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2011年01月

 火花散らす、ネット書店の値下げ合戦

   
   

激しい値下げ合戦を開始したネット書店「当社はライバル社よりも全品20%オフだ!」
「それならうちは、1、2元の安さでも負けられない!」(1元は約13円)

中国の大手通販サイト「京東商城」「当当網」の両社(本部はいずれも北京市)がこのところ、書籍のオンライン販売をめぐって値下げ合戦の火花を散らしている。
両社ともトップ自らが、ネット上のミニブログ「微博」(ウェイボー、中国版ツイッター)を使って“宣戦布告”。さらには、出版業者に対してライバル社への出荷停止を求めた“怪文書”が送られるなど、事態はしだいにエスカレートしている。
ユーザーにとっては願ってもない価格戦だが、業者の中には「コストを度外視した悪競争」「共倒れになる可能性がある」などと懸念する声もある。

改革・開放後、「社会主義市場経済」の体制をとる中国では近年、本の販売競争がしばしば繰り広げられてきた。従来の実店舗から、ネット上に戦場を移したかのような今回の価格戦。その実態をのぞいてみた――。

   
 

■CEOがネット上で舌戦を

値下げ合戦を繰り広げる2社のうちの1つ「京東商城」は、2004年創業の通販サイト。家電から食品まで10万種類の商品を取り引きし、1000万超のユーザーを抱える大手だ。ネット書店市場には2010年11月1日に参入。本の販売分野では、気鋭の“新人”として注目されている。
一方の「当当網」は、1999年創業の通販サイトの最大手。約100万種類の商品を販売し、アクセス数は月間3000万回超をほこる。2010年12月8日には、米ニューヨーク証券取引所に上場を果たしている。

北京の地元紙『新京報』などによれば、この2社の争いの発端は2010年12月14日。京東商城のCEO(最高経営責任者)、劉強東氏がミニブログで「当社はライバル社よりも全品20%オフにする!」と“宣戦布告”したことから始まった。
これに対し、当当網のCEO、李国慶氏はすかさず応酬。ミニブログを使って「それならうちは、1、2元の安さでも負けられない!」「価格指数調査では全ての通販サイト中、うちが最低価格となっている」と意地を見せた。

劉強東氏の“宣戦布告”(新浪微博より)

さらに「あちらは書籍が10万(種類)だが、うちは60万を販売している」と当当網の李国慶氏がミニブログでつぶやけば、「国慶さん、うちはもう22万を扱っているよ」と京東商城の劉強東氏がただちに反論。
激しい言い争いは、多くのネットユーザーに瞬時に知られるところとなった。「京東商城の(配送)スピードは一流。夜間に本を注文したら、翌日には届いたよ」「いや、当当網は本がそろっている。京東商城は“在庫無し”が多すぎる」などユーザーたちの舌戦も過熱気味に。

その後、両社は相手方に0.1元でも負けまいとする、本の値下げ合戦へと突入していった(※ 下図ご参照)。

  タイトル 定価(元) 当 当 網  京東商城

1

蔡康永的説話之道(蔡康永・著) 25.00 16.00 16.00

2

1988:我想和這個世界談談(韓寒・著) 25.00 18.80 18.80

3

好媽媽勝過好老師(尹建莉・著) 28.00 19.60 19.60

4

窓辺的小豆豆(黒柳徹子・著) 20.00 10.40 10.30

5

国家記憶(章東磐・編) 98.00 63.70 63.70

6

蘇聯真相(陸南泉ほか・編) 246.00 196.80 163.80

7

抗争政治(ティリー.Cほか著 28.00 22.40 22.30

8

胡適全集(全44巻)(胡適・著) 3360 3088 無し

9

陳垣全集(全23巻)(陳垣・著) 1980 1683 無し

(2010年12月14日午後6時までの統計、『新京報』12月14日付より)
※ この図によると、ネット書店での本の販売価格は、定価の20~50%オフとなっている。

■「封殺」求める通達が出回る

値下げ合戦を仕掛けた「京東商城」争いはそれだけにとどまらなかった。
京東商城の劉強東氏が翌15日、ミニブログで明かしたところによると「当当網が各出版社に対して『京東(商城)を封殺せよ。出荷停止を求める』というメールを送った」として、ライバル社の“情報戦”を暴露したのである。

それによれば「図書大戦の内幕」として14日に発信された当当網の“怪文書”にはこうあった。
「各出版社には、くれぐれも自分のポジションを間違えないように。そして京東への出荷停止を合わせて求める!(中略)この要求に応じなければ、協力をやめる」
まるで脅迫するかのような、厳しい要求の「通報函」(通達書)だったという。

応戦する老舗の「当当網」これに対し、暴露された側の当当網はスポークスマンを通じて反撃の声明を発表。
「通達は“磨鉄文化公司”(関係会社)が書いたもので、当社の社員が私的関係でこのメールを受信した。その後、他社からの問い合わせがあったため、参考として同メールを送ったところ広まったようだ。メールは当社の立場を示すものではなく、当社とも関係がない」
通達は、当当網の公式メッセージではないとして、出所も内容も否定した。こうして双方ともに1歩も引かない舌戦と価格戦は、泥沼化していった。

■「再販制度」確立に向けて

出版業者も困惑している。
ある出版社や取次会社が明かしたところによると「本の卸値は、実店舗よりもネット書店のほうが安いのが実情。たとえば実店舗には5.5掛けで卸すが、ネット書店には4掛けで卸すこともある」。
中国のネットユーザーは現在、人口の3分の1にあたる約4億人超。通販サイトの成長もいちじるしく、ネット書店は書籍販売の重要なルートになっている。また、それは実店舗での販売も促すため、出版業者はより安い卸値で出荷せざるを得ないという。

今回の価格競争に対して、ある出版社はこう非難する。
「当当網に出荷した本は5掛けだったが、(競争のため)彼らも儲けはないはずだ。こうしたコストを度外視した悪競争には賛成しかねる。業界の供給価格システムを乱すもので、結果として多方面が損をすることになる」
またある出版社は「価格戦が長引けば、卸値のさらなる値下げを要求される可能性がある」として、出版業者の共倒れを懸念する。

もっとも今回の価格戦は、クリスマスと元旦の祝日をねらった特別セールだという見方もある。
また、書籍だけに頼った価格戦は厳しいと見えて、当当網では15日から「書籍・音像商品(音楽CD・映像DVDなど)を119元購入すれば30元、199元で50元、999元で300元をそれぞれ返金する」というキャッシュバック方式のサービスも展開している。

ついにはAmazonも参戦、三つ巴に…

改革・開放後、1990年代の初めから、経済に市場原理を取り入れた「社会主義市場経済」体制をとる中国。
近年は、本の分野でも激烈な価格戦がしばしば繰り広げられている。北京最大級の民営書店「第三極書店」が09年夏、巨額の損失を出して中関村の大型ビルの売り場から撤退せざるを得なくなったのも、価格戦の影響によるとされる(ご参照:「北京便り」2006年9月号2009年7月号)。

中国では、日本のような「再販制度(再販売価格維持制度)」が設けられていないこともネックになっている。
これは日本の場合、文化の普及と発展のために、新聞、書籍、雑誌、音楽用CDなどの6品目は全国一律で価格を維持するという制度だ(古書や時限販売のCD、ブックフェアでの割引等を除く)。メリットは業者が安定した供給を行えることだが、デメリットは自由競争がなく、値引きがなく、販売サービスが向上しないこと。
フランスでは、かつて書籍のオープン価格制度を設けたところ混乱が生じ、82年に書籍再販制度が成立。一方、アメリカやカナダ、イギリスなどではこれを採用していない。

中国ではまだ確立されていない再販制度について、中国出版工作者協会の黄国栄氏はこう語る。
「国家新聞出版総署(中国の新聞・出版事業を主管する国務院の直属機関)でも現在、ネット書店の価格戦に大きな関心を寄せている。フランスでも3年がかりの議論を経て、法が制定されたと聞く。私たちも関連法の立法化に向けて働きかけているところだ」

今回の価格戦は、実店舗からネット上に戦場が移ったことでも耳目を集めた。
近い将来、価格戦による値崩れを防ぐような制度化がなされるか? ネット書店の影響力が増すにつれ、本の文化とどう向き合って、これを販売していくのか?
中国側の対応が注目される。

[参考文献]
「京東、当当打響図書価格戦」(『新京報』2010年12月14日付)
「京東商城当当網降価大戦昇級」(『新京報』12月16日付)
「京東降価衝撃図書市場:読書人竊喜 出版界隠憂」(『天津日報』―新華網12月16日付) 等

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2010年12月2日~12月8日

     
第1位:『回家喫飯的智慧』

第4位:『我的抗戦』

第7位:『張亜勤:譲智慧起舞』

第8位:『鬼吹灯之牧野詭事』
 

1.『回家喫飯的智慧』(おうちごはんの知恵)
陳允斌・著 江蘇人民出版社 2010年8月初版


サブタイトルに、「媽媽留給我的飲食秘方」(母が私に残してくれた飲食の秘方)とある。
普段なおざりにしがちな「おうちごはん」だが、じつは非常に奥が深い。例えばショウガの皮は漢方でいうところの陰性、実は陽性に属していて、自分の体質を知らずに適当に摂取すると健康を害しかねない。
そのため食品は、色や味、栄養素ばかりでなく、その陰陽の特性を明らかにして、上手に摂取することが大事。そうすれば漢方医学的にバランスのよい健康な体が作れると、本書は説く。
陳皮、黄芪(おうぎ)、スイカ、荷葉(かよう、ハスの葉)、銀耳(シロキクラゲ)といった中国の家庭でよく使われる60種類以上の食材の効きめと料理法を詳しく紹介。虚弱体質や発熱、風邪、セキ、やけどなどに効くといわれる料理を教える。
「幸せとは、おうちでごはんを食べること」というのが作者の母からのメッセージだそうだ。 


2.『大投資家:牛股基因』(大投資家:ブルの要因)
凱恩斯、楊永清・著 山西人民出版社 2010年11月初


3.『1988:我想和這個世界談談』(1988:この世界と話したい)
韓寒・著 国際文化出版公司 2010年9月初


4.『我的抗戦』(我が抗戦)
『我的抗戦』番組班・編 中国友誼出版公司 2010年11月初版


中国の人気キャスター・崔永元氏が巨資を投じ、8年の歳月をかけて制作された大型テレビドキュメンタリー。2010年11月15日に全国84局で放送された内容が、同名タイトル本として出版された。
合わせて300人の“抗戦老兵”(抗日戦争時の兵士)たち――かつての捕虜経験者や中国空軍兵士、文芸抗戦者、情報工作者、道路工事の従事者、知識人など、1人ひとりの述懐や証言をまとめる。
とりわけ「百団大戦」「松山の戦い」「平型関の戦い」といった抗日戦における22回の大規模戦のようすも明らかに。中国では、「半世紀余り埋もれていた抗日戦の真相を初公開」「歴史教科書には掲載されない伝奇」などと評されている。 


5.『幸福了嗎?』(幸せですか?)
白岩松・著 長江文芸出版社 2010年9月初


6.『気場』(カリスマ)
ピケ・フィル著(米)=音訳 重慶出版社 2010年10月初版


7.『張亜勤:譲智慧起舞』(張亜勤:知恵によって舞い始める)
劉世英・著 中信出版社 2010年11月版


全華人世界の天才科学者、張亜勤氏。わずか12歳で中国科学技術大学少年班に入学し、電子工学の修士号を取得。1986年に米国にわたり、ジョージ・ワシントン大学でコンピュータ専攻の博士号を取得した後、31歳の若さで由緒ある米国電気電子エンジニア協会の最年少メンバー(Fellow of IEEE)となる。
33歳で帰国して李開復氏(華人科学者)とともにマイクロソフト亜洲研究院の前身である「マイクロソフト中国研究院」を創設。38歳でマイクロソフトグローバルの副総裁となり、ビル・ゲイツ氏のブレーントラストのメンバーに。そして現在は、同社の資深副総裁をはじめ、マイクロソフト(中国)有限公司董事長などを務める。
本書は、この「科学界の天才」とも「ビジネス界のリーダー」ともいわれる傑出した人物の自伝。青少年たちの成長モデルとして、また企業管理者のバイブルとして、幅広い読者層の好評を博しているという。 


8.『鬼吹灯之牧野詭事』(鬼吹灯:牧野の怪事)
天下覇唱・著 金城出版社 2010年10月初


ネット小説の人気に火がつき、2006年に第1巻が出版。その後、シリーズ化された中国版冒険ミステリー小説『鬼吹灯』。
シリーズを原作とした同名タイトルのゲームも人気で、作者の天下覇唱氏は2010年の「中国作家富豪ランキング」にも名を連ねる。
最新巻は、作者(本名・張牧野)自身も登場し、奇怪な事件に巻き込まれていくという、現実と虚構が入り混じった盗掘・探検小説。盗掘で不慮の死を遂げた祖先の最期の秘密を探ろうと、子孫やその仲間たちが大活躍する。
帯には「シリーズ未解決の謎が明かされる」「邪門怪事の百科全書」などとあり、ファンたちの好奇心を強くそそる。 


9.『侯衛東官場筆記4』(侯衛東の官界メモ4)
小橋老樹・著 鳳凰出版社 2010年11月初


10.『蔡康永的説話之道』(蔡康永の話の道)
蔡康永・著 瀋陽出版社 2010年11月初


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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