中国・本の情報館~東方書店~
サイト内検索
カートを見る
ログイン ヘルプ お問い合わせ
トップページ 輸入書 国内書 輸入雑誌  
本を探す 検索 ≫詳細検索
東方書店楽天市場店「東方書店plus」
楽天市場店 東方書店plus
 
各種SNS
X東方書店東方書店
X東京店東京店
X楽天市場店楽天市場店
Instagram東方書店東方書店
Facebook東京店東京店
 
Knowledge Worker
個人向け電子書籍販売
 
BOOK TOWN じんぼう
神保町の書店在庫を横断検索
 
日本ビジネス中国語学会
 
北京便り
上海便り
ネット用語から読み解く中国
 
bei_title  
 
 
 
   
2011年07月

 話題の映画「建党偉業」、
 同名タイトル本が続々

   
   

豪華キャストが話題の大作映画『建党偉業』7月1日の中国共産党創設90周年の記念日を前に、国内各地で公開されている映画「建党偉業」が話題だが、中国の出版界では映画の同名タイトルを打った歴史書やノベライゼーションが続々と登場している。
いずれも内容や著者、出版社が異なる単行本で、その数は6月末時点で8種(10冊)に上る。
映画製作会社から正規の版権を得た本も中にはあるが、多くは同名タイトルを無断引用したもの。 映画の話題性をあてこんで「二匹目のドジョウ」や「寄らば大樹の陰」を狙おうとする、いってみれば“パクリ本”だ。

以前、小欄でベストセラーのタイトルやアイデアを巧みに借りた類似書の実態を紹介したが(2010年10月号「流行を追えばパクリになる!? 中国の出版物」)、同じ類似書でも今度の場合はさらに手口が悪化して、タイトルがそっくりそのまま、瓜二つなのである。

映画「建党偉業」をとりまく話題と、にわかに増えた同名タイトル本を追った――。

   
 

■豪華キャストが目玉の映画

ハリウッドの話題作と競う『建党偉業』中国映画「建党偉業」は、党創設90周年を記念して制作された超大作。
近代化の起点となった「辛亥革命」(1911年)から21年の党創設までの10年間にスポットを当て、孫文や袁世凱、毛沢東、朱徳といった歴史的人物たちの活躍や関わりを描いている。90年の節目の年に国民の愛党精神を高めるために公開された、いわばプロパガンダ映画である。

目玉の1つとなるのが、中華系スター108人が勢ぞろいする豪華キャストだ。
中華民国の大総統になった袁世凱役に周潤発(チョウ・ユンファ)、袁世凱の帝政復活に反対した清末民初の軍人、蔡鍔役に劉徳華(アンディ・ラウ)、青年毛沢東役に劉燁(リュウ・イエ)など、国際派スターがずらり。
ほかに、王力宏(ワン・リーホン)、周迅(ジョウ・シュン)、范氷氷(ファン・ビンビン)、趙本山(ジャオ・ベンシャン)といった今を時めく俳優陣も脇を固める。

ただ、こうしたオールスターキャストの国策映画に対しては、国民の中でも賛否両論があるようだ。
筆者もこのほど北京の繁華街・王府井のシネコンで鑑賞したが、当日は火曜の半額デーということもあり、夜間の部に全200席の8割という予想以上の観客があった。国有企業などでは福利厚生の一環で無料チケットを配布しているそうだが、35元の半額チケットを自ら買って入る若者も多く見られた。
客席では、スクリーンに趙本山などの人気コメディアンが登場すると笑い声が漏れていたが、それ以外はおおむね真剣に見入っていたようす。ある会社員の青年(非党員)は「話題の映画なので見にきた。総花的な内容だったが、歴史をざっと振り返るにはいいだろう」と評価していた。
一方、インターネット上では「131分の映画で10年を描き、108人のスターが登場する。1人当たりわずか1分余りの出演で、展開がめまぐるしい」「当時の中国人には(自由な)集会、デモ、演説が許されていたんだな。北洋時期(民国初期)は知識人(の行為)に対して寛容だった」「出てくるスターには外国籍の人もいる。それなら実際には党員になれないじゃないか」という酷評も飛び交っている。
賛否はともかく、映画が話題になっていることは確かだろう。

この作品は、中国建国60周年を記念して09年に公開された「建国大業」と同じ韓三平、黄建新の両監督がメガホンを執り、総製作費は7000万元超(1元は約12.5円、約8億7000万円)。
観客動員は“姉妹編”の前作を大きく上回る3000万人、興行収入は前作に比べ倍以上の8~10億元(約100~125億円)が見込まれているという。

同時期公開の対抗馬には「パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉」「カンフー・パンダ2」があるが、6、7月に公開予定されていた人気映画「トランスフォーマー3」や「ハリー・ポッターと死の秘宝(PART 2)」はこのほど、約1カ月ずつ先延ばしにされたことが明らかになった(『法制晩報』6月22日付)。
ネット上では「建党偉業」に観客を動員するためだ、という憶測が流れている。

製作サイド、中国電影集団のスポークスマンは「重要なのは興行成績などではない。80後、90後(1980~90年代生まれ)の若い世代に、当時の雄壮な歴史を知ってもらうことなのだ」と語っている(『法制晩報』6月21日付)。
さらに「前作よりも時代背景がさかのぼるため、毛沢東や周恩来らはほとんど無名の青年時代。若手俳優を多く起用して、フレッシュさと時代の勢いを示した」(中国メディア)という解説もある。
それもまた、若い世代を取り込むための秘策だといえるだろう。
 

■類似書NO!の厳重声明を発表

建党90周年を記念するとともに、映画の話題性に乗じた同名タイトル本は、今年3月からお目見えした。これまでに出版された8種を、初版の順に見てみると――。

中国人民解放軍出版社版

江蘇教育出版社版

人民日報出版社版

人民出版社版

金城出版社版

紅旗出版社版

文化芸術出版社版

人民出版社版(聚焦1921)

『建党偉業』 柳江南、張隼・著、中国人民解放軍出版社、2011年3月1日初版
――膨大な史料をもとに、中国共産党創設の全プロセスをルポルタージュふうに叙述。「現在、約8000万人に上る共産党員必読の書」(本書)。

『建党偉業』(青少年版) 金達芾・著、江蘇教育出版社、2011年4月初版
――青少年読者(11~14歳)向けに、党創設前後の歴史をわかりやすく紹介。単なる事実の羅列ではなく、モンタージュ式の編集で生き生きとした物語に再現。

『建党偉業』 張珊珍・主編、人民日報出版社、2011年4月15日初版
――1911年の辛亥革命から21年党創設までの激動の歴史を、毛沢東、李大釗、陳独秀、周恩来ら初期の党員の活躍を中心に描く。
「中国共産党第1次全国代表大会(第1回党大会)の13人の代表、(当時の)50数人の党員、60余年の国家の隆盛、90年の苦難輝く」とキャッチコピーに。

『建党偉業』 何虎生・編著、人民出版社、2011年5月1日初版
――党創設前後にあたる1915年から27年までの歴史を記録。北京から全国に広がった反日・反帝国主義運動の「五四運動」(19年)、党の創設、初期の活動、第1次国共合作など、党史の初期の重要事項を解説する。

『建党偉業』 韓三平、黄建新・著、金城出版社、文脈堂、2011年6月1日初版
――映画「建党偉業」のノベライゼーション。「独占的版権委譲の同名小説」とある。周潤発、劉徳華、陳道明、劉燁、王力宏ら、出演スターたちのカラー写真も特別掲載されている。

『建党偉業』(全2巻) 黄亜洲・著、紅旗出版社、2011年6月1日初版
――1919年の五四運動から28年の「井岡山会師」(革命聖地での軍事的合流)まで約10年間の歴史と毛沢東ら党創設者の姿を、史実に照らし躍動的に描く。
中国新聞出版総署の「建党90周年」重点推薦図書。

『建党偉業』(全2巻) 高瑞洋・編著、文化芸術出版社、2011年6月1日初版
――中国電影集団の映画「建党偉業」の文学版と解説に。編著者は、中国電影集団の映画雑誌『星月刊』などの執行主編(執行編集長)。

『建党偉業:聚焦1921』(1921年に焦点をあてる) 高万娥、劉道慧・著、人民出版社、2011年7月1日初版
――上海、北京、武漢、広州など各地の“先進分子”が創設した中国共産党の早期組織や、21年の第1回党大会開催のプロセスを中心に描く。

……というように、表向きは歴史書やノベライゼーション、青少年向けとさまざまだが、内容はどれも似ている。
「一体どれが力作なのかわからない。玉石混交で読者にとっては不便だ」などと困惑感をにじませた報道もあった(『北京青年報』6月13日付)。

紛らわしい『建党偉業』の出版に対し、映画会社から正規に版権を得た金城出版社はこのほど「厳重声明」を発表。
「映画『建党偉業』小説版の著作権および関連の権利は、金城出版社、中国電影集団および文脈堂が所有する。いかなる者もこれを無断使用してはならず、また類似や近似のいかなる形式であれ、これを混同使用してはならない。例えば“映画同歩(シンクロ)書”“映画書”“映画同名小説”など……」
「出版業の秩序を守るため、出版社はメディアと実事求是の宣伝をし、映画の威風を借りたセンセーショナルな宣伝で読者を騙さないように……」などとしている(『新京報』6月15日付)。

しかし、フタを開ければ同時期に出た文化芸術出版社の『建党偉業』も、映画会社の版権を取得していたことが明らかになり(『新京報』6月23日付)、この問題は複雑さを増している。
 

■「借勢」は著作権を侵害しないが…

ところで、中国でこうしたトラブルが絶えないわけは、現行の『著作権法』で「借勢(他者の勢力を借りる)行為」が著作権の侵害にあたらない、とされるためだ。

また、以前もレポートした通り(2010年10月号「北京便り」)、中国の『著作権法』では、著作物の保護対象として「表紙、裏表紙、内容の体裁デザイン」を含まない。そのため合法的権益の保護を訴えるのが難しいとされている。
(日本の著作権法でも、タイトル「題号」は通常、著作物には該当せず、「著作権」による保護は与えられないとされている。その代わり「不正競争防止法」や「商標法」などによって、類似商品等の表示から本来の表示〈題号等〉を保護することもできる)

中国の著作権団体、中国文字著作権協会の張洪波・常務副総幹事は「“山寨書”(パクリ本)に対して、出版業のモラルが高くない状況では、(当協会のような)関連団体の制約ではききめがない」と語り、いかにも弱腰のようす(『新京報』6月15日付)。続出するパクリ本に手をこまねいている。
ただし、タイトルのパクリ事件の裁判には先例があり、2005年には辞典出版大手の商務印書館(北京)が出版物の同名タイトル本『古漢語常用字字典』を出した西安出版社を訴え、北京市の中級人民法院(地裁)で勝訴している。

時に「コピー大国」と揶揄される中国。
内容をすっかりコピーする海賊版はもちろんのこと、正規の出版社でもタイトルやアイデアを一部まねるトラブルは後を絶たない。ましてや今回のように同名タイトル本がずらずらと出てきたのは、近年ではなかったことだ。

現行『著作権法』の整備が待たれるが、その前に金城出版社のように「声明」を出して“商標”を主張しておくことも、今後のリスク回避の予防にはなるかもしれない。
  

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2011年6月17日~6月23日

     
第1位:『中共中央第一支筆』

第2位:『百年孤独』

第3位:『時寒氷説:経済大棋局,我們怎麼辦』
                                         第4位:『龍族2:悼亡者之瞳』

第6位:『塵埃眠于光年』

第7位:『第一夜的薔薇』

第8位:『金陵十三釵』

第10位:『做最好的党員』


            
 

1.『中共中央第一支筆』
丁暁平・著 中国青年出版社 2011年6月初版


サブタイトルに「胡喬木が毛沢東、鄧小平の身近にいた日」とある。
胡喬木(1912-1992)は延安時代に毛沢東の政治秘書、また75年から鄧小平の助力となり、改革・開放政策を下支えした(78年に新設の中国社会科学院院長)。
中国共産党の最高指導機関・党中央委員会で約半世紀にわたり陰日向なく働いた胡喬木の伝記とともに、党中央の思想理論、宣伝教育、文化科学活動の歴史を伝える。 


2.『百年孤独』(百年の孤独)
G.ガルシア=マルケス著(コロンビア) 南海出版公司 2011年6月初版


ガルシア=マルケスの代表作。ガルシアは本作を主に1982年にノーベル文学賞を受賞。
蜃気楼の村、マコンドを創設したブエンディア一族の盛衰を、神秘的なエピソードや個性豊かな登場人物を交えて描く。日本では早くは1972年に新潮社から翻訳出版されている。 


3.『時寒氷説:経済大棋局,我們怎麼辦』(経済の大局面、我々はどうするか)
時寒氷・著 上海財経大学出版社有限公司 2011年5月初版


著者は、中国の経済評論家で南京大学客員教授。インフレと不動産市場の謎やインフレが進む中で財産をどう守るか、アメリカ、EU、日本、ロシアといった先進国の経済戦略が中国に与える影響は? 人民元の切り上げと中国経済の将来は? など、身近な関心事から世界の大事まで、最新の経済トレンドをわかりやすく解説する。 


4.『龍族Ⅱ:悼亡者之瞳』(龍族Ⅱ:亡妻者のひとみ)
江南・著 長江出版社 2011年5月初版


2010年4月に出版された長編ファンタジー『龍族Ⅰ:火之晨曦』(火の朝日)の続編。漫画単行本としても同時発売されている。
主人公の高校生・路明非は、神秘的なパワーを秘めた「屠龍家族」(龍を屠殺する家系)の一員。北京で突然よみがえった山の龍王との戦いを、仲間たちとともに繰り広げる。 


5.『好媽媽勝過好老師』(よい母はよい教師に勝る)
尹建莉・著 作家出版社


6.『塵埃眠于光年』(塵埃は光年眠る)
夏茗悠・著 新世界出版社 2011年6月初版


文芸誌『萌芽』の連載を単行本化。1988年生まれの若手女性作家・夏茗悠の最新長編小説だ。
ある大学のキャンパスで起こる連続殺人事件。主人公の女子学生・秋和をとりまく人たちが次々と亡くなり、やがて秋和が疑われる。真犯人は? そして秋和の運命は? ハラハラドキドキの手に汗にぎる展開と、心温まるラストが用意された異色の青春サスペンス・ストーリー。 


7.『第一夜的薔薇』(第一夜のバラ)
明暁溪・著 新世界出版社 2011年5月初版


小説『泡沫之夏』などで知られる若手女性作家・明暁溪が描く、美しくも恐ろしい報復ラブストーリー。明暁溪が編集主幹(編集長)の文芸誌『仙度瑞拉』(シンデレラ)に連載された。
幸せな家族の崩壊に巻き込まれ、最愛の父を失って、少年院に送り込まれた少女。出所後にはデザイナーとして生まれ変わり、ファッション界のトップにまで上り詰めていくのだが……。
ジェットコースターのように急転する物語。第2巻が早くもファンたちに待たれている。 


8.『金陵十三釵』
厳歌苓・著 陝西師範大学出版総社有限公司 2011年6月初


ベストセラー『少姨多鶴』などで知られる在米の女性作家・厳歌苓の最新長編小説。1937年12月の旧日本軍の南京侵攻を背景に、市内のキリスト教系寄宿学校の女子生徒と、学校に逃げ込んできた13人の娼婦らの運命を描く。
張芸謀(チャン・イーモウ)監督がこの小説を原作に映画化し、寄宿学校のアメリカの宣教師役にクリスチャン・ベールを起用したことでも話題に。今年末の公開が予定されている。 


9.『一問一世界』
楊瀾、朱氷・著 江蘇人民出版社 2011年5月初版


10.『做最好的党員』(最良の党員になる)
呉甘霖、鄧小蘭・著 京華出版社 2011年3月初版


7月1日の中国共産党創設90周年を前に、党関係の書物が大量に出版されている。
本書は「優秀な党員」になるための指南書。思想の育成、仕事の能力、話し方のテクニック、学習能力をそれぞれ高めるためのポイントを教える「通俗的読み物」。
地方幹部の汚職・腐敗事件が取りざたされる昨今だが、「中国共産党員がいかに党創設90周年を祝うか? それは最良の党員になることだ」と本書は呼びかけている。 


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
  b_u_yajirusi
 
 
     
   
中国・本の情報館~東方書店 東方書店トップページへ
会社案内 - ご注文の方法 - ユーザ規約 - 個人情報について - 著作権について