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日本ビジネス中国語学会
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東京便り―中国図書情報 第16回 .

 【Interview この人に聞く (6)】
 『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』の著者 趙海成さん

   
   

■「在日中国人を再認識してもらい、イメージがプラスに変われば」

『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』を上梓した趙海成さん中国人ジャーナリストの趙海成さんが、在日中国人たちに本音の日本論やライフストーリーを聞き出したインタビュー集『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(拙訳)がこのほど、CCCメディアハウス(旧・阪急コミュニケーションズ)より刊行された。

日本には現在、在日外国人ではトップを占める約70万人もの中国人が滞在している(法務省統計、台湾を除く)。また近年は、その豊かさを反映してか、中華圏、とりわけ中国からの訪日観光客もうなぎ上りに増えている。
だが、日中関係はいま、尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権をめぐって対立が深まり、「国交正常化(1972年)以来、最悪」ともいわれる膠着状態に陥っている。戦後70年の節目を迎えた今年は、歴史認識などをめぐって関係がさらに冷え込むのではないかとの懸念もある。

こうしたなか、日本に住み続ける中国の人たちは、何を思い、何に悩みながら、それでも日本で生きているのか――。
本書『それでも私たちが日本を好きな理由』は、中国人の著者が日本に長年滞在している同じ中国人たちに、深く、鋭く、真正面から切り込んだ意欲作だ。

この本が生み出された経緯や、いま世に問うことの意義などについて、刊行に合わせて来日した趙海成さんに、訳者として改めてうかがった。

(注)本書では原則として、日本に居住する華僑(新華僑)、華人を統合して「在日中国人」としている。
 

   
 

――北京を拠点に、日中間を行き来しながらフリーのライター、カメラマンとして活躍されている趙海成さん。日本での著書の出版は、この本が初めてだそうですね。

趙海成(以下略) これまで中国で、日本のサブカルチャーをとらえた写真集『東京新鮮人』(国際文化出版公司)などを出したことはありますが、日本で日本語による著書を出版したのは初めて。とてもうれしく思っています。
鮮やかな赤のカバーも中国ではおめでたい色ですし、中国の流行語である「正能量」(ポジティブエネルギー)を表すかのようで、勢いがあっていいですね! 目立ちますので、ぜひ多くの人に手に取っていただきたいと思います。

――本書は、2012年9月の反日デモを経験した在中日本人の声を集めて話題となった 『在中日本人108人の それでも私たちが中国に住む理由 』(CCCメディアハウス刊)の“姉妹本”として生み出されました。
もともとは趙さんが中国語のサイト「客観日本」や月刊誌『日本綜述』などで連載していたインタビュー記事を、加筆修正してまとめたものだとか……。

そのなかには、一念発起して制作した在日中国人留学生のドキュメンタリーが日中間で大ヒットした、現・大富社長の張麗玲さん、「歌舞伎町案内人」の異名を持ち、この春は政界進出にも意欲を見せる李小牧さん、不運にも日本で不法就労せざるを得なかったが、娘を医者に育て上げ、現在はニューヨークで料理人としてまじめに働く丁尚彪さん。
さらに大学教授に画家、ジャーナリスト、自治体職員、医師、保育園や不動産会社の経営者など……じつにさまざまな職業の、多彩な顔ぶれの在日中国人が登場しますね。


『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』そうですね。というのも私は1985年に来日し、88年に当時としては初の在日中国人向け中国語新聞『留学生新聞』を立ち上げて、初代編集長を10年間務めました。記者、編集者として人の話を聞くことが好きでしたし、仕事を通して人脈も広がりました。

インタビューするにあたり取材対象として選んだのは、第1に、その人生に物語がある人。つまり山あり谷ありで、紆余曲折、波瀾万丈の人生なのですが、それでも困難を乗り越えてがんばってきた人が多いですね。
そういう人と話していると、本当に感動しますよ。逆にいえば、私自身が心を動かされないと読者に伝わらないでしょう。だから感動の物語を持っている人を選びました。

第2に、社会的に、または日中関係のために意義ある事業にとりくむ人や、その事業について注目しました。たとえば、日中「歴史対話」に情熱を捧げる丁寧さん、留学生と市民との交流を促進する劉迪さん、日本で約30年間も中国語を教えている胡興智さんなど。
いずれも価値ある事業に長年とりくみ、成果を上げている人たちで、読者にもこうした地道な活動をぜひ伝えたいと思いました。

当初は、彼らが取材をきちんと受けてくれるか、質問に答えてくれるか、マスコミに登場することで発言に慎重になるのではないか、などと心配していましたが、それは杞憂に終わりました。みんな私を信頼してくれ、話し出すとすぐにプライベートな経歴から本音の日本論まですっかり打ち明けてくれました。
中国の改革開放後の出国ブームに乗って来日し、「背水の陣」で必死にがんばってきた同世代の人が多かったこともあります。同じような苦労を重ねてきたからこそ、互いに共感できますし、それぞれが本心を吐露してくれた。本当にありがたいことでした。

――趙さんご自身、とくに印象に残ったのは?

たとえば、夫との不和や育児ストレスから自殺まで考えたが思い直し、現在はそんなつらい体験から忙しいママたちのために正規の保育園を4つも経営する、がんばり屋の応暁雍さん。現在、入園する子どもは、日本人の子どもの方が多いそうです。

どちらかといえば手っ取り早い金もうけの方法としては、株式投資とか先物取引とかいろいろあるでしょう。でも、応さんのように一歩一歩着実に、長年努力していけば、日本では成功する可能性が大きいと思う。私自身が近い将来、日本に戻って事業を起こすとすれば、応さんの成功例はとてもいい参考になるのです。

――言葉をはじめ生活習慣、社会体制の違う異国にあって、自らの道を積極的に切り開いていく在日中国人たちの勇気やガッツ、明るいプラス志向には私自身、励まされる思いがしました。
彼らが語るさまざまな日本論、日本人論もユニークで、日本人としても新たな気づきを得ましたが、趙さんご自身はいかがでしょう? 「日本のよい点、悪い点」は?

インタビューに答える趙海成さん日本のよさはたくさんあります。礼儀正しさや、中国では失われつつある伝統文化の日本的な継承などは、よくいわれることですが……。
この本でも何人かが触れている通り、日本は「静か」で「穏やか」「平和的」だと思います。
中国では、人前でのケンカや交通事故が絶えません。今回の来日に際しても、北京の自宅から国際空港までクルマで約1時間の間に、交通事故を3回見ました。
近年の中国は(経済発展を急ぐあまりか)落ち着かない感じがします。だから在日中国人のインタビューで「日本のどこが好きですか?」と聞くと、「静かで、穏やかなところ」という人が多いのですね。

また日本に住むのは、中国と比較すれば「気楽」だと思います。中国ではまず人脈やコネ、賄賂がなければ、大抵のことはうまくいかない。医者にかかるのでも(多くの場合は)袖の下が必要になる。
日本では正規の手続きをしたり、決まったお金を支払ったりすれば、相応のサービスが受けられるでしょう。中国のように複雑な神経を使わなくて済むので、気楽で住みやすいんですよ。

それからこの本の出版に関していえば、不明点を徹底的に調べたり、著者にきちんと確認したりする翻訳者、編集者の仕事に対するまじめさ、責任感の強さに改めて触れました。どんな仕事にも一生懸命取り組む日本人の精神や態度には、中国人はやはり学ばなければなりません。

もちろん、日本は長所ばかりの国でもない。本書でも指摘する人がいましたが、急ぎの仕事がないのに上司の残業に仕方なくつきあうような日本人の“集団意識”などは、中国人には不可解なものです。

――日中関係は、とくに政治外交面でいまなお難しい時期にありますが、本書をいま世に問うことの意義は?

政治はともかく、民間の調査では「日本人の中国への好感度」は過去最低を更新しましたね(対中印象が「良くない」「どちらかといえば良くない」が93%、2014年)。
日本の書店へ行けば『中国崩壊』だとか『危ない中国』といった「反中・嫌中」本が目につきます。
でも現在約70万人いるといわれる在日中国人たちが、ふだんから何を思い、どう生きているかは、一般の日本人にはあまり知られていないのではないでしょうか。

もちろん、いろんな人間がいます。なかには悪事に手を染める人もいるでしょう。でも私の知る限り、異国にあって成功をめざし、刻苦奮闘している優秀な中国人は少なくない。彼らのそんなひたむきな努力を知れば、中国人に対するイメージが変わるのではないか。
とくにいま、中国や中国人を「嫌いだ」と思う日本の皆さんには、本書を通じて、在日中国人を再認識してもらいたいと願っています――。

◇        ◇        ◇

本書は在日中国人へのインタビューだけでなく、天安門事件への日本での抗議デモ写真などここ30年ほどの歴史をまとめた「在日新華僑・華人の歴史」、短期訪日した中国人大学生の日本観など、読み応えのあるコラムも充実している。
趙海成さん自身が、悲喜こもごもの日本とのかかわりを綴った「あとがき」も心に残る。

「在日中国人を『再認識』してほしい」と趙さんは繰り返し強調していた。
在日中国人に近づき、歩み寄り、彼らを再認識するために、1人でも多くの人に本書をお読みいただければ、訳者としてもこれに勝る喜びはない。

 

 

【プロフィール】
趙海成
(チャオ・ハイチェン)
1955年、中国・北京出身。82年に北京対外貿易学院(現在の対外経済貿易大学)日本語学科を卒業。85年に来日し、日本大学芸術学部でテレビを専攻。88年には初の在日中国人向け中国語新聞『留学生新聞』の創刊に携わり、初代編集長を10年間務める。95年、10カ国の在日外国人向け外国語媒体を束ねる「外国人情報誌連合会」代表に就任。99年、中国情報を発信する日本の衛星放送事業者、大富(CCTV 大富)の宣伝部長に。また同じく99年には、外国人にかかわる諸問題について都知事に意見を述べる「外国人都民会議委員」に東京都より選出される。2000年、日中合作ドキュメンタリー『シルクロード』の制作に参加。2002年に中国に帰国し、以後は日中を行き来しながらフリーのライター/カメラマンとして活躍している。

『在中日本人108人の それでも私たちが中国に住む理由』『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』
  趙海成/小林さゆり 訳 CCCメディアハウス 2015年03月 1,800円+税

【関連書籍】
『在中日本人108人の それでも私たちが中国に住む理由』
  在中日本人108人プロジェクト 編 阪急コミュニケーションズ 2013年08月 1,800円+税

 
   
     

 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。北京に約13年間滞在し、2013年に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)、
『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)などがある。

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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