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2013年03月

 中国の学校教材、引用作品が実は盗用だった!?

   
   

北京王府井書店の教科書コーナー中国の学校教材で、引用された作品の多くが事実上“盗用”だったことが明らかとなり、問題になっている。作者や著作権者に対し、規定のロイヤリティー(著作権使用料)が未払いのケースが多発していたのだ。

中国ではロイヤリティー支払いの原則は法制化されているものの、教材出版の現場レベルでは長年うやむやにされていた。こうした問題にメスを入れようと、中国国家版権局が昨年12月、新たに「教科書使用作品の報酬支払い規則」について一般の意見募集をしたところ、国内メディアや出版界などで議論が沸騰。

中国の文字著作物を保護する非営利社会団体「中国文字著作権協会」は、「作品を教材に引用しているにもかかわらず、(規定の)ロイヤリティーが支払われず、作者名が記載されず、出所が明らかにされず、無断で作品を改ざんしているケースがよく見られる」と強調。その上で、同協会に未申請で会員作家の作品を無断使用している複数の大手出版社に対して、「正式に提訴することも辞さない」と息巻いている。

※ 中国文字著作権協会 公式サイト http://www.prccopyright.org.cn/

   
 

■あいまいだった教科書への“2次使用”

中国ではこれまで、国の「著作権法」や「出版文字作品報酬規定」(国家版権局1999年制定・施行)により、ロイヤリティーの支払い原則が定められていた。
同規定によれば、文字作品の原稿料は「オリジナル作品1000字につき30~100元」(1元は約15円)と決められている。

そうした中で問題視されたのが、作品が教科書などにいわば“2次使用”された場合のロイヤリティーだ。これまで出版社などの使用者に、あいまいに解釈されていた部分である。
中国の著作権法によれば、教科書の編集出版は特別な「法定許可」で保護されている。著作物の利用許諾やロイヤリティー支払いについても「使用後の申請や後払いが可能」といった比較的緩やかな義務規定となっている。
だが、こうした“緩やかな義務”が法の抜け穴になったのか? 一部出版社では教科書を出版しても、引用作品の作者に進んで連絡を取らないばかりか、ロイヤリティー不払いや作品目録・作者名・出所の不記載などの不正をはたらいていた。また、大量に出版される教師や生徒用の補助教材や参考書ともなると監督が届かないせいか、不正がさらに野放しの状態となっていた。
老舎作品を「無断で」掲載していた『小学創新 一点通』
出版社から連絡がないため、自作が引用されたことすら知らない作家も多数に上る。
その被害が最も大きいとされるのが、現代中国を代表する作家・老舎(1899-1966年)のケースだ。
中国の著作権法では、著作権の保護期間は日本などと同じく「著作者の終生および死後50年まで」が原則とされている。しかし、老舎は死後50年を経ていないにもかかわらず、その作品が小学校の国語教材の“常連”になっているという。
老舎の長男で著作権者、作家である舒乙氏は、「老舎作品を引用した補助教材は、利用許諾を得たこともなければ、ロイヤリティーを支払ったこともない」と主張。例えば大手出版社の人民教育出版社では、出版される補助教材のうち二十数種で、老舎の作品56本が無断引用されているという(中国網)。
 

■老舎をはじめ、有島武郎の作品も

小学5,6年生用参考書『小学閲読』北京の中心部にある大型国有書店、王府井書店で教材を物色してみた。
小学6年生の国語教科書の参考書『小学創新 一点通』(河北教育出版社)には、老舎の随筆「草原」が数ページにわたり、全文引用されていた。老舎がかつて訪れた内モンゴル自治区の雄大な自然と人々の暮らしを感動的に描いたものだ。参考書には、新出漢字や文章表現(比喩的な修辞方法)、作品のテーマなどについての練習問題が設けられていて、楽しく学べる作りになっていた。
しかし、これも前述の舒乙氏の言によれば「利用許諾を得ていない」参考書の1つになるのかもしれなかった。

また、小学5、6年生用の参考書『小学閲読』(教育科学出版社)には、なんと日本の作家、有島武郎(1878-1923年)の有名な童話「一房の葡萄」が全文引用されていた。著作権保護期間が過ぎているため、自由に掲載できると判断されたのかもしれない。しかし親族などにより著作権(財産権)の相続がなされていた場合は、法律に抵触するはずである。利用許諾は、どう処理されているのだろう?
『小学閲読』に引用された有島武郎『一房の葡萄』
本書の裏表紙には「版権所有,侵権必究!」(版権を所有、権利侵害は必ず追求する=権利侵害を禁ずる)と明記されていたが、その一方で内側のページには「一部作者の氏名と住所が不明のため、一時的に連絡を取ることができませんでした。引用作品の作者はできるだけ早く当社と連絡を取り、適切に処理されるようお願いします」との「声明」も記されていた。
いかにも著作権保護の姿勢を打ち出しているようだが、厳密にいえば教科書ではない補助教材や参考書の「(著作物)使用後の許諾」は違法行為だ。
中国の教材をはじめアンソロジーには、こうした「声明」がよく見られる。作者に進んで連絡をせず、「やった者勝ち」「早い者勝ち」といった法の隙間を突くようなやり方が、横行しているのかもしれない。
 

■出版物総額の3分の1占める教材市場

ところであまり知られていないが、中国の教材出版マーケットは意外と規模が大きいようだ。
教科書の末尾には、著作権処理に関する「声明」も…中国新聞出版総署(国家版権局)の「2011年全国新聞出版業基本状況」によれば同年、中国で出版された書籍は36万9523種類で、定価総額は1063億元余り。うち教材は7万8281種類で全体の約5分の1に当たり、定価総額は330億元余りで全体の約3分の1を占める。しかもこれは公式データであり、「実際の教材マーケット規模は、この2、3倍はあるはずだ」と見る業界関係者もいるという(「中国青年報」)。
さらに教材マーケットのうち、補助教材や参考書は全体の70%と大多数を占めている。それだけにこれらの盗用の蔓延が、ゆゆしき問題となっているのだ。中国文字著作権協会の張洪波総幹事は「法律上、補助教材は教科書とは異なり、先に許諾を得てからようやくその作品が引用できることになっている。だが実際にこれを守る出版機構(出版社や企画会社)はいくらもない」と明らかにする。

同協会は、文字著作権について作家や著作権者から委託を受けて管理する団体だ。前述の人民教育出版社は昨年、同協会に対して「1000字100元の基準で、合計使用料76万元ほどを支払った」と違法の疑いを否定している。
だが一方、同協会は、人民教育出版社の大量の教材(補助教材など)になおも無断使用が認められるとして、100人以上の会員作家、著作権者の原告代理人として「提訴することも辞さない」と反発している。

折しも昨年12月、国家版権局が「教科書使用作品の報酬支払い規則」について一般の意見募集をスタート。報酬に関する規定は「文字作品は1000字につき300元、音楽作品は1曲につき300元……」などと明記された。この規則が制定されれば、教材の盗用がより厳しく規制されることになるだろう。

中国文字著作権協会は現在、舒乙氏ら著作権者や会員作家の著作権を保護・管理している。同協会の法的解決への努力、出版社の義務徹底のほかに、この『規則』が制定されれば、それが「最も有効な(著作権の)保障になる」と期待する声もある。
規則ができれば、あとは現場レベルでの法令順守やモラル向上を求めるばかり、であろうか……。
  

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2013年1月25日~1月31日

     
第2位:『鄧小平時代』

第5位:『不可不知的1000個法律陥穽』

第7位:『河神・鬼水怪談』

第8位:『瘋了!桂宝9 喜悦巻』                                                              
 

1.『看見』(見る)
柴静・著 広西師範大学出版社 2012年12月初


2.『鄧小平時代』
エズラ・ヴォーゲル著(米)/馮克利・訳 生活・読書・新知三聯書店 2013年1月初


日本でもベストセラー『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で知られる社会学者エズラ・ヴォーゲル氏(ハーバード大名誉教授)の新作にして、中国語800ページにおよぶ大著。
「20世紀の世界のリーダーの中でも特別な輝きを持つ」という鄧小平の伝記を通して、波乱に満ちながらも驚くべき経済発展を遂げた中国の現代史を読み解く。
鄧小平が、日本の明治維新や戦後の高度成長を中国の経済発展モデルにしていたこと、また1989年の天安門事件について「当時の難しい政治状況では避けがたい手段だった」と著者自身がその判断を擁護する立場を示していることなど、興味深い論理が展開されている。 


3.『全世界人民都知道』(世界の人はみな知っている)
李承鵬・著 新星出版社 2013年1月初


4.『正能量』(原題『Rip It Up: The Radically New Approach to Changing Your Life』)
リチャード・ワイズマン著(英)/李磊・訳 湖南文芸出版社 2012年7月初


5.『不可不知的1000個法律陥阱』(知らなければならない1000の法律の落とし穴)
張洪占など編著 中国政法大学出版社 2012年8月初版


「無料商品体験、無料健康講座などは完全に無料なのか?」「労働契約書に気軽に署名していいか?」「経済協力条項の落とし穴(わな)は防ぎようがない」「親戚の借金であれば借用書は必要ない?」「住宅購入時に家主の身分を疑ったことは?」といった日常的な消費、就業、貸借、住宅売買、保険、投資、病気治療、結婚・恋愛、旅行、紛糾解決をめぐる法の盲点の実例を多数紹介。
専門家がそれぞれわかりやすく解説し、同じような事件に遭遇した時に、正しく合法的権益が保護されるようにと呼びかけている。 


6.『我所理解的生活』(私が理解する生活)
韓寒・著 浙江文芸出版社 2013年1月初


7.『河神・鬼水怪談』
天下覇唱・著 安徽人民出版社 2013年1月初


大ベストセラーとなった中国のファンタジー・アドベンチャー『鬼吹灯』シリーズに続く、最新ミステリー長編。
物語は、とある地方の“三差河”の河口付近で、奇怪な生き物が捕獲されたことに始まる。それは捕まえた郭師傅により「河神」と名付けられた。しばらくして郭師傅の家のかまどの神様「竈王爺」の絵が何者かによって破られた。風水が乱れ、運が悪くなると(占いの)張半仙がいう通り、その絵は突然「凶卦」に変わり、北を向いた。
北の方角には幽霊が出ると恐れられていた粮房店胡同(横町)があり、戸口に封印の紙が貼られた棺材店があった。言い伝えによれば、その棺材店には“大変なもの”が閉じ込められており、それがひとたび出ようものなら河はあふれて洪水になるという。しかし張半仙にもそれがいったい何なのか、推測のしようもなかった。
“妖怪”河神とその出現によって引き起こされる、不思議な中国版ゴースト・ミステリーだ。 


8.『瘋了!桂宝9 喜悦巻』(クレイジー!桂宝9 愉快巻)
阿桂・著 北方婦女児童出版社 2013年1月初


中国で大人気のギャグ漫画シリーズ『瘋了!桂宝』の第9巻。主人公は、嬉しい時も困った時も「瘋了!」(クレイジー)が口ぐせの男の子、桂宝。
普段は気難しい顔をしているが、持ち前(?)のクレイジーさで、日常の至るところに笑いをもたらす。
作者の阿桂は、中国漫画家ランキングで近年常に上位を獲得。本書によれば、この桂宝シリーズも「中国漫画ベストセラー・ランキング第1位」の栄冠に輝くという。 


9.『你若安好 便是晴天:林徽因伝』(あなたが無事なら晴天に:林徽因伝)
白落梅・著 中国華僑出版社 2011年9月初


10.『百年孤独』(百年の孤独)
G.ガルシア=マルケス著(コロンビア)/范曄・訳 南海出版公司


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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