1.『世界博物館巡礼』(世界の博物館巡礼シリーズ)
曽広植総編集 大地地理文化科技事業股份有限公司
かつて講談社から出た「世界の博物館」シリーズ(千足伸行・監修)が、台北で2001年に翻訳出版されたもの。北京の三聯書店では、低価格でバラ売りされていて人気を集めていた。
これは南仏の古都・アルビの「ロートレック美術館」の特集号。「ムーラン・ルージュ」などのポスター作品で知られるロートレックの代表作や、不遇の生涯などが紹介される。
2.『大地瑰宝』(世界遺産シリーズ)
田麗卿主編 大地地理文化科技事業股份有限公司
台北で2001年に出版された旬刊「世界遺産シリーズ」は、世界遺産リストに登録された約700カ所のうち160カ所を厳選、1冊1テーマでグラビア誌としてまとめたもの。三聯書店では、ベストテン1位の博物館シリーズとともに、好評を博していた。
3.『兄弟』(下)
余華著 上海文芸出版社 2006年3月初版
『活着』(生きる)などのベストセラーで知られる人気作家の10年ぶりの新作。昨年8月に出された上巻につづく、ファン待望の下巻の登場だ。
江南地方に生まれた異父兄弟の数奇な運命が、“文革”と現代の相反する2つの時代を背景に、織りなされてゆく。愛と血縁、歴史の真実にせまる重厚なおもむきの大河小説。
4.『吃主儿』(美食家)
王敦煌著 生活・読書・新知三聯書店 2006年2月第2刷
筆者の父親、文物学者の王世襄氏、そして古くからの雇い人である玉おじさん、張おばさん。本書はこの3人に取材した、昔懐かしい北京の家庭料理をひろいあつめた食のエッセイ。
油炒めの味噌をかけた「ジャージャンメン」、旧暦の12月8日に食するもち米粥の「臘八粥」(ろうはちがゆ)、緑豆のおからで作る「麻豆腐」、牛の筋肉にニンジン、じゃがいも、ダイコン、キャベツなどを入れて煮こんだスープ「紅菜湯」など、読んでいるだけでも涎が出そう。素朴ながらも贅沢な、手づくり家庭料理の奥義が語られている。
5.『老北京風俗地図1936』
学苑出版社 2006年3月第7刷
中華民国25年(1936年)の「北京風俗地図」の復刻版だ。国籍は定かでないが、当時北京に暮らしていた外国人フランク・ドーン氏が、英語表記入りのイラストマップとして作成したとされている。
中心部をとりかこむ堅強な城壁のようす、各国国旗がはためく東交民巷の大使館区、ラクダやロバを自在に操る行商人、東安市場や西単のにぎわいなど、当時の暮らしの息吹までもが伝わってきそう。いまに残る地名と比べながら眺めるのも楽しそうだ。
6.『説園』(庭園論)
陳従周著 同済大学出版社 2003年2月第8刷
上海の理工系大学、同済大学の出版社による造園についての理論書。初版本が1984年と約20年にわたり支持されており、学術書としてはもちろん、その流麗な文章から文学作品としても親しまれている。
本書には、中国古代の造園図32枚と英訳文も付いている。中国の造園芸術にふれたい人や、庭園建築、観光業の関係者らの参考になるという。
7.『这里是北京』(ここが北京)
黒薇薇ら責任編集 華芸出版社 2006年1月初版
北京テレビ(BTV)9チャンネルの文化番組「这里是北京」の放送1周年を記念して、その内容を1冊の本にまとめたもの。オリンピックを迎える地元メディアとして「北京の歴史文化や、現代文明を広く伝えること」が目的だという。
〈北京の記憶〉〈博物館の宝典〉〈北京発見〉の3つのコーナーに分かれており、〈北京の記憶〉では「永定門の再建記」「(最後の皇帝)溥儀」「(宦官)李蓮英」など、〈博物館の宝典〉では「大覚寺」「白塔寺」「老舎記念館」など、〈北京発見〉では、「北海公園の迎春文化祭」「故宮・琉璃瓦の複製」、それに伝統的な民俗風物や食べ物など、知的好奇心をそそるようなレアな情報が満載。カラー写真やアクセスマップが豊富なので、観光ガイドとしても楽しめるだろう。
8.『順生論』
張中行著 中華書局 2006年3月北京第3刷
北京大学を卒業後、教職をへて人民教育出版社で長年、編集の仕事に従事してきた著者が、40年にわたり書きためていた「人生論」をまとめたもの。本書は1993年に、中国社会科学出版社から出版された同名タイトル本の復刻版だ。文学、歴史、古典、仏教学、哲学に造詣が深く、人呼んで「雑学家」の著者が、「存在」「快楽」「平等」「道徳」「恋情」などについて縦横無尽に語りつくす。
9.『温故(之七)』
劉瑞琳主編 広西師範大学出版社 2006年3月初版
孔子の「温故知新」をモットーとして、幅広い分野における作家や学者、文化人の講演、論文を収めている。
その第7巻となる本書には、現代画家の第一人者、陳丹青氏の「北京の魯迅記念館における講演」、2年ほど前のベストセラー『往事并不如煙』(往事は煙に及ばず)が処分を受けて、しばらくは〈雲隠れ〉していたようすの章詒和さんの論文「(京劇俳優)言慧珠の往事」など、貴重な作品が収められている。
10.『品人録』
易中天著 上海文芸出版社 2006年4月第11刷
アモイ大学教授の著者が、中国正史から説きあかした歴史的人物の評論集。項羽、曹操、武則天、海瑞、雍正らが中国史におよぼした功罪を再検証する。
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