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2009年7月   北京の魯迅旧居、取り壊しの危機に!?
   
   

魯迅旧居がある八道湾胡同(1)中国の文豪・魯迅(1881-1936)が数々の名作を生み出した北京の旧居が、取り壊しの危機に直面している!?
市内中心部に位置する、西城区の八道湾胡同11号院。昔ながらの街並みを残す「胡同」(フートン)と呼ばれる横町の一角に、その家はある。「四合院」という中庭を囲んで四方に建物を配した旧式の邸宅であるが、今では寄り合い住宅となり、かつての面影は薄らいでいる。
取り壊しは地域の再開発計画にともなうもので、2011年にはここに近代的な学校が建設される予定だという。しかし、魯迅はここに住んだ4年近くの間に『故郷』『阿Q正伝』などの数多くの名作を発表している。研究者のなかには「住民が移転したら、四合院はもとのように保存できるはず。学校は文化を継承することが務めであろう」と呼びかける人もいるという。 

   
 

■八道湾胡同を訪ねて

魯迅旧居がある八道湾胡同(2)北京の地図を開くと、中心部に「ゝ」の字形をした人工湖「什刹海」がある。その西側に延びる東西の大通り「西直門内大街」から「趙登禹路」に南下すると、左手に現れる最初の胡同がくだんの「八道湾胡同」だ。
「八道湾」という地名のとおり、鍵型に折れまがった細い小道を歩いていくと、そのうち東西に延びるいささか開けた通りに出た。ここら辺だろうかとキョロキョロしていると、近所の人だろう、ランニングシャツ姿のおじさんが「11号院かい、ここだよ」と親切なことに教えてくれた。「向こうに出られるから、中をのぞいて見たらいいさ」

おじさんの勧めに励まされながら、レンガ造りの小さな南門からそろそろと入ってみた。人ひとりが通れるくらいの道を残して、庭という庭、建物という建物に、後から増築されたのであろう、レンガ・コンクリート造りの簡素な住居が密集していた。
魯迅の時代は1つの大家族で住むのが基本であった「四合院」だが、こちらはまさに「大雑院」とも「雑院」ともいわれる寄り合い住宅。1949年の新中国成立後、人口の増加にともない数世帯が雑居するという住形態になったものだ。
「取り壊し」が伝えられた魯迅旧居(11号院)(1)狭い道には、洗いたての洗濯物がのれんのようにかけられていた。ひしめきあった家々からは夕げの仕度なのだろう、炒め物をする香ばしいにおいが漂ってきた。大きなエンジュの木陰では、カゴの小鳥も、飼い猫たちもまどろんでいた。こうした人情味あふれる風景も、やがて取り壊されてしまうのか……。
裏口を出ると、近所の人たちが寄り集まっていた。胡同の取り壊しの話でもちきりである。あるおじさんが手にしていた地元紙『京華時報』は「魯迅旧居の取り壊し計画」を大々的に伝えていた。「新聞は注目してくれるが、胡同の取り壊しはもう決まったこと。わしらも早晩、引っ越さなければならないよ」とおじさんはタメ息混じりに話していた。
複数の地元紙によると、八道湾の魯迅旧居には現在、約40から50の家族が暮らすのだという。

■胡同の取り壊し計画

「取り壊し」が伝えられた魯迅旧居(11号院)(2)ここ、西城区の「家屋取り壊し公告」が発表されたのは6月26日のこと。
大手金融機関があつまる区内の金融街の拡張プロジェクトにともない、移転を迫られた北京市三十五中学(中学・高校)の新しい移転先が「西直門内大街―趙登禹路―八道湾胡同―前公用胡同」にまたがる敷地になる。そこで、このエリアの取り壊しが、同区教育委員会による教育用地プロジェクトとして進められることになったのである。
三十五中学の新しい校舎は、敷地約4万3000平方メートルと、東京ドームにも匹敵する広さ。総工費は約6億元(1元は約14円)で、現在よりも6クラス多い全36クラス編成、校内には天文台も置かれるというモダンな設計になる予定だ。

八道湾胡同で見かけた「公告」の張り紙は「当地の機関と住民は、8月10日正午までに移転を済ませること」と伝えていた。
地元紙によれば、撤去の補償金は1平方メートル2万5000元ほどだというが、たとえ一家族が数十万元を手にしたところで、高騰した市街地の住宅を求めるのは難しい。かといって物件の安い郊外に移り住めば、出勤や通学などに支障がでる。
五輪をすぎて、なおも再開発が進む街・北京。
胡同や家屋の取り壊しも、依然として住民たちの悩ましい問題になっているようだ。

■図書室、閲覧室として開放へ

「取り壊し」が伝えられた魯迅旧居(11号院)(3)魯迅はこの八道湾胡同11号院に、1919年11月から1923年8月までの約3年9カ月の間、周一族で暮らしていた。魯迅の『故郷』『阿Q正伝』などの代表作や『或る青年の夢』(武者小路実篤)などの翻訳書は、ここで生み出されたものである。
11号院は四合院の大邸宅で、前院、後院、西跨院という3つの中庭を持つ「三進」式の造りであった。魯迅と母親、朱安夫人は前院に住み、弟で著名な文学者の周作人は後院に住んでいた。
魯迅の長男である周海嬰氏は、その著書『魯迅与我七十年』(邦訳『わが父魯迅』)で、八道湾旧居の保護には賛成しかねると述べている。
「あそこは北側の建物がもっとも良かったが、父はその恩恵を受けていない。八道湾旧居の保護は実質上、周作人の住まい“苦雨斎”の保護になる。だが、漢奸の旧居を国が保護するとでもいうのかね」(中国新聞網7月9日付、要旨。周作人は、日本占領統治下の北京で協力政権の閣僚職に就いたことから戦後逮捕され、「漢奸」といわれた。49年に釈放)

リニューアルした北京魯迅博物館これに対し、八道湾旧居の価値を認めるのは、北京の魯迅博物館の孫郁館長だ。立派な館内に保存された旧居(もとの西三条胡同)も現在、修復工事中である。
「後年はともかくも、周作人の五四運動(1919年)期の功績を否定することはできない。さらには魯迅の重要作品もあそこで生まれている。八道湾旧居は民国時代にもっとも知られた文化サロンであり、辛亥文化の要衝であった」(前述の中国新聞網より)
毛沢東、李大釗、蔡元培、郁達夫、銭玄同、胡適、沈尹黙らがいずれもここを訪ねており、ロシアの詩人エロシェンコも約1年半ここに暮らした。“五四”人物の足跡が、八道湾旧居にはびっしりと刻まれているという。
魯迅博物館は、これまで何度も八道湾旧居に“分館”を建てるよう検討したが、種々の原因から実現するにいたっていない。取り壊しのニュースを知った孫館長は、国家文物局や北京市の関係部門に急ぎ連絡をとっているところだという。

中国人民政治協商会議の北京市委員会(北京市政協)によると、2005年に市内(旧城4区)にある「名人故居(旧居)」308カ所を調査した結果、うち189戸が文物保護の対象リストに入っておらず、その半数近い97戸がすでに取り壊されていた。
また308カ所のおよそ4分の1が、保存状態のよくない「雑院」と化していたという(『新京報』7月14日付)。
復旦大学の中国語学部副教授(助教授)で、周氏兄弟研究者の張業松氏は、八道湾旧居の保護を強く訴えている。
「住民が移転したら、四合院はもとのように保存できるはず。五四運動90周年の今年、これは非常に意義深いこと。だが取り壊してしまえば、それで終わりだ。学校は文化を継承することが務めではないのか」(前述の中国新聞網)
世論の高まりもあってか、三十五中学でも完全な取り壊しは避けるよう検討中のようだ。同中学の朱建民校長は「学校の移転後、旧居は復元したうえで、図書室、閲覧室として残すつもりだ。学生や社会人が参観できるよう開放したい」(前述の『新京報』)と明らかにしている。
学校の新築工事は、来年1月から正式スタート。文物保護部門の具体案にしたがって、魯迅旧居の復元が進められる計画だという。

ともあれ、校内に復元保存されそうな魯迅の八道湾旧居。
胡同は取り壊されるが、その旧居はより開かれた文化遺産として、新たな歴史を刻んでいくのかもしれない。

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2009年7月9日~7月15日

     
第3位:『公務員筆記』

第4位:『晩間西紅柿減肥』

第5位:『自動自発(修訂版)』

第6位:『最好的医生是自己』

第7位:『盗墓筆記(伍)』

第9位:『藏地密碼7』

第10位:『巴黎没有摩天輪』
 

1.『明朝那些事儿(大結局)』(明朝それらのこと 完結編)
当年明月・著 中国海関出版社 2009年4月初版


2.『暮光之城:破暁』(トワイライト:Breaking Dawn)
ステファニー・メイヤー著(米) 張雅琳ほか訳 接力出版社 2009年5月初版版


3.『公務員筆記』(孟子の知恵)
王暁方・著 作家出版社 2009年6月初版


『駐京弁主任』『市長秘書』『外科医生』など社会派のヒューマンストーリーがいずれもベストセラーとなる作家・王暁方。
『公務員筆記』では、東州市政府弁公庁の総合二処を舞台に、「汚職一掃」闘争に直面した楊恒達ら一般公務員たちの運命を描く。「人の心の奥底に埋もれている危機感を、深くえぐり出した」とは本書の推薦文。
王暁方の作品が売れ続けるのも、それだけリアルで身近な物語だからなのかもしれない。


4.『晩間西紅柿減肥』(夜トマトダイエット)
唐沢明・著(日) 北方文芸出版社 2009年8月初版(奥付)


今年1月、日本のぶんか社から出版された話題書『夜トマトダイエット』の中国語版。
85万部の大ベストセラーとなった『朝バナナダイエット』の姉妹本だそうだが、「バナナ」の中国語版は『神奇巴娜娜!香蕉早餐減肥法』として今年7月、広西科学技術出版社から競い合うように出版されている。
『夜トマトダイエット』では、トマトを上手に摂取して、「美やせ+美肌」をめざしましょうと著者。「夜にトマトだけを食べれば痩せる」とススメているわけではないので、本書をよく読んで気をつけたいところだ。


 5.『自動自発(修訂版)』(原題『Willingness』)
エルバート・ハバード著(米) 陳書凱・編訳 天津科学技術出版社 2009年6月初版


 仕事の効率を説いた『ガルシアの手紙』で有名なエルバート・ハバード(1856~1915年)の自己啓発本。人に頼まれてではなく、自ら進んでやることの重要性を説いている。そのポイントは、仕事に対して「勤勉に」、会社に対して「敬意を払い」、社長に対して「忠誠を尽くし」、自分に対して「自信を持つ」こと。公務員やビジネスマンの“必読の書”であるという。中国の機械工業出版社から2004年に出版された本の改訂版。


6.『最好的医生是自己』(最良の医者は自分)
著洪昭光・著 科学出版社 2007年2月初版


著者の洪昭光氏は、中国衛生省の首席健康教育専門家。共著の『登上健康快車』(健康急行に乗る)が2002~03年、中国で大ベストセラーに。その後は「健康の使者」「健康伝道師」などと尊称されて、テレビや講演会でも引っ張りだこの著名人になっている。
本書では「日に八千歩」「八時間睡眠」「三食腹八分め」といった健康な体をつくるための“八字歌”をはじめ、適度な運動と“禁煙限酒”、ストレス発散と心のバランス保持など、とりわけ中年以降の世代にすすめたいヘルシーライフを紹介。
「健康は、大病院や名医だけには頼れない。健康の金のスプーンは自らの手中にあるのです。60歳で病気がなく、80歳で若々しく、リラックスして100歳に……」などと著者は述べている。 


7.『盗墓筆記(伍)』(墓盗掘ノート5)
南派三叔・著、中国友誼出版公司、2009年7月初版


今から50年前、墓あらしの盗賊が見つけた帛書(はくしょ=絹織物に書かれた書物)には、珍奇なまでの戦国古墓の位置が記されていた。だが盗賊たちは、不慮の事故でほぼ全員が犠牲となる。
50年後、帛書の秘密を暴こうと、盗賊の子孫の1人が仲間とともに古墓へ向かう。だが、奇妙な棺おけや青目キツネのしかばねなど、墓の中での不思議な事象にはばまれて……。
2007年、ネット上で一部が公開されるとともに、若者たちの間で爆発的な人気を呼んだ冒険ミステリー小説、その第5弾、第1シリーズの最終巻だ。


 8.『小団円』
張愛玲・著 北京十月文芸出版社 2009年4月第2刷


 9.『藏地密碼7』(チベット・コード7)
何馬・著 重慶出版社 2009年7月初版


チベット仏教1000年の秘史を尋ねる「百科全書タイプ」の長編小説。紀元838年、吐蕃ランダルマ王の「廃仏」により、いっさいの仏教信仰が禁止された。膨大な数の経典や仏像などが僧侶たちに埋蔵されたが、時は流れ、現代の考古学者や生物学者、特殊兵、密教修行者からなる探検隊が、秘宝のゆくえを追ってチベットの奥深くへと分け入る。
歴史、地理、科学といった角度からチベットの神秘のベールを剥がす本書は、中国のオンライン書店「当当ネット」「卓越ネット」で連続38週間、小説部門のベストセラー第1位に輝いた。シリーズ全体では、売り上げ合計が300万冊を超えたという。


10.『巴黎没有摩天輪』(パリには観覧車がない)
浅白色・著 北京燕山出版社 2009年6月初版


〈観覧車はたとえ最高点に達しても、無限に近づいたとしても、風景だってあなたのものにならない。1巡すれば、孤独になって観覧車から離れるだけ……〉。
都会で、ファッション誌の編集者として忙しい毎日を送るヒロイン・寧黙。イマ彼とはつかず離れずだし、ルームメイトはモデルをしながら、どこかの出口を探しているよう。すべては始まっているのに、すべての終りが見えない。まるで観覧車の中にいるように、彼ら彼女らの運命は、どんな終点にたどりつくのだろう……。
注目の女性コラムニストが描く、ライトでキュートな愛と青春の物語。 


 

 
     

■北京便り――おわりに
 
撤退が決まった第三極書局が入るビル「全品8掛」などという激烈な価格戦を繰り広げていた市内の民営ブックストア「第三極書局」が、現在の売り場から撤退することになったそうです。
北京のシリコンバレーと呼ばれる市内北西部・中関村のビルに約2万平方メートルという北京最大の販売スペースを誇っていた同書店。オープンしてから約3年、無理な経営がたたって、およそ5000万元(1元は約14円)もの損失を出したのだとか。
同業者の中には「この30年で最初の大型民営書店として期待していたが、残念だ。(大型書店だけに)適当な移転先を見つけるのも難しいだろう」といった哀れみの声もあるようです(『新京報』7月8日付)。
周辺書店との価格競争に破れてしまった第三極書局。読者の1人としても、残念な限りです。

※関連レポート
 「北京に激震か? 壮絶な価格競争」(北京便り2006年9月号)     
 「オンライン書店の隆盛、業界も四苦八苦」(北京便り2009年6月号)

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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