中国・本の情報館~東方書店~
サイト内検索
カートを見る
ログイン ヘルプ お問い合わせ
トップページ 輸入書 国内書 輸入雑誌  
本を探す 検索 ≫詳細検索
東方書店楽天市場店「東方書店plus」
楽天市場店 東方書店plus
 
各種SNS
X東方書店東方書店
X東京店東京店
X楽天市場店楽天市場店
Instagram東方書店東方書店
Facebook東京店東京店
 
Knowledge Worker
個人向け電子書籍販売
 
BOOK TOWN じんぼう
神保町の書店在庫を横断検索
 
日本ビジネス中国語学会
 
北京便り
上海便り
ネット用語から読み解く中国
 
bei_title  
 

 

2002年7月  

     

 今年の北京は、6月下旬にめずらしく"梅雨"のような天候が続きましたが(本来、北京には梅雨はありません)、7月になった途端にいつもどおりの猛暑がやってきました。
  朝早くから降り注ぐようなセミ時雨、1斤(500グラム)0.5元の水より安いスイカ(!!)、夜遅くまで屋外で将棋を指したり、トランプをしたり、世間話に興じたりして涼をとる北京の人々…。急速な経済発展により変化の激しい大都市ですが、こうした"変わらない"風景には、なぜかホッとさせられます。

bj200207_1  
     

★ちょっと気になる本

発行部数ナンバー1の雑誌は?

 北京の主な通りには、数100メートルおきにキヨスクのような"ブックスタンド"がある。昨年末には、公式に発表されただけでも800店舗が増設されたため、さらにあちこちで目につくようになった。その名も「首郵報刊」(首都郵政刊行物)。「中国郵政」というのもある。

 広さはせいぜい2~3畳ほどの小さな空間に、100種は超える新聞・雑誌が、所せましと並べられている。大衆紙である『北京晩報』『北京青年報』をはじめ、専門の文学情報紙『作家文摘』『文摘報』、このHPの「上海便り」でも紹介されていた『瑞麗(Ray)』『世界時装之苑(ELLE)』など若い女性に人気のファッション誌、それにコンピューターや釣り、囲碁将棋、映画、アニメ、自動車、ペットなど趣味の雑誌、変りダネでは『月刊兵器』『打工知音(アルバイト情報)』などなど、あらゆるジャンルが取りそろえられている。北京で販売されている政府認可の雑誌だけでも2000種近くあるというから、その数の多さが知れようというものだ。

bj200207_2
 
   
     
bj200207_4

 そんなに多いと何を選んだらいいか悩むところだが、今回あえて注目したいのがコレ、月2回発行の雑誌『読者』(甘粛人民出版社、3元)である。月間発行部数は500万冊以上、中国の定期刊行物では最多の発行部数をほこる、いわば"雑誌界の王様"だ。
  20年ほど前に『読者文摘』という名で誕生し、1993年に現在の『読者』に改名したが、その基本姿勢は変わらない。「私たちが掲げるテーマは"真、善、美"。物欲のはびこる現代社会にあって、人間はやはり畏敬すべきものだ」と、編集主幹の彭長城氏は述べている(同誌2002年6月―第12期)。

bj200207_3『汽車雑誌』『月刊兵器』『看電影』

 『読者』が追求する"真、善、美"とは何か? 政治や経済、情報の中心地とはいいがたい内陸の甘粛省蘭州で出版される同誌が、なぜロングセラーであり続けるのだろうか? その秘密を探るべく早速、手元の2002年第12期をひもといてみた。

 黄色いザラ紙のページには、いずれもびっしりと漢字が埋まっている。所々にイラストが添えられているが、やはり文字の方が断然多い読み物である。
  内容は「巻首語(巻頭言)」にはじまり、「人物」「社会」「人生」「生活」「知識」「世界を見る」などのコーナーに分かれており、それぞれに編者が選んだ短編やエッセイ、散文などを数本ずつ載せている。そのほとんどは他誌(紙)認可による抜粋であるが、それだけに経費を節減しながらも、多分野にわたる珠玉の文章が一堂に紹介できるということだろう。

 目にとまった文章は、董月玲さんが紹介した実話「好一対母女」(ある素晴らしい母娘)だ。陝西省に住む李春霞さんは幼いころから半身不随で、車椅子での生活を余儀なくされていた。しかし貧困と不自由な暮らしを乗り越えて、女手ひとつで娘の李強さんを育てあげ、ついには娘を陝西師範大学生命科学学院に進学させるのである(『中国青年報』からの抜粋)。
  読書家の母は、タイプなどの仕事の合間に、熱心に本を読んでは娘に聞かせた。また娘は、学校と家とを一日に何往復もしながら、母の身の回りの世話や家事をすすんで行った。李強さんはいう。「母が素晴らしいのは、ほがらかなこと。…そして私を信じてくれること」
  奨学金や生活補助を受けながら、大学で優秀な成績を収めた李強さんは、さらに博士の学位取得へ、海外留学へと夢を膨らませる。「あの子の人生は前途洋々、自分で切り開いていってほしいの。私には家政婦さんが一人いれば大丈夫よ」と母はいうが、「私はどこへだって母さんを連れて行くからね」と明るく応対する娘。不遇を不遇として受けとめ、逆境をバネに本当の幸せをつかんだ母と娘の実話は、抑えた筆致がさらにリアルに読む者の心に迫る。急速な発展と価値観の変化により、中国でも親子関係のあり方が問われる時代だからこそ、とくに注目される話題なのかもしれない。
  本誌では、ほかに「只要心中有愛」(愛さえあれば)、「偸窃自己的人」(自分を盗む人)、「時間的作品」(時間の作品)など、人生や愛について深く考えさせるような小作品を掲載している。

 一児の母として、また会社員として忙しい日々を送る女友達のハオさん(30代)は、中学生のころから本誌を愛読しているという。「一人になった時や床に就く前、だれでも少しは自分の"人生"について考えるのではないかしら。内容は真面目すぎるかもしれないけれど、私にとっては自分と向き合う大切な時間を与えてくれる。だから長年、『読者』のファンなのです」。ハオさんにとって、本誌はおそらく自分自身を映し出す「鏡」のような存在なのだろう。
  蘭州特有の開拓精神や素朴さが本誌に生かされていると、前述した彭長城氏は語る。「ある意味、こうした真面目で、保守的なものが私たちの心のバランスを保っているのかもしれません」
  スピーディーな時代を反映するかのように、生まれては消えていく多くの刊行物たち。そんな中で『読者』は、変わることなく頑固なまでに、人間の「真、善、美」を追い続けているのである。

   
 
   
     
     
     

bj200207_5北京国林風図書センター(社会科学分野)
(北京市海淀区海淀西大街36号 海淀図書城昊海楼B1)
2002年5月26日~6月26日

     
bj200207_6

bj200207_7

bj200207_8

bj200207_9

bj200207_10
 

1)『我的野生動物朋友』(邦題『TIPPI アフリカに育まれた少女』)
ティッピ・デグレ 著 シルヴィ・デグレ・ロベ-ル/アラン・デグレ 写真 黄天源 訳 雲南教育出版社


 ナミビアで生まれた少女ティッピは、5トンのアフリカ象やライオン、ヒヒ、チーターが大切な友だち。野生動物とすぐに仲良くなれる不思議な能力を持ったティッピの成長記録を、写真とともにつづる。アフリカの大自然に包まれた自然児ティッピと動物たちとのふれあいは、なぜか見る者の心をいやしてくれる。日本では、映像文化センター (日本ヴォーグ社)から刊行されている。

 


2)『你的降落傘是什麼顔色?』
(原題『WHAT COLOR IS YOUR PARACHUTE?』=あなたのパラシュートはどんな色? 邦題『パラシュート』)

リチャード・N・ボレス 著(米)、陳玮・陳紹鋒/梁峰 訳 中信出版社、2002年5月初版


 本書は30年来、世界的な支持を集める転職バイブル『WHAT COLOR IS YOUR PARACHUTE?』(改訂版)の訳本。表紙には「全世界で700万冊突破」「最も読まれる"転職"実用手帳」とうたわれている。「何をしたいか」「何ができるか」「どうやって好きな仕事を手にするか」。リストラやヘッドハンティングの増加によって"跳槽"(転職)をする機会がごく日常的になった中国でも、転職への貴重なアドバイスを示した本書の人気は、必至なのかもしれない。

 


3)『格調―社会等級与生活品味』(格調―社会階級と生活の味わい)
ポール・ファッセル著(米) 梁麗真など訳 広西人民出版社 2002年4月第2版


 「どんな服を着て、どんなテレビを見て、どんな食事をとるか。それがみな、あなたの社会階級を表している」と本書。お金や家、職業の違いだけでは測ることのできない、人間が本来もつべき「品格」の大切さを説いている。中国では1999年の初版に続き、この改訂版がまたもベストセラーに。原題は『CLASS A Guide through American Status System』(邦題『階級(クラス)―"平等社会"アメリカのタブー』。


4)『誰動了我的奶酪?』(チーズはどこへ消えた?)
スペンサー・ジョンソン著(米) 呉立俊 訳 中信出版社

 


5)『潜規則―中国歴史中的真実游戯』(潜んだ規則―中国歴史上の真実の遊戯)
呉思 著 雲南人民出版社 2002年2月第2版

 


6)『似非而是』(非に似て是なり)
ケント・キース著(米) 雷格 訳 中信出版社/遼寧教育出版社 2002年5月初版


 『チーズはどこへ消えた?』の作者スペンサー・ジョンソンが推薦する「意義ある人生を送るための指南書」。原題は『The Paradoxical Commandments』で、直訳すれば「逆説の戒律」。
  10の「逆説の戒律」が紹介されており、それは例えば「なにか魂胆があるのだろうと人に陰口をたたかれても、良い行いをしなければならない」「何年もかけて培ってきたものが一夜にして壊されたとしても、建設しなければならない」「人を助けた時、かえって攻撃されるかもしれないが、それでもあなたは人を助けなければならない」などなど。
  大きな文字にイラストを添えた全100ページほどの気軽な本だが、その中には、重みある人生の戒律がつめこまれている。


7)『致加西亜的信』(原題『A Message to Garcia』、邦題『ガルシアへの手紙』)
エルバート・ハバード著(米) 趙立光など訳 ハルビン出版社 2002年5月初版


 有史以来の世界的なベストセラー『聖書』や『毛沢東語録』などに続いて第6位に数えられる本書は、古典的な人生の指南書である(今回はやけに、この手の本が多いな…)。「困難に立ち向かい、勇気をもって課題に挑むこと」「自信を持つこと」「自分を信じること」の大切さを説いている。

 


8)『果殻中的宇宙』(The Universe in a Nutshell=殻の中の宇宙、邦題『ホーキング、未来を語る』)
スティーヴン・ホーキング 著 呉忠超 訳 湖南科学技術出版社 2002年2月初版


 全世界にホーキング・ブームを巻き起こした前作『ホーキング、宇宙を語る』(邦題)の続編。「アインシュタインの再来」「車椅子の天才科学者」として知られるホーキング氏は、前作にもまして、わかりやすい図版やイラストを駆使して宇宙の謎に迫る。最新の宇宙論からM理論、ゲノム研究、人類の未来まで、それは時空を超えた遥かなる世界へと人々をいざなう。
  中国語のタイトルは原題に忠実な直訳『果殻中的宇宙』で、これは本書第3章の同名タイトルから取られた。「私たちは"クルミの殻"に閉じ込められていても、自分自身を無限に広がる宇宙の王と考える」と、ホーキング氏は新しい概念の宇宙像「殻の中の宇宙」像を提示し、世界の読者を魅了し続けている。

 


9)『流氓兎的故事』(いたずらウサギの物語)
趙丁 編著 地震出版社 2002年5月初版


 「流氓兎」(いたずらウサギ)は、韓国生まれのフラッシュアニメ『マシマロの森の物語』に出てくるウサギのマシマロのこと。中国では若者を中心に「流氓兎」と呼ばれて親しまれている。ずるがしこくて下品だが、そこがおチャメでかわいいと、中国でもたちまち人気のキャラクターになった。
  フラッシュアニメの漫画版など関連本も次々と出版されているが、今回ベストテン入りした本書の実態は、「流氓兎」の名前を借りた青少年向けの読み物。
  主人公の「流氓兎」が日常生活の中からさまざまなことを学び、成長していく過程を描くが、その内容は中国側編著者のまったくの創作である(オリジナルキャラの無断引用らしい……!?)。
  例えば――ある日、「流氓兎」を野菜畑に案内した父がこう言った。「ごらん、野菜はこうして成長しているときは瑞々しいが、いったん熟してしまえば腐乱が始まるんだよ」。そこで「流氓兎」は、成長し続けることの大切さを学ぶのである――。
  人気キャラのあからさまな"横取り"には多少の疑問を覚えるが、中国の青少年教育の一端を知る、という意味においては興味深く読める。

 


10)『時間簡史(挿図本)』(A Brief History of Time、邦題『ホーキング、宇宙を語る』)
スティーヴン・ホーキング著 許明賢/呉忠超 訳 湖南科学技術出版社


 ビッグバンやブラックホールなど知られざる魅惑の宇宙について、「車椅子の天才」ホーキング氏が解き明かす。1988年の英語版刊行以来、全世界で1000万部を記録。科学書としては、空前のベストセラーとなった本書は、中国では今年2月に第2刷を数えている。続編の『果殻中的宇宙』が、今回のベストテン第8位にランキングされている。

 


 

 
   
     

 

  中国ではふつう、書店やブックスタンドで新聞・雑誌を買いますが、定期購読をする場合は郵便局に申し込みます。そうすると宅配までしてくれるので、とても便利です。暑い夏は本当に助かります(かなりオバサン的ですね)。
 

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

   http://china-media.jugem.jp/
 
     
  b_u_yajirusi  
 
   
中国・本の情報館~東方書店 東方書店トップページへ
会社案内 - ご注文の方法 - ユーザ規約 - 個人情報について - 著作権について