽に読めるが、深く考えさせられる。


 『少年漫画』

 大陸の“新世代作家”と呼ばれる安妮宝貝(アニー・ベイビー)の短編小説をマンガで描いた『告別薇安』(グッバイ・ビビアン、原著・安妮宝貝、改編絵画・雪翎、杭州出版社、2002年10月初版)と、『七月与安生』(七月と安生、原著・安妮宝貝、改編絵画・鬼鬼、杭州出版社、2002年8月初版)の2冊である。

 コーヒーを飲みながら、インターネットでチャットを楽しむ上海の林(リン)。ビビアンと名乗る女性とチャットで知り合い、思いを寄せる一方で、林に恋する同僚の喬(チャオ)ともつかの間の情事を繰り返して……。『告別薇安』では、漂流する現代っ子たちのクールなライフスタイルと揺れ動く心が、原作に忠実なまでに描かれている。迫力のある劇画タッチが個性的な雪翎は、「書き進めるうちに、泣いてしまった。安妮の文字に魔力があったからかもしれない」とあとがきに記している。

 『七月与安生』は、小さい頃から大の仲良しだった2人の女性、七月と安生の物語。平凡な生活にあこがれる優等生の七月と、自由奔放でアクティブな安生は、社会人として別々の道を歩みながらも固い友情で結ばれていた。ところが、七月の恋人・家明を紹介された安生は、一目で彼を好きになり……。西安に転勤した家明に近づいた安生は、やがて彼の子どもを身ごもってしまう。女同士の友情は、はたして続くのだろうか……。

 20代の若手作家・安妮宝貝は、インターネット上に作品を発表する「網絡文学」(ネット文学)というジャンルを確立した一人。1998年から発表をはじめ、上記のほかにも長編小説『彼岸花』、散文集『薔薇島嶼』など、話題作を次々と出版している。
  作品のテーマは「宿命と無常」「愛と死」「告別と流浪」であるという。まじめで重い内容なのだが、彼女のファンだという中国の友人は「自分を見つめるきっかけを与えてくれる。設定もオシャレでクールね」と称賛を惜しまない。
  安妮宝貝は、まさに時代の申し子である。ヒトやモノがあふれて、価値観の多様化する中国。そんな時代の“明暗”を描き、若者たちの支持を集めているようだ。
  そして――。
  彼女の小説に親しむ新鋭のマンガ家たちも同世代である。80年代に上陸したアニメやマンガで育ち、90年代からのネット文化に慣れ親しんでいる若者たち。新世代の共鳴が、中国のマンガ文化を切り開いている。
  (往年の?マンガファンとしては、熱いエールを送りたいところだ。ガンバレ~!)


ご存知!『クレヨンしんちゃん』『ドラえもん』 『名探偵コナン』


『コロコロコミック』中文版


『三毛解放記』


『漫画月刊』『幽黙大使』『漫画party』

(注1-1)「連環漫画」の代表作といえば、『三毛』(サンマオ)シリーズだろう。『のらくろ』や『サザエさん』の中国版とでもいおうか、数コマのマンガで構成される国民的長寿マンガだ(この秋には、改訂版の第2刷も出た)。
作者の張楽平(1910~92年)は、毛が3本しかない三毛がくりひろげる笑いとペーソスの世界を、30年代から約半世紀にわたって描き続けた。単行本に『三毛従軍記』『三毛解放記』『三毛愛科学』などがあるが、タイトルを見てもわかるとおり、作品そのものが“時代を映す鏡”となっている。実写によるテレビドラマや映画も作られた人気作だ。

(注1-2)最近の「連環画」や風刺マンガは、とってもカラフル! 街角のブックスタンドで見つけたものが、月刊『幽黙大使』(ユーモア大使、浙江人民美術出版社)や月2回発行の『漫画party』(雲南教育出版社)、『漫画月刊』(河南日報報業集団)など。表紙もハデだし、カラーページも組み込まれている。風刺マンガや短編のギャグマンガが満載で、ほのぼの系あり、アート系あり、作画もそれぞれ個性的だ。雑誌はA4判50~80ページ前後と、軽くて薄いのが特徴(あまり薄いので、日本にあるような分厚いコミック誌と思っていたら、見つからないかも!?)。

(注2)学園ものにラブロマンス、SF、武術、動物ものとテーマは多岐にわたり、作画力もなかなかのレベルだ。ひとつだけ難をいえば、連載モノでも短編ばかりでボリュームがないこと(A4判100ページ前後と薄い)。コスト削減のためか、1ページの上下左右に4ページ分を縮小して掲載しているからだが、読みにくい。

(注3)昨年、WTO(世界貿易機関)に加盟した中国では、国際法にもとづく改正著作権法が2001年10月27日から、著作権法実施条例が2002年9月15日からそれぞれ施行されており、海賊版の締め出しをいっそう厳しくしている。

 

 
   
   
     
     
     
★ベストセラー   総合
北京国林風図書センター
(北京市海淀区海淀西大街36号 海淀図書城昊海楼B1)
2002年11月25日~12月1日
     








 

1)『向左走・向右走』(邦題『君のいる場所』小学館)
  幾米(ジミー)著 生活・読書・新知三聯書店


 人気沸騰中の台湾の絵本作家・幾米の作品が、いよいよベスト1に。大学街にあり、若者でにぎわうこの書店(国風林)では、今回なんと幾米の4作品がベストテン入りしていた。北京の絵本事情については、本コーナーの11月号をご参照ください。


2)『致加西亜的信』(原題『A Message to Garcia』、邦題『ガルシアへの手紙』)
  エルバート・ハバード著(米) 趙立光など訳 ハルビン出版社 2002年5月初版


 『聖書』や『毛沢東語録』などに続く、有史以来の世界的ベストセラー第6位。古典的な人生の指南書だ。


3)『你今天心情不好吗?』(原題『The Blue Day Book』)
  ブラッドリー・トレバー・グリーヴ著(米) 秋葉 訳 中信出版社 遼寧教育出版社 2002年6月第2刷


 シドニー在住カメラマンの動物写真集。ホッキョクグマにライオン、ブルドッグにチンパンジーなど、動物たちの豊かな表情と写真に添えられたユーモアあふれるコメントが、見るものの心を癒してくれる。


4)『経済学家茶座(第十輯)』(経済学者の茶店、第10集)
金明善 主編 山東人民出版社 2002年10月初版


 大学生やビジネスマン、教授や政府指導者など経済を学ぶ人たちのために作られたというビジネス・レポート集。2年前に創刊し、第10集を数える。最近では、各2万冊の販売部数をほこるという。
中国社会科学院・呉承明の「中国のGDPの物語」、中山大学嶺南学院助教授・姚益竜の「5000元のポンコツ車を買う勇気があるか?」など著名な学者や経済人の最新レポートやエッセイを掲載している。


5)『月亮忘記了』(月は忘れた)
幾米 著 生活・読書・新知三聯書店


 少年と月との交流を描いたハートフルな物語。幻想的な水彩画が美しく、夜空の月を眺めたくなる。日本では『君といたとき、いないとき』(小学館)が翻訳出版されている。


6)『従優秀到卓越』(優秀から卓越へ、原題『GOOD TO GREAT』)
ジェームズ・C・コリンズ著 兪利軍 訳 中信出版社 2002年10月初版


 コリンズの研究チームは、優良企業1400社あまりの過去数10年にわたる分析を行い、業績を伸ばし続ける一流企業を選び出した。それは、ジレットやフィリップ・モリスなど11社。「優良企業から一流企業に、どうしたらなれるのか?」。彼らが導き出した答えは、「仕事をまじめに貫徹する」という最も基本的な経営哲学にあった……。難しい内容だが、グラフや表を駆使してわかりやすく説明している。企業がさらなる繁栄をめざすための必読の書!


7)『海爾是海』(ハイアールは海)
汪洋/康毅仁 著 民主与建設出版社 2002年9月初版


 中国の家電メーカー最大手の海爾(ハイアール)。その最高経営責任者(CEO)である張瑞敏の経営理念をときあかす。「企業は人なり」「2.1%の欠陥は、100%の廃品」「情報時代の物流革命」「サービスと信用は企業生命」「価格より価値を大切に」「危機感こそが、未来への道を開く」……。中国企業の既成概念をうちやぶる大胆な改革に、その成功の秘訣が見えてくる。


8)『国文珍品文庫―孫子兵法』
孫武 著 吉林文史出版社


 いわずとしれた春秋時代の兵法書『孫子の兵法』の文庫版だ。国林風図書センターでは、なぜか売り切れていた。コンパクトな文庫を片手に、ビジネス戦略を練る人が増えているのだろうか?


9)『听幾米唱歌』(幾米の歌を聴く)
幾米 著 生活・読書・新知三聯書店


 1998~99年の連載作品(『自由時報』)を集めた。「巨人のリンゴ」「仮面の告白」「スーパー魔術師」「クリスマスの悲劇」「星を摘む」など、絵と詩のような短い文章でつづる、幾米独特のふしぎな世界が繰り広げられる。


10)『布瓜的世界』
幾米 著 遼寧教育出版社 2002年11月


 「布瓜」はフランス語の“Pourquoi”(なぜ)の音訳でもある。子どものように素直な「なぜ?」を散りばめて、あらゆる答え(可能性)を探ろうとする自由な発想がおもしろい。日本でも来年、某出版社から翻訳版が出るとか。楽しみですね

 


 

 

第1位 『向左走・向右走』/第9位 『听幾米唱歌』/第5位 『月亮忘記了』/第10位 『布瓜的世界』

 
   
     

 

 

 来年は「未年」ですが、中国には「未年生まれの子どもは不幸になる」という言い伝えがあるそうです。そのためこの年末は、病院が“駆け込み出産”をしようとする主婦たちで大にぎわい。ベッドが足りなくなるほどで、「末班車(最終列車)に乗り込んだようだ」というため息が聞こえてきます。
  それでは、皆様よいお年を!

 

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
  b_u_yajirusi  
 
   
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