1)『潜規則―中国歴史中的真実游戯』(潜んだ規則―中国歴史上の真実の遊戯)
呉思 著 雲南人民出版社
中国で長く続いた封建時代、役人たちの間には、地位と名誉をほしいままにするための暗黙の"決まり"があった。元新聞記者の作者が、歴史に埋もれた悪徳役人たちの行状にするどいメスを入れた異色作。
2)『暗示』
韓少功 著 人民文学出版社 2002年9月初版
ふだん何気なく使っている言葉や身近な現象、あふれる情報や急速に発達していく文明……。生活の中にはなんと多くの事柄が「散乱」していることか、と作者。その収拾のつかなくなったバラバラの事柄を集めて、それぞれに作者なりの見解をよせたのが本書である。
テーマは多岐にわたり、たとえば「ふるさと」「色」「老人」「喫煙」「ファッション」「ロシア歌曲」「記憶」「女性」「友だち」「母親」「テレビドラマ」「カラオケ」「団結」「進歩主義」「偽善」「マージャン」などなど。エッセイ風の短文なので読みやすく、また、どこから読むのも自由だ。「人はただ言葉の中でしか生活できない」「休み時間(に読むような文学)でも、大事な勉強になるものだ」と、作家である作者は豊かな比喩を用いて、その出版理由を述べている。
3)『人間詞話』(世間詞話)
王国維 著 上海古籍出版社
「詞話」とは、古人の詩や詞を集めて、その得失を評論する中国文学の一形態。古典的名著の復刻版であり、「中国の近代文学批評史の"最高峰"」とうたわれている。風入松書店では、ロングセラーとなっている。
4)『行者無疆』(行く者に限りなし)
余秋雨 著 華芸出版社 2002年8月第5刷
現代中国の人気作家・余秋雨のヨーロッパ紀行。イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、ドイツ、デンマークなど欧州各国を周遊し、歴史や文化、人々の暮らしや中国との関わりを真摯に見つめる。
5)『新版 山居筆記』
余秋雨 著 文匯出版社 2002年10月第9刷
本書は「魯迅文学賞」「台湾聯合報読書人最佳書(最優良書)賞」などを受賞。清代の流刑地だった黒竜江省・寧安県(旧称・寧古塔)や、明・清代に一大金融システムをつくり上げていた山西省、作者が敬愛してやまない宋代の詩人・蘇東坡(蘇軾)ゆかりの黄州赤壁(湖北省)など中国各地の史跡を巡り、味わい深いエッセイにまとめた。「中国を、ほんとうに理解するのは難しい」と作者をしていわしめるが、その幅広い考察が、筆のおもむくまま自由に語られる世界は読み応えがある。
6)『滄浪之水』(滄浪の水)
閻真 著 人民文学出版社 2002年6月第7刷
「滄浪(そうろう=漢水の下流)の水」とは、中国古代の詩人・屈原の「漁夫」からとられた。「滄浪之水清兮,可以濯吾纓;滄浪之水濁兮,可以濯吾足」(滄浪の水が澄んでいれば、冠のひもを洗うことができる。滄浪の水が濁っていれば、自分の足を洗うことができる)。
気鋭の作家・閻真の長編小説第2弾。様々な手段をこうじてようやく望んだ権力と富を手にしながらも、善悪のはざまで苦悩する知識分子(インテリ)、薬学研究生の池大の姿を描く。中国社会にはびこる不正・腐敗の「愚」を暗示する。
7)『話語的徳性』(言葉の徳性)
謝有順 著 海南出版社 2002年5月初版
『当代作家評論』優秀評論賞、『南方文壇』優秀論文賞などを受賞した、気鋭の文芸評論家・謝有順の作品をまとめる。
『活着(生きる)』の余華、『檀香刑(ビャクダン刑)』の莫言、『廃都』の賈平凹など、今もっとも注目される作家たちの作品が論評されており、中国の現代文学を別の角度から見つめたり、分析したりするには、もってこいの教材だ。
8)『紫丁香』(ライラック)
葉霊鳳 著 経済日報出版社 2002年7月
1930年代に「新感覚派」と呼ばれて一世を風靡した作家・葉霊鳳の短編小説などを収める。
病気で入院中の「私」が恋人にあてた手紙は「ライラックの花束をもってきてほしい。あなたにも似た、静かな色が好きだから」(表題作『紫丁香』より)。30年代の作とは思えない、ちょっぴり哀しいシュールな物語に胸がいっぱいになるだろう。
9)『了不起的盖茨比』(『グレート・ギャツビー』 邦題『華麗なるギャツビー』)
F.スコット・フィッツジェラルド著(アメリカ) 呉雨 訳 新疆人民出版社 2002年5月初版
アメリカ文学の最高峰といわれる『グレート・ギャツビー』(1925年)を忠実に訳出。"ロストジェネレーション"(第一次大戦を軍隊で過ごした世代)の豊かさでは埋めることのできない孤独感や喪失感をリアルに描き、世界的な名著になった。中国語版の帯には、「夢と愛情を求める少年少女必読の"愛のバイブル"」とある。タイトルの「了不起的~」(大した、スゴイ)はそのままの口語訳なので、けっこう笑える!(^^)
10)『秋天里的春天』(秋の中の春) ユーリ・バージ著(ハンガリー)
巴金 訳 生活・読書・新知 三聯書店 2002年1月
中国の文豪・巴金が1930年代に訳したものを、ブックレット版に再編集。孤児だった男女の運命の出会いと別れを、情感豊かに描く。巴金の訳は秀逸で、今読んでも新鮮な輝きに満ちている。
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