■第15回「全国国民閲読調査」レポート
「全国国民閲読調査」レポートは、中国の国家レベルの研究機関「中国新聞出版研究院」が1999年から毎年のように実施しており、今回で第15回を数えた。
調査は2017年7月にスタート。同年9月から12月まで、全国29の省・自治区・直轄市におよぶサンプル都市50カ所で、戸別訪問アンケート調査の方法で行われた。
有効回答数は1万8666件(うち成人1万4245件)。また都市部と農村部の比率はおよそ3対1だった。
なお、ここでいう読書(閲覧)率とは「年に1冊(部)以上、図書または新聞・雑誌(デジタル含む)を読む人の割合」で、「成人」は18歳以上の人が対象とされた。
主な調査結果は、以下の通り。
【2017年 中国人の読書調査結果】
(以下、断り書きのない場合は成人を対象。一部複数回答を含む)
図表1
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◆総合読書率(図表1)
※ 書籍、新聞、雑誌、電子書籍など各種メディア(紙とデジタル)で読書する人の割合
○2017年 |
80.3% |
(2016年 79.9% +0.4ポイント =前年比、以下同じ) |
◆読書する人の割合:読書率(図表1)
○書籍の読書率 |
59.1% |
(58.8% +0.3ポイント) |
○新聞の閲覧率 |
37.6% |
(39.7% -2.1ポイント) |
○雑誌の閲覧率 |
25.3% |
(26.3% -1.0ポイント) |
○デジタル閲覧接触率 |
73.0% |
(68.2% +4.8ポイント) |
※ パソコンや携帯電話、タブレットなど電子メディアで読書する人の割合
レポートは、インターネットやデジタル機器の普及により「総合読書率」と「デジタル閲覧接触率」は持続的に伸びているが、その半面、紙書籍の読書率が鈍化したほか、新聞・雑誌の閲覧率が下降したと指摘している。
「紙」か「デジタル」かで見れば、中国人の“紙メディア離れ”がしだいに進んでいると見ることができそうだ。
図表2
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◆デジタル閲覧接触率・手段別(何を使って読むか)(図表2)
○パソコン・ネット |
59.7% |
(55.3% +4.4ポイント) |
○携帯電話・スマホ |
71.0% |
(66.1% +4.9ポイント) |
○電子書籍リーダー |
14.3% |
( 7.8% +6.5ポイント) |
○タブレット |
12.8% |
(10.6% +2.2ポイント) |
○微信(WeChat) |
63.4% |
(62.4% +1.0ポイント) |
接触率の高い順に(1)携帯電話・スマホ (2)微信(WeChat) (3)パソコン・ネット (4)電子書籍リーダー (5)タブレット――という結果だった。なお、ここでは「携帯電話・スマホ」と「微信」を分けて調査しているが、いずれにせよ、スマホによる閲覧率が圧倒的に高いということだろう。
図表3
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◆各メディアへの接触時間(1日1人あたり)(図表3)
<デジタル>
○携帯・スマホ閲覧 |
80.43分 |
(74.40分 +6.03分) |
○パソコン・ネット |
60.70分 |
(57.22分 +3.48分) |
○微信(WeChat)閲覧 |
27.02分 |
(26.00分 +1.02分) |
○電子書籍リーダー |
8.12分 |
( 5.51分 +2.61分) |
○タブレット接触 |
12.61分 |
(13.88分 -1.27分) |
<紙メディア>
○書籍の読書時間 |
20.38分 |
(20.20分 +0.18分) |
○新聞の閲覧時間 |
12.00分 |
(13.15分 -1.15分) |
○雑誌の閲覧時間 |
6.88分 |
( 6.61分 +0.27分) |
紙書籍の読書時間は、前年比0.18分の伸びと微増だった。なおレポートによれば、紙メディアを利用する人のうち「全体の1割超(12.1%)が1日1時間以上、読書する」という結果だった。昔ながらのページを繰る“本好き”は、全体の約1割ということがわかる。
図表4
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◆どれだけの部数を読むか(図表4)
○書籍の読書量 |
年間1人あたり 4.66冊 |
(4.65冊 +0.01冊) |
○電子書籍 |
年間1人あたり 3.12冊 |
(3.21冊 -0.09冊) |
○新聞の閲覧量 |
年間1人あたり33.62部 |
(44.66部 -11.04部) |
○雑誌の閲覧量 |
年間1人あたり 3.81部 |
(3.44部 +0.37部) |
紙書籍の読書量は、年間1人あたり4.66冊で、前年比ほぼ横ばい。
なお、年間1人あたり10冊以上の紙書籍を読む成人の割合は10.2%、年間1人あたり10冊以上のデジタル書籍を読む成人の割合は5.4%だった。
ちなみに日本人の読書量は、文化庁が2014年に実施した「国語に関する世論調査」によれば、マンガや雑誌を除く1カ月の読書量は「1、2冊」との回答が34.5%で第2位だったのに対し、「読まない」との回答が最も多く、47.5%に上ったという。
図表5
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◆都市と農村の比較(図表5)
<総合読書率>
※ 書籍、新聞、雑誌、電子書籍など各種メディア(紙とデジタル)で読書する人の割合
○都市部の住民 |
87.2% |
○農村部の住民 |
72.2% |
<書籍の読書率>
※ 読書する人の割合
○都市部の住民 |
67.5% |
(66.1% +1.4ポイント) |
○農村部の住民 |
49.3% |
(49.7% -0.4ポイント) |
<書籍の読書量>
○都市部の住民 |
年間1人あたり 5.83冊 |
(5.60冊 +0.23冊) |
○農村部の住民 |
年間1人あたり 3.35冊 |
(3.61冊 -0.26冊) |
……以下略
◆朗読サービス利用率
○成人(18歳以上) |
22.8% |
(17.0% +5.8ポイント) |
○未成年(0~17歳) |
22.7% |
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図表6
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◆朗読サービス利用メディア(成人)(図表6)
○音声読書(朗読)アプリ |
10.4% |
(6.5% +3.9ポイント) |
○ラジオ |
7.4% |
(8.4% -1.0ポイント) |
○微信「Voice Push」機能 |
5.3% |
(3.6% +1.7ポイント) |
2017年は「聴書」(音声読書)アプリや「有声小説」サイトなどが人気を呼び、こうした朗読サービスを利用する人が急増したという。
◆ネット利用率と手段
○ネット利用率 |
79.1% |
(73.8% +5.3ポイント) |
パソコンで |
40.3% |
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携帯・スマホで |
77.9% |
(72.6% +5.3ポイント) |
図表7
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◆ネット利用の目的(図表7)
<情報取得>
○ニュース閲覧 |
69.7% |
○情報検索 |
39.3% |
<娯楽>
○チャット・交流 |
72.0% |
○動画視聴 |
51.5% |
○映画や歌の視聴 |
42.9% |
○ネットショッピング |
36.6% |
○ネットゲーム |
33.6% |
○インスタントメッセンジャー |
32.7% |
○電子書籍や新聞・雑誌の閲覧 |
21.7% |
ネットを娯楽用に使う場合、チャットやメッセンジャーなどの利用に人気が高く、電子書籍の閲覧に利用する人の割合は、比較的低い(21.7%)ことがわかった。
◆デジタル閲覧を好む世代
○18~29歳 |
34.6% |
*「90後」(1990年代生まれ)中心 |
○30~39歳 |
26.1% |
*「80後」(1980年代生まれ)中心 |
○40~49歳 |
24.2% |
*「70後」(1970年代生まれ)中心) |
○50~59歳 |
10.6% |
*「60後」(1960年代生まれ)中心 |
デジタル閲覧を好むのは、成人の場合、主に18歳から50歳未満の若い世代。その青年・中年世代が全体の84.9%を占めていることがわかる。
◆読書スタイルの傾向――本を何で読むか
○紙書籍で読む |
45.1% |
○パソコン・ネット |
12.2% |
○携帯・スマホで |
35.1% |
○電子書籍リーダー |
6.2% |
○ダウンロード後、プリントアウトして |
1.4% |
読書スタイルの傾向では、「紙書籍」が依然4割を超えている(45.1%)。
しかし上記のうち、デジタル系列は「パソコン・ネット」「携帯・スマホ」「電子書籍リーダー」の計53.5%で、すでに「紙書籍」を超えている。
今後、デジタル世代の人口比率が高くなるにつれ、「紙書籍で読む」人の比率もしだいに低下していくと見られる。
図表8
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◆自己評価――読書量は多いと思うか(図表8)
○読書量は多い |
1.7% |
○わりに多い |
8.8% |
○ふつう |
37.7% |
○わりに少ない・少ない |
39.5% |
◆読書活動について
○地元当局が率先して「読書祭」などの読書活動をしてほしい |
64.2% |
読書量の自己評価では「わりに少ない・少ない」と感じている人が約4割を占めた。また、地元の関係当局に、より読書習慣を身につけたり、読書量を増やしたりするための「読書活動をしてほしい」と答えた人が6割超に上ったという。
学習能力を高めたり、仕事のスキルを向上させたり、さらには人生を豊かにするなど、様々なメリットが期待できる読書……。紙であれ、デジタルであれ、本や活字を読む習慣を重視している人が、中国でも多いことは確かなようだ。
※ 写真: 北京市中心部にある大型書店「北京図書大廈」には、以前はなかった、オープンな読書コーナーが設けられていた(2017年12月)
※ 図表1~8:「新浪読書」サイトより
※ 関連記事
○「北京便り」2013年5月号 「中国人の読書率54.9%、読書量4.39冊と微増 全国調査で」
○「東京便り」第18回(2015年6月号) 「第12次全国国民閲読調査、電子メディアが勢力伸ばす」
○「東京便り」第28回(2016年5月号) 「中国人の読書調査でデジタル閲覧躍進」
○「東京便り」第39回(2017年4月号) 「【中国人の読書調査2017】自己啓発本に若者の関心高まる」
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