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2008年12月

 雨後のたけのこ? 人気のペット小説

      
   
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これも中国の都市部におけるペットブームの現れなのか――。最近、書店でとみに話題になっているのが、人と犬との温かなふれあいを描いた“ペット小説”である。
中国でブームを呼んだペット小説といえば、近年では2003年に日本語の原書から翻訳出版された『盲導犬クイールの一生』(中国語題『再見了,可魯 一只狗的一生』)。実話をもとにした盲導犬の生涯を、ほのぼのとしたモノクロ写真と平易なことばで描いた感動作だ。日本に続いて中国でも大ベストセラーになったのはもちろん、その後も関連書籍が次々と出版され、同一テーマの日本映画も公開されて“小Q熱”(クイール・ブーム)に沸いたのは今も記憶に新しい。
その第2次ブームともいうべき波が、ここへきて押し寄せている。日本でも各社から出版されて話題を呼んだ『犬と私の10の約束』を皮切りに、ディズニー映画「101匹わんちゃん」の原作本、全米ベストセラーとなった名作エッセイなどなど、ことばは悪いが“雨後のたけのこ”状態だ。ペット本ブームの実体を覗いてみると――。

   
 

bj200812_01■ 火付け役の『犬と私の10の約束』

北京の地元紙が、ブームの火付け役として注目したのが『我与狗狗的十個約定』(日本語題『犬と私の10の約束』)。
じつはこれ、中国では2つの出版社から2冊が同時期に翻訳出版されている。1つは天津教育出版社から今年10月に出版されたもの。2つ目は『与狗狗的十個約定』というほぼ同じタイトルで、今年11月に中信出版社から刊行されたものである。
内容もよく似ている。前者は、澤本嘉光・著の日本語同名タイトル本(毎日新聞社刊08年、日本ではサイトウアカリ名義で執筆)を、後者は、川口晴・著のこれまた同名タイトル本(文藝春秋刊07年)をそれぞれ原書としている。

幼い主人公アカリが母と交わした、犬を飼うにあたっての犬との10の約束。
「私と気長につきあってください」
「私にたくさん話しかけてください。人のことばは話せないけど、わかっています」
「私が死ぬとき、お願いです、そばにいてください。どうか覚えていてください、私がずっとあなたを愛していたことを」……

母の死を乗り越え、愛犬ソックスと共に過ごした10年間をやさしいことばで綴った感動の物語だ。「10の約束」の原型は作者不詳の「犬の十戒」という英語詩で、ここ数年、インターネットなどを通じて世界中に広まっていた。
その「十戒」を膨らませて、ストーリー化した『犬と私の10の約束』は、前者がCMプランナーの澤本氏による映画の原作、後者が映画プロデューサーで脚本家の川口氏の著作となっているが、じつは2人ともポプラ社から08年に出した同名タイトル本でも翻訳者として名を連ねている。複数の本と映画をリンクさせたメディアミックス型の販売戦略だったことは、容易に想像できようというものだ。
中国側の版元も「我々の版権契約には、いかなる問題もない」という声明をそれぞれ発表している。

たまたま同時期に、似たような翻訳本が登場したという形なのだが、中国の読者はそれにはさほど関心がないようす。『盲導犬クイールの一生』に続く「感動の涙を禁じえない、涙なくしては語れないペット小説」(『新京報』)として、話題をさらっているようだ。。  

bj200812_04■ 人気のわけはペットブーム

『犬と私の10の約束』を筆頭に最近、次々と出版されているペット小説は――。
ディズニー映画「101匹わんちゃん」の原作本『101只斑点狗』(天津教育出版社、日本語題『ダルメシアン―100と1ぴきの犬の物語』)、ある夫婦の半生とともに生きたラブラドール・レトリバーの物語で、全米ベストセラーになったという名作エッセイ『馬利,一只与衆不同的狗』(天津教育出版社、日本語題『マーリー―世界一おバカな犬が教えてくれたこと』)、3匹の犬との共同生活を描き、米紙ワシントン・ポストの06年最優秀図書に選ばれた『三狗生活』(天津教育出版社、『A Three Dog Life』)などなど、枚挙にいとまがないほどだ。

bj200812_05ペット小説の人気のわけは、ここ数年のペットブームが一因だろう。
北京市でも飼い犬の登録件数は年々増えて07年では70万匹余りと、前年比およそ15万匹の増加となった。登録には初年度だけで1000元かかるが、それでもブームに陰りの兆しはない。街を歩けば、中国原産のペキニーズやシーズーなどの小型犬を連れている人をよく見かけるし、ペット専門のホテルや喫茶店の出現はもちろん、ネット上ではペットのお見合いサイトまで登場している。
それに伴うペット小説の“爆発的”な刊行である。
中国のある出版関係者は「14~40歳位の最も成熟した読者層は、犬好きかどうかにかかわらず、人と犬とのふれあいに共鳴することができる。ペットを飼う人はとくに、自分を主人公に置き換えて、素直に感情移入できるのでしょう」(『新京報』)と分析している。
北京、上海あたりでは、会社員のストレスは先進国並みだという声を聞くが、ペットで癒され、ペット本で涙を流す。ビジネスや人とのつきあいに疲れた人々が、ペット小説に安らぎを求めている――。そんな時代がやってきているのかもしれない。

   
   
bestsellere  

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2008年12月4日~12月10日

     
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1.『手会説話―掌紋与心理自測』(手は話せる―手相と心理の自測)
郭王晨霞・著 北方文芸出版社 2009年1月初版


「手相診療の第一人者」といわれ、手相医学研究者の王晨霞さんが、北京テレビの医療番組「手相の秘密」を書籍化したもの。
 中国古来の手相学を基礎に、かつては迷信とされ“タブー”の領域だった手相と健康、寿命の関係などについて、臨床的に考察。手相の変化で病原を知り、効果的に医者にかかって治療をしようと提唱している。手相観察のレクチャーVCD付き。


2.『秘密』(ザ・シークレット)
ロンダ・バーン・著(豪) 謝明憲・訳 中国城市出版社 2008年11月初版


世界の成功者に共通するある「秘密」とは? 人生における幸せや富、健康を手に入れるための秘訣「引き寄せの法則」を説き明かしている。
原書は2007年、アメリカ、カナダ、オーストラリアで売り上げ同時1位に。全世界では1000万部に迫る驚異のベストセラーで、日本では『ザ・シークレット』として07年10月に角川書店から翻訳出版され、売り上げを伸ばしているという。


3.『盗墓筆記(肆)』(墓盗掘ノート4)
南派三叔・著 中国友誼出版公司 2008年11月初版


今から50年前、墓あらしの盗賊が見つけた帛書(はくしょ=絹織物に書かれた書物)には、珍奇なまでの戦国古墓の位置が記されていた。だが盗賊たちは、不慮の事故でほぼ全員が犠牲となる。
50年後、帛書の秘密を暴こうと、盗賊の子孫の1人が仲間とともに古墓へ向かう。だが、奇妙な棺おけや青目キツネのしかばねなど、墓の中での不思議な事象にはばまれて……。
2007年、ネット上で一部が公開されるとともに、若者たちの間で爆発的な人気を呼んだ冒険ミステリー小説、その第4弾だ。


4.『藏地密碼4』(チベット・コード4)
何馬・著 重慶出版社 2008年10月初版
 


5.『求医不如求己3』
中里巴人・著、江蘇文芸出版社、2008年11月初版


「医者に治療を頼むは、己(おのれ)を頼るに及ばない」というストレートなタイトルの健康指南書、その第3弾。
「胃経」「腎経」「肝経」など“生命を守る”という人体の14の経絡を説き明かしながら、自分でできるツボのマッサージなどを通して、自然治癒力を高め、クスリいらずで健康的に生きる方法を伝えている。


6.『小時代1.0折紙時代』(TINY TIMES 1.0)
郭敬明・著 長江文芸出版社 2008年10月初版


7.『平民皇帝朱元璋二十講』
毛佩琦・著 万巻出版公司 2008年11月初版


大人気のレクチャー番組、中国中央テレビ(CCTV)「百家講壇」の講座をまとめたもの。著者は、明代史を専攻する歴史学教授。
明の太祖・朱元璋(1328~1398)は、貧しい農民の生まれ。前漢の劉邦と同じように、農民から国を興した2人のうちの1人といわれる。
呪術集団の反乱「紅巾の乱」に参加して部将となり、1368年に帝位について大明を建国、中国を統一して、一元一世の皇帝独裁権を樹立した。その数奇な生涯と人としての魅力、民心を天心として仁義を重んじた独特の政策などについて、説き明かしている。


 8.『炒股就是炒心態』(株投資とは精神を保つこと)
庄恩岳・著、浙江人民出版社、2008年9月初版


空前の株式投資ブームで、中国の個人投資家は1億人を超えたという。しかし米サブプライムローン問題の影響もあって、中国の株価は年初から6割下落。中国の投資家のじつに90%が大損をしたというデータがあるそうだ。
そういう意味で、本書の出版はタイムリーだったのかもしれない。「精神状態が良好であれば、株投資力も上がる」として、株投資の失敗は往々にしてテクニックいかんではなく、精神的問題が原因であることを強調。投資にのめり込みすぎず、適当な距離を保ちながらいかにリスクを避けるかなど、投資技術や精神のあり方について具体的にレクチャーしている。


9.『沈思録』(Meditations)
マルクス・アウレリウス著 何懐宏・訳 中央編訳出版社


10.『杜拉拉昇職記』(杜拉拉のプロモーション)
曽李可・著 陝西師範大学出版社


 
 
     

bj200812-12■北京便り――おわりに

私ごとで恐縮ですが……私めの初のエッセイ・コラム集となる『物語北京』(北京を物語る)がこのほど、中国で出版されました。
中国国務院(政府)新聞弁公室が管轄する五洲伝播出版社から、日本語、中国語、英語3カ国語版の同時発売です。
本書は、おもに2005年からオリンピック直前までの北京のようすや人々の暮らしについて、私なりの視点と角度で綴ったものです。
それは北京に住む一介の日本人が、広大深遠な中国の一部を観察した漫文にすぎません。肩の凝らない気楽な読み物なのですが、よろしければ、ご笑覧いただけましたら幸いに存じます。
日本では、近く「東方書店」などでご購入いただける予定です。

そして激動の2008年もあと残りわずか。来年は中国建国60周年の節目の年にあたります。引き続きまして、来年もどうぞよろしくお願いいたします!

それでは皆様、よいお年を……。

 

 

文・写真 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

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