中国・本の情報館~東方書店~
サイト内検索
カートを見る
ログイン ヘルプ お問い合わせ
トップページ 輸入書 国内書 輸入雑誌  
本を探す 検索 ≫詳細検索
東方書店楽天市場店「東方書店plus」
楽天市場店 東方書店plus
 
各種SNS
X東方書店東方書店
X東京店東京店
X楽天市場店楽天市場店
Instagram東方書店東方書店
Facebook東京店東京店
 
Knowledge Worker
個人向け電子書籍販売
 
BOOK TOWN じんぼう
神保町の書店在庫を横断検索
 
日本ビジネス中国語学会
 
北京便り
上海便り
ネット用語から読み解く中国
 
 
 

2005年10月  “ハリポタ”を追い越せ

  ──中国の児童書事情   
     

bj200510_01

世界的なベストセラー『ハリー・ポッター』の中国語訳が2001年に売り出されてから、中国の児童書業界の"地図"も大きく塗りかえられている。出版業の規制緩和で、それまで幅をきかせていた専業出版社だけでなく、出版大手も児童書分野に版図をひろげ、さらには"ハリポタ"に代表される外国の児童文学の翻訳版も中国に勢力をのばしている。
さながら、群雄割拠の時代をむかえた中国の児童書業界。「"ハリポタ"に追いつき、追い越せ」とばかりに、オリジナル作品の発掘と販売に力を入れているのだが、激しい競争に打ち勝つためには、さまざまな課題も残されているようだ。

 

 
     

bj200510_12このほど開かれた「2005 全国児童出版社ブックフェア」の報道などから、最近の児童書事情を追ってみると――。

文芸評論の週刊紙『文学報』(9月15日付)が、同ブックフェアで得た情報によると、現在、中国国内には約580社の出版社があり、そのうち児童書専業の大手が35社だが、児童書を手がける出版社は専業を含めて520社に上るという。じつに国内出版社の9割が、児童書を世に送りだしていることになる。
"小皇帝"と称されて、チヤホヤされる一人っ子をターゲットにした市場競争は激しさを増し、「伝統的な専業は、全面的な再構築を迫られるだろう」と『文学報』では指摘している。児童書専業には、まさに受難の時代が到来しているのである。

しかも、専業で突出した業績を上げているのは、トーマス・ブレツィナ著(墺)の冒険少年ものがたり『冒険小虎隊』(『タイガーチーム事件簿』)シリーズを翻訳出版している「浙江少年児童出版社」と、R.L.スタイン著(米)の子ども向けホラー小説『鶏皮疙瘩』(『グースバンプス』)シリーズの翻訳ものや、小学生の馬小跳(マー・シャオティアオ)が大暴れする『淘気包馬小跳』(わんぱく少年・馬小跳)シリーズを出している「接力出版社」の2社に限られ、そのほかは「並」の業績……。同2社にしてみても、売れすじ本が『淘気包馬小跳』のほかは、外国ものの"焼き直し"なのだ。

 

bj200510_13折しも、10月15日には"ハリポタ"第6巻の中国語版『哈利·波特与"混血王子"』(ハリー・ポッターと混血のプリンス)が国内書店にお目見えし、販売直後からベストセラーとなっているが、この"ハリポタ"シリーズの翻訳出版を2001年から手がけているのは、「人民文学出版社」。老舗の大手で、児童書専業ではないが、"ハリポタ"第1~5巻をそれぞれ100万部以上売り上げて、圧倒的な存在感を示している。
また、2003年の新設後、海外出版社との版権ビジネスでおよそ10万米ドルを売り上げたという「華東師範大学出版社・少年児童部」の例もあるとおり、非専業出版社(部門)や民営企業、編集プロダクションといった新しい勢力が、児童書のテリトリーでも台頭している。

外資系企業も、見過ごせない競争相手になっているという。これまでにも日本の講談社や米最大手の出版社・ハーパーコリンズが、中国にそれぞれ営業拠点を設けている。世界貿易機関(WTO)に加盟し出版業を開放するにしたがって、中国の児童書分野の"勢力図"も大きく塗り替えられているのだ。

外国ものが席巻しているばかりではない。中国人作家という"資源"も不足している。前述の『馬小跳』シリーズは、2003年7月初版の第1作「貪玩老爸」(遊び好きなパパ)から、今年8月初版の「巨人的城堡」(巨人のとりで)まで全14作が出されているが、この作者である楊紅櫻(ヤン・ホンイン)がもう、ひっぱりだこなのだ。
接力出版社の『馬小跳』シリーズをはじめ、「明天出版社」の『楊紅櫻作品珍蔵版』、「北京少年児童出版社」の『楊紅櫻精品賞析』、「二十一世紀出版社」の『馬小跳作文シリーズ』などなど、1人の作家をいくつもの社が追いかけている状態。人気作家は、各社がこぞって獲得したい"不動の宝物"(ほうもつ)だ――といわれるが、裏を返せば、児童文学作家の数には限りがあるということだろう。
シリーズものは作家の特長を十分に引き出せるものの「(売れるまでは)コストが高くつき、リスクも大きい」と指摘するのは、同ブックフェアを取材した『中華読書報』(9月7日付)だ。そこからは、各社ともにリスクや賭けを回避して、外国産ベストセラーや国産の売れすじ本に頼ってしまうという安易な構造が見えてくる。

業界関係者は「優良な児童出版社であるかどうかの判断は、オリジナル文学を作るかどうか、すぐれたオリジナル児童書があるかどうかで決まる。豊かな出版資源のない出版社なら、ただ輸入書に頼り、書籍コード(国内出版許可コード)で外国側と提携するだけ。出版社は、ただの版権代理業者になってしまう」(『文学報』)と語り、中国のオリジナル作品の発掘・普及に、いっそう力を入れるべきだと呼びかけている。

さまざまな課題は残るが、中国の児童書産業にはまだ発展の余地もある。
同ブックフェアの報告によれば「2003年、英・米国の書籍売上数のうち、児童書の売上数はそれぞれ全体の20%。中国は11.46%で、売上高は全体の8.32%」であった。これに対し、中国側は「欧米などの成熟した国の図書市場は、つまりは中国図書市場の未来を示すものだ」として、中国の児童書産業の発展に期待をよせる。

前述の『中華読書報』は「本来、もっとも市場化を徹底しなければならない書店が公共図書館のようになり、多くの社会的責任を負わされている。その一方で、社会的機能を果たさなければならない現在の公共図書館には失望させられることも多く、時には営利目的のブックストアーにいるような錯覚にとらわれる」と嘆く。
書店にとって損耗率の高まりは頭の痛いところだが、これもお客様サービスの一環として「公共図書館」に代わる役目をはたす覚悟でいるのか、それとも徹底した経営理念を追及し、タダ読み客を排除するか。はたまた"貧血"にあえぐ地方図書館の前途はどうなる?――。
「図書は文化の船であり、図書館は図書の船である」(『光明日報』)というけれど、その"文化の船"と"図書の船"が一体どこへ向かうのか。じつに気になるところではある。

 

bj200510_14ブックフェアで注目を集めたオリジナル児童文学も、少なくなかったようだ。「中国少年児童新聞出版総社」の『児童文学』蔵書シリーズ、「中福会出版社」の『看看叢書』『抱抱叢書』、二十一世紀出版社の『中国大幻想シリーズ』など。前述の『中華読書報』によれば、「推理、ホラー、ユーモア、ファンタジーものの小説が、中国(少年少女)読者の新しい注目点になっている」という。

では、専業出版社にとっての未来も明るいのだろうか? これについて児童書専門の大手、浙江少年児童出版社の陳純跃・社長は、次のように語る。
「専業出版社の優位性は"専業"の二文字につきる。専業の編集出版チーム、専業の作家資源、専業の販売ルートで、これらは非専業出版社には短期のうちに追い抜かれない。あくまでも専業は児童書市場のリーダーであり、主力であって、非専業は追随者である。だが、市場競争の激しいこんにち、専業がリーダーや主力であり続けられるかどうか? それは、専業が積極的に体制改革と集約化を行うかどうかにかかっている……」(『文学報』)

専業・非専業であれ、外資系であれ、児童書の出版社が中国市場で激しいデッドヒートをくりひろげるのは必須。しかし、そうした中で各社がしのぎを削るのならば、中国における児童書も、より洗練された良書となるに違いないだろう。

 
   
     
     
  (総合、三聯書店の出版物以外)
三聯韜奮図書中心(三聯書店) (北京市東城区美術館東街22号)
2005年10月17日~10月23日
     
bj200510_05

bj200510_09

bj200510_08

bj200510_07

bj200510_06

bj200510_04

bj200510_03

bj200510_02
 

1.『哈利・波特与"混血王子"』 (ハリー・ポッターと混血のプリンス)
J.K.ローリング著(英)/馬愛農、馬愛新訳 人民文学出版社 2005年10月初版


10月15日から中国の各書店にお目見えした"ハリポタ"シリーズ第6巻の中国語版。発売後まもなくベストセラーの首位の座を獲得した。世界で同時発売された7月16日からは、中国でも英語版(原書)が売り出されている。


2.『老照片(第四十三輯)』(古い写真 第43集)
馮克力責任編集 山東画報出版社 2005年10月初版


著名人や読者から寄せられた20年以上前の写真と、それを紹介する文章(散文、解説など)で、中国の近現代を見つめ直そうとする隔月誌。


3.『従歴史看管理』(歴史から管理を見る)
許倬雲講演 広西師範大学出版社 2005年8月初版


2003年に北京大学光華管理学院で行われた歴史学者・許倬雲氏の講演をまとめたもの。商、周の時代から清代末期まで、中国の歴代王朝が築き上げてきた管理システムの精華を、現代のビジネス戦略に生かそうと提唱する。
漢代から清代までの管理構造モデルや、封建制度(連鎖型ネットワーク)から理藩制度(連盟型ネットワーク)までの管理モデルなどが語られる。


4.『随想録』
巴金著 作家出版社 2005年10月初版


今年10月17日に100歳で亡くなられた中国の文豪・巴金氏(中国作家協会主席)が、1970年代から80年代にかけて書きためた随想録(「随想録」「探索集」「真話集」「病中集」「無題集」)を復刻・合本したものだ。
日中戦争の時には反日闘争に参加したという巴金氏だが、本書の中には「『望郷』(サンダカン八番娼館 望郷)を語る」「井上靖先生への答え」「『随想録』日本語版序」「訪日から帰って」など、日本との深い交流をしめす随筆も収められている(邦訳は筑摩書房より刊行)。
北京では最近、書店に巴金氏追悼の特別コーナーが設けられたり、国家図書館で特別展が開かれたりと、この国民的作家をしのぶ催しが続いている。


5.『我的書房』(私の書斎)
董寧文編 岳麓書社 2005年5月初版


現代中国の作家、学者、編集者、書画家ら60人の書斎を、本人の寄稿と写真とともに紹介している。
「中国の読書人は、自分の書斎に典雅な名前をつけたがる」という、作家で脚本家の黄裳氏は、その書斎に「断簡零篇室」「夢雨斎」「草草亭」「来燕榭」などという名前をつけて親しんできた。「じっさいは書斎といえども、何もない。寝室に机とイスがあるだけなのだ……」(黄裳氏)。この本には、中国の文人の家をふらりと訪れ、知識と創造の宝庫である書斎をのぞくような楽しさがある。


6.『母親楊沫』
老鬼著 長江文芸出版社 2005年8月初版


青春小説『青春之歌』、長編小説『東方欲暁』などで知られる中国の女流作家・楊沫(1914-95年)の波乱の生涯を、没後10年にあたり、息子の老鬼が掘り起こした伝記物語。
『青春之歌』は58年に出版されて大ベストセラーになり、翌59年には映画化されたが、"文革時代"の影響もあり「プチブルの情調に満ちている」「知識分子の改造課程が描かれていない」などとして批判された。71年に"名誉回復"した楊沫は、全人代常務委員などを歴任。『芳菲之歌』『英華之歌』などの小説を次々と世に送りだした。
「人間には欠点があるし、内心には健全でないものもある。……(そんな)真実の母の姿を現したかった」と著者は語る。


7.『老照片(第四十二輯)』(古い写真 第42集)
馮克力責任編集 山東画報出版社 2005年8月初版


8.『華麗血時代:両晋南北朝的另類歴史』(両晋南北朝のもう一つの歴史)
梅毅著 陝西師範大学出版社 2005年10月初版


両晋南北朝(265-589年)は、劇的な変化が起こった中国の動乱期だが、その一方で思想の解放期でもあり、唯美的な時代であった、と著者は語る。「喜劇がいかに悲劇になったか――白痴皇帝・晋の恵帝時代の"八王の乱"と西晋の衰亡」「もっとも人々から惜しまれた(十六国・前秦の)英雄・苻堅大帝」など、その緻密な研究の成果から、知られざる歴史的エピソードを今に明かす。


9.『李叔同説仏』
李叔同著/豊子愷挿絵 陝西師範大学出版社 2005年3月第8刷


近代中国に絵画や演劇などの西洋文化をもたらした文化人であり、また、仏教戒律の研究などに力を注いだ李叔同(弘一大師、1880―1942年)の説法をまとめた復刻版。「福を大切にする」「労働に慣れる」「戒律をもつ」「自尊心をもつ」(青年仏徒が注意すべき4項)など、やさしくわかりやすい教えが説かれている。弟子の文人画家であった豊子愷のカラー挿絵も美しい。
昨年はまた、中国の実力派俳優・濮存昕(プー・ツンシン)主演で、李叔同の生涯を描いた映画『一輪明月』が公開された。自らを厳しく律した李叔同の生き方が今、改めて注目されているようだ。


10.『江湖叢談』(旅芸人の書)
連闊如著 当代中国出版社 2005年9月第2刷


連闊如(1903-1971年)は『三国志』や『水滸伝』の物語を得意とし、それを長編の講談作品にまとめた中国の著名な評書芸術家(講談師)だ。本書は、連闊如が20~30年代に新聞『時言報』に連載し、のちに出版された『江湖叢談』の復刻版。
「旅芸人の規律」「口上で薬を売る」「天橋のすもう場」「相声(中国漫才)の技」など、昔懐かしい中国の民間芸能がよみがえる。

 

 
   
     

 

 

 

写真・文 小林さゆり
日本のメディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中

 

  http://china-media.jugem.jp/
 
     
   
 
   
中国・本の情報館~東方書店 東方書店トップページへ
会社案内 - ご注文の方法 - ユーザ規約 - 個人情報について - 著作権について