■難しい平凡さ、シンプルに描く
『佐賀のがばいばあちゃん』(徳間書店、2004年)は、漫才師の島田洋七氏が、少年時代に預けられた佐賀の「がばい(すごい)ばあちゃん」とのエピソードをつづったもの。日本でもベストセラーとなり、06年には映画化された。
その後、同書は翻訳されて、香港・台湾の「06年度華語(中国語)図書ランキング」で堂々の1位を獲得。大陸ではことし3月に、南海出版公司(海口市)から、簡体字版の『佐賀的超級阿嬷』が出版された。
戦後の厳しい時代に、子ども7人を育てたばあちゃんは、貧しくとも底抜けに明るかった――。
「この世の中、拾うものはあっても、捨てる物はない」「今のうちに貧乏しておけ。金持ちになったら、おいしいものを食べたり、旅行に行ったりと、忙しい」。ばあちゃんの言葉には、貧しさをはねのけて生きる、力強さと明るさがあった。
中国メディアは「作者はもっともシンプルな文字でばあちゃんを描き、それでいて、もっとも表現するのが難しい平凡さを描いた」と評している。本書は、シリーズ第2弾となる『超級阿嬷:笑着活下去』(『がばいばあちゃんの笑顔で生きんしゃい!』)との合訂版。 |
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■外見にかくされた、心の世界
これも人気のバロメーターだろうか。北京の書店で品薄状態がつづいているのが、高倉健さんの『南極のペンギン』(集英社、01年)だ。北京の新星出版社から『南極的企鵝』としてことし2月に出版されたが、3月現在、早くも手に入りにくくなっている。
健さんといえば、中国にも幅広い層のファンがいる。大ヒットした日本映画『君よ 憤怒の河を渉れ』や、張芸謀監督の映画『単騎、千里を走る。』などで知られるからだ。中国でイチバン有名な日本人俳優といっても、いいすぎではないだろう。
本書は、そんな健さんの「映画人生、始まって以来のモノローグ」(帯)。地元紙での書評の効果もあってか、注目を集めている。
「勇敢な男の外見にかくされた、豊かな心の世界が広がる」(『新京報』)――。唐仁原教久(とうじんばら・のりひさ)氏が描くほのぼのとしたイラストとも相まって、健さんにより親しみをおぼえる本として、話題を呼んでいるようだ。
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■ジャンルも作品も拡大
このほか、さいきん翻訳された日本書だけでも、話題ドラマの原作『野ブタ。をプロデュース』、川上弘美著の恋愛小説『センセイの鞄』、05年の「本屋大賞」を受賞した恩田陸著の『夜のピクニック』など、ジャンルも作品数も、翻訳を手がける出版社も拡大している。
各店に出まわっている、さいきんの翻訳本をまとめてみると――。
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『佐賀のがばいばあちゃん』
島田洋七著
徳間書店(04年) |
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『佐賀的超級阿嬷』
南海出版公司 07年3月 |
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『南極のペンギン』
高倉健著
集英社(01年) |
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『南極的企鵝』
新星出版社 07年2月 |
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『夜のピクニック』
恩田陸著
新潮社(04年) |
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『夜晩的遠足』
人民文学出版社 07年3月 |
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『ドラえもんDoraemon
Gadget cat from the future』
藤子・F・不二雄著
小学館(02年)……英語学習シリーズ |
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『哆啦A夢―英漢双語精華本』
二十一世紀出版社 07年3月第2刷 |
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『もしも私が、そこにいるならば』
片山恭一著
小学館(03年) |
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『倘如我在彼岸』
青島出版社 07年1月 |
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『哀しい予感』
吉本ばなな著
角川書店(88年) |
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『哀愁的預感』
上海訳文出版社 07年1月 |
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『落下する夕方』
江國香織著
角川書店(96年) |
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『沈落的黄昏』
北京出版社出版集団など 06年12月 |
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『命』
柳美里著
小学館(00年) |
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『命』
南海出版公司 06年12月 |
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『センセイの鞄』
川上弘美著
文藝春秋(04年・文庫) |
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『老師的提包』
南海出版公司 06年11月 |
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『野ブタ。をプロデュース』
白岩玄著
河出書房新社(04年) |
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『野猪大改造』
人民文学出版社 06年10月 |
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『魔界転生』
山田風太郎著
講談社(99年・文庫) |
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『魔界転生』
北岳文芸出版社 06年10月 |
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『項羽と劉邦』
司馬遼太郎著 新潮社(80年) |
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『項羽与劉邦』
南海出版公司 06年9月 |
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……など。 |
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これまで、日本の文学といえば、村上春樹氏、渡辺淳一氏などで占められたのだが、日本の人気ノベルズが次々と翻訳されている感をうける。翻訳を手がける出版社も大都市の北京、上海だけでなく、青島出版社(青島市)、南海出版公司(海口市)、北岳文芸出版社(太原市)などと広がっている。
3月下旬から、ほぼ毎日放送されている中国中央テレビ(CCTV)の特番「岩松看日本」(イエンソンが見る日本)では、渡辺淳一氏、村上龍氏へのインタビューが紹介された。日本を知るさいには「文学、本、作家」といった切り口も、なくてはならないものなのだろう。
中国のオリジナル書のなかにも、織田信長、徳川家康、武田信玄の人物像にせまる『日本戦国名将風雲録』(古人・著、中国工人出版社、07年2月)というマニアックな日本史シリーズが出てきている。アニメやゲームの影響からだが、日本への関心は確実に広がっているようだ。
日中の相互理解をうながす「本」の交流。これからも、どんな翻訳本が登場するか、楽しみにしたい。
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