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ネット用語から読み解く中国
 
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ネット用語から読み解く中国 

(11) 「五毛党」(続)

   

五毛党

 このコラムでもたびたび取り上げている中国の芸術家、艾未未氏が6月22日、北京市の公安当局から保釈された。艾氏はその後、「保釈中は取材には応じられない」とし、ツイッター(アカウントは@aiww)やブログなどでも一切、発言していない。艾氏と当局の間にどのような取引があったのか、全く謎だが、保釈は中国国内や国際世論に一定程度配慮したものであることは間違いない。
  艾氏が沈黙を守り続けているだけに、拘束前に残した様々な活動に注目する必要があるだろう。その中で筆者が注目したのは、前々回も取り上げた「五毛党」とのインタビューだ。

 そのコラムでも取り上げたが、艾氏はジャスミン革命などでネット上で様々な妨害行為を繰り返す五毛党に対して、「君たちの話を聞かせてほしい」と呼び掛けたところ、1人が取材に応じたのだ。ネットには艾未未氏拘束から1カ月後の5月初めに公開され、筆者が先日中国に行ったときにも話題となった。内容の具体性からみて、インタビューは本物とみて間違いないだろうと判断し、今回、その主要部分を翻訳した。
  大変長文ではあるが、何よりもお抱えネットユーザーたちが、どのような形でネット世論の撹乱、誘導をしているのかを知ることができる貴重な資料と言える。
  インタビューが行われたのは3月22日、ちょうどジャスミン革命の呼び掛けがネットで相次いでいた頃である。
  取材に応じたのは26歳の男性W氏、実名は明かしていないが上海在住という。取材は書面と電話で行われた。

     

問(艾未未):あなたの学歴、仕事歴は?

答(W氏):大学で新聞方面を学び、卒業後テレビ局を経て、ネットメディアで働き始めて4、5年になる。


問:いつから、どんな状況でネット世論誘導工作を始めたのか。

答:だいたい1年ちょっと前かな。別に特別な事情ではない。先にやっていた友人が、手っ取り早くお金が稼げる仕事があるが、興味があるかと聞かれたので、自分も毎日ネットに長時間アクセスしているから、じゃあちょっとやってみるかと始めるようになった。


問:自分のこの仕事をどう呼んでいる?

答:本職はネットメディアでエンタメ関連のニュースの編集をやっている。兼職のこの仕事のことは網絡評論員(ネット評論員)でも輿論導向員(世論誘導員)、さらには五毛党でも何でもいい。


問:特別な資格は必要?

答:他の人はどうか知らないが、自分は友人の紹介で始めたので、身分証明証を提出しただけ。ただ、この仕事をやるには一定の文章力は必要、なぜなら絶え間なく書かなければならないから。


問:訓練などは受けたか?

答:受けていない。友人から簡単に仕事の流れを教えてもらっただけだ。


問:具体的な仕事の流れを教えて。

答:具体的なことを言うと面倒だが…。事件によっても異なるが、例を挙げれば次のような感じだ。私はあるサイトの地元関連のBBSやニュース欄を担当し(大手ポータルサイト)騰訊のニュース欄もよく見ている。具体的には「任務を受ける→テーマを探す→世論を誘導する」この3段階だ。
 まず、主に毎日メールで指示を受ける。ニュースに出る前に受け取ることもある。どの事件、どのニュースに着目するか、その思想的方向が示してある。ネットユーザーの思想をどの方向に導いたり、彼らの関心を曖昧にしたり、あるいはネットユーザーを扇動したりするといったものだ。
 この指示を受けてから、テーマ探しに入る。関連する文章やニュースを見つけたら、上級部門の指示に従って文章を書き、ネットに貼り付ける。これはかなり技量を要する。
 まず身分を隠さなければならず、お役所臭のする文章を書いてはならず、しかも異なる風格の文章を何本も書かないといけない。時には自分と対話したり、喧嘩したり、論争しているように見せかけて、ネット市民の世論をそこに引きつける。
 論争では3つの役割が必要だ、つまり指導者、追随者、傍観者だ。指導者は権威のある発言者であり、論争の後で出現し、有力な証拠を持ち出して発言する。大衆の彼らに対する信頼度は高い。次に追随者であり、彼らが演ずる役割は論争や罵り合いにより、最後に指導者が出現し解決するまで、傍観者の視線を引きつけることだ。最後は傍観者であり、彼らの大部分は我々にとって本当の“顧客”だ。真実を知らないネット市民であり、前2者の役割を上手に演じることで、彼らに影響を与えるという目的を達することができる。我々は映画監督のようなもので、自ら書いた脚本で自ら演じ、観衆に影響を与える。だから時に自分は人格分裂だと感じることもある。


問:この仕事に具体的な文書などはあるのか?

答:文書はない、大体の指示を書いたメールが送られるだけだ。例えば、ここ一両日石油が値上がりしている、あるいはこんなニュースやデマが広がっている、これを別の方向に導いたり、潰したりせよ、だいたいこんな内容だ。具体的なメールは見せられないが、例えば先ほど起きた塩の買い占め事件では、私が受け取ったメールは大衆に「デマを広げるな、デマを信じるな」と呼び掛けたり、或いは「民衆の☓☓事件に対する認識を、正しい方向へと誘導せよ」などだ。


問:あなたの分担するエリアは?

答:ウェブサイトに制限はない。騰訊か、地元のサイトをぶらぶらしていることが多い。捜狐、新浪などは評論員は多すぎる。証拠はないが、彼らの内部には専門の評論部門があるという。


問:どのような内容の評論が多いか?

答:大部分は地元の話が60-70%を占める。地元の事件は大きなニュースサイトに出ることはない。大体が「訊息港」「商務通網」などという地元サイトが多い。


問:全国的なニュースには関心は?楽清村事件(土地開発に反対していた村長が車に轢き殺された事件)とか。

答:ないなあ。ニュースは知っていても、上からこうした指令が来ることはない。最近ネットで盛り上がったジャスミン(革命)も我々には任務は来なかった。不思議に思ったが、このような大きな事件は、我々のレベルには指令が回ってこないんだろう。


問:典型的な“世論誘導”のプロセスを教えてほしい。

答:典型的なものはない。あまりにも数が多いから。例を挙れば、例えばガソリン値上げで、次のような通知を受ける。「ネットユーザーの感情を落ち着かせ、大衆の注意力を転移させよ」などだ。翌日ニュースが出れば、ネットでは国や石油会社を罵る書き込みばかりだろう。そこで我々が登場する。石油や不動産の値上げに対しては、我々は焦点を曖昧にし、人々の注意力を転移させる。
 成功した例を紹介しよう。人々が値上げに対して政府や石油会社を罵っている時、私はあるIDで「どんどん値上がりすればいいじゃないか。どうでもいい、どうせあなたたち貧乏人は車なんて乗れないんだ。これで、道路は金持ちだけのものになる」などと書き込んだ。ネットユーザーを怒らせるのが目的だ。大衆の石油価格への怒りが自分に向かうようにした。これは本当に効果があった。自分もIDを変えて自分を罵り、多くの人が注目するようになり、自分を攻撃する人がどんどん増えた。こうして徐々にニュースコメントのページが自分の発言で埋め尽くされるようになり、人々が論ずる内容が石油価格から自分の発言へと変化、こうして目的を達したのだ。


問:普段どのようなことを書き込んでいるか?

答:あからさまに政府が素晴らしいと言ったり、誰それが売国だなどというレベルの低い評論が多いが、すぐにどういう事か分かってしまう。自分が原則としているのは、政府を正面から賛美したり、マイナスのニュースを批判したりせず、話す時の語気、身分、立場が一般のネット市民、真相を知らない大衆であるかのように心がけており、ネットユーザーの共鳴を引き出すようにしている。総じて言えば、側面からネット市民を誘導し、彼らが知らず知らず焦点がずれるようにするのだ。


問:ほかのやり方は?

答:いろいろなやり方がある。言うなれば人の心理を弄ぶ感じだ。現在のネット市民は、以前と比べて思想的にも進歩している。以前は何が起きても、マイナスの情報は伝わるのが早く、人々は信じていたが、現在はこれはヤラセではないか、と疑うよう人が多くなった。


問:ネットで他のユーザーと口論になったことは?

答:もう一人の自分とすることはあっても他のユーザーとすることはない。この仕事をするには、自分の主観をコメントに出してはいけない、上級部門の思想を方法を工夫して伝え、多くの人に見てもらわねばならない。


問:塩の買い占め事件の時、「デマを信じるな、デマを広げるな」と行っても、逆の事が起きる。新型肺炎(SARS)の時も、メラミン入りミルクの時もそうだ。デマが広がるのは、政府に対する不信任が原因だ。人々が「デマを信じるな」と「政府を信じるな」のどちらかを選ぶなら、政府を信じない方を選ぶ。

答:政府は困っているだろう。どんなことが起こっても、犯罪とか、交通事故でも、よくないことがネットで広がると、政府を罵るのは不思議だ。


問:それは政府がすべてを握っているからだ。すべての栄誉が政府に属するなら、すべての過失も政府に属する。これが独裁の特徴だ。四川大地震で建物が倒壊したが、実際にはその建物を建てた人を調べればいいのだが、政府は絶対に調べようとしない、だから政府に批判が向かうのだ。ところで、事件ではなく、特定の個人を標的にすることはあるか?例えば艾未未は超悪人で、彼の妨害をしろとか。

答:それはあるだろう。例えばダライ・ラマ問題では、これは自分たちではないが、全国レベルで誘導の指示があっただろう。でなければ今日中国の民衆はあれほど強烈にダライ・ラマに対して憎悪の心理を持たないだろう。法輪功の問題も含めて、中国のやっていることは確かに度が過ぎている。


問:この仕事は中国の世論誘導にどの程度の役割を果たしているか?

答:役割は小さくないと思う。正直なところ、中国の大部分のネット市民は馬鹿だ。誘導してやらないとデマを信じるようになる。今回の塩事件がいい例だ。


問:彼らは情報を制限され、限られた情報では政治的な意見を表明できない。

答:彼らは先導されやすく、操るのは簡単だ。だからこの(五毛党の)影響は決して少なくないのだ。


問:政府は世論動向に干渉する権利があるか?

答:個人的には権利はないと思うが、中国では干渉、誘導が必要だ。さっき言ったように、中国の大部分のネット市民はあまりに簡単に扇動され、自分の思想を持っていない。だから偽の情報に騙され、扇動されるのだ。


問:具体的には全国にどのくらいの「網絡評論員」がいるだろうか。あなたの職場には?

答:これは全く分からないが、多いと聞いている。職場には自分一人だ、もちろん、隠れてやっている場合は分からない。


問:あなたの報酬はどのくらい?

答:実際にはいわゆる1本5毛ではない。私たちは毎月、数量と質によって支払われている。私たちは基本的に100本の評論につき50元が支払われている。基本的にこの仕事の報酬は低く、兼業でやっている。だいたい毎月の報酬は500-600元前後だ。もちろんこれだけを専門にやっていれば、数千元稼ぐことも可能だろう。


問:この仕事を続ける上でプレッシャーはないか?

答:別にない、実際本当に気軽だ。お金のためにやっているだけだ。


問:仕事の難しさは?

答:ネット市民の心理を推測し、文章を書くテクニックを学び、どうやったら人々の信頼を得て、彼らの思想に影響を与えられるかだ。


問:この仕事は好きか?

答:好きも嫌いもない。毎日毎日、お金のためだ。


問:やめることは自由?

答:全く自由だ。この仕事は本当に透明なんだ。他の仕事と全く違わない、みんなが想像するようなダーティなものじゃない。


問:では何故身分を隠すのか?

答:身分を明かすことはできない。私の仕事を奪いたいのか?我々はどんな論壇(フォーラム、BBS)でも、ブログでも、自分の正体を明かさないし、ましては「自分は網絡評論員です」などと明かすことはあり得ない。そんなことをしたらこの仕事が続けられないだけでなく、自分の本業にも影響が出かねない。なぜならこの仕事では時に本心に反することを書くこともあるから。自分の周りにそんな人がいたら、その人への信頼感は下がってしまうだろう。


問:秘密保持への要求は?

答:この仕事は秘密でもなんでもない、政府、企業、学校でも評論員を大規模に募集している。名前は違っても、やっている仕事は同じだ。だが仕事をする時には、自分の身分は秘さなければならない。「私は五毛党です、今から党、政府を代表して話をします」などと人々に言う訳がないだろう?


問:家人や友人は知っているか?

答:言っていない。そのことがバレたら私の信用に傷が付くと言っただろう?


問:あなたは自分が言っていることを信じているか?

答:信じる必要がない。自分が言っていることがデタラメや本心に反することだと分かっていても、仕事のために言わなければならないことがある。弁護士がいい例だ。目の前にいる人間が凶悪極まりない殺人犯だとしても、彼のために弁護しなければならない。私は中国の政治に関心がない。なぜなら中国の政治は関心に値するものは何もないから。


問:一日どのくらいネットにアクセスする?

答:だいたい6-8時間。主に地元のBBS、大手ネットメディアや微博で活動している。


問:日常生活でもこの仕事のことを考えているか?

答:多少はある。ニュースを見た時、上級部門はどのように世論を誘導するよう求めてくるだろうか、自分はどうやったらいいだろうか、ついつい考えてしまう。ある種職業病だ。


問:ツイッターはやるか?

答:艾未未さんら興味深い人に注目している。でもツイッターでは発言しない。


問:ネットと言論の自由、現実との関係をどうみているか?

答:あまりに哲学的で答えられない。ただ言えるのは、ネットが生まれてから、我々の言論は以前よりもずっと自由になった。だが一定の自由を得た後、もっと自由になれるだろうと考える人は、不満に思うのだろう。


問:ネット市民の資質や態度をどうみるか?

答:さっきも答えたように、中国のネット市民は騙されやすい。だが彼らは徐々に理性的になりつつあり、他人に追従せず、自ら考えるようになった。資質が徐々に高まってきたと思う。


問:あなたは誠実ということを信じるか?自分が言ったことを信じるか?

答:ネットの評論についてか?どう言ったらいいだろうか、もちろん誠実ということは自分も信じている。だが時間、人、事をみて決める必要がある。真実を言うことができない時は、たとえ嘘だとしても信じなければならない。私がやっているああいったことは、すべてがでたらめだと言うことはできない。ある面では、我々ネット評論員のやっていることは実際には良いことなのだ。

 

 インタビューは以上である。内容的にあまり重要でない部分を削除しても、これだけの量となった。ポイントを以下に整理してみると
・五毛党の応募は大学や職場などで公開で行われている。筆者が以前ツイッターで見つけた写真でも、評論員をこのように公募している。
・ただし、自分がネット評論員であることは友人や家族にも隠している。
・ネットへの書き込みは、上級部門の具体的に指示に基づいて行われる。具体的には、ネットで関心を呼んでいる問題について、敢えて挑発的なことを書いて自分に攻撃の矛先を向けさせることで、本来の話題から関心をそらせるなど。必要に応じて一人何役も演じ分けることもある。
・報酬は100本につき50元。つまりは1本0.5元で、本人は否定するもののまさに五毛党である。
・五毛党になる理由はもちろん、金銭的目的だが、世論を誘導することには一定の正当性があると考えている。「多くのネット市民は愚かであり、導いてやらなければならない」からだ。
  中国のメディア関係者と交流する際、しばしば彼らが口にだすのは、「日本のメディアはなぜ、世論をあおるだけで、もっと世論を正しい方向に導こうとしないのか」ということだ。民衆は導かれるべきものであり、メディアはその手段なのだ、という意識が中国のメディア関係者には根強く残っているようだ。ネット評論員=五毛党もいわばその延長線上にあり、それゆえ、前述のような発言が出てくるのだろう。
  先日北京で大手ポータルサイトの編集者と五毛党について話した時も、さすがに「私たちの社内にも専門の部門はある」などとは言わなかったが、「ネット社会にも様々な意見や利害の対立があり、各々の立場を支持、擁護するグループが存在するのは当然のことだ」と言うような事を述べていた。「大衆は愚かであり、彼らに真実を明らかにするよりも、社会世論を安定させることの方が重要だ」「ネット社会も利害対立の場だ」こうした考え方が、五毛党という中国ネット社会特有の現象を生んでいるのだろう。

 

 

「五毛党(評論員)」募集のポスター

 

   
 
古畑康雄・ジャーナリスト
   
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