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微観中国 . 

(12)中国SNS、早くも世代交代?
 微博退潮と微信台頭
   
     

「微信」起動画面
 

 微博とならび、微信(WeChat)に関するニュースを目にすることが多くなった。微信は騰訊(テンセント)が開発した、LINEとよく似たスマートフォン用アプリだ。筆者はLINEはほとんど使っていないが、中国人との集まりでは常に「微信持っている?」とアカウントを相互登録することが増えた。IDを伝える代わりに、相手のアプリに表示されるQRコードを自分のスマホのカメラで読み込むだけで、友人の検索や申請ができるなど、スマホに特化した機能が魅力だ。
 筆者はふだんフェースブックを使うことが多いが、微信はフェースブックがつながらない中国の友人との交流に使っている。写真やテキストメッセージをアップすると、「いいね」やコメントが返ってくるのはフェースブックと同じだ。友人全体ではなく、特定の個人やグループだけにメッセージや写真を送る機能もある。スカイプやLINEなどの通話機能はないが、ボイスメッセージを録音することが可能で、回線容量に制限のある中国ではむしろこの方がいいのかもしれない。

 

 

 
   
     

 このように大変便利な微信だが、中国でも最近では微博から微信へのシフトが起きているという。中国インターネット情報センター(CNNIC)が1月16日発表したインターネット発展状況統計報告によると、昨年末の微博利用者数は2億8100万人で、12年末に比べ9.0%、2780万人減少した。ネットユーザーの微博使用率も9.2ポイント減の45.5%だった。携帯電話を使った微博利用者も2.9%減の1億9600万人といずれも微博が09年に登場以来、初の減少となった。
 CNNICは、微博減少の理由について、交流サイトの商業化が進展しなかったことや、競争激化などを挙げているが、BBCなどのメディアは昨年6月に施行されたネット上の実名登録制の影響や政府によるネット情報管理強化の影響があると分析している。
 ツイッターや微博は不特定多数への発信ができるメディアだが、どのような人が自分の発言をフォローしているか分からないし、第三者がリツイート(転載)すれば勝手にどんどん広まってしまう。その結果、ふとした発言が思わぬ批判を受けることがある。筆者も以前ある著名ツイッターユーザーに発言の揚げ足を取られ、炎上したことがあり、一部の悪意あるユーザーにより所属先や実名を明かされた上で「まとめ」などを作られ、大変迷惑したことがある。こうしたことから最近ではツイッターへの発言は慎重になり、公開先を制限できるフェースブックを利用している。
 ソーシャルメディアのこうした弊害は、中国にもあるようだ。特に中国では昨年来、「ネット浄化」を口実に当局が微博管理を強化、ネット上での発言で逮捕されることもあるなど、政治的、社会的リスクも伴う。不特定多数の人に自分の考えを伝え、自分の活動を宣伝したい場合はツイッターや微博は便利だが、同時により私的な、友達との会話をネットで楽しみたいというのは自然の流れだ。
 先日中国に行った際、騰訊を訪問、その後メールにて微信について次のように聞いてみた。

 


公共アカウント(ニュース)のページ

 

 

 

 

Q.微信のユーザー数は?

「微信は中国大陸ユーザー向けの名称で、WeChatは海外向け。昨年第3四半期までで、微信とWeChatのアクティブユーザーは2億7000万人に達し、前年同期比で124%の伸びだ」。

Q.微信の公衆アカウントとは?

「微信の機能の1つで、政府、媒体、企業など向けのサービスで、各種のサービスを提供している。企業にとっては、顧客との関係づくりに便利で、新たなサービスを生み出し顧客に高い価値を提供している。公衆アカウントは2012年8月に開始以来、企業、顧客の好評を得た。マクドナルド、KFC、ナイキなどは公衆アカウントを設置し自らの製品やブランドを宣伝している。2013年11月時点で各種のアカウントは200万を超える。(注:企業やメディア、個人が開設した、不特定多数に情報を発信するアカウントで、微博に近い)」。

Q.ライバル企業との競争は?

「競争は歓迎だ。多くの同業者と共にユーザーに価値のあるサービスを提供することを歓迎する。競争は我々の商品を高め、より良いユーザー体験を提供する、これは通信やソーシャルメディアにとって重要であり、その方向に努力する」。
 

 
 前回紹介した「2013年版中国インターネット世論分析報告」は、微信、新聞客戸端(スマホ用ニュースアプリ)に代表されるモバイルインターネットが突発事件や公共問題で新たな情報源となり、影響を与えるようになったと分析している。
報告書は、13年、多くのネットユーザーが微博のような大衆への意見(表明)プラットフォームから、微信のより個人的な友人のサークルに移り、モバイルインターネットは社会世論の新たな情報源となったと指摘した。微信は12年後半から流行、現在のユーザーは5億人に達し、海外のユーザーも1億人を超えた。加えて「米聊」、「来往」や最近登場した「易信」など、モバイル・コミュニケーション・ツールが微博から次々と分流しているという。
分析報告をまとめた人民網ネット世論監視観測室は、微博で見知らぬ人が集団で「吐槽」(前回コラム参照)することから、微信で知り合いどうしが相互に暖を取る(交流を深める)ことへの変化は、社会参加への無力感の増加を示していると指摘する。
 
 微博から微信への流れについては、胡泳さんは昨秋筆者のインタビューに次のように語ってくれた。
 
 

Q.微博から微信へのシフトをどう考えるか?

「2つの主な原因がある。1つは微博は実際には明らかに不平等で、大Vでなければ誰も耳を傾けてくれず、構ってくれないと、より多くの人が気づくようになった。もう1つの理由は微博の情報はあまりに乱雑で、有用な情報が見つからない。フォロワーを増やすため、微博を使ったセールス、僵尸粉(キョンシーフォロワー、フォロワー数を水増しするための実際には存在しない虚偽のフォロワー)などをきちんと管理してこなかったので、情報の質がますます悪くなり、ゴミばかりが増えた」。
一方「微信は知っている人だけと交流できる。その結果(1)互動性が高く、大Vでなくても自分の書き込みに対して反応、コメントしてくれる人が多く、気分が良い。(2)知り合いだけなので、より気楽に書き込める、マスクをかぶる必要がない。こうした理由で微博から微信への急速な遷移が起きており、ユーザー数だけでなく、活発さ度合いにも現れている。SNSにアクセスする時間も限られているから、微博より微信で発信する人が増えている」。

Q.新浪微博は危機に感じているのでは?

「感じているだろうが、これは(利用者にとって)悪いことではない。なぜなら微博と微信の間には明確な違いがあるからだ。微博はメディアにより近くなり、メディアとしての属性がより強まる。新浪はそれを望んでいるとは限らない。メディアは儲からず、しかも(政府の言論統制を受けやすく)危険だと感じているからだ。中国ではメディアをやることは永遠に危険だ。だがユーザーの角度からすれば、(住み分けが進むことは)悪いことではない」。

Q.では微博は中国におけるツイッターの様にユーザーが減少し周辺化するのか?

「そのように考える人もいる。だが自分は同意しない。だが微博のメディア属性が高まったことで、情報を広く発表したいと考える人、自分が知らない人にも知らせたいと考える人は微博を使うだろう。先ほど微信は親近感がある、簡単で居心地がいいと言ったが、だが長期間使っていると微信の問題も見えてくる。常に少数のグループでの交流だからだ。相手がどのような反応をするか、あらかじめ分かってしまう」。
「微信の『群』(特定のテーマで集まるグループ)はその目的は商売だったり知識人が政治を語るためだったりいろいろだが、やがていつも同じ人が同じことを議論していると気付き嫌になることもある」。
「さらに微信の方が微博よりも安全だという人もいるが、そうとも限らない。政府があなたを管理しようと思ったら、微博でも微信でもどちらも管理できる。彼らは微博、微信の記録のどちらも見ることができる。そしてあらゆる『群』の中で何が起きているか、何を話しているか見ることができる。例えば南方週末記者の『群』があり、彼らが(当局による)社説(の書き換え)に反対していたら、彼らの議論を全て把握し、この『群』は何を考えているか、報告できる。そういう意味で微信のほうがより危険だ。当局も当然微信に注目しているだろう」。
「だが安全は保証されないにせよ、微信は悪いことではなく、ネットユーザーの微博とは別の需要を満たしている。親友同士が友情を深めるだけでなく、同窓会などのグループでこれまで知らなかった人と知りあうきっかけにもなる」。

Q.新浪微博も「密友圏」などの微信に近い機能を拡充しているが。

「微信の優位性があまりに大きいので、微博が競争するのは難しい。だが微信の新鮮さが薄れて、微博にも長所があると多くの人が気づいた。微信が登場した直後はもう微博はやらないと多くの人が言ったが、これからは使い分けるようになるだろう」。

 

 


微信サイト
微信・日本語サイト


微信
Google Play

 胡泳氏は今後ソーシャルメディアの中で、よりメディアに近い微博と、友人間の交流ツールである微信へと役割が分化していくという見方だ。更に微信のブームが一過性になる可能性もあることや、個人間の交流だからといって決して安全なツールではないとの指摘も注意する必要がある。微信の影響力が強まれば、当局の管理が強化される可能性が大きく、わいせつを理由にした取り締まりの動きなど、すでにその徴候も現れている。両者が中国のネット世論形成にどのような役割を果たしていくのか、注目される。  

 

 

 

 


「網民」の反乱 ネットは中国を変えるか?
古畑康雄

 

   
 
古畑康雄・ジャーナリスト
   
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