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東京便り―中国図書情報 第3回 .

 【Interview この人に聞く (1)】
  『なんで私が中国に!?』 著者の日野トミーさん
  中国でアニメスタジオをつくった日本人女性の奮闘と出会い

   
   

突然赴任を命じられた中国でのサバイバル体験をつづった 『なんで私が中国に!?』(イースト・プレス刊)「中国人と一緒にアニメを作ってきなさい!」
社長からいきなり辞令が出て、女ひとり中国は内陸の古都、陝西省西安へ。新しいアニメスタジオをつくるために奮闘するも、中国人の想像以上の「ハチャメチャぶり」に疲労困ぱい。でも、そこには忘れられない出会いもあった――。
そんな驚きの国・中国でのサバイバル体験を、時にユーモアたっぷりに、時にほのぼのとしたタッチで描いたコミックエッセイ『なんで私が中国に!?』(イースト・プレス)が先ごろ刊行され、話題となっている。
面白おかしい4コマ漫画で描かれてはいるが、いずれも実話。アニメ制作を通じてわかった中国人の意外な姿や、最近の中国アニメ事情などもうかがえて興味深い。

著者のアニメクリエイター・日野トミーさんは当初、中国に対して「特に関心もなければ、興味もなかった」そうだが、ミッションのために赴任した半年間は「(これまでの人生で)一番濃かった。どの半年を切り取ってもこれには勝てないくらい……」と、その特別だったという一時期をふりかえる。
怒涛のサバイバル体験や、赴任を経て変わった中国のイメージ、この本に込めたメッセージなどについて、トミーさんに語ってもらった。

   
 

■西安で限界スレスレの生活を

東京都内で働くアニメクリエイター、トミーさん。ある日突然、映像コンテンツ制作会社G社の社長から「中国の西安に新規のアニメスタジオをつくるので行ってこい」といわれたことから、この話はスタートする。

本書を手にすると、強烈に目に飛び込んでくるのが、その表紙だ。インパクトのあるタイトルと、著者本人が大泣きしている漫画のユニークなレイアウト。思いがけない辞令が出た時のトミーさんの不安や困惑が、ここにギュッと詰め込まれているかのようだ。
「実は、中国に行きたくもなければ、住みたくもなかったんです。中国かぁーー、嫌だなーーと純粋に思いましたよね、やっぱり(笑)。父親が元自衛官ということもあって(中国への)良くないイメージが昔から刷り込まれていたし、ニュースサイトで見る中国の事件も(スイカや携帯電話の爆発など)日本人からすればあり得ないことが多かったので……」
特別な関心や興味がなかった国だけに「なんで私が(行かなければならないの)!?」という衝撃はかなり大きかったようだ。

『なんで私が中国に!?』より (1)中国でのカルチャーショックも相次いだ。
トミーさんのミッションは、西安にある日系のコンピューターグラフィックス(CG)会社A社とG社との合併で、P社という新しいスタジオをつくること。具体的には、中国国内の子ども向けアニメの大量受注が決まったので、そのためのスタジオをつくり、中国人スタッフを採用して管理・育成し、さらにプロジェクトを回すことだった。
ところがフタを開けてみれば……採用面接で勝手にドタキャンしたり、遅刻したりする応募者たち。大事な一人っ子に代わって面接に来た、過保護な母親。勤務中にもかかわらず、熟睡していたり、アニメを見たり、携帯で話したりするバラバラなスタッフたち。度重なる停電、インターネット規制の壁、海賊版動画サイトの横行などなど……。

「それでもしだいに優秀なスタッフを採用し、仕事を回していったんですが……。一番心配したのは、受注(した作品)が納期に間に合うかどうか。間に合わせようとすると、クオリティーが低いものになる可能性があった。そこでリテイク(作り直し)を繰り返して品質を上げていくんですが、それをやるとどうしても間に合わない。結局、私が過労を覚悟でやるんですが、工数(作業量)的に限界があるので、ちょっと泣きが入った……ということはありました(苦笑)」
コミックの中でも、中国人スタッフらとの仕事意識や習慣のギャップに、爆発しそうになったり、ギブアップ寸前になったりする大変な日常が描かれる。
本書の初出は、帰国後1年ほどした2011年に開設したトミーさんの個人ブログ「ぎりぎりしーあん」( http://girigiri-xian.blogspot.jp/ )になるが、そのタイトルにも「いろんな意味で“ぎりぎり”の生活をしていた(苦笑)」というトミーさんの限界スレスレの状態が表されている。
 

■「アニメあればこそ」

『なんで私が中国に!?』より (2)そうした大変な苦労の一方で、初めはバラバラだったスタッフたちも徐々にチームらしくまとまっていく。
日本が大好きだが、日本語があまり上手ではない通訳兼助手のじょうさん。北京帰りのかなりデキるクリエイターで、新人教育もよくしてくれる林くん。言葉は通じないが、わかり合える曲くん。アニメ愛が強く、真面目な職人タイプの張さんなど……。
「特にじょうさんは献身的にアシストしてくれましたね。仕事ができるタイプではないけれど、一途な彼女のやさしさや日本人への思いやりは、強く心に残っています。スタッフたちも(一時ギクシャクしたこともあったが)熱心に伝えればわかってくれたし、段々成長していく過程も見えて、かわいくなっていきました。みんなのことが……」

本書の中の「アニメあればこそ」(91ページ)という4コマ漫画にはこうある。
「社会には 気の合わない人も 苦手な人もいます」(中略) 「キレイごとで 仲良くなれたら 世話ないのですが ただここにいるみんなはアニメが好きで 好きなことで生きていこうとしてる」 「心を合わせるには それだけで十分なのです…」
言葉は直接通じなくても、アニメ制作という現場の仕事を通じて中国人スタッフと心を1つに合わせたというトミーさん。たったひとり不安な気持ちで乗り込んだ中国で、多くの仲間たちと国境を超えたつながりを持ったようだ。
  

■中国で盛んなFLASHアニメ

ところで、最近の中国アニメ事情はどうなっているのか?
トミーさんによれば現在、日本のアニメの多くは中国や韓国のスタジオに外注しているが、実は中国では、日本アニメの主流ではない「FLASH(フラッシュ)アニメ」がとても盛ん。比較的コストが安く、パソコンなどで簡単に作成できる手法とされる。中国の子どもたちに大人気の「喜羊羊与灰太狼」(シーヤンヤンと灰色おおかみ)もFLASHアニメだ。

日本のアニメは手塚治虫が採用した「リミテッドアニメ」(動きを簡略化してセル画の枚数を減らし、制作のコストや時間を抑えたアニメの手法)が主流だが、中国の場合は、よく動くディズニーの伝統的アニメや、洗練された日本アニメの影響を受けながらも、質・量ともに独自の進化を遂げつつあるという……(ちなみにディズニーの伝統的アニメや宮崎駿作品は、実写と同じ1秒24コマに近い形で絵を描く「フルアニメ」を採用)。

『なんで私が中国に!?』より (3)「中国最大のFLASHアニメのスタジオには200人近い人がいて、1作品をいくつものラインに分かれて大量制作。『喜羊羊』は1話15分と短尺ですが、年間なんと100話単位で作られている(当時)。日本の30分アニメは1話の制作に短くても1カ月はかかるので、FLASHアニメといえども生産量の違いたるやすごいですよね」
そういうトミーさんもFLASHアニメの合弁会社設立のため、西安に赴いた。市内にはアニメ産業に力を入れるエリアがあり、関連の業務には優遇措置がとられていたという。近年の中国における文化振興策の一環だろう。
「そんな流れもあってか、中国では今、クオリティーの高い作品がたくさん生まれています。FLASHアニメでも、ぐりぐり(リアルに)動いたり、絵や背景がとてもきれいだったり……。中華ボカロ(ボーカロイド)も続々と開発されていますし、台湾、シンガポール、タイなどとの共同制作でクオリティーもさらに上がっているようです。リミテッドアニメの技術がガラパゴス化してしまった日本も、うかうかしていられないのでは……」

トミーさんは現在、フリーランスとしてFLASHアニメ、イラスト、コミックを手掛けるなど幅広く活動中。今後も「機会があれば訪中して、コミックの原作などを掘り起こせたら楽しそう」と意欲を語る。
  

■思った以上に日本のことが好き

最後に、この本に込めた思いや、読者へのメッセージについて一言。
「ミッションを経て、中国に対してネガディブなイメージが払拭されたかというとそうでもないのですが……中国人は思った以上に日本のことが好きだった。アニメスタジオにいたこともありますが、ACG(中華圏で主に日本のアニメ、漫画、ゲームを総称する用語)が好きだし、日本を嫌いつつもどこかカッコイイと憧れているところがある。私だけでなく、日本人に対してすごく親切にしてくれた。だから『中国人』って単純にひとくくりにできないな、と感じました」
「最近も『中国に親しみを感じない日本人が8割を超えた』(内閣府調査)そうですが、読者には『中国を嫌いになっても、中国人を嫌いにならないでください』と伝えたい。あ、これは前田敦子(元AKB48)の名言のパクリですけど……(笑)」

さらに「自分が苦手とするもの、恐れているものにあえて飛び込んでみると、必ず新しい見方ができる。おびえていた自分が知らなかったことを、新たに知り得る。何か目指しているものがあったら、思い切ってチャレンジすることが大事では? 別に中国へ行け!というわけじゃなくて……(笑)」とトミーさん。

これまでの人生で「一番濃かった」という体験をステップにした、さらなる活躍が期待できそうだ。
  

■日野トミーさん プロフィール

中国での波瀾万丈な体験を語ってくれた日野トミーさん神奈川県出身徳島県育ち、東京都在住。幼い頃より手塚治虫作品に親しみ、イラストレーター、デザイナー職を経て、映像コンテンツ制作会社(株)ディー・エル・イー(DLE Inc.)の映像ブランドである「蛙男商会」の代表、FROGMAN(小野亮)氏に師事。FLASHアニメ、イラスト、コミックと幅広く活躍中。猫と旅行が好き。

 ※ 『ぎりぎりしーあん』公式ブログ: http://girigiri-xian.blogspot.jp/
 ※ 日野トミーさん公式サイト: http://www.clap.cc/
 ※ 日野トミーさんTwitter: https://twitter.com/cosmikers

 ※ 4コマ漫画: 日野トミーさん提供。


  【Interview この人に聞く】 とは: 今月号からスタートした「東京便り」の新コーナー。中国関連書籍の著者、翻訳者、編集者らにインタビューしていきます(不定期)。
 

 
   
     

 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。12年余り北京に滞在し、2013年7月に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)。
取材編集に携わった『在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由』(阪急コミュニケーションズ)も好評発売中!

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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