中国・本の情報館~東方書店~
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2006年04月  個性派書店を訪ねよう!

     
     
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春4月。近年まれにみる黄砂がふきあれ、肌寒い日の続いていた北京だったが、ようやく日差しがやわらいできた。ふわふわとした柳の綿毛の柳絮(りゅうじょ)も、春風に運ばれている。
そうだ、「書を探しに、街へ出よう!」。聞けば、話題の〈個性派書店〉があるという。萎えた体に〈喝〉を入れ、陽光にさそわれるようにして、出かけてみた。

 
     

◆映画好きにはたまらない
〈藍羊書坊〉
市内北西部にある全国屈指の名門校・清華大学の西門から、北へ歩いて10分ほどの胡同(横町)のなかに、その書店はある。
「藍羊書坊」(BLUE GOAT BOOKS & CAFE)。
中国北方の伝統的住居である〈四合院〉を改造した小さな書店だ。あざやかな緑に塗られた扉をあけると、まずはこぢんまりとした中庭が目に入る。中背ながらも堂々と枝をひろげる柿の木に、ことしの若葉が萌えだしていた。

映画をテーマにした、北京でも珍しい書店である。店内は二間にわかれていて、向かって右が映画に関する書籍や小物、DVDなどを販売する部屋、左がカフェ兼サロンの部屋だ。
すっきりと陳列された書棚に目をうつすと、中国映画の代表作を紹介した『名家看電影1949-2005』(広西師範大学出版社)をはじめ、『薔薇の名前』の作者ウンベルト・エーコの『開放的作品』(新星出版社)、『フェリーニ対話録』(広西師範大学出版社)の翻訳本など、映画好きにはたまらないマニアックな本がならぶ。

「自分が好きな本を集めたのです。一般書店で売るようなベストセラーや人気雑誌は置いていませんね」と店長の景彦培さん(36歳)。
「日本といえば、なんといっても黒澤明監督。それに木下恵介監督、今村昌平監督。三里塚闘争を正面から描いたドキュメンタリー映画『三里塚の夏』の小川紳介監督。さいきんでは、映像が美しい北野武監督の『HANA-BI』も好きですね」
さすがは〈通〉だ。日本映画についても、ひとしきり薀蓄の深さを示してくれた。

北京の美術系大学を卒業後、めざましく経済発展する中国南方の広州、深圳へわたり、高級ホテルの設計士として活躍していた。だが〈映画好き〉の夢はどうしても捨てきれなかった。「監督にはなれっこないけど、映画にかかわる楽しい仕事がしたかった」という。
北京にもどり、2000年に「藍羊書坊」をオープン。数十万元(1元は約15円)をはたいて、思うがままに賃貸四合院の内装に凝った。カフェの壁をサーモン・ピンクに塗りなおし、中国のロック歌手・崔健(ツイ・ジエン)や革命家チェ・ゲバラのパネルを飾った。ゆったりとしたソファーを置いて、だれしもが気軽に立ち寄り、語り合えるふんいきを大切にした。

「積極的な宣伝はなにもしていないんです。それでも新聞や雑誌が少しずつ取り上げてくれて、ネットでも紹介された。列車待ちの大連の人が、はるばる訪ねてくれたこともある。夕べも映画好きが集まって、遅くまで語りあっていましたね」

映画関係者や熱心なファンに支えられての、細々とした経営だという。
「書店に造詣のふかい台湾の作家・鍾芳玲さんは『書店はロマン。金儲けはできない』といっていますが、まったくその通りですね(笑)。ここも簡素な建物で、家賃がわりに安いのでやっていける。〈個性派書店〉〈テーマ書店〉と世間にもてはやされますが、友人が開いていた〈存在書廊〉などいくつかの個人書店は、経営難でつぶれてしまった……」

そうはいっても「藍羊書坊」は、次なる展開を見すえている。友人の支援もあって、5月には市内西部の「中華世紀壇」地下ギャラリーに、分店のスペースを構える準備をすすめているのだ。中国中央テレビ(CCTV)の社屋にも近く、テレビや映画の関係者がつどいやすい絶好のロケーションである。
「もちろん、日本からのお客様も大歓迎ですよ!」。まじめそうな口元に、笑みがこぼれる。

ソファーに座り、店長のおすすめであるアメリカの女性思想家、故スーザン・ソンタグ著の『論撮影(写真論)』(湖南美術出版社)をひもといてみる。おだやかに流れるBGMは、ローゼンバーグ・トリオによるギター・コレクション。古い木枠の窓からは、あたたかな春の光が降りそそいでいる。ついつい長居をしたくなる、落ち着いた空間である。
自分好みのスペースと、映画と本と仲間たち……。店長のこだわりがこの店には詰まっているし、それを求めて熱心なファンが集まるのだろう。

書坊の魅力をあらわすかような名言が、店のチラシに刷りこまれていた。
「天国とは、図書館のようなところ」
「暮らしのなかに映画がないのは、家庭のなかに鏡がないようなもの」

秋になると、柿の実が鈴なりになり、錦のような紅葉が中庭を明るくいろどる。そんな風景も、店長のお気に入りであるという。

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◆藍羊書坊
北京市海淀区水磨新区3号(清華大学西門を北へ約200メートル、2つめの曲がり角を右折してすぐ)
TEL:(010)6265-5069
春節休暇をのぞいて年中無休 10:30~22:30
エスプレッソ/モカ(1杯)12元、青島ビール(小びん1)8元、緑茶(急須1)20元ほか

◆芝居に関することなら
〈戯劇書店〉
北京の繁華街・王府井大街を1キロほど北へ進むと、新劇のシアター「首都劇場」がある。なんでも今年、創設50周年を迎えるという老舗のシアターである。
この劇場に併設されているのが「戯劇書店」だ。
演劇、舞踊、評論、シナリオ、DVDなど、およそ芝居に関するものなら、一通りはそろっている。老舎の「茶館」などの名作DVDは、各年代の上演が収められたもの。演出や表現の違いがそれぞれに楽しめそうだ。
ここでは、創設50年を記念して編まれた写真集『首都劇場1956-2006』、雑誌『2006芸術評論』などを購入。この日は芝居を観のがしたけれど、芝居を観るならここに立ち寄り、感動を倍にして帰るというのもいいかもしれない。
北京市東城区 王府井大街22号 首都劇場内
TEL:(010)6524-6789(内線)8029
営業:月曜休業、火~日曜 14:00~19:30(開演日は舞台終了まで)

◆広告業者ごひいきの
〈龍之媒広告文化書店〉
市内東部の繁華街、東直門や朝陽門にほど近く、地下鉄「東四十条」駅を降りてすぐのオフィスビル内にある広告の専門書店だ。
前身は1995年創立の「北京広告人書店」。現在は、北京の本部をはじめ、上海、広州、西安、南京、成都、長沙に支店をもつ、広告関係では「中国最大規模」の書店だという。
アンテナショップでもある北京店は、小さいながらも広告学理論から、管理、営業、デザイン、メディア、クリエーションなどの専門書籍や雑誌がずらり。時代の流れに敏感な専門業者がよく訪れるという。
店舗を構えた都市であれば、オンラインショップでも、電話やファックス、メールでも、お好みの本を注文することができる。
北京市東城区 東直門南大街 華普花園A座205室
TEL:(010)8409-4096、8409-4098
営業:春節休暇をのぞいて年中無休 9:00~20:00
オンラインショップ:http://www.longmei.com.cn/

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三聯韜奮図書中心(三聯書店) (北京市東城区美術館東街22号)
2006年4月10日~4月16日

     
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1.『世界博物館巡礼』(世界の博物館巡礼シリーズ)
曽広植総編集 大地地理文化科技事業股份有限公司


かつて講談社から出た「世界の博物館」シリーズ(千足伸行・監修)が、台北で2001年に翻訳出版されたもの。北京の三聯書店では、低価格でバラ売りされていて人気を集めていた。
これは南仏の古都・アルビの「ロートレック美術館」の特集号。「ムーラン・ルージュ」などのポスター作品で知られるロートレックの代表作や、不遇の生涯などが紹介される。


2.『大地瑰宝』(世界遺産シリーズ)
田麗卿主編 大地地理文化科技事業股份有限公司


台北で2001年に出版された旬刊「世界遺産シリーズ」は、世界遺産リストに登録された約700カ所のうち160カ所を厳選、1冊1テーマでグラビア誌としてまとめたもの。三聯書店では、ベストテン1位の博物館シリーズとともに、好評を博していた。


3.『兄弟』(下)
余華著 上海文芸出版社 2006年3月初版


『活着』(生きる)などのベストセラーで知られる人気作家の10年ぶりの新作。昨年8月に出された上巻につづく、ファン待望の下巻の登場だ。
江南地方に生まれた異父兄弟の数奇な運命が、“文革”と現代の相反する2つの時代を背景に、織りなされてゆく。愛と血縁、歴史の真実にせまる重厚なおもむきの大河小説。


4.『吃主儿』(美食家)
王敦煌著 生活・読書・新知三聯書店 2006年2月第2刷


筆者の父親、文物学者の王世襄氏、そして古くからの雇い人である玉おじさん、張おばさん。本書はこの3人に取材した、昔懐かしい北京の家庭料理をひろいあつめた食のエッセイ。
油炒めの味噌をかけた「ジャージャンメン」、旧暦の12月8日に食するもち米粥の「臘八粥」(ろうはちがゆ)、緑豆のおからで作る「麻豆腐」、牛の筋肉にニンジン、じゃがいも、ダイコン、キャベツなどを入れて煮こんだスープ「紅菜湯」など、読んでいるだけでも涎が出そう。素朴ながらも贅沢な、手づくり家庭料理の奥義が語られている。


5.『老北京風俗地図1936』
学苑出版社 2006年3月第7刷


中華民国25年(1936年)の「北京風俗地図」の復刻版だ。国籍は定かでないが、当時北京に暮らしていた外国人フランク・ドーン氏が、英語表記入りのイラストマップとして作成したとされている。
中心部をとりかこむ堅強な城壁のようす、各国国旗がはためく東交民巷の大使館区、ラクダやロバを自在に操る行商人、東安市場や西単のにぎわいなど、当時の暮らしの息吹までもが伝わってきそう。いまに残る地名と比べながら眺めるのも楽しそうだ。


6.『説園』(庭園論)
陳従周著 同済大学出版社 2003年2月第8刷


上海の理工系大学、同済大学の出版社による造園についての理論書。初版本が1984年と約20年にわたり支持されており、学術書としてはもちろん、その流麗な文章から文学作品としても親しまれている。
本書には、中国古代の造園図32枚と英訳文も付いている。中国の造園芸術にふれたい人や、庭園建築、観光業の関係者らの参考になるという。


7.『这里是北京』(ここが北京)
黒薇薇ら責任編集 華芸出版社 2006年1月初版


北京テレビ(BTV)9チャンネルの文化番組「这里是北京」の放送1周年を記念して、その内容を1冊の本にまとめたもの。オリンピックを迎える地元メディアとして「北京の歴史文化や、現代文明を広く伝えること」が目的だという。
〈北京の記憶〉〈博物館の宝典〉〈北京発見〉の3つのコーナーに分かれており、〈北京の記憶〉では「永定門の再建記」「(最後の皇帝)溥儀」「(宦官)李蓮英」など、〈博物館の宝典〉では「大覚寺」「白塔寺」「老舎記念館」など、〈北京発見〉では、「北海公園の迎春文化祭」「故宮・琉璃瓦の複製」、それに伝統的な民俗風物や食べ物など、知的好奇心をそそるようなレアな情報が満載。カラー写真やアクセスマップが豊富なので、観光ガイドとしても楽しめるだろう。


8.『順生論』
張中行著 中華書局 2006年3月北京第3刷


北京大学を卒業後、教職をへて人民教育出版社で長年、編集の仕事に従事してきた著者が、40年にわたり書きためていた「人生論」をまとめたもの。本書は1993年に、中国社会科学出版社から出版された同名タイトル本の復刻版だ。文学、歴史、古典、仏教学、哲学に造詣が深く、人呼んで「雑学家」の著者が、「存在」「快楽」「平等」「道徳」「恋情」などについて縦横無尽に語りつくす。


9.『温故(之七)』
劉瑞琳主編 広西師範大学出版社 2006年3月初版


孔子の「温故知新」をモットーとして、幅広い分野における作家や学者、文化人の講演、論文を収めている。
その第7巻となる本書には、現代画家の第一人者、陳丹青氏の「北京の魯迅記念館における講演」、2年ほど前のベストセラー『往事并不如煙』(往事は煙に及ばず)が処分を受けて、しばらくは〈雲隠れ〉していたようすの章詒和さんの論文「(京劇俳優)言慧珠の往事」など、貴重な作品が収められている。


10.『品人録』
易中天著 上海文芸出版社 2006年4月第11刷


アモイ大学教授の著者が、中国正史から説きあかした歴史的人物の評論集。項羽、曹操、武則天、海瑞、雍正らが中国史におよぼした功罪を再検証する。

 
   
     

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先ごろ北京を襲った大量の黄砂は、例年よりいささか時期が遅れたせいでしょうか、春先をつげる柳絮とともに乱れ飛んでいたさまは、まさにこの世の〈奇観〉でした。
さいきんの新聞を開けば「外出を控えて、水分を多めにとること」「お年寄りは、朝の戸外体操をしばらく休んで」「サングラスや帽子、スカーフの売り上げが伸びる」「黄砂がエアコン業者に商機をもたらす」など、その影響や対策にふれた記事が少なくありません。
長い冬が去り、ようやく迎えた北京の春ですが、ダイナミックな季節の変化にはいつもながらに驚かされます。

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

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