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微観中国  (41)米IT大手も賛意を表明 ネット鎖国下での「ネット大会」
   
     

 

 

 「中国では、世界インターネット大会だけが、ネットが真に世界とつながった空間だった」―12月3日、第4回世界インターネット大会が開かれた浙江省烏鎮では、大会の3日間だけ、中国政府のネット規制「GFW(グレート・ファイアウォール)」が解除され、海外のサイトに自由にアクセスすることができた。ニューヨーク・タイムズの記者、ポール・モズール氏は皮肉を込めてこうツイッターに書き込んだ。
 中国が自らのネット規制を正当化するロジックである「ネット主権」を宣伝する恒例の場となったネット大会については、以前本コラムでも紹介した。大会で王滬寧政治局常務委員は、「ネットの安全や秩序の建設」などを提起したが、それにもまして今回特に注目されたのは、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)ら米国の大手情報技術(IT)企業トップの参加であり、彼らの言動だった。
 報道によると、クックCEOは基調講演で、今回の大会のテーマ「発展数字経済 促進開放共享 携手共建網絡空間命運共同体(デジタル経済発展 開放と共有の促進 ネット空間運命共同体の建設)」というテーマに賛同するとして、このテーマこそ「まさに我々が思い描いている将来の姿」であり、「中国のパートナーと協力し、ネット世界共通の未来に参加したい」と述べた。普段はラフなスタイルで登場するクックCEOも、今大会はスーツにネクタイ姿で演説した。

 

 
   
     

                    基調講演に向かうApple社CEO ティム・クック

 

 

 

 「Openness, shared benefits, common future? Huh? (開放性、共通の利益、未来を享受?はあ、何を言っているんだ?)」―ブルームバーグのコラムニスト、ティム・カルパン氏はこう疑問を投げかけた。
 「私はその演説を目にしなかったが、クックは嘘を言っているようには見えなかった。だが、彼が自分の言葉を信じているかはどうでもよい。むしろ重要なのは海外のCEOが中国当局にお墨付きを与えただけでなく、中国国内のライバル企業に対し、あなた達の縄張りは安全だ(荒らすことはしない)という信号を送ったことだ」。つまりは中国政府が管理し、百度、アリババ、テンセントなどの中国IT大手が寡占する中国市場のルールに従うと表明したのだと指摘した。
 「(外国企業は)中国のルールや法律に従い、気に入らなければ出ていってくれ。ここはあなた方が出たり入ったりできる市場ではない」―ロイターの報道によれば会議に出席したアリババの創業者、ジャック・マー(馬雲)は外国企業の低姿勢を見透かしたかのようにこう語ったという。
 アップルは今年7月、中国当局の要求に応じ、多くのVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)の中国のアプリストアでの扱いを取りやめた。VPNは中国のネット規制を回避して、海外のウェブサイトに接続するために中国国内の多くのネットユーザーが使っていたが、「アップルは中国の検閲に協力した」と欧米メディアから強い批判を浴びた。
 アップルがそれでも今回出席した理由について、カルバン氏は次のように記している。「グーグルやフェイスブックは世界第2の経済大国(中国)で悩まなくてもやっていける。だがアップルは異なる。華為(ファーウェイ)やZTE(中興)(など中国のライバル)が米国だけでなく全世界でも追いつきつつある。同社は自国以外での収益が60%を占め、そして20%近くは中国から得ている。それが今回、(アップルの)CEOが中国のインターネット大会で基調講演をやった理由だ」。
 大会の1月前、中国政府はかつてのインター部門トップ、魯煒・元国家インターネット情報弁公室主任に深刻な規律違反があったとして処分する方針を発表した。魯はかつてインターネット大会を立ち上げた功労者だったが、一昨年の会議では「万邦来朝(万国から朝廷を訪れる)」雰囲気を作り出そうとしたが、外国からの参加者が少なかったため、在中国の留学生らを「専門家」などとして紛れ込ませ、習近平がそれを知り激怒、魯煒の失脚の一因になったという。
 ドイチェ・ヴェレ(中国語)によれば、「中国側は米国人(IT企業トップ)に大会に参加するよう相当の圧力をかけた」とある外交官は語ったが、圧力の有無にかかわらず、アップルら米国IT大手が参加したことで、中国政府は主催国としてのメンツを保ち、自らのネット政策に自信を深めたと言えそうだ。
 「19世紀、西洋から中国を訪れた商人は宮廷のルールに従い、中国皇帝に跪くかどうかで熱烈な議論となった。だが今日の国際的なIT企業エリートにはそのような意識はほとんどない。彼らは9億のネットユーザーのいる世界最大の単一市場の主人と仲違いしようとは思わないのだ」―ドイチェ・ヴェレのコラムニスト、Frank Sieren(澤林)はこう書いている。
 「百度、テンセント、アリババなど中国のハイテク企業は西側との競争がない状況で世界でも最も強力なIT企業へと成長した。これら中国のIT企業をグローバル競争で容易に適応させる、これが中国政府の『GFW』の長期的戦略の1つだろう。このやり方は不公平だが、絶対的に有効だ。西側民主国家は中国のウェブサイトやソフトを封鎖することはできない、そのようなことをすれば民主国家ではなくなってしまうからだ」―彼はこう指摘した。
 強力なネット規制を利用し、自国のIT企業を保護し発展させる、こうして市場を大きく育ててから、参入を希望する外国企業にルールに従わせる。中国のこのネットやIT戦略は、外国企業も跪かざるを得ないほど、一定の効果を上げているようにみえる。

 


長平氏のコラム

 


中国互联网发展报告 2017
中国互联网协会 中国互联网络信息中心 编
电子工业出版社
価格 55,296円

 

 前回の本欄でも取り上げた友人のジャーナリスト、長平はドイチェ・ヴェレのコラムで「過去の指導者は『国際舞台』(に登場すること)を喜んだが、今の指導者は自ら『国際舞台』を作ってしまえばいいと分かった」と記した。
 中国のこうした自信たっぷりの姿勢は公式文書にも現れた。中国政府は今回の大会に合わせて、「世界インターネット発展報告2017」「中国インターネット発展報告2017」という2種類の「青書」を発表した。この中で「インフラ」「創新(イノベーション)能力」「産業発展」「ネット応用」「ネット安全」「ネットガバナンス」の6つの指標を使って、中国自らを米国に次ぐ世界第2位のネット強国と位置づけた。ちなみにそれに次ぐのが韓国、日本、英国の順だという。「ネット人口世界1、電子商取引総量世界1、電子支払い総額世界1…報告は、23年の発展を経て、中国のネットの発展が目を見張る成果を獲得し、中国の特色ある社会主義のネットガバナンスの道を探し出した」と人民日報の記事は強調している。
 国際NGO、フリーダムハウスが毎年発表する世界ネット自由度ランキングによれば、中国は3年連続でワースト1のネット規制大国とされている。青書はこうした国際社会への反論とみられるが、前述の長平は「このようなネット管理大国が、世界ネット大会を開催し、業界のトップが次々と参加する、世の中にこれほど滑稽な場面はない。だが人々がこれを問題にするのは、それが荒唐無稽だからというだけでなく、人類の文明に被害をもたらすからなのだ」と指摘する。
 実際、中国のこうしたやり方に異論を唱えるのは長平ら海外のジャーナリストだけでない。サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)によると、在中国ドイツ大使のミヒャエル・クロース大使は、中国のネット規制はネット強国になろうとする目標の妨げになり、他国との関係にも影響すると指摘した。
 大使は会議には参加しなかったが、「大会で中国はネット強国になると自称しているが、ネット上の国をまたがった対話や交流がますます制限されている」と批判。そしてこのことは中国の科学、研究、イノベーションでの交流に影響し、新たなネット法規の下では「外国の専門家や家族にとって、中国は仕事や生活がますます困難な場所となる」と語った。
 SCMPによると、今回の大会でも、「ネットにも主権がある」との中国のネット政策に対し、厳しい声があったという。米中関係全国委員会(NCUSCR)のオーリンズ会長も中国は他国の関係でつけを支払うことになると述べ、ニューヨーク・タイムズを含め外国のニュースサイトを十把一からげに封鎖するのは、米国のエリートやメディアの中国に対する見方に疑いを生み、米中の他の問題にも影響する」と批判した。
 中国を大きな市場として受け入れざるを得ないアップルのようなIT企業が譲歩するのはそれなりの理由もあろうが、VPNアプリをアプリストアから排除するなど、中国のネット鎖国化に協力し、中国のネット市民から情報を得る手段を奪ったとしたら残念だ。

     
     アップルの創業者、故スティーブ・ジョブズが開発したパソコン、マッキントッシュの有名なCMでは、ジョージ・オーウェルが「1984」で描いた超管理社会に対抗し、ハンマーを持った女性が立ち向かっていくシーンがある。同社の現在の中国での立ち位置は、過去のこうした歴史を考えた場合、皮肉と言わざるをえない
 「彼らネット企業のトップは、目先の利益に目がくらんで正義を忘れ、専制権力と迎合しネットの前途を破壊しようとしている」―長平は厳しい表現で批判したが、中国式ネット管理のロジックとビジネスモデルに対抗し、自由な情報がやり取りできる空間を提供していくことも、彼らIT企業の社会的責任ではないか。中国式ネット管理のあり方にどう向かい合っていくか、智慧が求められている。
 
   

 

習近平時代のネット社会 「壁」と「微」の中国「網民」の反乱 ネットは中国を変えるか?

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古畑康雄・ジャーナリスト
   
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