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微観中国  (9) 騰訊訪問記 コミュニティメディアに注力
   
     
騰訊のマスコットキャラクターのペンギンのグッズが並んだお店だ
騰訊のマスコットキャラクターのペンギンのグッズが並んだお店だ
 

 このほど、プライベートで上海、北京と回ってきた。北京では知人の大学教授の紹介で、大手ポータルサイト、騰訊(テンセント)網を訪問した。ライバル企業の新浪網は2度訪問していたが騰訊は初めて。地下鉄中関村駅の1つ隣の蘇州街駅から歩いて10分ほどの高層ビルの中にある。新浪ともほぼ間近の距離だ。
 担当者に連絡を取り、まず案内されたのが、騰訊のマスコットキャラクターのペンギンのグッズが並んだお店だ。ぬいぐるみやノート、ステンレスマグ、高価なものでは京劇の役者に扮したフィギュアなども売られている。こうした商品が並んだ店内で、コーヒーやお茶を飲みながら、同社の微博責任者から話を聞いた。
 騰訊の誕生は1998年、新浪、捜狐など他の大手ポータルサイトと同時期だ。代表的な商品となったのが、インスタントメッセンジャー(オンラインチャット)のQQで、当初はテキストメッセージだけの簡単な送信だったが、個人宅にパソコンが普及するにつれ、人気を博した。10年ほど前、北京の友人宅を訪れた際、購入したばかりの中国製ノートパソコンでネット接続(当時は電話回線でモデムを使用)、「日本の友人が来た」などと知り合いにメッセージを送っていたのを覚えている。

 
   
     

 その後ソーシャルメディアの発展に伴い、微博、そして微博と並ぶ人気ソーシャル・ネットワーキングサービス(SNS)となった微信などをスタートする。微信についてはいずれ機会を改めて述べたいと思うが、このほかにもゲーム、検索サイト「捜捜」、オークションサイトなども運営する。本部は広東省深圳市だが、北京は主に微博や微信などの業務を主管している。
 「騰訊は中国最大の網絡社区(ネットコミュニティー)を作り出し、ネットユーザーの交流、情報、娯楽、オンラインビジネスなどの需要にこたえている。2012年12月31日現在、QQのアクティブアカウント(実際に利用しているユーザー)は7億9820万人、同時にネット接続するユーザーは最高で1億7640万人に達した。騰訊の発展は数億人の網民の交流方式や生活習慣を変え、中国ネット業界により広々とした発展の可能性を生み出した」。騰訊が提供してくれた資料にはこのように誇らしげに書かれている。
 1階のキャラクターグッズのショップもそうだが、騰訊社内を見学して感じたのは、その娯楽的な要素の強さだ。新浪本社は標語が掲げられる中で、スタッフはパソコンに向かい黙々と仕事をしていた。だが騰訊はペンギンのマスコットキャラクターがうず高く積まれ、スタッフの休憩室にはテーブルサッカーのゲームなども置かれており、リラックスした雰囲気だ。
 ただ、必ずしも軟派志向かというと、そうでもなさそうだ。オフィスには、筆者も親交のある胡泳・北京大副教授ら、ネット問題の専門家や著名コラムニストの写真が並ぶパネルがあったが、同社スタッフによればこうした専門家から定期的に講義を受けるなど、ネットの諸問題について理解を深めているという。
 また、昨年同社は「大家」という著名ブロガーが執筆するコラムサイトを立ち上げた。筆者の友人も執筆陣に加わっているが、新聞よりも高い原稿料(北京の友人による)で、オピニオンリーダーを取り込むなど娯楽面以外でも積極的に展開している。
 同社幹部はさらに「国務院が微博にアカウントを開設したのは、騰訊だけである」と語り、政府とのパイプの強さも強調している。「中国政府網」で「国務院弁公庁が運営、重要な決定、文件、指導者の発言などを即時発表する」とある。
 今回、騰訊が拡大に取り組んでいる特色あるサービスとして紹介してくれたのが、特定の都市や地域に絞ってニュースを発信、発掘する「ローカルコミュニティーニュースサイト」とでも言うべきサイトだ。同社はこれを「路辺(=道端)社」のブランドで積極的に発信している。分かる人もいると思うがこれは「路透社(ロイター通信社)」をもじったものだ。
 「路辺社は昨年7月に創立したブランドで、地域を分割し、地域ごとにネットユーザーが発信した価値のある、かつまだあまり知られていない精細な情報を発掘するのが目的」と騰訊のスタッフは語っている。
 例えばある日の「路辺社北京分社(支社)」のアカウントでは、市内を覆うスモッグが取り上げられ、ドライバーに注意を促している。一方「路辺社広東分社」では広州市内で起きたひき逃げ事故について、目撃情報の提供を呼びかけている。
 騰訊スタッフによれば、路辺社が省、市レベルに開設した分社(支局)は240を超え、うち約200のアカウントは騰訊のスタッフが管理、残りを同社から権限を与えられた運営者(メディア関係者や熱心なネットユーザー)が担当している。
 路辺社の狙いを「それぞれのコミュニティーに合わせたコンテンツを運営し、地元政府の対応を促し、更にメディアでの露出を通じて、ネットユーザーにフィードバック、彼らを激励し、より優良なコンテンツを発表する。こうした基礎の上に、企業と連携し、利益を得る」と説明した。
 分かりやすく言えばだいたいこういうことだ。全国規模、さらには海外のニュースに比べ、地域のニュースはその地区に住んでいる人が一番身近に感じる問題であり、関心も高い。そして彼らは新たなニュースの現場に遭遇する可能性が高く、第1の目撃者となりうる。だが、こうしたニュースは仮に個人の微博などで発信しても、前回紹介した「大V」のようなフォロワーの多いユーザーでない限り、ほとんど他のユーザーに注目される可能性は少ない。
 だがこれを路辺社の各コミュニティーのサイト(アカウント)にアップすれば、騰訊のスタッフがこれをチェックし、注目すべき内容であればこれを全国規模で伝達、注目度を高めることができる。
 その結果、政府も対応し、新聞やテレビなどの伝統メディアも大きく取り上げることになる。こうした流れを同社は「発掘」→「伝達」→「拡大」の3つの流れに例えている。こうした個人の声がネットを通じて社会に伝われば、ネットユーザーがより身の回りのニュースを発掘するようになり、路辺社はより活発化する。更にこれに関連したビジネスにもつながるのではないかというのが、同社の狙いのようだ。「線上、線下(オンライン、オフライン)」でネットユーザーや政府、メディアが交流する、こうした状況を同社は「往来往去」をもじって「網来網去」と表現している。
 路辺社は北京、広東などの都市では地元メディアと協力関係があり、北京では法制晩報と協力し「媒体発布庁」というウェブページを開設、望京、通州、石景山など5つの大きな地区ごとにサイトがあり、今後10まで増える予定だという。
 広東では地元紙、広州日報と社区新聞(コミュニティニュース)の発表の場を開設、珠江デルタ地区の7つの主要な地区をそれぞれカバー、将来は20に達する予定だという。「ネットとメディアをつなぐことで、住民の実際の問題を解決した例は枚挙にいとまがない」。騰訊のスタッフは微信で筆者にこうコメントした。
 ビジネス面ではどのように活用しているのか?同社によれば、媒体発布庁のウェブページに広告を載せたり、企業ニュース、イベント、セール情報などを発表したりするという。さらにネットユーザーにイベントチケットをプレゼントするなどのセールス活動にも利用しているという。
 法制晩報の望京のサイトでは、「望京で売られている野菜の卸売価格はどこで決まっているか」「韓国人向けに部屋に床暖房を設置するのはどうか」などといった細かい話題が並んでいた。(写真)北京市北東部の望京地区は韓国人が多く住み、看板がハングル文字で書かれた韓国料理店なども多い。一部の大家は室内で靴を履かずに過ごすことが多い韓国人のため、スチーム暖房が床を暖めるよう改造、高い家賃を取っているが、万が一故障した場合、暖房供給会社は保証せず罰金をとることもあると書いてあったが、いかにもこの地区らしいニュースだ。
 騰訊の幹部は、日本でもこのようなコミュニティーニュースを運営したいと語った。これまで地域の細かいニュースや生活情報は、日本では地方紙、さら「☓☓リビング」のようなコミュニティーペーパーが担ってきた。だがスマートフォンなどが普及した今、路辺社のようなネットによるコミュニティメディアは、コスト面(配送が不要)や情報更新の早さなど、様々なメリットもありそうだ。騰訊の試みを、今後も注目したい。

 


騰訊(テンセント)網 首頁


テーブルサッカーのゲームなども置かれた休憩室


騰訊網に解説された国務院の微博頁


法制晩報の望京のサイト

路边社北京分社 路边社上海分社 路边社广东分社
路边社山东分社 路边社海南分社  

 

   

 

 

 

 


「網民」の反乱 ネットは中国を変えるか?
古畑康雄

 

   
 
古畑康雄・ジャーナリスト
   
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