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2002年11月  

     

 中国共産党の第16回党大会は、日本でも大々的に報道されたと聞いています。街には、赤い中国ちょうちんが飾られ、党大会を祝うポスターや看板がいたるところで目につきました。それはまるで、国慶節か春節(旧正月)のような賑わいぶり。中国の友人いわく「5年に1度の大会だから、お祭りのようなものですよ」とのことでした。やっぱり中国人は、何かにつけてお祭り好きなのかもしれません(!?)

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★ちょっと気になる本

大人のための絵本がブームに!

 「癒し系」とでも言うのだろうか? 大人のための絵本がちょっとしたブームになっている。
  台湾の絵本作家・幾米(ジミー)の作品は、北京でもここ2年くらいの間に7~8作が登場しており、いずれもじわりじわりと売り上げを伸ばしている。その一部は日本をはじめ、アメリカ、フランス、ドイツ、韓国などでも翻訳出版されるという人気ぶりだ。
  目の不自由な少女のファンタジーと冒険の世界を描いた『地下鉄』、ちょっぴり切ないラブストーリーの『向左走・向右走』(私は右・僕は左、邦題『君のいる場所』小学館)、そしてこの11月に出版されたばかりの『布瓜的世界』(瓜を散りばめた世界、遼寧教育出版社)は、子どものように素直な「なぜ?」を散りばめて、あらゆる答え(可能性)を探ろうとする自由な発想がおもしろい。

 お気に入りといえば、『月亮忘記了』(月は忘れた、三聯書店)と『微笑的魚』(微笑の魚、崑崙出版社)の2作を挙げたい。『月亮忘記了』は、月の消えた世界で、月のペットが大量生産された。やがて人々から飽きられ、忘れられてしまう月のペットたち。けれど最後は、小さな男の子が月を空へと放つのである。ふたたび夜空に輝き出した満月。男の子の夢の中には「かすかに百合の香りが漂っていた」。すべては幻想だったのだろうか……!?

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 『微笑的魚』の主人公は、見たところ中年男性である。孤独な「私」は、ペットショップでいつも「私」に微笑みかけてくる一匹の魚を買った。魚との共同生活。まるで恋人のように深い愛情を注ぎ、「おやすみのキス」もした……。
真夜中に目覚めると、魚が緑色に発光しながら宙を浮いているではないか! 魚はそのまま空を飛び、ふるさとの海へ帰った。そして「私」も魚といっしょに「自由自在に海を泳いだ」。
しかし、気がついてみるとそれは夢。魚は「私」に微笑むばかりだ。「私」は、意を決して「恋人」を海に返すことにした。「さあ、ほんとうの家に帰ってきたんだよ」。どこまでも続く青い海。そうして「彼女」と最後のキスを交わすのである。

 この2作は、「愛するものを自然に返す」「すべては夢だった」という設定が似ているものの、それ以上に作者の豊かなイマジネーションに引き込まれてしまった。シンプルなラインと、淡い水彩で描き出される幾米の世界。忙しさのあまり忘れかけていた"想像の翼"を、ふたたび羽ばたかせてくれる。そんな不思議な魅力をもっている。

 大陸の女流絵本作家・銭海燕の『小女賊的細軟』(女どろぼうの宝石、作家出版社)も、美しい絵と文で構成された大人のためのファンタジーだ。「理想――それは地平線のようなもの。窓から眺めれば、具体的で美しい。でも一歩ずつ近づけば、それはすぐに消えてしまう」「ノスタルジー……それは、あの時代が良かったからではなく、あなたが若かったから」。書店でも、この本を手にとる大人の姿がめだった。哲学的ともいえる文とポエムが、悩める者たちの"精神安定剤"になっているのかもしれない。

 そして老大家・黄永玉の『黄永玉大画水滸』(作家出版社)だ。中国の古典小説『水滸伝』の登場人物を、迫力のある水墨画と書で現代によみがえらせた。
1960年代初めに200もの木版を作っていたが、その後の「文化大革命」の混乱で消失。木版から水墨画へと表現方法は変わったが、作者の30年来の夢がかなったのが本書だというわけだ。

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 北宋時代、梁山泊の水辺(水滸)に集まった豪傑108人らが生き生きと描かれている。いわば絵で見る『水滸伝』のオールキャストだ。部下たちから熱く慕われた統領の宋江、禅杖を武器に一本指で立つ花和尚・魯智深、二丁斧の熱血漢・李逵、トラを素手で殴り倒した好漢・武松……。『水滸伝』への作者の思いが、どのページからもにじみ出ている。
  北京の大型書店では、垂れ幕などで大々的に宣伝していた。古典文学の世界でも、時代に合わせた「新しい楽しみ方」が工夫されているようだ。

 


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★ベストセラー   文学編
北京風入松書店  北京市海淀区海淀路46号
  北京大学南門東側
  http://www.forestsong.com.cn
  2002年10月21日~10月27日
     
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1)『潜規則―中国歴史中的真実游戯』(潜んだ規則―中国歴史上の真実の遊戯)
  呉思 著 雲南人民出版社


 中国で長く続いた封建時代、役人たちの間には、地位と名誉をほしいままにするための暗黙の"決まり"があった。元新聞記者の作者が、歴史に埋もれた悪徳役人たちの行状にするどいメスを入れた異色作。


2)『暗示』
韓少功 著 人民文学出版社 2002年9月初版


 ふだん何気なく使っている言葉や身近な現象、あふれる情報や急速に発達していく文明……。生活の中にはなんと多くの事柄が「散乱」していることか、と作者。その収拾のつかなくなったバラバラの事柄を集めて、それぞれに作者なりの見解をよせたのが本書である。
  テーマは多岐にわたり、たとえば「ふるさと」「色」「老人」「喫煙」「ファッション」「ロシア歌曲」「記憶」「女性」「友だち」「母親」「テレビドラマ」「カラオケ」「団結」「進歩主義」「偽善」「マージャン」などなど。エッセイ風の短文なので読みやすく、また、どこから読むのも自由だ。「人はただ言葉の中でしか生活できない」「休み時間(に読むような文学)でも、大事な勉強になるものだ」と、作家である作者は豊かな比喩を用いて、その出版理由を述べている。


3)『人間詞話』(世間詞話)
王国維 著 上海古籍出版社


 「詞話」とは、古人の詩や詞を集めて、その得失を評論する中国文学の一形態。古典的名著の復刻版であり、「中国の近代文学批評史の"最高峰"」とうたわれている。風入松書店では、ロングセラーとなっている。


4)『行者無疆』(行く者に限りなし)
余秋雨 著 華芸出版社 2002年8月第5刷


 現代中国の人気作家・余秋雨のヨーロッパ紀行。イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、ドイツ、デンマークなど欧州各国を周遊し、歴史や文化、人々の暮らしや中国との関わりを真摯に見つめる。


5)『新版 山居筆記』
余秋雨 著 文匯出版社 2002年10月第9刷


 本書は「魯迅文学賞」「台湾聯合報読書人最佳書(最優良書)賞」などを受賞。清代の流刑地だった黒竜江省・寧安県(旧称・寧古塔)や、明・清代に一大金融システムをつくり上げていた山西省、作者が敬愛してやまない宋代の詩人・蘇東坡(蘇軾)ゆかりの黄州赤壁(湖北省)など中国各地の史跡を巡り、味わい深いエッセイにまとめた。「中国を、ほんとうに理解するのは難しい」と作者をしていわしめるが、その幅広い考察が、筆のおもむくまま自由に語られる世界は読み応えがある。


6)『滄浪之水』(滄浪の水)
閻真 著 人民文学出版社 2002年6月第7刷


 「滄浪(そうろう=漢水の下流)の水」とは、中国古代の詩人・屈原の「漁夫」からとられた。「滄浪之水清兮,可以濯吾纓;滄浪之水濁兮,可以濯吾足」(滄浪の水が澄んでいれば、冠のひもを洗うことができる。滄浪の水が濁っていれば、自分の足を洗うことができる)。
  気鋭の作家・閻真の長編小説第2弾。様々な手段をこうじてようやく望んだ権力と富を手にしながらも、善悪のはざまで苦悩する知識分子(インテリ)、薬学研究生の池大の姿を描く。中国社会にはびこる不正・腐敗の「愚」を暗示する。


7)『話語的徳性』(言葉の徳性)
謝有順 著 海南出版社 2002年5月初版


 『当代作家評論』優秀評論賞、『南方文壇』優秀論文賞などを受賞した、気鋭の文芸評論家・謝有順の作品をまとめる。
  『活着(生きる)』の余華、『檀香刑(ビャクダン刑)』の莫言、『廃都』の賈平凹など、今もっとも注目される作家たちの作品が論評されており、中国の現代文学を別の角度から見つめたり、分析したりするには、もってこいの教材だ。


8)『紫丁香』(ライラック)
葉霊鳳 著 経済日報出版社 2002年7月


 1930年代に「新感覚派」と呼ばれて一世を風靡した作家・葉霊鳳の短編小説などを収める。
  病気で入院中の「私」が恋人にあてた手紙は「ライラックの花束をもってきてほしい。あなたにも似た、静かな色が好きだから」(表題作『紫丁香』より)。30年代の作とは思えない、ちょっぴり哀しいシュールな物語に胸がいっぱいになるだろう。


9)『了不起的盖茨比』(『グレート・ギャツビー』 邦題『華麗なるギャツビー』)
F.スコット・フィッツジェラルド著(アメリカ) 呉雨 訳 新疆人民出版社 2002年5月初版


 アメリカ文学の最高峰といわれる『グレート・ギャツビー』(1925年)を忠実に訳出。"ロストジェネレーション"(第一次大戦を軍隊で過ごした世代)の豊かさでは埋めることのできない孤独感や喪失感をリアルに描き、世界的な名著になった。中国語版の帯には、「夢と愛情を求める少年少女必読の"愛のバイブル"」とある。タイトルの「了不起的~」(大した、スゴイ)はそのままの口語訳なので、けっこう笑える!(^^)


10)『秋天里的春天』(秋の中の春) ユーリ・バージ著(ハンガリー)
巴金 訳 生活・読書・新知 三聯書店 2002年1月


 中国の文豪・巴金が1930年代に訳したものを、ブックレット版に再編集。孤児だった男女の運命の出会いと別れを、情感豊かに描く。巴金の訳は秀逸で、今読んでも新鮮な輝きに満ちている。

 


 

 
   
     

 

bj200211_1 写真は北京の黄葉スポット、迎賓館である釣魚台の東側にあたります(11月10日)。うす曇の寒い一日でしたが、イチョウ並木の下では、親子連れやカップルたちが記念撮影に興じていました。こうして北京を"黄金色"に染めた秋は足早に過ぎ、厳しい冬が到来するのです(タスケテくれ~~!)

 

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

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