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東京便り―中国図書情報 第9回 .

 中国が報道規制を強化、
  「南方日報」記者などが処分される

   
   

中国の報道を監督する国家新聞出版広電総局のWEBサイトこのところ「中国が報道規制を強化しているようだ」という観測をよく聞くが、実際にかの国ではメディア規制に本腰を入れ始めている。

6月18日には、国家新聞出版広電総局が、ある重要な通達を出した(6月19日付、京華時報)。
ちなみに同総局は日本には存在しない、国内のすべてのメディアを統括する国務院(政府)直属の機関。中国のメディアは「党政府の喉と舌」といわれる通り、西側のような独立した報道機関というよりは、党政府の宣伝機関ととらえられている。だからこそメディアを管理監督し、統括する国家機関が存在するのだ。

報道によれば通達は、各報道機関に対して内部規制のいっそうの強化を求めている。具体的には「報道記者は無断で批判報道を繰り広げてはならない」「報道詐欺(恐喝)や虚偽報道の取り締まりをいっそう強化する」といった厳しいものだ。
また同日には、今年3月に続いて最近処罰されたという8件の「詐欺・虚偽報道事件」も公開された(6月18日付、新華網)。その中には、中国のリベラル系報道機関、南方報業メディアグループに所属する「南方日報」の記者が処分された事件もある。

中国で、報道機関をめぐっていったい何が起きているのか?
最近の事例を見てみた。

   
 

■無断での批判報道を禁止

国家新聞出版広電総局が6月18日、管轄する各機関に出した通達は、おおよそ以下のような内容だった。

○ 各報道機関は、報道局(報道・通信センター)、ウェブサイト、経営・編集部門に対して集中して検査を行い、確実に違法・違規問題を正すこと。
○ 報道取材の検査を厳しくし、報道局がその業種や領域を超えて取材・報道することを禁止する。
○ 報道局や記者が、本社(本機関)の同意を得ずに、無断で批判報道を繰り広げることを禁止する。
○ 各報道メディアは監査を厳しくし、報道局や報道記者が無断でウェブサイトやサイトの地方版を開設したり、特別版や内部参考資料などを発行したりして、批判報道を行うことを禁止する。
○ 経営活動の検査を厳しくし、報道局や編集スタッフが広告、発行、広報などの各種会社を設立することを禁止する。
○ 報道局や記者が広告、発行、賛助などの経営活動に携わることを禁止する――など。

3年前の高速鉄道脱線事故では、既存メディアによる批判報道も見られた雇用者(従業員)が業務のほかに会社を設立するというのは、そもそも就業規則違反ではないかと思うが、それはともかく、ここで注目したいのは記者らが「無断で批判報道を繰り広げること」を厳しく禁止したことだ。

批判報道ですぐに思い出されるのは、2011年7月23日に発生した中国高速鉄道の衝突脱線事故だろう。
この事故をめぐっては、前年ごろから爆発的に利用者を増やした中国版ツイッター「微博」(ウェイボー) が情報伝達の威力を発揮したが、新聞も負けてはいなかった。筆者も当時、北京で買い求めたが、同市の人気紙「新京報」などは翌24日付で大々的に特集を組み、事実を客観的に伝えることで鉄道省の対応を暗に非難。その後、党政府は国内メディアに対して「事故を掘り下げて報道しないよう」規制したが、ネットやメディアの隠れた(規制の抜け穴を潜り抜けるような)抗議が、当局の真相隠しをけん制する力にもなった――とみられている。
ほかにも近年では、中国各地で頻繁に起こる炭鉱事故や、公害によるとみられるがんの多発地域「がん村」の存在、深刻化する大気汚染、水質汚染、重金属汚染などに関する批判報道が新聞、雑誌、ウェブサイトなどでさまざまに展開されてきたが、現在は報道が規制されているといわれる。

こうした批判報道への取り締まり強化は、中国の習近平政権が進める政策「改革の深化」(経済体制の改革を牽引力にし、各分野の改革を全面的に深化する、など)に抵触するからなのか? あるいは一見矛盾するようだが、取り締まりこそが「改革の深化」なのか?
理由はよくわからないが、いずれにせよ報道規制が強化されていることは事実のようだ。
  

■8件の「詐欺・虚偽報道事件」
 
報道規制の強化を伝える新聞記事(「京華時報」2014.6.19 紙面右下)6月18日にはまた、国家新聞出版広電総局が通達した、報道機関や報道関係者によるという8件の「詐欺・虚偽報道事件」も明るみに出た。
これは今年3月の第12期全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)第2回会議の直後に通達された「報道詐欺や虚偽報道を厳しく取り締まる」プロジェクトにのっとったもので、摘発は同月に続いて2回目。
プロジェクトの連合機関は、①中国共産党中央委員会宣伝部、②中国工業情報化部、③公安部、④国家税務総局、⑤国家工商総局、⑥国家新聞出版広電総局、⑦中国国家インターネット情報事務室、⑧全国「掃黄打非」(ポルノ・違法出版物取り締まり)弁公室、⑨中国新聞工作者協会――の9つの国家機関からなり、ここからも中国が総力をあげてこのプロジェクトを推進していることがうかがえる。

今回、明らかにされた「詐欺・虚偽報道事件」の一部内容を見てみると――

○「南方日報」記者の胡亜柱らが違法詐欺(恐喝)
2011年6~8月、「南方日報」記者の胡亜柱らが職務を利用し、某企業から金品計31万5000元(現在1元は約16円)を受領。
また2011年9月~2012年3月、胡亜柱らは(広東省の)茂名、深圳、河源などの地でマイナス面の報道をすることにより、数度にわたり他人の金品計17万8000元をゆすり取った。これにより2013年5~6月、胡亜柱らは法に基づきそれぞれ刑事拘束され、同年6~9月、それぞれ逮捕状が発付された。現在、裁判所で審理段階にある。
新聞出版広電行政部門は、法に基づき胡亜柱の報道記者証を無効にし、また胡亜柱らを不良従業記録リストに加え、報道・編集の業務に携わることを終生禁止する。

○「茂名晩報」記者の周翔が「口封じ費」を受け取る
2010年7月~2013年6月、「茂名晩報」記者の周翔が職務を利用し、環境汚染、製造事故、違法建築などのマイナス面のニュースを暴露することにより、13の機関や個人から「口封じ費」計2万6000元を受領。2014年3月26日、茂名市内の裁判所は周翔に対し、贈収賄罪で懲役2年3カ月の一審判決を下し、不正金を全額没収した。
新聞出版広電行政部門は、法に基づき周翔の報道記者証を無効にし、また周翔を不良従業記録リストに加え、報道・編集の業務に携わることを終生禁止する。

○「山西市場導報」記者の于健康が違法詐欺・恐喝
2013年8月、「山西市場導報」記者の于健康が他人を巻き込んで山西省興県に赴き、某石材工場を撮影し、執筆した「状況反映」(記事)を同県の環境保護、紀律検査などの部門に送りつけて金銭5万元を要求した。
2013年12月、襄汾県人民裁判所は、于健康に対し、詐欺・恐喝罪で懲役2年、執行猶予3年、罰金5000元の有罪判決を言い渡した。
新聞出版広電行政部門は、法に基づき于健康の報道記者証を無効にし、また于健康を不良従業記録リストに加え、報道・編集の業務に携わることを終生禁止する。

――など。この公開された情報だけでは詳しい「犯罪」内容も真偽のほども不明だが、8つの事件はそのほとんどが記者の権利をはく奪し、記者活動が2度とできなくなるという重い処罰を科しているのが特徴だ。
こうした処罰を見せつけられた記者の中には、従来も規制がある中で立ち向かってきたジャーナリストとしての勇気や使命感がそがれてしまう人もいるのではないだろうか。
 

■中国駐在の外国メディアにも圧力が

そして、これも報道規制強化の一環なのか? 最近は中国駐在の外国メディアに対してもプレッシャーがかけられているようだ。
北京の中国外国人記者クラブ(FCCC)は昨年12月、中国政府がビザの更新を拒否したり、手続きを遅らせたりして、駐在特派員に圧力を加えている、と批判する声明を出した。声明は、米紙ニューヨーク・タイムズと米通信社ブルームバーグについて、当局が報道ビザの更新を同年1人も認めていない、などと指摘。それぞれ中国高官の親族の巨額蓄財疑惑を報じたため、当局から圧力を受けたものとみられている。

また今年5月には、日本経済新聞の重慶支局の助手が中国当局に拘束され、その後「故意に騒動を引き起こした容疑」で拘留された。助手は、著名な人権派弁護士の浦志強氏と交流があったとされている。

人民日報本社を視察する劉雲山氏。一連のメディア規制の主導者とされる(新華網より)こうした一連のメディア規制強化は、明らかに習近平政権が2013年3月の全人代で正式発足して以来の流れだ。
前任の胡錦濤政権の時代も、ネットの普及と「微博」などSNSの発展がかえって「言論統制」を強めたとされているが、今回の措置はどうやらそれ以上か、またはかつてないほど大規模で組織的に行われているようだ。
習近平政権が事実上発足した第18回共産党大会(2012年11月)で党の序列ナンバー5へと急伸した保守派の大御所、劉雲山常務委員は、党中央宣伝部長を10年務めた実績がある。現在も習近平総書記の右腕として「宣伝・文化・イデオロギー」を担当しているので、一連の規制には彼の意向も色濃く反映されていそうだ。

国家新聞出版広電総局は、今回の報道規制強化について「各行政部門は、報道詐欺と虚偽報道の取り締まりをいっそう強化し、報道メディアの摘発通報電話を繰り返し公開して、広く末端組織と大衆の監督参加を働きかけるように」と呼びかけている(前述の京華時報)。

通報電話を公開し“違反者”を名指しで摘発するというやり方は、1950年代の反右派闘争や60~70年代の文革の過激な政治運動をどうしても思い起こさせて不安になる。
現在の「改革の深化」とどこか逆行しているようにも見えるが、それが筆者の杞憂であることを願うばかりだ。
 

   
     

 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。12年余り北京に滞在し、2013年に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)。
取材編集に携わった『在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由』(阪急コミュニケーションズ)も好評発売中!

 

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