宇高 よう
ステップ音読ではじめる |
今回の本は、私がスピーキングトレーナーとしてたくさんの方々をサポートする中での試行錯誤から生まれました。「新しいタイプのスピーキング・トレーニングブック/「話したいのに話せない」学習者の悩みに正面から向き合った一冊/ピンインのみ(漢字なし)が新鮮/激辛コラムが刺さる」など話題にしていただき、大変ありがたく思っています。
今回は、既にトレーニングを始めていただいている方、やってみようかな、どうしようかな、と迷っておられる方のご参考に、発売後いただいたご質問、コメントにお答えしていきます。
-どんな方に向けた本ですか?
「話せるようになりたい」と、発音、文法をひととおり勉強したのに、思うように話せるようにならない、話すことに自信がない、そんな方におススメしたいです。
-資格試験でいうと「どのくらいのレベル」の方向け、という基準はありますか?
音読メソッドの解説やコラムは、初級から上級まで「話せるようになりたい」全ての方のご参考にしていただけるかと。
トレーニング内容は中検3級、HSK4級までの語彙と文法を素材にしています。音に集中してもらうために語彙や文法の解説を省いているので、そのレベルを「見ればわかる」方に最も効果を発揮します。リスニングの点数が他よりも低いとお悩みの方には特におススメです。
上限はありません。HSK6級以上をクリアしていて、中華圏での滞在経験もあり、日常のコミュニケーションには困らないけども「話すことに自信がない」という方にも喜んでいただいています。
-「実力がない」のではなく「自信がない」?
はい、周りから見ると「ペラペラ!」でも「自信がない……」という方がたくさんおられます。「話せる」って主観的なものです。何をどのぐらい、どんな風に話したいのかは人それぞれ違うので、「実力」という物差しで測るのが難しく、迷いが生まれやすいものなのです。
この本は、ご自身の現在地を見極め、やるべきことに気づいていただけるよう設計をしました。やるべきことがわかり、そこに効くトレーニングをすると変化が起きる、成長が生まれる、それを喜ぶことで自信が持てるようになる。そういう流れを作ってもらえるよういろいろな仕掛けをしたつもりです。
-変化が起こる、成長、自信につながる仕掛けとは?
例えば、音読本には珍しいのですが「たくさん読んで」とはしていません。その代わり「自分の音を録音&分析してください」と。少しエネルギーを使いますが、10回ひたすら読むよりも、1回読んで録音、分析し、その後もう1回読むほうが変化につながる方がたくさんおられます。ぜひお試しください。
お手本の音を聞かず、ピンインだけの文を見て読んでいただくのですが「この音、なんだったかな?」ということも起こるはずです。それが、何度か口に出していると「ああ、アレ!」と意味が浮かび上がってくる。これはなかなか楽しい上に「ピンインがあれば何でも読める」という自信になります。
反対に「この音、聞いたことあるのにわからない!」と悔しい瞬間もあるかもしれません。「漢字を見れば一目でわかるのに」と。そこで、漢字に頼ってきたことに気づき、その後、音にフォーカスした学習ができるようになるという効果もあります。
-ピンインだけ、漢字がない、というのはかなり攻めたつくりですね
はい、普段と違う方向からアプローチをしてほしくて。ピンインは、漢字と音の間という位置づけです。日本人は漢字に頼りすぎている、ということに気づいてもらうために、今回はあえてピンインだけにしました。漢字が悪いというわけではありません。音を意識できるようになると、漢字を見ても音が浮かんでくるようになります。
-どうしてこのトレーニングが生まれたのですか?
まずは、発音学習と音読練習の間をつなぐためです。発音の大切さは皆さんよくご存じで、熱心に学習をされている。ただ、一音一音ができるようになると、すぐ音読に進まれる方が多いのですが、これがスムーズに行かなかったりします。そんな時、まとまった文章を読む前に、少しずつ負荷を上げて音読をすることが効きます。それが、この本の「ステップ音読」トレーニングです。
それから、音読を「話す」につなげてもらうためです。ひたすら読むこと、速く読むこと、美しく読むことは、必ずしも話す力を伸ばすために効果的というわけではありません。フリートークでも崩れない音、使える音にするには、文字を見なくても音を使いこなせるようになることが必須で、そこへ向かうために、と意識してつくりました。
-他にこの本の特徴は?
「話し方の基本」を明記したところです。中国語教育研究の世界はとても進んでいて、中国語らしく話すための基本は既に解明されています。例えば、ピンインルールや声調イメージ。それから「音の長さをそろえる/高低差をそろえる/意味のかたまりでつなげる」です。これらを忠実に守って身体を動かすことができると、少なくとも「通じる」「伝わる」レベルの音は自力で作れるはずです。そこを強調しました。
トレーニングを通じて、これまで学んだ知識をどのくらい使えているのか、どうすればもっと使えるのか、と自分の音と向き合っていただきます。最初はお手本音声を聞かず、自力で音を作り、後からネイティブの音声を聞いてマネをして、自然な音に磨いていくメニューです。
この流れは書道に似ています。書道では、最初に縦線をまっすぐ引いて、横棒を平行に、はらいはこの角度で、という基礎練習をしますよね。そうして、カッチリした字が書けるようになった後に草書とか崩し字に進む。自然な、美しいニュアンスを出せるようになるためには、最初に楷書をしっかり書ける身体が必要なのです。こう例えると、意図を理解していただきやすいのではないでしょうか。
-使い方の注意点は?
最初に解説を活用し、メソッドをササっとでも理解してほしいです。メソッドどおり取り組んでいただくことで成果が出るようになっています。
実は私はあまり最初に解説を読まないタイプでして。今はとても反省しています(笑)。自己流でやって「なんだかうまくいかないな」となってから初めて読んで「しまった!」という経験が。
『ステップ音読~』はトレーニング本なので、どうやるかが大切です。少しでもわかりやすくお伝えしたいと、文字、音声、動画3種類の解説をつくりました。
音声での解説は、私がインターネットラジオ(Podcast『日中バイリンガルへの道』)をしていることと、以前英語のテキスト(『鬼の変則リスニング』アルク)で出会って面白かったことを覚えていて思いつきました。本当にいろいろなところからヒントをいただきましたね。
紹介動画(YouTube)
-こんな人にはおススメしません、という人はいますか 今、それなりにうまく進んでいる、という方にはおススメしません。うまく行っているときは新しいことに手を出さない方が良いです。もし不安になることがあればその時に手に取ってもらえたら嬉しいですね。 -「はじめの一歩」と帯にありますが、次のトレーニングは? 音を意識しての音読トレーニングができるようになってきたら、将来的には漢字だけでなく、ピンインからも離れた、音だけのトレーニング(シャドーウィングやリピーティング)をメインにして欲しいです。この本の応用トレーニングにあたります。最初は少しチャレンジングかもしれませんが、Wànshì kāitóu nán。必ず慣れますので、勇気を出して前に進んでくださいね。
(うだか・よう 日中バイリンガルMC/中国語スピーキングトレーナー)
忙しい毎日の中で、私たちが中国語学習に使える時間は限られています。思うように前に進まないこともよくあります。それでも、少しだけ意識を、やり方を工夫するだけで、話す力は伸ばすことができます。そのためのヒントと仕掛けをこの本の中に詰め込みました。
AI翻訳が実用化された時代だからこそ、わざわざ時間、お金、エネルギーを使い、外国語を話せるようになることの価値は高まっていくでしょう。そのプロセスと成果が、人と人とのつながりを育み、リスクを減らす力になると信じています。この本を活用していただき「中国語、話せます」と言える方が増えることを心から願っています。私ももちろん毎日のトレーニングを続けていきます。
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